皆魅力的でいいなって思った、この作品にもねじ込めたらいいなぁ、、なんて
「……」
一瞬だけ言われた言葉。それがどうしても飲み込めず、口の中でコロコロと転がす感覚に襲われる。
彼女達の演奏力は圧倒的だ、正直こういう日が来てもおかしくないとは思っていた。きっと彼にRoseliaを託せばもっと、もっと高みへ……彼女たちが言う頂点の景色を見ることが出来るのかもしれない。
だが、彼女達はそれを望むのだろうか。それに俺はそれで納得できるのだろうか。
「私なら彼女達をもっと成長させられる、今迄私は様々なバンドを受け持ち……成長させてきた」
風貌、話し方、それでなんとなくは察せる。この男が言ってることは全て紛れもなく事実だろう。後で名前も調べてみるが……恐らく界隈では有名人なんだろうなと想像が着く。
「「……!!」」
その時だった。2人の無言を突き破るようにビートチェイサーの無線通信がピーッと鳴り響く。この音が鳴ったということは恐らく何処かにアンノウンが現れたという合図。黒服さんの情報か警視庁からの情報か、返答しなければ通信は開かない。
(だが今開けばこの男に正体がバレるな……)
俺が4号として戦っているのを知っているのは警視庁の極僅かな人間と弦巻家黒服さんや俺と関わりがあるバンドの彼女達。
思えばかなり顔がしれてる気がするが、全員民度が良いお陰でそれ以上に広がることはなかった。
(ただコイツには俺の内は晒したくない、何の脅しに使われるかたまったもんじゃないしな)
「何か鳴ってらっしゃいますよ?」
「ああ……はい、すいませんこの話はまた後で!名刺に書いてある所に連絡を入れればいいんですよね」
「ええ、はい……それで構いませんよ」
ひとまずビートチェイサーに跨りその男を横目にその場所を走り去る。いきなり話をぶつ切りにされたのにいやに冷静な男に不気味さを感じつつも一先ずはその場を離れた。
「……」
走り去った方向を見つめながら、榊原直保が息を吸って……吐く。
(八意想。数年前から別の街から引っ越してきたという情報……だが彼にあるのはそれだけだ)
榊原は、目をつけた相手はとことんまで調べ尽くす、昔からの悪癖でもあり彼をバンドの天才と言わ絞めた才能のひとつだった。それは自分が手掛けたバンドのメンバーも同じで、彼の場合はそれを活かして徹底的な管理と指導でトップバンドと言われるメンバーを数多く排出してきた。
そして彼のもう1つの特徴は1度記憶した物は一生忘れないという点だ。産まれた時から既にあった超記憶症候群という物。調べ尽くすという彼の性格との組み合わせは最高で”超能力”と言われる程の正確性を生み出していた。
(だが八意想、貴方だけは引っ越していたという情報以外は全て分からなかった。何処から引っ越してきたかも不明……)
それにあの乗り物、マネージャーのはずの彼が警視庁になぜ居たのか、自分を見た時の警戒への切替、その動作。
全てが彼の中で引っ掛かる。Roseliaが欲しいのも事実。だが八意想が気になるのも榊原直保の本心だった。
「ふふっ……」
こうして気になることが出来ると笑みが漏れてしまうなと思いつつ、その場から歩き始めた。
――――――――――――
〜チュチュのマンション〜
「っ!!」
彼女達の話を聞きながら料理を作ろうとしていた翔一、だが突如として全身を駆け巡った感覚に顔を上げた。
「……翔一?」
先程までこちらの話に笑顔で接していた彼の顔付きが変わったのを感じたチュチュとパレオが、翔一を見る。
「行かなきゃ……!」
全身を駆け巡る使命感は、アイツらが現れたことの察知。その呟きにチュチュもパレオも顔を見合せた。
「行ってきなさい、翔一」
「どうかご無事で」
2人の、短くも背中を押すには充分すぎる言葉に翔一が頷く。そして着ていたエプロンを脱ぎ捨ててその場から走って行った。
しっかり玄関先に置いてあるバイクのキーを手に取ったのを見た2人は、満足気に笑みを浮かべていた。
――――――
〜公園〜
「クソッ……!!」
子供を抱き抱えた警官が、悪態を着きながら目の前の奴らから逃げていく。地域ではかなり顔のしれた警官は長年務めていた人生の中でこんなことは初めてだと心の底から思う。
かつて起こった未確認生命体事件も、この場所には関係なかった。自分も命を掛ける覚悟はあったが結局この目で未確認生命体、4号を見ることは無かった。
数日前に発表されたアンノウンという生命体。奴らもまた目にかかれず終わるのだろうという心がどこかにあった。
そしていつものパトロール……そこで彼は数人で遊ぶ子供に近付くアンノウンを発見したのだ。
「危ないっ!」
1人の子供に襲いかかろうとした瞬間、彼は乗っていた自転車を乗り捨てて子供を抱き抱えた。
「っ……!」
そして今、子供をかかえてアンノウンから逃げ続ける警官。だが相手は頭だけを不気味に地中から覗かせまるで泳ぐかのように接近する。スピードもあちらがかなり早く――一瞬にして足を捕まれ土まみれの地面へと転げる。
『――――』
地面から這い上がり全身を覗かせたトータスロード・テストゥード・テレストリス。全身の体色が銅色であり陸ガメの特徴を備えたアンノウンは同じくトータスロード・テストゥード・オケアヌスと共に行動をしていた。
1度現れたアギトやクウガに敗走し、2体ともに今また行動を再開していたのだ。
「ひっ……!」
目の前の子供を隠すように身を丸めた警官、それごと手で掴み地面へと引きずろうとした瞬間だった。
「ッ!!」
間一髪、修理が終わったG3を装着した氷川が、テレストリスを背後から掴みかかり警官から引きずり剥がした。
「あ……」
「本庁の者です!早く逃げて!」
パワー差で掴んだ手を離され、正面を向いたテレストリスに右の拳を打ち込みながらG3の背後にいた警官と子供に目を向け言葉を放つ。
「ぐっ……あぁ……っ!!」
頷いた警官、そのまま走っていくのを見た氷川は、振り返りざまに肘打ちを顔めがけ叩き込む。だが相手はそれよりも早く、右と左の爪をG3の胸部へと叩き込んだ。火花が散り、修理を終えたG3に早速ダメージを蓄積させる。
『氷川くん踏ん張りなさい!』
通信越しに聞こえる小沢な言葉を受け、何とかカウンターの一撃を叩き込もうとするも、容易く受け止められ、胸部や肩の装甲にダメージが入る。
「う、うわぁっ!!」
「っ!?」
離れたはずの警官の悲鳴が聞こえ、氷川がその方面を振り返る。視線の先にはもう一体のアンノウン、オケアヌスが警官に手を伸ばしていた。
銀色の体毛に水ガメの特徴を備えた、まさにテレストリスと瓜二つの存在。
(不味い……っ!)
氷川が掴み掛るテレストリスの胸部を膝で蹴り飛ばし、拳で殴り掛かる。そのままオケアヌスへと走り寄ろうとするが、背後を両手で切り裂かれる。
バチィッ!!とG3の電気系統がイカれる音が耳を打つ。背中のバックパックを切り裂かれた影響だろう。AIが支えていたG3の重量が身体に伸し掛る。
「ぐっ……!!」
重量に身体をやられながらも、目の前のテレストリスの足を、自らの足で引っ掛けその場所へ寝転ばせる。
「氷川さんッ!!」
次の瞬間だった、ビートチェイサーがウィリー走行をしながらこちらへと走り寄り、そのままオケアヌスを背後から前輪で蹴り飛ばす。
「八意くん……っ!」
「大丈夫ですか!貴方も早く逃げて!」
流石の不意打ちの前輪は効いたのだろう、オケアヌスが盛大に吹き飛び地面へと転がる。
「っ!」
八意が自らの腰に手を当てて、アークルを出現させる。
「変身!」
腰部に出現させたアークルの左スイッチを左腕で押さえ、赤のクウガへと姿を変えた。
「はぁっ!」
ビートチェイサーから飛び上がり、オケアヌスと取っ組み合いの状態になる。事態は2対1から一対一へと変わった。
「くっ……!」
八意がオケアヌスと取っ組み合いになり、お互いがお互いの胸部を足蹴にし距離をとる。
(警官と子供は大丈夫だな、黒服さんの連絡通りだ……)
拳を構え、目の前の敵に集中する。G3もクウガの背後へと立ち、お互い背中合わせの状況になっていた。
「折角修理が終わったG3システムなんです、早速大破とかやめてくださいよ?」
「ええ、善処はするつもりです……!」
一先ず軽口を飛ばし、八意が氷川の余裕を伺った。軽口に真面目な返答を返すも、恐らくG3にダメージはかなりある。ちらっと見えたバックパックの損耗。左肩の剥がれた装甲からのケーブル露出。一対一で任せるには少しばかり心もとない。
「八意さん、1つお願いが……!」
G3とクウガを囲むように、テレストリスとオケアヌスが様子を伺う。その最中、氷川が八意へと声を掛ける。
「G3の武装ですよね、どれくらい掛かります?」
「正直30秒は欲しいですけど、G3のAIアシストが切れてるせいで装甲が……」
「俺より年上の人がそんな情けないこと言って……」
「冗談ですよ……!10秒あれば!」
「了解っ!」
次の瞬間、2人まとめて叩き潰そうとしたのか、テレストリスとオケアヌスが爪を立てて同時に襲いかかる。
「ッ!!」「っ!」
氷川はそれを転がり回避、そのままG3のバイクへと走りよる。
「――!!」
八意の意思に応じ、赤のアマダムが紫色と変色、赤のクウガは紫のクウガへと姿を変える。
『『――――!?』』
ギャリギャリ!!と耳をつんざく音を響かせながら胸部と背中に爪を受ける。だが紫のクウガの生体装甲は傷1つつかずに2体は困惑に包まれる。
(耳がいてぇんだよ……っ!!)
身体の痛みは無くとも耳の痛みに襲われた八意が、八つ当たりじみた拳をオケアヌスに叩き込み、反対から突っ込んでくるテレストリスの拳を再び鎧で受け止め、カウンターの拳をたたきこむ。
(ビートチェイサーから離れたのはマズったな……)
紫のクウガの特徴は4形態の中でも突出して防御力が高いことと、邪悪を切り裂く戦士ありという文面もあるように、剣と見立てたものをモーフィングパワーを使い変えその剣で敵をたたっ斬る戦い方ができることだ。
かつての先代クウガは石ころなどを剣としモーフィングパワーを使用したという記録が存在しているも、生憎八意想にそこまでの豊かな想像力はなかった。現代っ子恐るべきである。
2体のアンノウンに前後から同時にタックルされたクウガが、正面のオケアノス――そのがら空きの背中へ拳を叩き込む。
ドスッ、ドスッと鈍い音が何度も響き、確かにオケアノスにも衝撃は走っていた。だが背中は亀の特徴である甲羅に覆われているため、パワーに秀でた紫の腕力も耐えれるダメージに抑えていたのだ。
「くっ……そっ!」
デメリットである鈍重さが仇となり、完全に動きを固められる。
「八意さん!撃ちますよ!」
声が聞こえ、次の瞬間――――
目の前のオケアノスの甲羅に弾が着弾し火花を散らす。完全に予想外の襲撃だったからか、それとも威力があったのか、オケアノスが八意の体から手を離し地面へと転がった。
「っ!!」
テレストリスの腕の力が弱まったのを感じた八意が、その隙を着いて身体から引き剥がす。
「超変身!」
引き剥がし、距離をとる寸前に紫から再び赤の姿へと変わり、飛び上がる。そしてそのまま蹴りを叩き込む。
『――ッ!!』
蹴った勢いを使い、G3がいる方向へと着地。テレストリスの身体に封印の紋章が浮かぶが、直ぐに消えてしまった。
(分かってはいたが、あんなすぐに消されるとちょっとヘコむな……)
八意は自分の足に熱が残るのを感じながら目の前のアンノウンへと視線を送る。
「八意さん……!」
「……!?」
この状態からどうするかと頭を悩ませた次の瞬間だった、エンジン音が耳に入り、全員の視線がその方面へと行く。
『ッ!?』
『ッ!!』
その一秒後、2体のアンノウンが何者かが乗るバイクに吹き飛ばされお互いに散らばった。
「氷川さん……!」
「っ!」
そのままこちらへと向かってきていたバイク、氷川よりも先に八意が気づきG3を引っ張って横に転がり回避する。
「アイツ……っ!」
その姿を見た瞬間、八意も氷川も警戒心のギアを一弾上げる。バイクを止め、こちらを振り返るその姿は
……アギトだった。