笑顔をつくる物語   作:エヌラス

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page45 霊石

後日、八意想の遺体は弦巻家へと運ばれた。あの黒服さんでさえ、目には滲むものがあったことに一同は驚きを隠せなかった。それよりも、八意想の死体が腐らなかったことにも医者を含めたみんなが驚いた。

 

もしかしたらというありえない可能性も含めて…弦巻家へと運ばれたのだ。

 

「想くんってさ、不思議な人だよね」

 

八意想の髪を撫でながらリサが言う。今この部屋にいるのはリサと日菜と紗夜だった。後でつぐみと沙綾が来るらしい。

 

紗夜が口を開く

 

「確かに、隠し事があるような…」

「おねーちゃんもそう思うの?」

 

「日菜も紗夜もかぁ…ほんと…」

 

そこでまたリサは泣いてしまう。

 

「私も…涙脆くなっちゃったなぁ…」

 

「りさちー…」

 

「今井さん…」

 

「ご、ごめんね…!やだなぁ私ったら!」

 

その時、コンコンと控えめなノックが聞こえ扉が開かれる

 

「失礼します…!」

 

「お邪魔します…!」

 

謎に緊張していた沙綾とつぐみだった。2人とも供えるものを持ち

 

「つぐみは…綺麗な花だね…!」

 

赤、青、緑、紫色の花がある束だった。

 

「山吹さんは…パン?」

 

「うん、お供え物とみんなの分。時間も時間だからね」

 

「ほんとだ…確かにお腹すいたかも!」

 

時刻は昼の12時、お昼時真っ最中だった

 

「このパン置いといたら復活したりしないかな…するわけないか…」

 

どこか寂しげに呟く沙綾の背中を見ながらパンを食べる。確かに美味しいはずなのに、どこか味気がない。

 

少しして皆食べ終わり、片付けて話をする。やはり話題というのは八意想のことばかりだった。

 

「不思議な人だよね!」

 

とか

 

「色々鈍感だったりしますよね…」

 

とか

 

まぁ本人が聴いていたら耳を潰したくなるようなことばかり話されていた。

 

 

_________________________

 

 

 

「そろそろ帰ろっか」

 

リサの言葉に紗夜が反応する。

 

「ですね…」

 

「今日は楽しかったね〜」

 

荷物をまとめて、お礼を言い弦巻家を出る。少しして近所の土手を歩いていると

 

「あついね〜、あっ!ちょうどいい所に木陰発見!」

 

「1回休憩しましょうか…」

 

木陰と言うよりかは橋の下だが…とつぐみは思ってしまったが…

 

「ねぇ…あれ…」

 

途端に顔を青くしたリサが指を指す。指を指した方向には…人が倒れていた。その後ろには…キノコの化け物がいた。

 

「ひっ…」

 

一斉に後ずさる、だが後ろにコケてしまった。後ろからパトカーの音がしてリサ立ちを庇うように止まる。数は3台。中から警察官が数人降りてきた

 

「大丈夫か!?君達!」

 

「えっ…はい…!」

 

「よかった、パトカーに隠れておきなさい。絶対に出ちゃだめだよ?」

 

「わかりました…!」

 

とりあえず指示に従いパトカーの後ろに隠れる。5人とも覗きをしていると

 

「ガス弾を持ってきました…!」

 

若い男性がシルバーのアタッシュケースからガス弾と呼ばれるものを取りだしライフルに入れる。その横にいた2人も同じ動作をする。

 

彼らの向こうでは、ガスマスクを付けた警官達が拳銃を撃っていたが…

 

「うそ…効いてないじゃん…」

 

効いてなどいなかった。キノコが口に指を当ててピンクの何かを放つとたちまち周りにいた2人が苦しみながら死んだ、5人とも、すぐさまそれが何かわかった。毒ガスだ。

 

「くそ…見てろよ…!」

 

3人がライフルを構え撃つ。流石といえばいいのか3人が放った弾は1発も外れることなく全て命中したのだ。

 

「すごい…」

 

つぐみがそんな声を漏らす。だが…

 

「そんな物、もう僕には効かない」

 

当たったガス弾と言うものは効いていなかった。

 

 

_________________________

 

 

『おい、終わったぞ』

 

俺は白い世界に立っていた。

 

「ありがとな、アマダム」

 

『やり終わってから言うのもなんだが…本当によかったのか?』

 

「ああ」

 

『女たちのためにカッコつけて、自ら人間を辞めるなんて…正気じゃない』

 

「もうアイツらと戦うって決めた時から正気じゃねぇよ…それにアイツらの夢を守ってやりたい、今の俺にはそれしかないんだ」

『ふっ…そうか、本当にお前はお人好しだな』

 

「うっせーよ」

 

俺の決意を汲み取ってくれたのか、アマダムは真剣な顔になって伝える

 

『毒は取り除いた、だが死んでから2日、相当体も衰弱してるだろう。リハビリはちゃんとしろ。飯も食え、分かったな?』

 

「分かったよ…」

 

『ほら、行け』

 

「ありがとうな」

 

世界は元に戻っていく…

 

 

 

黒服は、彼の身体を確認するために部屋に入ると…

 

「彼の身体が…緑に点滅している…?」

 

それはまるで、再生を始めたような、暖かな緑だった。その緑が消え…そして

 

「……あ…」

 

彼の口からそんな声が漏れた。さすがの黒服も驚いて数歩後ずさる。その間にも彼はベッドから起き上がろうとしていた。

 

「ただいま、黒服さん」

 

完璧に起き上がった八意想の目が開き、優しい眼差しでこちらを見てくる

 

黒服は今自分が目の前で起きてる現象に理解が追いつかなった。死んだ者が蘇るはずがない。そんな常識を覆されて…

 

「おかえりなさい…八意様…?」

 

だがいつもの癖で返してしまう。八意想は窓を見たと思うとベッドから飛び降りた。まだ怪しい足取りで歩く

 

「黒服さん!理由は後で説明します!」

 

そういうと彼は窓から落ちていった。慌てて黒服が窓から見ると

 

白の姿となった八意想が走っていった。まだ状況が理解できないが…自分達のヒーローは、戦士は、英雄は帰ってきたのだ

 

「おかえりなさいませ、八意様」

 

そう黒服は言った。

 

_________________________

 

 

 

 

お返しとばかりに口に指を当ててピンクのガスを放つ。また周りの警官がバタバタと倒れていく。3人は撃ちながら後ろにジリジリと下がる。だが…キノコの化け物は走ってきて警官を殴り倒していくのだ。3人も殴り飛ばされ後ろに転ける。そしてリサ達を含めた人を殺そうと口に指をあてて…

 

動きが止まりなぜかリサ達の後ろをみていた…そして…

 

「生きていたのか?クウガ?」

 

聞き覚えのあるフレーズ、みんなが後ろを振り向く。それと同時にジャンプしてキノコの化け物と一緒に倒れていく人物を見た。その正体は…

 

「あ…」

 

キノコの化け物を後ろを取り首を絞める人物は…

 

「八意…くん…」

 

 

 

 

5人とも、それぞれ涙がでてしまう。自分の好きな人が何らかの奇跡で戻ってきてくれたのだ

 

「2号か…!?」

 

「いえ、白い4号です…!」

 

警官達もようやくの登場におお…となっていた。一条悠介を除いて

 

 

 

 

周りに人がいた、リサにつぐみに沙綾に日菜に紗夜、そして一条さん。本当に危機一髪だったことを体感する。それと同時にアイツらには迷惑をかけたとも思う。謝るためにも、まずはこの化け物を倒さなければ

 

「はっ…!」

 

相手の腹に拳を1発入れる、後ろに下がる相手に蹴りを入れるが…

 

(やっぱりなまってる…)

 

それは沙綾でもつぐみでも分かるほどにかつての威力がなかった

 

「おらっ…!」

 

俺は相手の頭を掴みパトカーのガラスに思いっきりぶつける。ガシャーンという破砕音がし相手が怯んだかのように思えたが…相手は俺の腕をつかみ、隙だらけの胴に肘打ちをくりだす。

 

「ぐっ…!」

 

俺は後ろによろめいて倒れて転がる。

 

 

「おい…!援護しろ!」

 

我に返った警官たちが次々と援護射撃を撃ち込むが…やはり効いていなかった。鬱陶しそうに警官を殺そうとした奴の後ろにしがみつき、横に持っていく、

 

 

俺たち2人は土手を転がっていった。視界の端には川があった。目が回る。三半規管が刺激され嘔吐しそうになるが生憎出すものがない、身体が暑い、目が回る、気持ち悪い

 

(熱中症…か)

 

もう残された時間も少ないだろう、俺は立ち上がり走ってきた相手に自分もジャンプして顔面パンチをする。

 

「くっ…!」

 

相手は姿勢を崩し後ろに倒れ込み、俺は顔面から地面に倒れた。揺れる視界を何とか振り切り立ち上がる。

 

相手から数歩離れて腰を落として助走をつけて跳び上がり空中で一回転して相手にキックを命中させる。ようやく立ち上がった相手は大きく後ろに吹っ飛ばされる。

 

だが俺の放ったキックは、自らでも分かるほどに威力が無かった

 

「こんなもの…効かない」

 

相手が紋章を消した。

 

俺はもう1度、同じことをしてキックを決める。さっきよりも少し濃い紋章が浮かび上がるが…

 

「効くものか…!」

 

また紋章は消える

 

「はぁ…はぁ…」

 

 

もう一度決めるために両腕を開いて腰を落とした構えを取る。その時だった、足の部分が赤くなったのだ、八意想はそれに気づかない

 

 

敵に向かって走り出す。足の裏から炎が上がる。

 

ジャンプし空中回転する

 

「うぉりゃああああああ!!」

 

敵の身体を蹴り、膝をついて着地する。敵についていた紋章は、さっきよりも濃くなっていた。

 

「こんな………クウガァァァ!」

 

相手は爆発し、俺は何とか勝ったのだ…

 

「っ!」

 

途端、地面に倒れる。

 

「あっ!いた…!八意くん!」

 

「想くん!」

 

「わっ…熱中症かも…!」

 

次から次へと抱きついてくる影を振り払えず声を出す

 

「腹減った…喉乾いた…しんどいだるい…」

 

「声カッスカスですよ!?」

 

「これをどうぞ」

 

「ありがとうって…黒服さん!?いつの間に!?」

 

とりあえずリサは黒服から経口補水液を受け取りキャップを外し変身解除した八意想の口にねじ込む

 

「ごぼごが…!?」

 

「ちょっリサ先輩!死んじゃいますよ!」

 

「えっ…あっ…ごめん大丈夫!?」

 

「危うくリサに殺されるところだった。慌てすぎだ」

 

「喉ガラガラじゃん!余り喋らない方がいいって!」

 

「パン食べる?あまりもんだけど…」

 

「ごめん沙綾、それはキツい」

 

そんな会話を見守る黒服の顔は少しだけ、笑顔だった。

 

 

その一方でまた何かが始まる…

 

 

メ・ギノガ・デは死んでいなかった

 

爆死したメ・ギノガ・デの飛び散った肉片の内のひとつが川を渡り、復活を遂げようとしていた

 

 

 

 




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