笑顔をつくる物語   作:エヌラス

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( 'ω')


page50 アイサツ

「ギターむず…」

 

俺はギターをケースにしまいながら一言つぶやく。あれから一応警察署へ行き一条さんと会って剣のパーツを渡した。そこから家に帰り、早速ギターを始めたのはいいが…1時間で挫折。また紗夜か日菜辺りに教えてもらおうと思いつつ…

 

「タマ…?」

 

そう言えば、タマを見ていない気がする。俺は辺りを見回す。キッチンにも、トイレにも押し入れにもいない。

 

「まさか…外に出た…!?」

 

いやそんなはずは、鍵だってちゃんと閉めている。そんな事ないはずなのだ。

 

「…!」

 

俺は一応窓を見る。開いていたのだ。

 

「なんでだ…!」

 

俺は寒気を感じ、ベルトを出す。同時にゴウラムを呼び出して

 

「変身!」

 

近くにおいてあるホルスターから拳銃を乱暴に取りだしボウガンへと変えてゴウラムに捕まる。

 

夕方の通勤ラッシュの音に耳が痛くなる。街の喧騒が聞こえるが意識を集中させる。

 

(タマ…どこだ…!)

 

「いた…!」

 

その中に微かに聴こえたネコの鳴き声、タマの鳴き声で違いない。俺はゴウラムから降りてトライチェイサーに跨る。その上からゴウラムがくっついて…

 

「トライゴウラムでいいか、よし行くぞ!」

 

赤のクウガになり俺はアクセルを全開にして走り出したのだ。

 

 

_________________________

 

 

 

 

タマの元へ着いた。だがしかし

 

 

 

俺は視線を落とし下を見る

 

「タマ…?」

 

口からしわがれた声がでる。タマは残虐に…無慈悲に殺されていたのだ。死体は酷い状態で放置されている。

 

「おい…しっかりしろ…」

 

ふらついた足取りで近づく。そして手が触れかけたその時だった。

 

「…あ?」

 

俺の体を凄まじい衝撃が襲った。何者かに蹴られたのだ。俺は防御出来ずにボロきれのようにとび近くのコンクリの壁に穴を開けて止まった。

 

「ぐほっ…」

 

吐血して倒れる。俺はなんとか立ち上がり姿を見て…こいつがタマを殺したというのがすぐさま分かった。俺の心を黒い感情が支配する。だがもうひとつ、その姿を見て俺は戦慄した

 

「俺と同じ…クウガ…?」

 

俺の色は赤、だが相手の色は黒なのだ。目は紫色で右手には黒い剣を持っていた。先には血が着いている

 

「てめぇがタマを…!」

 

だがそんな事どうでもいい、今はこいつを殺す。タマの仇をうつんだ。

 

「うわぁぁぁァァァ!」

 

俺は絶叫しながら地面を蹴り相手との距離を詰めるが…

 

「…?」

 

俺の視界は横に傾いた。

 

「ぐっ…あああ!」

 

腹から血が流れる。赤のクウガの装甲をいとも容易く斬り裂いた。

 

「ふっ…久しぶりだな。挨拶がてらだったがやりすぎたか?」

 

立つ相手から出てきた声にあっけに取られる。いや、なぜだ、おかしい。だって、この声は、この感じは___

 

「なんで…クソ野郎が…」

 

「相変わらず可愛くない息子だぜ…っと…!」

 

「ぐふっ…!」

 

「ちゃんとしつけてやらないとな」

 

相手は笑いをこらえる声で件を逆手に持ち、俺を刺した。刺されたはずなのに痛みを感じない。否、それは目の前に起きてる衝撃の方が大きいからか。

 

「うおっ…!?」

 

「シッ…!」

 

俺から自分でも引く程の気合いとともに放たれたキックは相手の顔に直撃し、隙ができた。俺は後ろに転がり距離をとる。腹に刺さった剣を取ろうとするが貫通し、背中から突き出している剣はビクともしなかった。俺は諦めて相手を殺すために立ち上がったが…そこにはいなかった。

 

「どこだ!でてこい!」

 

あらん限りに叫ぶ。それに対し相手はまるで俺を嘲笑うかのような声で

 

『だから言ったろ、挨拶がてらだって。猫を殺した位でそんなにキレるなよ。またなぁ!』

 

と言った

 

 

 

 

「うぉぉぉぉぉああああああああぁぁぁ!」

 

地面に拳をぶつけ、俺は喉が切れんばかりに叫んだ。また守れなかったことに対する悔しさ。そして奴への怒り。

 

_________________________

 

 

 

 

「タマ…」

 

俺は白のクウガになった身体なんか気にせずに剣を引き抜いてタマに近寄った。抱き寄せても、なんの反応も起こさない。冷たくなったタマを抱き寄せて、俺は雨の降り始めた空を見て泣いた。

 

 

 

どれくらいがたっただろう。

 

 

 

あたりはすっかり暗くなり、周りの街灯が着き始めた時だ。傘を指した人が俺の前で止まった

 

 

「あれっ、想くんなにしてるのって何その傷!?」

 

リサだった。荷物にはベースを背負い、弦の入った袋をぶら下げていた

 

「リサ…」

 

「あっ!」

 

俺が腕に抱いてるタマに気がついたのだろう。

 

「タマちゃんじゃん、久しぶりだな〜!」

 

「タマは死んだ…」

 

「え…?」

 

「俺のクソ親父が…殺したんだ…助けられなかった…」

 

俺は腕の中で丸くなったタマをリサに見せる。

 

「そんな…」

 

リサが信じられないという表示を見せる。

 

「リサ…?」

 

リサの目から涙が出ていることに気づく

 

「アタシ…タマちゃんとはあまり一緒にいなかったけど…可愛かったのに…」

 

「もっと、会わせてやればよかったな…」

 

俺はそう言いながら立ち上がる。降りしきる豪雨が俺の体を冷やしていく、流れていく雨のように俺の何かが抜け落ちていく。そんな気さえした。

 

「想くん?」

 

「俺…帰るわ」

 

「え…でも」

 

「タマのことは心配すんな。お前だってあまりこんな所にいちゃダメだし第1雨も凄いからな。」

 

無理矢理作った笑顔でそう答える。

 

 

俺はそう言いながらリサから逃げるようにバイクに乗り走った

 

_________________________

 

 

「想くん…」

 

アタシは想くんが立ち去った場所に一人立っていた。タマちゃんの死は、想くんにとってそれ程のダメージがあったのだ。

 

「アタシで…元気づけてあげたいな…」

 

自然と口からそんな言葉が出て、慌てて辺りを見回す。幸いにも誰もいず、1人で安堵していた。

 

「早速…行ってみよう…!その前に荷物置いてからかな!想くんの好きな物…ってなんだっけ?」

 

リサは多い独り言を言いながら家へと足を向けた。

 

_________________________

 

 

「で…俺の家に来たと」

 

「えへへ…」

 

「びしょびしょじゃねえか、こんな雨の中来たのか?歩いて?」

 

「うん」

 

「はぁ…シャワー貸してやるから浴びろ。服は置いといてやるから、サイズあうかは知らんが」

 

そう言う彼の目は赤く腫れていた、きっと泣いたのだろう。

 

「ありがと!」

 

それに気付かないふりをしつつ、リサは家に入った。

 

 

________________________

 

 

「なにか温かいものを用意してやるか」

 

リサがシャワー室を使っている間、俺はふとそんなことを思いついた。とりあえず立ち上がりキッチンへ行く。いつもの癖か猫用のおやつを取りそうになり手を止める。行き場の無くなった手を下におろし、拳を固く握り締める。手のひらに血が滲むが気にしない

 

(アイツには…もう何も奪わせない…絶対に、殺してやる)

 

その目に宿るのは殺意のみだった。

 

 

「想…くん?どうしたのその手」

 

横からそんな声がして振り返ると、少しダボダボな服を着たリサがタオルを頭に乗せて立っていた。

 

「ああ、リサか」

 

「ねぇ…大丈夫なの?」

 

リサがこちらに近づいてきながら言う。その声は、不安にまみれていた。

 

「大丈夫、と言えば嘘になるかもな…」

 

初めて表してくれた彼の本音にリサは少しビクッとする。

 

「リサ…?」

 

リサはいつの間にか、抱きついていた。これで彼の傷が埋まるとは思えないが少しでも、ほんの少しでもという祈りにも似た思いを込めて

 

「やっぱり、辛いよね。アタシには大切な人を失うって言うのはあまりよく分からないけど…でも、我慢しなくていいんだよ?アタシにだけでも…頼ってくれていいんだよ?」

 

「リサ…」

 

「だってアタシは…想くんの事が好きなんだから…」

 

「…」

 

そこから少しして、想くんはぽつりぽつりと今思い出している過去について話してくれた。そして想くんは、ここの世界では生まれてないことも、私には信じられないものばかりだった

 

「そんな…」

 

 

彼から奥歯が軋む音がする。

 

「ここに来るなんて…思いもしなかった…また…守れなかった…!」

 

彼が悔しそうに拳を握りしめる。その手から血が滲み滴る。

 

「ううん、そんな事ない…!想くんは悪くない!」

 

「タマちゃんだって、そんなに悔しがらないでって、そう思ってるんじゃないかな…」

 

ありもしないことを淡々と言える自分に少し恐怖を覚える。

 

 

 

 

 

「リサ…」

 

リサはきっと、俺を元気づけようとしてくれているのだろう。

 

(そうなのかな…タマ…)

 

 

 

 

俺は心で聞いてみる。答える声なんて無いはずなのに…不意に世界が白くなる

 

『にゃーん、にゃーん!』

 

不意に、俺の耳に…タマの声が聞こえる。

 

「!」

 

『にゃにゃ!にゃにゃにゃ!にゃー!』

 

「何言ってんのかわかんねぇよ…」

 

必死に何かを訴えてるタマに向かって笑みをこぼす。

 

「でもお前がそんな元気なのに俺がこれじゃああれだな…よし!」

 

『にゃ…!?』

 

俺は自分の頬を思いっきりシバいた。かわいた音が響く

 

「よし…!タマ!見ててくれ…俺、頑張るから」

 

『にゃ!』

 

〜世界は元に戻る〜

 

 

「想くん?」

 

突然黙り込んだ彼を不思議におもい名前を呼ぶ。すると彼は顔を上げて

 

「…!」

 

彼の顔は、さっきとは打って変わって晴れ晴れとしていた。

 

「リサ、俺はもう大丈夫だ。ありがとう、猫にも元気づけられるとか人間として情けねぇな…本当に…!」

 

笑顔を作る彼、その笑顔には迷いは無い。

 

「まったく…」

 

「…?」

 

リサは立ち上がり

 

「猫に元気づけられるとか…おねーさん来た意味ないじゃん〜…!」

 

「いや、あるぞ。」

 

「え?」

 

直後、腹から絶叫が聞こえた

 

「リサが作ったご飯が食べたい」

 

「ふふっ…任せて!」

 

その後、冷蔵庫にある余り物を使い、リサは料理を振舞ったのだ。

 

 

 




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