ありふれていない兄は世界最強   作:じっぽるげんがー

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オルクス大迷宮

悠馬が玲奈と、ハジメが香織と話して各々が決意を新たにした翌朝。

まだ日が昇って間もない頃、悠馬達は【オルクス大迷宮】の正面入口がある広場に集まっていた。

誰もが少しばかりの緊張と未来への好奇心を表情に浮かべている中、二名───悠馬とハジメだけは違う表情を浮かべている。

悠馬は何回か行っている大迷宮に出てくる魔物の情報を頭に浮かべ、どのように処理をするか、どうすれば玲奈達が安全かを考えており真面目な表情。

ハジメは皆と同じように緊張と期待感を抱いているのだが、視線の先──【オルクス大迷宮】の入口を見て少し興が削がれているようだった。

 

【オルクス大迷宮】の入口はまるで博物館の入場ゲートのようでしっかりしており、尚且つ役所のような受付窓口まであるのである。

大迷宮に稼ぎにくる人が多いからか、広場には冒険者に客層を合わせた露店なども並んでおりお祭り騒ぎだ。

ハジメはおそらく、漫画やアニメなどで定番であるような灰暗く(ほのぐらく)不気味な洞窟を想像していたのであろう。実際初めて大迷宮に来た時の悠馬もそうだったので、ハジメに声をかける。

 

「その様子だと随分と予想外の入口だったみたいだな。まぁ気持ちは分かるけどな、俺も初めて来た時はそうだったし…」

「はは、まぁね。もうちょっと暗くて怪しい雰囲気だと思ってたよ………あれ?初めて来た時〜なんて、悠馬もここに来たのは初めてなんじゃ…」

「あ、あぁ!前衛組の一部は一回訓練の時間に来た時があるんだよ!」

 

口が滑ってしまったが、咄嗟に嘘をつく悠馬。ハジメは訓練の時間中、ほとんど図書館にいるのでこの嘘はバレない、完璧だ。と心の中で自分に拍手を送る悠馬。

 

「へぇ〜………ねぇ悠馬、悠馬が嘘ついてる時の癖って知ってる?」

「…ん?ど、どうしたんだよハジメ。そんなわかりやすいもんあるわk「手だよ」…………手?」

「そう、悠馬が嘘をつく時の癖。それは…右手をポケットの中に入れてハンカチを握る!」

「!?」

 

悠馬は咄嗟に右手をポケットから出す。が、時すでに遅し。

 

「今、嘘ついたよね悠馬……いや、昨日の白崎さんが来た時も、誰とも約束なんてしていないんだろう!!」

「!?!?」

 

バレバレである。悠馬は今この時まで自分の癖に気づかなかったが、悠馬の周りにいる親しい人は割と知っていることである。後日談となるのだが、玲奈にこのことを聞いた時は

「そんなの丸わかりだよ〜!雫ちゃんとかも気づいてるんじゃないかなぁ?」と笑いながら言われた。

 

「昨日は白崎さんがいたからツッコまなかったけどさ……もう一度聞くよ悠馬、どうして大迷宮の入口がこうなってるって知ってたのさ」

 

有無を言わさぬ圧力……いや悠馬だったら逃げようと思えば逃げれるのだが、悠馬はハジメならいいか……と思い話し始める。

 

「…この前……ハジメと一緒にメルドさんのところに話しに行った時にハジメが帰った後に言ったんだよ。メルドさんは一人で大迷宮どれくらいまで行けるのか、その半分まででいいから俺も行かせてくれってな…」

「えぇ!?メルド団長に!?…それで?どうだったの?」

「もちろん反対されたけど、まぁその後なんやかんやあってな。許可もらって……そっから夜中に一人で大迷宮に行ってた」

「まじですか……あ!僕の使った刀の消費が凄かったのも!?」

「正解、よくよく考えたら訓練だけであんなに消耗するわけないだろ?」

「…悠馬の化け物パワーならって思ってたけどたしかに…」

「ん?今なんて言った?ば、化け物パワー?ちょ、ハジメ?」

「あ、あはは……あ!ほら悠馬!集合だって!悠馬は前衛でしょ?早く行ってらっしゃい!」

 

ハジメにとっては丁度いいタイミングでメルドの集合がかかる。悠馬は前衛、ハジメは後衛なのでここで別れることとなる。

 

「……帰ったら聞かせてもらうからな」

「はは…お手柔らかに…」

 

ハジメにジト目を送りながらも前衛のいる先頭に向かう悠馬。

そして初めての──(悠馬以外にとって)大迷宮攻略が始まったのであった。

 

 

 

 

 

「よし、光輝たちが前に出ろ。他は下がれ!交代で前に出てもらうからな、準備しておけ!あれはラットマンという魔物だ。すばしっこいが、たいした敵じゃない。冷静に行け!」

 

その言葉通り、ラットマンと呼ばれた魔物が結構な速度で飛びかかってきた。ここは第一階層であり、初めての実践。多くのクラスメイトが緊張をしているが、悠馬は違う。大迷宮に入る度に相手にしてきたのだ。どのように攻めてくるかなど分かっている。が、これからどんどん強い敵が出てくると分かっていてるので経験をさせるために最初は光輝、龍太郎、雫に行かせる。

 

光輝は勇者らしい白の光を纏い、敵を数体まとめて葬りさり、龍太郎は空手部で天職が拳士であることから拳撃、脚撃で敵を倒していく。雫は剣士らしく抜刀術で一瞬のうちに敵を切り裂いていく。その動きは洗礼されていて、騎士団員の人達が感嘆をする程だ。

 

「「「暗き炎渦巻いて、敵の尽く焼き払わん、灰となり大地へ帰れ、″螺炎(らえん)″」」」

 

後衛で詠唱をしていた香織達魔法組の詠唱が完了し、螺旋状の渦巻く炎に数体のラットマンが飲み込まれていく。断末魔を上げながらラットマンたちは灰となり絶命した。

気が付くと周りにラットマンは居なくなっていた。

 

「おいおい、俺の出番なしか…さすが勇者達、火力が違うねぇ…」

 

前衛なのに出番がなかった悠馬。

前衛の幼馴染達に声をかける。

 

「お前ら強すぎだろ…俺の出番も残しといてくれよな…」

「ははっ、香織や雫を守るのは僕の役だからね。悠馬には渡さないよ?」

「正直さっきの魔物は弱すぎだぜ!悠馬の手を借りるまでもないな!」

「あんた達ねぇ…まぁでもたしかに。悠馬はあれぐらいじゃあ準備運動にすらならないんじゃない?」

 

光輝、龍太郎、雫の順で返してくる。

 

「…まぁ無事ならいいけどさ。次は俺に戦わせてくれよ?準備運動したいからな」

そう言いながら、魔物を肺にするというオーバーキルをした後衛組に言葉をかけているメルドに声をかける。

 

「メルドさん!さっき参加出来なかったので次の戦闘やってもいいですか!」

「悠馬か、わかった。次の戦闘に備えて準備しておけ」

「わかり……来たようですね」

「なに、魔物か?」

「はい、いち、に、さん……四体ですかね」

「よし、じゃあ前衛は悠馬と光k「行きます!!」っおい!?悠馬!?」

 

敵が見えた瞬間に帯刀してある刀に手を掛け、走る。

相手は自分と同じぐらいの二足歩行の牛……所謂ミノタウロスと言う奴だ。大きく、荒く削ってある大剣を手に持ちながら、歩いている。

ミノタウロス達はまだこちらに気づいておらず、完全に油断している。まず一体目──先頭を歩いているミノタウロスの腹を抜刀術で切り裂く。ミノタウロス達は何が起こったか理解をしていないのか崩れ落ちる仲間を見ているがその隙に1番後ろにいたミノタウロスの背後から首を切る。

 

皆の目の前十数メートルまで戻って、もう一度帯刀。

するとようやく何が起こったのか理解したのか二体のミノタウロスが剣を構えてこちらに走ってくる。一体は上段、もう一体は下段に構えている。

悠馬は息を吸い───吐く───

目を見開き、敵の動きを注視しながら駆け出す。最初に来るのは上段に構えている一体、悠馬の首元を狙いながら突撃してくるが、悠馬は上半身少し倒してそれを避ける。

──二体目。下段からの攻撃は避けづらいが、重力がかかる分威力が出ない。なので悠馬は力を込めて抜刀。相手の剣の腹に叩きつける。するとバキィッ!っと音がしてミノタウロスの剣が折れた。軌道を逸らすだけの予定だったがこれは好都合。一回転をして腹を切り裂く。

一体目のミノタウロスが振り向いてくる。仲間?が倒されたからか一瞬驚いたような表情。しかしすぐに怒ったような表情を悠馬に向け、雄叫びを上げる。そんなミノタウロスに対して悠馬は

 

「来いよ牛野郎……当てれるもんなら当ててみな…!」

 

と言い放つのだった。

 

 

 

 

 

「ふぅ………いい感じに身体温まったな……」

そう言って悠馬がミノタウロスを切ったのは残り一体になってから約五分後だった。あれから悠馬はミノタウロスが放つ剣撃を避けて、逸らして、時には弾いたのだ。毎日雫とこのウォーミングアップをしている悠馬だったが、いつも一緒に居ない中衛、後衛組は驚いていた。騎士団員達はいつものことだと苦笑いし、一部の男子からはリスペクトする目線が送られていた。

そして現在悠馬は…

 

「普段のウォーミングアップを実践でやる奴がおるか!この馬鹿野郎!」

「いでぇ!!」

 

とメルドに叱られていた。

 

「全く、確かにお前一人で十分倒せる相手だったかもしれんが…もしものことがあるかもしれんし、これはフォーメーションなどの練習でもあるんだ。あまり一人で突っ込みすぎるな……」

「はい、すみません…」

 

いつも一人で大迷宮に行っている時にやっていることをやってしまい怒られる悠馬。たしかにそういう練習でもあったな、と反省をする。しかし悠馬は顔を上げて…

 

「でもさでもさメルドさん、俺……強くなったでしょ?」

 

ニヤリと笑ってメルドを見る悠馬。

 

「次は………負けないよ?」

 

この男、悠馬は周りから大人っぽいと言われているが中身は負けず嫌い。何気に前回メルドに負けたことを悔しがっており、次は負けねぇぞ!と訓練しているのである。

 

この一言を聞いて、意味を理解したメルドはふっ、と笑って

 

「まだまだ若いもんに負けるつもりはねぇよ。ほれ、隊列に戻りな」

 

と悠馬を隊列に戻す。

 

「凄かったねー!」「いつもあんなことやってるのー!?」などとクラスメイトに迎えられながら、悠馬達は第二階層へと足を踏み入れるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 




ぜってぇ割と強そうなミノタウロスなんて第一階層に出ねぇだろ……などと書き終わってから思った作者です。どうも、対ありでした。
対ベヒモスまでに1話書きたいな、と思いオリジナルを入れたのですが、難産でした。誤字脱字報告、感想評価よろしくお願いします。
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