2度目の人生の目的はパパ活です   作:粗茶Returnees

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 感想、評価、お気に入り登録、ここすき、ありがとうございます。まじで嬉しいのです。色のシーソーゲーム。


藤原萌葉は合わせたい

 

 眠りの海から浮上する。目を覚ますも体が動かない。これが伝説の金縛りだろうか。まさかこの家に霊がいたのか。これは萌葉に話したら喜びそうな話題だ。姉に話したら冷静にあしらわれそうな話でもある。妹はどうだろう。いつもにこにこと会話してくれるが、こういった話題は少なかったはずだ。心霊体験の番組とかも小野寺家は見ない。母と姉が白けて変えてしまうからだ。

 

「お兄ちゃん起きた~?」

 

 聞こえてくる妹の声。絶賛金縛り中の兄の部屋に入ってきては危険ではなかろうか。しかしどう伝えたらいいのか、金縛りに遭っていると言えば、逆に心配して中に入ってきかねない。

 陽は寝起きの頭を回転させて考える。今日は寝起きがいいほうだ。結構頭がスッキリしていて思考できる。

 

「お兄ちゃーん」

 

 返事がなかったせいでもう一度呼びかけてくる妹の声。何か返事をしなくては。そう考えたところで、陽はふと気づいた。妹の声が思ってるより近い場所から発せられている。具体的には斜め上。さらに細かく言えば、()()()()()()

 横に向いていた視界を正面に戻し、首を少し上げてみるとそこには鬼の面が。

 

「うわぁぁっ!?」

「あはははは! お兄ちゃんびっくりし過ぎ~!」

「そりゃ驚くわ! 起きたら体が動かないし目の前には鬼がいるし!」

「ぶー。妹を鬼って言うのは酷いなー」

「ならその面を外せ」

 

 リアクションが見れて満足したようで、おとなしく鬼の面を外す。その面の下からはサングラスをかけた妹が現れた。

 

「おはようございます。寝起きドッキリです」

「心臓に悪いからやめてくれ、あと上から降りてくれ」

「はーい。うんしょっと。話題ができてよかったね!」

 

 目が覚めたら妹が上に乗っていた。そう話せば阿天坊が怒り狂うことだろう。しかし事実は異なり、目が覚めたら金縛り。腹の上には鬼がいた。その中からグラサンかけた妹が現れたである。これには誰も羨まないか。

 妹と言えば、圭も萌葉も妹だ。あの2人はこんな事をするだろうか。しないだろう。特に圭は絶対にしない。もしそれをしていたら、秀知院学園の男子たちは解釈違いで飛び降りかねない。せめて圭が「こんにち殺法返し」をする人間だと知っていれば変わるのだろうが。

 萌葉なら可能性が捨てきれない。結構ノリノリでやりそうだ。

 

(あれ? もしかして()と藤原さんって気が合う? 危険な匂いしかしないけど)

 

 できれば会わせないようにしようと思った。好きな人を家族に知られたくないという思いもあったりする。恥ずかしいから。

 

「陽起きてる?」

「起きてるよ姉さん。どしたの?」

 

 横になっていた体を起こし、妹と並んでベッドに腰掛ける。部屋のドアが開いて姉の麗が中に入り、妹がいることに一瞬だけ眉を顰めた。麗はすでに制服に着替えており、ギャルではあるがしっかりものだ。というか、ギャル=だらしないというイメージが事実とは異なるだけだ。

 

「夏休みなんだけど、父さんがほぼ日本にいるって」

「ならキャンプでもすっかなー!」

「いいね! 私も行く~!」

「いや流石に小中学生だけじゃ無理でしょ」

「なんかキャンプの企画あるんじゃなかった? 同意書は母さんに書いてもらうとして、でも夏休み丸々はまずないか……」

「どっかのホテルで連泊とかする? 家にいる気ないんでしょ?」

「まぁね。どうするかはもう少し考えるよ。何か他にいい案があるかもしれないし」

 

 たとえどれだけ富裕層であったてしても、義務教育中であればゴリ押しが効かない。親の同意書は必要になる。高校生になっても、基本的には必要だ。そのホテルを親の会社が買収してるとかなら、話が変わってくるのだろうが。

 今年の夏をどう過ごすか。陽はぼんやりと悩んだ。彼にとってはそんなに深刻な問題でもないから。

 

 

 

 テスト期間も無事に終わり、教師たちにとって超忙しい採点ラッシュも終わる。返された自分の答案を見るのもいいが、手っ取り早く知る方法がある。廊下に貼りだされる上位者の発表だ。

 自分の順位を確認する者。自身は関係なくそれを見て楽しむ者。友人の名前を見て感心する者。自分のことを二の次にする人の方が多いのはいかがなものか。

 

「会長おはよう」

「おはよう白銀さん。今回も1位みたいだけど、阿天坊に教えながらのこれは凄いな」

「阿天坊くんの飲み込みがよかったから」

「やればできるけどやらないタイプだったな」

「会長と萌葉は……前回と同じなんだ」

「うん。てかよく覚えてたな」

「ぇ……ほら、同じ生徒会だから」

 

 周りのことを気にかける。真面目で優しい彼女らしい理由だなと陽は思った。陽が萌葉の順位を覚えている理由とは全然違った。圭は言わずもがな。いつものことだから覚えやすい。萌葉の場合、陽と同じく毎度変動する。それでも陽が覚えているのは、萌葉の順位だからだ。念の為、聞かれたら圭と同じ理由にしようと決めておく。

 

「2人ともおはよ~」

「おはよう萌葉」

「私の順位は~っと、前と同じかー。会長と圭ちゃんも変わってないし、面白みナッシングだね」

「変わってるのは点数ぐらいだしな」

「そうだね。みんなちょっと落ち……圭ちゃんなんで上がってるの?」

 

 信じられないものを見るような目で萌葉が圭に問い詰める。今回は全員等しく阿天坊に時間を割いた。いつもより勉強時間は短い。そのために萌葉と陽は順位こそ変わらないものの、前回より点数が落ちている。それにも拘わらず、圭だけが点数を伸ばしていた。

 これには陽もびっくり。さすがに点数までは覚えていないものの、萌葉がそう言うのなら上がっているのだろうと信じる。

 2人の視線が注がれ、圭は困ったように口を開いた。特別なことは何もしていないのだ。

 

「阿天坊くんに教えてたら時間減るでしょ?」

「そうだね」

「だから、残り時間を有効活用しようと思ったらいつもより集中できて頭に入ってきた」

「化物かな?」

 

 親友に化物呼びされたことに圭が機嫌を損ねる。陽と2人でなんとか宥めながら、話を阿天坊のことに変えた。どれだけ点数を伸ばせたのかをみんなで予想。平均くらいにはなっていたらいいなと口々に言っていると、件の阿天坊が駆け込んできた。

 

「廊下を走っちゃ駄目! 阿天坊くん、めっ!」

おぎゃりそう。じゃなかった。助けてください会長!」

 

 またもや圭ママが登場。今のは圭が悪い。

 

「どしたよ」

「カンニング疑われてるんですよ僕!」

「なんで?」

 

 どうしてそうなったのかと3人とも首を傾げ、騒ぎを聞いた2年生たちにもざわざわと話が広がっていく。こういう広がり方をすると、疑惑から決め付けに変わりかねないため、陽はこの場で聞くべきじゃなかったと反省する。

 しかしここで場所を移すと逆効果だ。鎮火は早い方がいい。阿天坊に話を促した。

 

「先輩らに勉強見てもらって、家でも勉強したんすよ。アニメ見るの我慢して!」

「阿天坊にしては偉いな」

「そしたら50位になったんですよ」

「上がり方パネェ」

「それでカンニングを疑われたんだ?」

「そうなんですよ。してないのに!」

 

 アニメ鑑賞を我慢し、ラノベもゲームも我慢して勉強した。短冊にあれを書かれてしまったから、「やってやろうじゃぇか!!」って奮起したのである。その結果まさかの50位。圭がさっき言ったように、飲み込みはいいのだ。授業中に二次元作品の考察さえしていなければ、普段から成績はいいのだ。

 今回はそれが遺憾なく発揮されたのである。そうだというのに、ありもしない罪を被せられかけている。これには苛立ちを覚えるし、協力してくれた陽たちへの侮辱にもなる。しかし変に話を拗らせるのは良くないとその場では我慢し、急いでここまで来たのだ。

 

「会長たちのお時間ももらって……なのにそれをカンニングだって言われて……!」

 

 悔しそうに拳に力が込められる。悔しさと怒りに震える阿天坊の肩に、陽はポンと手を置いた。

 

「今回のこれじゃあ黙らせるのは難しい。だから、2学期でも結果を出せ」

 

 下手な慰めなんてしない。同情する余地はあるが、それもしない。陽がやるのは、その次はどうするかという提示だ。

 

「けど会長!」

「お前のその悔しさも怒りも尤もだ。完全に消すのは無理だが、疑いを減らすのは任せろ」

 

 阿天坊の担任がやってきた。陽が阿天坊と担任の間に入る。

 

「先生はどっちですか? 疑ってますか? 信じてますか?」

「信じているとも。放課後に残って勉強していたことも知っている。何より生徒会に頼んだのは私なのだから」

「それはよかった。で、他の先生方で疑っている方は?」

「残念なことに、何人かはいる」

「その全員を職員室に集めてください。お話をさせてもらいます」

 

 圭と萌葉はぼそりと呟く。「会長怒ってるね」と。それが聞こえた何人かの2年生は教師陣に合掌するのだった。実際には、1年生たちにも話をしに行ったのだが。

 

 結果的に言って、疑いを完全に晴らせるわけではなかった。ただ、疑いの目を確実に減らすことはできた。やり方は単純で、その場で抜き打ちテストをしたのである。一問一答形式で、範囲はもちろん今回のテスト範囲。阿天坊が職員室と教室でそれをやり、正解したことで火は小さくなった。

 それでも疑いたい人は疑い続けるわけで、それに関しては今後のテストの結果で示していくしかないのだ。

 

「あーあー。ついて行きたかったなー」

「遊びではないけどな」

「わかってるよもちろん」

 

 テストも終われば授業もない。答案返却とHRで終わり、学校は午前だけで終了。陽たちは生徒会室のソファに腰掛け、向かい合いながらお弁当を食べている。口の中にあるものを飲み込んでから、萌葉は今朝のことを口にした。圭と萌葉は同行していなかったのだ。

 

「あーいう会長ってなかなか見れないから」

「怒るのとか疲れるし」

「会長って人の為に怒るじゃん? そういうとこ好きなんだよね。カッコイイし」

「ゔぇっ!?」

「どうしたの萌葉? 変な薬盛られてた?」

「私はいつも素直だと思うんだけどな」

 

 褒め殺しにより陽がノックアウト。全然褒めちぎられてるわけでもないが、好きとカッコイイで耐久値はゼロになった。背凭れに体を預けて天井を見上げる。

 

「普段とは全然違うし、そのギャップもいいんだよね」

 

 まさかの死体蹴り。陽は昇天し魂が身体から抜けていく。阿天坊がそれを身体に入れ直した。危機一髪である。

 

「話変わりますけど、女子って弁当箱小さいですよね」

「胃も小さいからね」

「それで足りるのって男子からすると不思議っすわ」

「栄養を効率よく摂取してるんだよ」

「そんな馬鹿な~」

 

 とか言っておくが、萌葉が言うと妙な説得力がある。なんでだろうと考えていると、逝きかけた陽が復活して会話に参加する。一応話は聞いていたらしい。あの状態でも聞けるとはさすが会長だ。

 

「藤原さんの場合効率よく胸に行ってそうだな」

「あーなるほど」

 

 モヤモヤと悩んでいた正体がわかってスッキリする。その少ない量でそれだけの栄養を摂取できているとなれば、よっぽどの変換効率である。長生きしそうだ。

 萌葉なら最年長記録を更新するんじゃないかと男子でわいわい話し、その間に萌葉が圭にハリセンを渡す。藤原印のハリセンだ。大変性能がいいことは製作者である千花によって確認されている。

 

「会長」

「どうしたの白銀さあ゙ぅっ!」

「いい音しますね~」

 

 圭によるハリセンフルスイング。連続でビシバシと右へ左へと叩かれる。耳には当たらないように注意して叩いているところに、圭の優しさが出ていた。

 

「あ、そのおかず頂戴」

「じゃあ交換で」

 

 部屋に響くハリセンの音をBGM代わりに阿天坊と萌葉は食事を再開。おかず交換を始めた。萌葉とのおかず交換をしていることに、叩かれながらも陽は嫉妬して阿天坊の足を踏んだ。ハオが見たらちっちゃい男と言うだろう。

 

「はぁ、はぁ……。会長、セクハラ発言でしたよ」

「以後気をつけます」

「はぁっ、腕疲れたー」

 

 ハリセンを萌葉に返し、元いた場所に戻って休憩。結構叩いていたせいで腕を動かすのもしばらく億劫だ。まだ食事中なのに。

 

「はい圭ちゃんあーん」

「なんで?」

「腕疲れてるんでしょ? あーん」

「しなくていいって」

 

 萌葉に食べさせられることを遠慮する。理由は簡単で、陽と阿天坊が目の前にいるからだ。男子に見られている状態でそれはできない。見られてなくても遠慮したいぐらいなのに。

 もちろん萌葉の気遣いは嬉しい。遊び要素があるのはわかっているが、気遣いも含まれていることもわかっている。それ自体はありがたいのだが、今回は遠慮したかった。陽はあまり気にした様子もなく、仲良しだなー程度に自分の食事を再開。けれど阿天坊はじっと見てた。「百合展開やで」とか言いながら見てた。百合ではない。

 

「ほらほら圭ちゃん。遠慮しないで」

「いいってば」

「頑固だなー。じゃあ会長よろしくー」

「ん? ああ、はいはい」

「なんで引き受けるの!?」

 

 圭の腕が疲れる原因になってしまったからである。

 陽は圭の弁当へと箸を伸ばし、おかずを1つ挟んで圭の口に近づける。圭はわかりやすく混乱し、目を泳がせながら耳を赤くしていく。その耳は髪に隠れていて見えないが。

 

「ほらあーん」

「な、なんで会長は抵抗ないの?」

「妹が風邪引いた時とかよくやるし」

「妹!? 会長の妹さんはどんな人なんですか!?」

「あとで写真見せる」

 

 阿天坊にとって重要なのはちっぱいか否かなのだが、それはあまりにも失礼なことだと自覚しているため明言しない。あくまで見てみたい程度のニュアンスに留める。

 

「ほら、白銀さんあーん」

「ぅぅ……かいちょうのばか」

 

 観念して小さく口を開く。小鳥のようなかわいらしい口におかずが運ばれ、圭は視線を下げながら咀嚼して飲み込んだ。

 

「お味は?」

「……わかんない」

「圭ちゃんの自作だもんね」

「あ、そうなの? すごいな」

「これぐらい当たり前だし」

「いやいや。俺はすごい事だと思うな」

「ぇ…………、ありがと」

 

 圭にとっての普通が、他人にとっての普通とは限らない。陽にとってはそれがすごい事で、賞賛するに値することなのだ。

 

「かいちょー。私にも食べさせて~」

「Why?」

「面白そうだから」

「まぁいいけど」

 

 圭の時よりも気恥ずかしさが増していく。無心になることを意識しながら、萌葉のおかずを取り、それを彼女の口へと運ぶ。無心になろうとしているのに、その柔らかな唇に目が行ってしまうのは仕方ないだろう。

 

「ん~。これで圭ちゃんと会長と間接キスだね」

「え゙っ!」

「ゲホッゲホッ……! も、萌葉!!」

 

 圭が赤面しながら咽せ、陽が衝撃のあまり石化した。その光景を見ていた阿天坊は、巻き込まれなくてよかったと安堵しながら弁当を食べ終える。

 

 それからなんやかんやで全員が弁当を食べ終わり、話は直近に迫った夏休みのことに移る。

 

「夏休みの予定ですか。アニメ三昧映画三昧ですよ」

「相変わらずだな」

「アニソン界最大のライブにも行きますけどね! 全通で!」

「電通?」

「全通。3日間あるんですけど、全部当選しました」

 

 阿天坊は想像からずれることのない夏休みを過ごすことになりそうだ。コロナの影響による延期もない。大変盛り上がることだろう。阿天坊はすでにお祭り気分のようだ。

 

「藤原さんは?」

「うちは海外旅行だね。毎年のことだけど」

「じゃあ藤原先輩抜きで花火大会行きましょ」

「目の前でハブらないでよ!」

「じゃあ8月20日予定空いてるんですか?」

「……トマト祭り行ってます。でもやだやだ! みんなとも花火行きたい!」

「物理的に無理があるだろ」

 

 スペインと日本じゃ離れすぎている。どう足掻いても不可能だ。

 

「あっ! お金出すからみんなスペイン来て!」

「家族旅行に同伴しろと!?」

「私パスポートないし」

「パスポートは今からでも間に合うから! そのお金も出すから!」

「いやいやいやいや」

 

 家族旅行であり、父親の性格を考えれば1人日本に残ることはできない。しかしこれでは花火大会に行けない。どっちも行きたい萌葉なのだが、これは実質的に家族旅行一択なのである。本人の気持ちは関係なく。

 陽や圭にもそれを残念に思う気持ちがあるにはあるが、それだけ旅行行ってるのに欲張りだなという気持ちもある。この2人に旅行の予定などない。というか夏休みにこれといった予定がない。阿天坊が言う花火大会くらいだ。

 

「私は夏休み特に予定ないし、暑いからあんまり外出たくない。日焼けとか嫌だし」

「圭ちゃん夏嫌い過ぎてない? 8月誕生日なのに」

「そうだったんですか? ちなみに何日ですか?」

「暑いから嫌なだけ。季節は好きだよ。誕生日は8月1日」

「じゃあその日に何かプレゼント送りますね」

「別にいいのに……」

 

 送られてしまえば受け取るしかない。阿天坊のことだから本当に何か送ってくることは予想できた。涼めるような何かだろうというところまで。

 

「会長の予定は?」

「キャンプでもしようかなって悩んでる」

「川の近くにテント建てたらだめだよ? 増水したら流されるから。それと虫にも気をつけて、火を扱う時はくれぐれも注意してね」

「圭ちゃん心配し過ぎ」

「決まったわけでもないし、どうしようか悩みっぱなしだよ。キャンプもできれば長い期間やりたいし、そういうイベントないかなーって」

 

 何か心当たりはあるかと聞いてみたものの、誰も心当たりはなかった。そもそもアウトドアな人間がこの場にいない。当然の結果である。

 誰かそういう情報を持っている人、あるいはその人とのパイプ役になれる人はいないか探してみる。連絡先の一覧を適当に流し見していき、可能性がありそうな人を見つけて電話。すぐに出てくれた。前に会った時に連絡先を交換しておいて正解だった。

 

「どしたしー」

「ちょっと相談があるんですけど、長い期間キャンプするようなイベントに心当たりあります? もしくはそれを知ってそうな人を知ってます?」

「なんか後輩に便利に扱われてる気がする」

「頼りにしてると言うんですよ」

「あはっ、ものは言いようだね。んー、でも心当たりはないかな。ウチ男子とはそこまで関わりないし」

「えっ遊んでそうな見た目してるのに。初心(うぶ)なんですね」

「あはは、久々にキレちゃったよ」

 

 ギャルなのに交友関係少ないな、姉とは大違いだと思い、姉に聞けばよかったと今更気づく。しかし、極力姉には迷惑をかけたくなかった。何とも思ってなさそうではあるが、気苦労を増やしたくはない。

 

「まぁでも、()()()()()()()()()()()()()()()()()

「え?」

「ちょっと待ってね。どうにかできるかもしれないから」

 

 スマホのマイク部分を手で押さえているのか、向こうの声がこもって聞こえる。微かな音量と部分的に聞こえる言葉を拾っていく。

 どうやらどうにかなるらしい。陽は電話を切り、なんか面白い夏休みになりそうだということだけ生徒会メンバーに伝えた。本当に面白いかは、実感しないことにはわからないのだから。

 

(かぐや様って聞こえた気がしたんだけど……まさかねぇ?)

 

 

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