笑顔をつくる物語   作:エヌラス

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この作品書き始めてからもう6年近く経ってるんですねぇ、当時中学2年生だったかな、多分そんくらいだったんすけどもう今じゃ社会人ですよ時間の流れって怖ー


page22.初めましての日

 

 

「……これ」

 

とある日の朝、目が覚めた翔一がチュチュやパレオ達よりも先にキッチンへと入る。大概ここで朝ご飯を作り起きてきたチュチュ、いつの間にかいるパレオに食べてもらうのが最近の流れだった。

 

だが今朝は少しだけキッチンの様子がおかしかった、違和感の正体にはすぐに気づいた。いつももの一つない綺麗な台所に、ひとつの紙と鍵が置いてあったのだ。

 

『下に来て頂戴』

 

その文を見た翔一は頭にハテナが沢山浮かぶのを感じる。

 

今日は休日とはいえ時刻は朝5時、彼女達が起きているとするならば早起きすぎてちょっとばかし心配になるレベルの話だ。早寝早起きは彼女達の年頃では1番重要ではあるが、ちょっと早起きすぎる。

 

「……なんだろう」

 

1人ボソリと呟いて、翔一はマンションの部屋を出る。エレベーターに乗り下へと向かい……最初に広がるのは駐車場だった。

 

如何にも高そうな車やバイクが連ねる中、その中に彼女達ふたりが立っていた。

 

「えっ、なんで……!?」

 

驚きながら走り寄る翔一、本気で驚いた顔をする彼に2人が笑みを浮かべる。

 

「その反応、サプライズは成功ですね!チュチュ様!」

 

「ええ!!」

 

そう言う2人の横には、これまた周りにある高級車などに負けず劣らずのバイクが置いてあった。銀色を基調とした落ち着いたカラーリングのソレは紛れもなくバイクだった。

 

「これ、どうしたんですか……!?」

 

「どうしたもこうしたも、翔一!アンタが自由に動ける為よ。私に頼まれごとした時も歩きじゃ不便でしょ」

 

「後は居場所を守りに行く時にもお使い下さい!ちゃんと丈夫ですから!チュチュ様が必死に選んだものです!」

 

「パレオ!」

 

「だって本当の事じゃないですか、ますきさんにも協力して貰って悩んで買ったものです!」

 

「パレオ〜!!」

 

小さな身体を精一杯膨らませて抗議するチュチュに、パレオが悪戯っぽい笑みを浮かべている。翔一はそんなふたりに母のような視線を向けつつも目の前のバイクへと触れながら聞いた。

 

「本当に、ほんとにほんとにいいんですか……!?」

 

その声から翔一の興奮が伝わってきたのか、2人が頷く。

 

「やった……!ありがとうございます!僕、大切にします!!」

 

翔一は改めてバイクに触れながら、2人に感謝を述べた。

 

 

その日の朝食は、いつもより豪華な品々となった。

 

 

 

 

 

――――――――――

 

 

 

 

〜科警研・AM6:30〜

 

「……」

 

八意は、科警研にある椅子に腰掛けていた。その手には朝ご飯代わりにリサが作ってくれていたおにぎりがあった。

 

「なんかいい事あった?」

 

八意が座っていた隣に、女性が座り彼に質問を投げかける。彼女の名前は榎田ひかり、科学警察研究所の研究員の1人だ、未確認生命体事件から彼女とは関わりがあり、アンノウンが出始めた今またこうしてお世話になっている。

 

「まぁ、いい事っちゃいい事っすね」

 

そう言うと残り一口大のおにぎりを口へと放り込む。榎田はそんな八意を見て母のように微笑んだ。

 

「そっか、いや昨日とは違っていつもよりハキハキしてたからさ」

 

現在八意は、片手で数えられるアンノウンとの戦闘の末にその強さに危機感を抱いていた。

 

赤、青、緑、紫、クウガの力は基本この四形態。そこにかつて俺が心肺停止に陥った際に使用された電気ショックにより古代には無かった力が生まれた。それが金の力。

 

かつて30秒前後しか使用不可であり、しかも使い切れば2時間は戦闘不能になるという最悪のデメリットだったが、2度目の電気ショックでそれを克服……結果金の力は永続的に使用可能になり黒の金の力も解放された。

 

凄まじき戦士の力をそう簡単には使用できない、というよりしたくない今、黒の金の力までで何とか奴らを退ける必要があった。

 

G3ユニットも現在修復と並行して改修が行われているがどこまでアンノウンに通用するかは分からない。アギトという存在もある。

 

その為数年ぶりに科警研に訪れ、かつてのように金の力の特訓に励んでいたのだ。

 

何せ金の力は、人間の身体の中にある微弱な生体電気をアマダムを使い極限まで過激化させる。

 

『うぐっ……はぁっ……!!はぁ……!!』

 

『八意くん大丈夫……!?』

その結果体に強いる負担は凄まじく、数年というブランクもあったため一発目は数十秒耐えたがその後すぐ白を超えて変身解除までいってしまった。

 

「……」

 

今では漸く勘が戻ってきたのかはたまた慣れてきたのか、変身と維持は問題なかった。

 

「それに、守りたいものを思い出させてくれましたから」

 

そっと微笑みながら言う彼の顔を見た榎田が、それ以上の詮索を辞めて笑を浮かばせる。彼がこうして再び立ち上がってくれた時は、どこか義務感を感じた佇まいだった。

 

だが今、眼前にいる彼は生身の心そのもの、年頃の男の子だった。そして自らをクウガという戦士にし、みんなの笑顔の為に再びその拳を振るうと決意した勇者。

 

ならばそれを全力で支えるのが、自分達の役割。

 

「よし、じゃあ休憩終わったらもうちょっとやろうか!!」

 

「……はい!」

 

軽い雑談も程々に、八意と榎田の2人は再び研究室へと戻っていく。

 

 

 

――――――――

 

〜同時刻・オーパーツ研究所〜

 

「これは……」

 

「なんだと思う?」

警視庁の1部屋を盛大に使い、オーパーツ研究所と呼ばれていたその部屋で、氷川誠は眼前に存在するモノに眉をひそめていた。

 

その横に立つ女性は、研究所内だというのに呑気にタバコをふかし、周りのメンバーからやめてくださいよ〜などと言われている。

 

「……この形、まるで遺伝子のモデルみたいだ」

 

目の前にあるのはかつて十字架のようなものに封印されていたオーパーツだった。幾重にもダイヤル式ロックが掛けられ、実際数十年掛かると言われていたその解除を、オーパーツ研究所は自身の持つ圧倒的な技術力と彼女の頭脳で、オーパーツが運び込まれてから数日で解読して見せたのだ。

 

そして今、その十字架が解かれた。中にあるのはふたつの遺伝子のモデルのようなものだった。

 

「あのオーパーツは3万年以上前のものだと言われていたはずですが……!」

 

余りに信じ難い光景に、氷川が驚愕を隠せず彼女に詰め寄る。

 

「そんな時代にこんな遺伝子モデルが組み上げられていたなんて考えられない……!!」

 

「でもそれ――常識的に考えてありえないよね」

 

「……」

 

「でもここはオーパーツ研究所、有り得べからざる物を研究し、解明するところ。常識の枠を取り外さなければ研究も出来ないわ」

 

ワクワクすると言わんばかりに白衣をはためかせ、手を広げる彼女。

 

(凄い臭いだ……何日お風呂に入ってないんだこの人は)

 

同時に花を貫く臭いに一瞬だけ氷川の眉間にシワがよる。タバコの匂いも合わさって結構最悪の部類だ。

 

「どんなに荒唐無稽だと言われても、それを信じること……信じ抜くこと、まずそれが第一歩だと私は思っているわ」

 

「……」

 

彼女の言うことは最もだ、氷川もまた荒唐無稽だと思われても仕方がない現場に居合わせている。かつての未確認生命体事件や4号の存在、そしてアンノウンやアギト……一般的に信じれないソレに氷川は首を突っ込んでいる。

 

彼女もまた、氷川のように常識を超えた場所で戦う人間の一人だった。

 

「そして今、遺伝子モデルにタンパク質を組み込んで、謎を解明しようとしているのよ」

 

「……そうなんですね」

 

正直、尊敬できる女性だ。ひとに笑われても、蔑まれても、自分のやると決めた事を一切曲げないその心。

 

『どれだけ犠牲者が増えるんでしょうね』

 

直前、北条に言われた言葉が頭をよぎる。彼もまた、言っていることはマトモだった。

 

(犠牲者なんてこれ以上増やさせない、それがG3を与えられた俺の役割だ)

 

では、俺はこれで、頑張って下さい。とだけ言い氷川はその場を去っていく。G3の装着者としてもだが、1人の警官としてもこれ以上の犠牲は許容できなかった。

 

そしていてもたってもいられなくなってしまい、飛び出してしまった。

 

「……若いねぇ」

 

その後ろ姿を見ていた彼女は、タバコをひとふかしした後そう呟いたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

――――――――――

 

 

 

 

「またこれかよ」

 

科警研を出て最初にスマホの画面を見た八意、リサや珍しく紗夜からも連絡が来ている中、SMSに1つのメッセージが入っていた。

 

名前は結構名の知れたグループも所属している音楽事務所であり内容はスカウトだった。

 

私達であれば彼女達をもっと上へと導いてあげられる。どうかご検討よろしくお願いいたします。

 

端的に言えばそう書かれていたスカウトメッセージを一通り目に通し、ひとまず返事を保留にする。

 

未確認生命体事件から数年の間に、Roseliaも結構人気が出てきていた。ファンも増え、ライブをする時にはcircleなどのチケットも売り切れるくらいには熱狂だった。

 

バイト傍らでRoseliaの仮マネージャーとして奮闘する俺も、連絡がかなり増えておりその度に友希那達と相談を繰り返していた。

 

大概彼女たちは首を横に振っているが、それでも飽きずにスカウトしてくる事務所は多い。

 

(世はまさに、大ガールズバンド時代……ってな)

 

そんな事を思い、ビートチェイサーに跨りヘルメットを被ろうとした時だった。

 

「初めまして、八意想さん?」

 

声を掛けられ、視線を前に向ける。目の前にスーツ姿の男性が立っていた。眼鏡越しの瞳は黒く、髪もきっちり整えられており清潔感もある。

 

「……初めまして」

 

道に迷ったとは考えずらく、それに俺の名前を知っていた。内心で疑問が渦巻く中、男はこちらへと歩み寄る。

 

「そんなに警戒しないでくださいよ。流石に私も傷つきます」

 

「……ここ、一応警察の場所だってことわかってます?」

 

どこかこちらを覗きみようとする胡散臭い笑みを貼り付けて迫る男に少しの圧をかけて八意が言葉を放つ。

 

「ええ、知っていますとも」

 

「そもそもなんで俺の名前を……」

 

「どうぞ」

 

知っているなら何故と言いたいところだが、それよりも早く男が名刺を八意へと渡す。

 

「榊原直保……」

 

「おや、ご存知ではありませんか?私の一方的な想いだったとは」

 

妙に気色の悪い事を言うなこいつ……なんてことを思いながらひとまず俺も名乗り返す。残念ながら名刺なんて立派なものを持っておらず口頭だけになってしまう。

 

「八意想です、すんません名刺はまだ作ってなくて……」

 

「ええ結構です、そのお年でプロデュースをやってらっしゃるのですから、それに多忙でしょうしね」

 

「……」

 

いちいち言い方が癪に障るなと思いつつも、表面上では平静を装って会話を進めていく。こういう時に相手のペースに飲まれるのは得策ではないということを、俺は痛いほど理解させられていた。

 

「要件は?」

 

率直に話を終わらせるべく、八意が問を投げる。

 

「率直な人は嫌いじゃない。では――」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「Roseliaを、私にくれませんか?」

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