ありふれていない兄は世界最強   作:じっぽるげんがー

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対よろです。



月下の約束

【オルクス大迷宮】

全百層からなる大迷宮の一つで、階層が深くなるにつれて強力な魔物が出現する。なので実力を測るのにちょうど良いと新兵や傭兵が訓練に訪れる場所だ。しかし、傭兵以外にも冒険者たちもこの大迷宮に挑む、それは何故か──答えは魔石だ。

魔石とは魔物を魔物たらしめる力の核だ。地上の魔物にもこの魔石はもちろんある。だが大迷宮の魔物の方が良質な魔石が手に入るらしい。魔石は強力な魔物であればあるほどより良質な、より大きい魔石が手に入る。日常生活用の魔道具や、軍事関係でも使われているのでとても需要があり、いい値段で売れる。なので命を落とすこともある大迷宮にこぞって人が、冒険者が集まるのだ。

 

そんな大迷宮に挑戦冒険者たちのための宿場町、【ホルアド】に悠馬たち一行は訪れていた。ハイリヒ王国の騎士団も新兵の訓練でよく利用するらしく、王国直営の宿屋があり、今日はそこに泊まる。

 

「はぁー………いよいよだな」

 

悠馬はそう言ってベッドに座る。今は完全に部屋着で半袖にハーフパンツ、それに薄めのの上着を着ている。

 

「そうだね…不安だけど、なんか少しワクワクするよ」

 

そう悠馬に返したのは同じく部屋着のハジメだ。

この宿屋では全員が最低でも二人部屋であり、悠馬はハジメと同室をする事にしたのだ。明日の最終確認、それに友人と一緒の方が落ち着ける。そう思っての同室だったのだが……

 

コンコン、と扉をノックする音が部屋に響く。

 

「南雲くん、起きてる?白崎です。ちょっと、いいかな?」

 

続けて聞こえる香織の声、ニコニコ……(いや、おそらくニヤニヤになっていたのだが)──しながらハジメに扉へ行くよう促す。

少し頬を赤くしてこちらを睨んでくるハジメだったが、香織を待たせる訳には行かないと思ったのか早足で扉を開けに向かう。

 

ガチャっと扉を開けた瞬間に「……なんでやねん」と聞こえてきたので興味本位で覗いて見ると、そこには──純白のネグリジェにカーディガンを羽織っただけの香織がいた。なかなかに攻めている格好だ。香織が狙った格好なのか、天然が発動しただけの格好なのかは分からないが、思春期真っ盛りの男子には少々刺激的な格好だ。

 

(面白いことになってきたなぁ…)

そう思っているうちにハジメと香織の話は進む。どうやら香織がハジメに話したかったらしい。ハジメがこれを否定するものなら俺が乱入してでも部屋に招こうとするが……どうやらその心配はなかったようだ。「………どうぞ」と部屋に招き入れる。

 

「こんばんは、悠馬くん。お邪魔するね?」

「おう、こんばんは香織。…んじゃあハジメ、俺ちょっと出かけるから」

 

そう言って立ち上がり、玄関に向かう俺。

そして「え!?」と言いながら俺の肩を掴むハジメ。

 

「ちょちょちょ、ちょっと待って悠馬!?なんで?なんで白崎さんと二人きりにしようとしてんの!?」

「いやだって、俺今から人と会う約束してたし…」

「えぇ!?そんなの聞いてないよ!?」

「そりゃそうだ。だって言ってないもん。じゃあな、行ってきます」

 

小声でそう話し、「そ、そんなぁ…」と言うハジメを背中に、扉を開ける俺。もちろん人と会う用事なんてない。二人きりにするためのでまかせである。

 

 

「うーん、これからどうすっかなぁ。一人で廊下にいる訳には行かんし………ん?玲奈?」

 

部屋の扉を閉めて廊下を歩きながらこれからどうするか悩んでいると向かい側から玲奈が歩いてきた。

 

「あ、お兄ちゃん!」

 

そう言って小走りでこちらに向かってくる玲奈。かわいい。

 

「どうしたんだ?どっかに用事か?」

「うん!お兄ちゃんの部屋に遊b…明日の話でもと思ってね」

「うーん、そっか。悪いな、今俺の部屋はハジメと香織が話してんだよ」

「そうなんだ…まぁ私はお兄ちゃんと話せればどこでもいいけど…私の部屋来る?」

「ばっかお前、女子の部屋に男子が入る訳には行かんだろ…それに相部屋の子もいるだろ…外で良くないか?」

「おっけー、じゃあ行こっか」

 

そう言って二人で外に向かう。

外に出ると、ここら辺は町の中心部から少し外れているのか人通りが少ない。辺りを見渡すと噴水があり、そこにベンチがあったので二人でそこに腰掛ける。

 

「宿の中はそうでもなかったけど、外は少し寒いね〜……ッシュン!」

「あ〜あぁそんな薄着だからだぞ……ほれ、これ着ろよ」

 

くしゃみをした玲奈にやれやれと上着を貸す。

 

「…いいの?お兄ちゃん寒くない?」

「全然寒くないよ。というかもし寒かったとしても妹が寒そうにしてるのにそのままになんてできないよ」

 

「全く、シスコンだなぁ」と言いながら俺の上着を着る玲奈。すると

 

「すんすん…………えへへ、お兄ちゃんの匂いだぁ」

 

と呟いた。

 

「!?……ぐはあっ!?っはぁ!!はあ……な、なんて威力だ!?」

「ちょ!?お兄ちゃん!?急にどうしたの!?」

「(こいつ…無意識、だと…!?)…い、いや、なんでもないよ?それで?話ってなんだい?」

 

乱れる息を整えながら、話し方がおかしくなりながらも話を聞こうと尋ねる悠馬。

 

「う、うん。それなんだけどね。ほら、この前みんなで戦争に参加するって時にも行ったんだけどさ?ほら、ちょっと怖いっていうか……その、特にお兄ちゃん……あと雫ちゃんたちは前衛じゃない?だから、後衛の私とか、中衛の人達よりもずっと危険な訳で、その………」

 

少し早口でそう言う玲奈。

 

「…あぁ、たしかに俺とか雫たちは前衛だから危険だろうな。でも俺は、それでもお前らを守るために参加しない訳には」

「そうじゃないの!!……ううん、本当はそうして欲しいよ?でも、お兄ちゃんが私とか雫ちゃんに戦わせてそんな事しないのは分かってる。……だから、あのね…」

 

そう言って右手を目の前に差し出してくる。その手に握られていたのは…

 

「……ネックレス?」

「その、さっきこの町のお店で見つけて……」

「…くれるのか?」

「うん……お守り。絶対に無事でいるっていう…約束」

「…!………あぁ、約束だ。俺は無傷で、お前を守るよ」

 

そう言うと、玲奈が俺にネックレスを付けてくれる。銀色のチェーン、そして正面には青と赤の石が取り付けられている。

 

「その、さ。俺からも渡したいもんがあって……」

 

そう言って、悠馬は胸ポケットからアクセサリー……玲奈がくれたのと同じように、ネックレスを出す。

 

「この前ハジメに頼んだんだ。お守りというか…プレゼントを作ってくれって言って」

「……綺麗…」

 

そう言う玲奈の首に、ネックレスを付ける悠馬。

金色のチェーンに正面には赤と黒……悠馬の魔力の色と同じ色だ。

ハジメが言うには、魔力を溜め込む習性のある鉱石を使用したらしい。そこに悠馬の魔力を注ぎ込んだため、この色なのだ。

 

「この鉱石にはな、俺の魔力が注ぎ込んである。だから…ずっと一緒だ。違うところに遠征とかに行くことになっても、俺はお前を守ってるよ」

 

そう言って、玲奈に微笑みかける悠馬。

玲奈は一瞬恥ずかしそうに…頬を染めてしたを向く。しかしすぐに顔を上げて──微笑んだ。

 

手を繋ぎ、宿屋に戻る二人。

その二人の胸にあるネックレスの宝石が、月の光を反射して美しく…光るのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




対ありでした。
オリジナルの話を書くと字数全然進まないし時間かかりますね。これ書き始めてから、より一層白米先生始めとする本を書いてらっしゃる先生をリスペクトするようになりました。
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