笑顔をつくる物語   作:エヌラス

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個人的にアギト本編の葦原さんはあまりにも孤独だったから、この作品の葦原さんは仲間に囲まれて戦って欲しいけど、でもやっぱりあの人は孤独だからこその輝かしさがあるという葛藤でなかなか筆が進まなくなってしまいました(盛大な言い訳)


page18.それぞれの夜

 

「想くん大丈夫かなぁ……」

 

ふと、今井リサが自分の大切な人の心配をする。溜息を吐く彼女の顔は憂いを帯びていた。

 

そんなリサを見た紗夜はまた違う意味での溜息を吐く。

 

「今井さん、この短時間でどれだけ彼の心配をしてるんですか……」

 

「えーだって……」

 

「曲がりなりにも彼は彼なんですから、襲われても大丈夫ですよ」

 

「想さんが負けるビジョンって、浮かばないですよね……」

 

「あこも!りんりんと同じこと思った!」

 

「そうよ、リサ……彼の心配も分かるけど今はしっかり集中してちょうだい」

 

時刻は真夜中だったが、若さ故か彼女達はまだまだ余力を残していた。リサが机の上にあるお菓子をひとつ手に取り口に入れ返事をする。

 

「はーい」

 

「それで、新曲の歌詞の持ち合わせだけど――」

 

それぞれが持ち合わせたノート、そしてペンを持ち新曲の為の打ち合わせをする。

 

いつもの場所で、いつものメンバーで、今は1人足りないがそれでも彼女達は楽しくやっている。

 

 

 

 

そう、家主が居ない八意想の家で……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

雨音だけが響くcircle、その一室で物が転がり落ちる音が響く。咄嗟に押さえ付けられた八意だったが抵抗することは無かった。

 

「押さえ付けてどうする、それで現実が変わる訳じゃ無いんだぞ」

 

「……僕は」

 

押さえ付け、八意を睨みつける翔一。だが彼の言葉に腕の力が弱まっていく。

 

「お前が傷つけた現実は変わらない、それから逃げるのも、挑むのもお前の自由だ。だが――」

 

どれだけ睨みつけても、目の前の青年はこちらから目を逸らさない。それどころか翔一の心に更に傷をつけようと言葉をなげかけてくる。

 

「ふざっ……ふざけんなよっ!!」

 

自らの惨めさと怒りに任せ、無理矢理青年を立たせてそのまま右拳で頬を殴り飛ばす。戦っていた過去がある原因かは分からないが自分でも驚く程相手を簡単に殴り飛ばせたことに驚く翔一。

 

「……っ」

 

自分の拳をもう反対の手で握る。微かに震えを感じながら、でもそれを相手に見せないように必死に演じる。

 

「ってて……」

 

だが、翔一の予想とは違い目の前の青年は怯むどころか直ぐに立ち上がった。殴られた箇所は皮膚が切れ血が滲んでいる。

 

(なんで……逃げ出したっていいのに……!)

 

だが青年からは自分に対して恐怖という感情を捨てていなかった。

 

「……悪かった」

 

「……え?」

 

殴り返されてもおかしくない状況で、青年がとった行動は――翔一に頭を下げるという選択肢だった。そのあまりにも突然すぎる行動に翔一の口から間抜けな声が漏れる

 

「俺は君の事を何も分かっちゃいないのに、偉そうな事言っちまったな……」

 

「…………」

 

「そこまで追い詰められて、誰にも話せなかったんだろ?――良かったら俺が聞くから、話してくれないか」

 

八意想はお人好しである。相手に突然殴られたとしても激情すること無く、むしろ頭を下げる。

 

そして見捨てるという選択肢は彼の中から消え失せていた。何故か、目の前の青年が…………昔の自分と重なっていたからだ。

 

「でも、これだけは言わせて欲しい。世界は思ってるよりも、君に冷たくは無いんだ。君がどういう状況でどうなったのかは俺には全然分からない。だけど……もう一度立ち止まって振り返ってみれば、案外そこは居心地が良かったりするんだよ」

 

「……!!」

 

その言葉に、翔一の心が少し揺らいだ。目の前の青年がどういう心境でその言葉を放ったのかは分からない。でも何故かその言葉は翔一の中にスっと染み込んでいく。

 

「……俺は八意想。君は?」

 

「僕は、津上……津上翔一って言います」

 

この出会いは、後に彼らと……彼らの周りを巻き込み更なる混沌へと進む事になる。

 

それはこれからの物語である

 

 

 

 

――――――――

 

 

「……」

 

同時刻、雨が降る世界を窓越しに見ながら1人の男は溜息を吐く。

 

男の名前は葦原涼。つい先日位まで病院に入院していたのだが一先ず退院という事になった。

 

本人も身体自体は何ともなく、問題も異常な筋肉の動き位のものでどうやら病院としては別の患者に回す方が良いと判断されたようだ。

 

(……なんだったんだあれは)

 

だが葦原涼本人だけは自分の身体の異常を身に染みて感じていた。

 

あの日……夜に突如激痛に襲われ、意識が奪われそうになった時

 

腹部が輝き、自らの身体が化け物に変貌したあの瞬間を。

 

(俺は、俺の身体は一体どうなってるんだ……)




短くて申し訳ない、こう、組み込みづらかったんですよね。平和なお話って
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