私実は昨日のKアリーナ横浜で開催されてたバンドリ10thのライブに参加させて頂きまして、もうそこでめちゃくちゃテンションぶち上がっちゃったんですよね。一日経った今でも余韻が抜けきらないくらいに、バンドリのモチベも上がってついつい続き、書いちゃいました!!
是非お読みいただけると幸いです!
「うへぇ〜……ほんとに軒並み全滅してるよ」
マンションのひとつに作ってもらった小さな家庭菜園場所、翔一が育てていた野菜は軒並み全滅しており、少しばかり悪臭も漂っているような気がする。
「ごめんよお前達、次はしっかりちゃんと育てるからな」
道半ば枯れていった野菜や果物に、心からの謝罪とともに根から刈り取っていく。土は幸い死んでいないため、栄養を与え、種を植えればまた再び命が芽吹く場所になる。
(楽しみだなぁ……、今度はしっかり育てて、皆さんに作るんだ!)
「……アイツ、すっかり元通りね」
風が心地よく、珍しく窓を開けていたチュチュが、風に流れて聞こえてくる翔一の鼻歌に耳を傾けていた。なんの音楽かはイマイチ分からないが……聞いてて悪い気はしない。
「良かったです、でもこれからどうしましょう?」
「どうするって言われてもねぇ……」
パレオがチュチュの方へと歩み寄り、コップを渡す。受け取った彼女も頭を傾げながら悩む素振りを見せていた。
「前回飛び出した時、マッスーさんのバイクを使ってましたし……何かしら移動手段はいるんじゃないでしょうか」
「……確かに」
前回、アンノウンの気配を感じ取ったと本人は言っていたその現象が起こった時、彼は考えるよりも無意識で身体を動かしていた。そしてあろうことかますきのバイクをひったくって現場に駆け付けていたのだ。
幸いにもバイク自体に損傷はなく、その後しっかり翔一が死ぬ程謝っていたのが記憶に新しい。彼女もまた、笑って許していた。
いいのかそれで……と思った。しかも翔一は恐らく無免許である。今の時点では……
「決めたわ、あいつにするプレゼント!着いてきなさいパレオ!」
「はい!チュチュ様!」
堰を切ったように、チュチュが指を鳴らし、すぐさま自室へと走っていく。パレオもそれに笑みを浮かべて彼女の後ろへと着いて行った。
「見てくださいよ〜!でっかいイモムシ、まだ土は死んでない証ですね…………ってアレ?」
彼女達が消えてから数秒後、翔一が右手に大きなイモムシを持って部屋の中へと現れる。
あと数秒早ければ、恐らく翔一は消されていた。
――――――――
「いたいた!!」
「おっ、来たか」
大学の正門でビートチェイサーに跨り、彼女を待っていたのは八意想である。そんな彼に近付いてくるのは今井リサ、彼女である。
「待った?」
「いいや全然、寧ろ俺遅れたと思った」
「その割には疲れてるね」
「……バレてる?」
グイッと顔を覗き込む彼女、その視線から目を逸らそうとするが顔を捕まれ視線の逃げ場を失う。
「うん、分かるよ。君とずっと一緒にいたもん」
「そっか……」
疲れていないといえば嘘になる、ここ数日音沙汰が無いアンノウン関連の騒動。リハビリを兼ねた自身の特訓。金の力を思い出す為の特訓。
如何せん経験があるとはいえ、数年のブランク。そして前回の戦闘から得た経験。
未確認生命体の時よりも厄介が磨かれているアイツらがいる以上、自分ももっと強くならねばなるまいと邁進してきたつもりだった。
「よし!今日は休もう!二人でちょっと出掛けようよ!」
「え……?いやお前これからRoseliaの……」
今日も今日とてRoseliaのベースとして友希那達と練習するんじゃないの??という八意を他所にスマホを取りだしポチポチと弄くり回すリサ。
「もう連絡した!!」
「はっや、行動力バケモンかよ」
数秒後には送信し終わったようで、親指を立ててサムズアップをする彼女が居た。
「あれ、リサ姉から連絡きた!」
全員が集まり、スタジオでのびのびとしていた最中、あこのスマホにリサからの連絡が入る。
内容としては今日の練習を休む、理由は八意のメンタルケアの為……との事だった。
読み上げてから一瞬、その場の空気が凍る。特に真面目な氷川紗夜からすれば彼女の行いなど論外にも値するだろう。
「……仕方ありませんね」
「「!?」」
だが彼女から出たのはため息と仕方ないという言葉。思ってもいなかった言動に白金燐子と宇田川あこが驚愕する。
「……なんですかその表情は」
「い、いや……紗夜さんなら怒るかなーって」
「失礼ね、最近かなり詰めて練習してたのもありますし……それに最近の彼はまた忙しそうになってますから」
八意はRoseliaのちょっとしたマネージャーとして活躍している。だが最近の彼はかなり小さなミスが目立っていた。本人は上手く誤魔化していると思い込んでいるようだが、彼女達Roseliaの目からしても疲労具合は明らかだった。
原因は嫌でもわかっていた。平和になったはずの世界に訪れた――超常現象による殺人。
それが直ぐにアンノウンという怪人が発表され、昨日の朝にも1人が亡くなっている。
「彼も少し、休憩が必要ね」
「湊さん……」
「私達も今日はオフにしましょう。休む事も、立派なパフォーマンスに繋がるのよ」
「はい!」
そう言うと、彼女達は予約していたスタジオ、その予約をキャンセルして歩いて行った。
――――――――
「……ぐぐ」
「ほら!頑張ってー!!」
場所はリサの通う大学から少し離れた場所にあるゲームセンター。彼女が前から欲しがっていたというぬいぐるみがあったのだが本人はなかなか取ることができず、今日たまたま俺がやることとなった。
「あちゃー」
「…………」
だが結果は今のところ惨敗。敗北もいい所である。台をキープするという機能がついてるのを知ってからはブレーキが効かなくなったと自分でも感じていた。
落とす、両替、落とす、両替。
その繰り返し、クレーンゲームという名のマラソンゲーム。その果てにあるのが……彼女の笑顔だとしたら……??
(答えは勿論、やるしかねぇ)
生憎お金にはあまり執着が無い、それに懐事情は数年前に貰っていた弦巻家からの支援金のようなもの。そして自分でバイトをして貯めたお金。まだまだ金銭は沢山ある。リサの笑顔がそこにあるならやるしかないんだ。
「……取れた!」
そして挑戦してから何十回目の事だっただろう。何度も何度もチャレンジし漸く自分の手元にぬいぐるみが渡る。
「はい、やるよ」
「やった!!ありがと!」
「おう」
期待通りの笑顔を見せてくれたリサに、想は自然と顔が綻ぶ。彼がかつて愛していた女性も、笑顔が素敵だった。
もう二度と、こんな幸せを奪われるような事はさせない。自分も、自分以外も――
「まーた難しいこと考えてる!今日はダメって言ったでしょ?」
「あーたたたたた……っ!?」
拳に無意識に力が入っていたのだろうか、それを見逃さなかったリサが盛大に俺の頬をつねる。幾ら俺が普通の人間とは違う身体の作りになっているかといってそんなにつねらなくていいと思う。
本当に痛い。
「美味そう……」
「でしょー?」
つぎにやってきたのはゲームセンターの近くにあるクレープ屋さん。周りでクレープを頬張る男女を見ていると己の場違い感にこそばゆい気持ちになるが、一緒に食べようと言われてしまえば食べる。
「チョコバナナに小豆……ツナマヨネーズ……?」
メニュー表を見物していると、上の方は在り来りなクレープっぽい品々があるのだが、下に行けば行くほど惣菜コーナーになっていっていた。なんだよポテサラコーンクレープって、もうそれ野菜じゃねぇか
「私この……」
そこから始まる呪文のような注文に俺は目を白黒させた。そしてそれを1回で聞き取る店員さんにも驚愕させられる。
「想くんはどうする?」
「俺か、じゃあこのカスタードクレープください」
店員さんは既に俺の注文を聞く姿勢に入っている、ここで悩んでしまえば迷惑をかけてしまうであろう。俺はとりあえずこの店イチバン!と書かれた物を選ぶ事にした。
「待て待て……メニューの写真と全然違ぇじゃねぇか」
注文してから作り始めるのがこの店のやり方らしく、10分程待ってからクレープが渡された。俺の物はシンプルなカスタードクリームを包んだクレープなのだが……写真よりずっとクリームの量が多い。
「かっわいいー!!」
リサのクレープは可愛らしいクマのクッキーが頂点に2個突き刺さっていた。メニューなら確か1個だけのはずなのだが……
恐らく全部店員さんのサービスというものだろう、いざされると……嬉しい。
そんなことを思いながらリサが指差したベンチへと2人で腰掛ける。街は既に学生から社会人への帰宅ラッシュへと差し掛かっておりスーツなどを着た人達が足早に歩いていく。
その中で俺とリサ、2人だけは、ゆっくり時間が過ぎて行くような感覚だった。
「楽しかった?」
クレープを持ちながら、リサが首を傾げてこちらを見る。俺はその瞳を真っ直ぐ受け止めて答えを返した。
「ああ、楽しかった。こういうの久しぶりだなって」
「最近想くんってば色んな所で頑張ってるから、アタシもちょっとは役に立ちたいなって」
「そんな事思わなくても、俺の傍に居てくれるだけで充分有難いよ」
「それだけじゃアタシがダメなの」
「そういうもんなのか……?」
そばに居てくれるだけで、俺は頑張れる。これは心からの思いだった。だが彼女はそういう訳にはいかないらしい。
「また、危ない所に行くんだよね」
「うん」
「ニュースでもやってる、アンノウンってやつでしょ?」
「……」
その言葉に、俺はピクリと眉を動かす。アンノウンは警察圏の一部でしか知らなかったはずだ。もし彼女が知ってると言うことは……世間に公表したということだ。
本格的に、彼女達にも隠せないということを、俺はその時、初めて理解した。
「隠そうと思ってたでしょ?」
「うん……」
「相変わらずだなー」
えいえいと、俺は頬をつつかれる。
「ごめん、でもまた危険なことに巻き込みたくなくて、俺の親父の時もそうだった。あんな怖い思い……本当にもう二度として欲しくないんだ」
俺の、本心だった。彼女達には幸せに今の平和を享受して欲しい。俺の事よりも、今のRoseliaや学校のことを優先して欲しい。そう願っていた。
「アタシ、もう逃げないよ。Roseliaも学校も全力で挑むし……君の事も」
「リサ……」
「だから頼ってよ、アタシに出来る事はたかが知れてるかもしれないけど、それでも役に立ちたい!」
「……悪かった。ありがとう」
「うん!わかってくれて良かった〜!!」
完全に俺の負けだった、リサは、俺が思っているよりももっと強い女の子だった。もちろん戦いではなく、もっと別の何か……その強さを持っていた。
「俺、頑張るよ……またリサ達に集中できるような世界にしてみせる」
ぎゅっと手を握りしめ、俺は彼女の目を見詰めて言葉を放つ。
「……」
だがリサの目線は、俺の手先へと伸びていた。
「え、リサ……?――――あっ」
目線の先を辿ると、潰れたカスタードクレープが俺の手をベッタベタにコーティングしてくれていた。
「また被害者が増えたな……」
街の公園の一角で、警察が大量に佇んでいた。そこには杉田や桜井、氷川や北条、河野刑事が居た。
「河野さん、被害者の親族や友人を調べましょう。また狙われる可能性がある」
死後数時間という比較的綺麗な状態の遺体を見ながら、北条が河野へと声をかける。河野はそれに頷いてひとまずその場を離れる。
「犠牲者が増えましたね。それも一家丸々……地中に引き込まれていることから恐らく貴方達が取り逃したヤツの仕業でしょうね」
死後数時間、だがその遺体が見つかった場所は公園の地面の中だった。第一発見者はたまたま土から伸びる手を見つけたという。
だがその場所や付近に土を掘った形跡は無く、仮に掘れたとしてもスコップのひとつやふたつで掘り起こすには到底時間がかかるような深さと人数分だった。
公園の人通りは多く、一晩で決行するのはほぼ不可能だとされた。
よって現場ではこれをアンノウンの仕業という結果になった。
「……っ」
北条に言われた言葉に、氷川は何も言い返せずただ黙って睨みつけた。
「G3は大破、4号は前回の戦いでヤツを逃している」
「それは……」
「一体これからも、どれだけの被害者が増えるんでしょうね?」
北条から放たれる鋭い言葉に、氷川はただただその言葉を受け止めることしか出来なかった。