理由はハジメ視点の方が悠馬と出会った時のこととか書きやすいなと思ったからです。それでは、対よろです。
チュンチュン───
「…朝か……」
小鳥の鳴き声、カーテンから漏れでる光で目が覚める。
目覚まし時計を見るとどうやらアラームのなる40分前のようだ。少し前の自分だったら二度寝をしていただろう時間帯。しかし最近──ある友人の影響によってそんな生活は改善され、目覚めの良い睡眠を摂ることに成功している。
「んっ、んん〜………起きるかぁ」
軽く身体を伸ばし、布団から出る。
顔を洗うなどの毎朝行う動きをしていると段々と頭が覚醒してくる。
(時間もあるしちょっと工夫するか…)
最近楽しいと思えてきた料理を始める。学校で食べる弁当を作るためだ。昨日の晩御飯に余らせておいたおかずを入れ、切っておいた野菜や冷蔵のウインナーなども空いているスペースに入れていく。
「こんなもんかな」
できた弁当の蓋を閉め、弁当箱を袋の中に入れていく。
コップに牛乳を注ぎ、弁当を作るついでに作ったおかずを皿に盛り、炊飯器からご飯をよそう。
「いただきます」
数年前の自分からは考えられないようなきちんとした朝ごはん。
勿論母親が家にいる時には朝ごはんなどを作ってくれていたが両親は仕事で忙しく、あまり家にいることはない。そんな時の自分の朝ごはんは良くてトースト1枚。最悪10秒チャージできるゼリーなどだった。
ゆっくりとした朝食、なんとなくつけたテレビのニュースを見ながら食べ進めていく。
「ごちそうさまでした」
食器を洗い、歯を磨きながら今日ある授業、出された課題は終わってたか…などと考える。
歯を磨き終わると自分の部屋に戻り、まだ少し新しめの制服に袖を通す。鞄を持ち、忘れ物を軽く確認して、玄関へ。
玄関のドアを開けると、朝特有の匂い…この匂い嫌いじゃないな、なんて思いながら家に向かって
「いってきます」
家に誰もいないので返事は返ってこない。が、なんとなく1日頑張ろうという気持ちになる。
(いつも通り、平和だな)
と思いながら少年──南雲 ハジメは学校へ向かうのだった。
教室に入ると数人の男子から睨み─侮蔑の表情を向けられるが気にしないようにする。何人かのクラスメイトから挨拶されるのでそれを返しながら自席へ向かう。
すると1人の男──友人と目が合う。どうやら自分が教室に入ってきたところから見られていたようだ。
「おはよう。ハジメ、今日は早いな」
「おはよう悠馬…昨日の練習が厳しすぎて昨日は起きてられなかったんだよ…」
「ははっ、いいことじゃないか!じゃあ次からもあの練習量な!」
「げぇ……まぁ頑張るよ…」
軽いやり取りを友人の悠馬──不知火 悠馬と交わす。
(何度見ても、かっこいいな……)
闇を見ているかのような黒い髪、本人の心を具現化しているかのような、燃えるような赤い瞳、快活で何にも恐れなそうな表情を見て、僕はそう思ったのだった──
僕と悠馬が出会ったのは約2年前──中学2年生の時だった。
あの時の僕は……たしか次の日の朝ごはんを買うために商店街へ行った日だった。歩いていると揉めているのか何やら声が聞こえる。ちらりとそっちを見ると不良連中が小さな男の子とおばあさんを怒鳴り散らしていた。最初から見ていた訳ではなかったが、どうやら男の子が不良の一人とぶつかってしまい、手に持っていたたこやきをべっとりと付けてしまったようだ。不良はすごい剣幕で男の子とおばあさんにキレて、男の子はワンワン泣いておばあさんは怯えて縮こまってるしですごい状況だった。
周りの人はみんなそちらを向いているが誰も助けようとはしない。
自分も最初はスルーするつもりだった。しかしおばあさんがクリーニング代と思われるお札数枚を不良に渡すも不良連中は更に恫喝、おばあさんの財布に手をかけ───気づくと、自分の身体は動いていた。
ここで漫画やアニメの主人公だったらそのポテンシャルを生かし、格好よく助け出したであろう。しかしハジメは武道どころか運動すらしないただのひ弱な中学生。格好よく助けることなんて不可能だった。そんなこと頭ではわかっていても足は、身体は止まらない。おばあさんと不良の間に割り込み、全力で────
土下座をした。
怖かった。自分よりも体格がいい男、それも数人に囲まれ怒声を浴びる。しかしそれは最初だけだった。土下座をやめない僕に対し不良たちのすることはどんどんエスカレートしていった。飲み物をかけられ唾をかけられ───頭を踏まれた。その時の僕はただただ必死に謝った。何に対して謝っていたのかはわからないが、なにかをしていないと心が潰れそうだったのだ。
「ちょっと痛い目に遭わなきゃわかんないみてぇだなあ!」
不良の1人がそう言った。
殴られる?蹴られる?怖い、今すぐここから逃げ出したい──
そう思うが、身体は動かない。せめて痛みをこらえるために目を瞑り、歯を食いしばって────
痛みは────衝撃は、こなかった。
「さすがにお兄さんたちやりすぎなんじゃないの?俺も今来たとこだからどうしてこうなってんのかわかんないけど………」
恐る恐る顔を上げると一人の黒髪少年、歳は同じか、少し高いかぐらいだろうか。
「何があったにしても無防備な相手に蹴りはまずいでしょ…?さっきは止めただけだったけど、まだやるつもりなら……容赦はしないよ」
そんなことを言う黒髪少年を、何が起こったか瞬時に理解できなかった僕はボーッと見ていた。すると横からハンカチを出され
「大丈夫でしたか?これ、使ってください。兄が彼らを止めてますから。」
そう言ってハンカチを差し出してくれた黒髪の女の子。
兄──目の前の少年のことだろうか。確かによく見ると黒髪だけでなく眼……赤い瞳も同じだ。
「あ、あぁ、ありがとう………」
何が起こっているのかはまだ判断できていないがとりあえずハンカチを受け取る。しかし僕はハンカチを使わずに目の前の少年のことを注視していた。
不良の一人が少年に殴りかかる。が、少年は紙一重で躱して不良を横からそっと押す。それだけで簡単に不良は倒れてしまった。
攻防、しかも少年側からは手を出していない。力の差は歴然だった。
しかし頭に血が上っている不良たちはそんなことをまともに判断できずに──少年に飛びかかった。
2人がかりで飛びかかってきたり、死角……横からくる攻撃にも黒髪少年は対応し、攻撃をいなしていた。
さすがの不良たちも実力差を理解しだしたのかだんだんと殴り掛かるのをやめてきている。無事に解決したのか──そんなことを思ったその時だった。
「調子にのってんじゃねぇぞクソがぁあ!!!」
一人の、リーダー格と思われる不良が小さめの…果物ナイフのようなものを懐から出しながら発狂した。
「お兄ちゃん!!!」
隣で静観していた少年の妹と思われる女の子もさすがに声をあげる。
「へへっ……そこの女、お前の妹なのかあ?今だったらその妹を渡して土下座すれば許してやるぞぉ!?まぁ妹はどうなるかわかんねぇけどなあ!ヒャハハハ……ハ…?」
「あぁ?てめぇ今、なんて言った…?」
少年の、纏う空気が……変わった。
今まで圧倒的な力を見せてきた少年だが、彼からは殺気などの恐怖心をあおるものは何も感じなかった。
しかし今の彼は、目のハイライトが消え、すぐにでも目の前の人を皆殺しにするかのような殺気が溢れ出ている。
不良たちに囲まれているときの恐怖心なんて、お遊び──いや、それにすら及ばないぐらいの恐怖心が僕を襲う。
ナイフを持った不良もそれを感じ取ったのかジリジリと後ずさる。
「なあ…なんて言ったかって聞いてんだよ…」
少年もまた、1歩…また1歩と不良に近づいていく。
「ひ、ひぃいいい!!!!」
ナイフを落とし、涙目で逃げようとする不良。しかし─
「おい、逃げんじゃねぇよ……」
瞬間的に追いつき、不良の首根っこを掴んだ少年。
ギチ…ギチ……と音がするような力で不良を締め上げていく。
不良の顔がみるみる赤くなっていき、焦点が合わなく──
「お兄ちゃん、私は大丈夫だから。……やりすぎ」
妹が少年の腕に手を添え、そっとそう言う……すると少年の目のハイライトがだんだんと戻っていき───
「ん………ってやば!?やりすぎた!?」
「だからそう言ってるでしょう……」
先程の、普通の空気を纏う少年に変わった。
気絶している不良のことを「生きてますかー!!!」と言いながらぺちぺち頬を叩く少年。ただの気絶だと気づいたのか周りをキョロキョロしだして──目が合った。
少年は小走りでこちらへ向かってくる。そして座り込んだ僕と目線を合わせて
「大丈夫だった?怪我はない?」
と聞いてきたのだった。
商店街のど真ん中でこんなことをしていたため、終わってからすぐに警察がきた。
僕と少年、今回の事柄を見ていたという女子と一緒に事情聴取を受けたが、僕は完全な被害者。少年は正当防衛だとしてお咎めはなかった。
どうやら聞いていると目撃者の女子と少年は知り合いらしい。女子から話を聞いた少年が僕と不良の間に立って、僕を守ってくれたようだった。
そんなこんながあって僕たちは今、公園にいる。
さっきの一悶着で着いた汚れを落とすためだ。……まぁ少年は一切汚れておらず、後ろで僕を見ているだけなんだが。
とりあえず、大体の汚れを軽く落とし終わったので少年と向かい合う。少年の後ろにあるベンチには妹さんが座っていて、ハンカチを思い出す。が、まずは少年の方からだろう。
「あの、助けてくださりありがとうございました」
「はは、何回目だよそれ。もう3回ぐらい聞いたぞ?」
「あ、そ、そうでしたっけ……」
…やばい、会話が続かない。何を話したらいいのか、話題が見つからない…
「あ、あの!!!」
「はい?なんでしょう?」
「あの……どうして助けてくれたんですか…?」
疑問だった。あのまま僕が土下座をしていれば不良たちはそのうち飽きて、どこかへ行ってしまっただろう。
自分もそれまで耐えようと思っていたし、周りの人も少なからず思っていたに違いない、巻き込まれたくない──と。
だからなぜ、見ず知らずの人のために飛び込んできたのかが疑問だったのだ。
「なぜ助けたか……か…」
「はい。僕とあなたは他人でしょうし、その…巻き込まれると面倒くさかったでしょ?なんでかなって…」
「うーん……理由ねぇ、まぁいくつかあるけど大きかったのは…香織、あぁ、さっきの目撃者の女の子のことね。そいつに頼まれたからかな。」
少年が言うには目撃者──香織さんは最初の方からさっきの出来事を見ていたらしい。僕が飛び込んで行き、どうしようどうしようと考えているところに少年と妹さんが来て事情を話し……という感じだったらしい。だとしたら香織さんにも感謝を言うべきだったな…彼女はもう帰ってしまったらしい。
「それとあと一つ」
「…?」
「君がかっこいいと思ったからだよ」
「かっこ……いい……?」
「あぁ、実際には見ていないが君は泣いている子どもとおばあさんを助けるために不良たちに割って入って行ったんだろう?誰にでもできることじゃないよ。しかも暴力での解決ではなく、頭を下げるなんてね。」
何を言われたのかよく分からなかった。不良たちに、しかも商店街で土下座した僕のどこがかっこいいのだろうか?そんなことを言うならば、自分の実力で不良を圧倒した少年の方がかっこいいはずだ。
「いやいやいや!僕なんて力も何も無いだけで土下座しただけで……君の方がよっぽどすごいよ、ナイフを持った相手すら圧倒してさ…」
「ううん、そんなことないよ。たしかに力を持っている人の方がかっこいいと思う人もいるかもしれない。でもね、君みたいに誰かを助けるために身体を動かせる人の方が……僕は、いや僕達は何倍もかっこいいと思う。今日のヒーローは間違いなく、君だよ」
軽く微笑みながら僕を見る少年、そんな少年に僕は、自分が好きなアニメやゲームの主人公を重ね合わせた。
(かっこいい……僕も…こんな風になりたい…!)
自分のその想いは──止まらなかった。
「さて、そろそろ帰るk「あの!!!」お、おう、どうかしたかい?」
「僕を!!!あなたみたいに強くしてください!!!」
…言ってしまった。わかっている。こんなことを言うなんて中二病でみたいで、いたいことをしているって。でも僕はこうでもしないと、このままの自分で終わってしまう気がした。それが嫌だった。僕も、アニメの主人公にはなれなくても、強くなりたいって──
少年の顔を見る。明らかに困った顔だ。
(あぁ、やっぱりダメだったかな……)
それから数秒、少年は口を開き──
「うーん、自分が上に立つのって苦手だからさ、その、教えるっていうのはちょっと……」
「あ………はい、そうですよね!すみません無理を言っt「その代わり!!!」…え?」
「俺と友達になってくれないか?」
と、手を差し出してきた。
突然の友達発言により思考が止まるハジメ。それを見た少年は、
「師匠的な立場ではなく、友人として……俺と一緒にトレーニングするっていう提案なんだが…ダメかな?」
一瞬何が起こったのか分からなかったが、意味を理解して、急いで手をとる。
「こ、こちらから願いたいぐらいです!ありがとうございます!!!」
「いやいや!そんな頭なんて下げないでください!見た感じ歳が近そうなんですから!!!」
「あ!そ、そうですか?随分大人びてると思ってたんですが…」
「よく言われるけど、中学2年生です。そちらは?」
「えっ!奇遇ですね…その、僕と同い年です」
「本当ですか!……じゃあ、敬語は無しにしませんか?あまり得意ではなくて…」
「はい、じゃなくてうん、わかったよ。えっと…」
「どうした?」
「その、まだ名前聞いてなかったなって……」
「あ、そういえば……名前も聞いてなかったのに友達になったのか!はははっ!」
「普通逆だよね、あははは!」
お互い笑い合い、落ち着いてから
「俺は不知火 悠馬。悠馬って呼んでくれ」
「僕は南雲 ハジメ。南雲でもハジメでも、好きに呼んで」
2回目となる握手をしながら、彼らは──悠馬とハジメは、友達になるのであった。
出会いを書いたら予想よりも長くなっちゃいました。
ここでチラッと書きますが、ハジメが言っていた昨日の練習というのは悠馬と行っていたトレーニングのことです。わかりづらくて申し訳ありません。
筆者の中では学校が終わった夕方(悠馬が八重樫道場に行かない日など)や休日に悠馬がハジメの体力に合わせて走ったり、竹刀を振らせたり、みたいなイメージです。
本文だけでなく、後書きも長くなってしまいましたが今回も対ありでした。