カブキャン△   作:塩麹弁当

3 / 4
主人公たちの名前を今回で決めました。
主人公:小牧 安(こまき やす)
姉:尊(みこと)
妹:雪(ゆき)

よろしくお願いします。

※この話投稿した時の名字を銀にしてましたが、小牧に変更しました。
みんなの名字って地名由来なんだから地名から取ればいいじゃんと思って、愛知の犬山市の隣の小牧市から取りました。


ふもとキャンプ場2

 夜。俺は少しの寝苦しさから目を覚ます。なんか顔が柔らかい何かに圧迫されているせいだ。多分ベタな展開だとあおいの胸なんだろうな、と思いつつ目を開ける。

 

 やっぱりあおいだった。寝袋から上半身を出したあおいが首に両腕を回し抱きついている。寒いから抱きついてきてるんだろう。胸がぶるぶる震えている。なら寝袋にちゃんと入って寝たほうがいい気がするが、こう寒いと体温の方が暖かいのかもしれない。

 

 そう考え、俺は持ってきていた毛布を俺とあおいの上に掛け、俺自身も寝袋から上半身を放り投げあおいとくっつくように横になる。寒さで震えるあおいを自分の胸に抱き抱えるようにして、少しでも暖かいようにしてやる。こうする事で俺もあおいも暖かいというWIN-WINの関係だ。

 しかし、そうすると今度は腹のあたりに柔らかい感触がしてくる。正直ちょっと思うところはあるが、あおいの体の震えも止まったしまあこれで良かっただろう。

 俺はあおいの体温を体で感じながら、再度眠りに入った。

 

 

 △△△△△△△

 

 

 テントの外から鳥の鳴き声が聞こえる。

 目は開けていないが意識が浮上してきた所で、俺は今が朝だと気付いた。やけに腹のあたりが柔らかいなと思い、そういえば夜にあおいを胸に抱いた事を思い出す。とりあえず今の時間を確認するために時計を見ようと思い目を開ける。

 

「携帯……どこやったっけな……」

 

 携帯を探すために手だけを動かしてゴソゴソしていると、動いた所為なのかあおいも目を覚ました。

 

「んぅ〜……なんか……すごいあったかいなぁ……」

「やっぱ体温が一番なのかな」

「ん……?」

 

 あおいがハッとした様子で目を開ける。

 

「なっ……なななんでこんなに密着してんの……?」

「あおいが最初に密着してきて、まぁ後は流れで……? でも、暖かかっただろ?」

「いや確かに夜すごいあったかいなぁとは思ったけど、まさかこんな状態やったなんて……」

 

 あおいはやけに赤い顔で、しかしまんざらでもなさそうな顔で言う。こういうのは乙女的にダメだったのだろうか。

 

「こういうの嫌だったら今後しないが」

「い、いや! 別に嫌じゃない! むしろ嬉しいというかなんというか……

「ふーむ。まあ嫌じゃないならいいが……」

 

 小声で言った言葉は今回は無視してあげよう。そういえば、携帯を探している途中だったが、あおいも目覚めたのならばもう寝袋から出るか。

 

「さて、そろそろ起きるぞ。朝食作ろうぜ」

「あっ……。うん」

 

 俺が離れた事で暖かさが消えたのが嫌なのか、悲しげな声を上げる。あおいはどこか名残惜しげに起き上がり、寝袋から這い出る。

 

「いま何時なん?」

「7時だな。姉さんが10時に迎えにくるから、それまで飯食ったり撤収準備したりしよう」

「りょーかい」

 

 今日も外は快晴なので、まず寝袋を干す。少し湿って水滴が付いてたりするが、この水滴をそのままにしておくとカビが生えたりするので、テントの外面に寝袋を置いて天日干しする。もちろんテントも結露で外面に水滴がびっしり付いてるので、よく落としてから干すようにしよう。

 

「じゃあ次は朝食作りといこうか」

「って言っても昨日買ったラ○チパック食べるんちゃうの? 作らんでもあるやん」

「確かに作るは語弊があるな。正しくは手を加えるだ」

 

 本当に一手間加えるだけだ。昨日買ったラ○チパックをホットサンドメーカーで挟んで焼く。ただこれだけ。これだけで元々美味しいラ○チパックがもっと美味しくなる。

 

「ほんまに一手間やな」

「でもこれマジで旨いぜ。やっぱラ○チパック最高」

「なんでラ○チパックなんかな思ったら、あんたが好きなだけなんか……」

 

 あおいが少し白い目で見てくるが、ラ○チパックが美味しいのが悪い。

 

 ラ○チパックとホットサンドメーカー、それにコンパクトバーナーを取り出し、バーナーの上にホットサンドメーカーを置き火を付ける。ホットサンドメーカーが暖まったらラ○チパックを置き、ハンドルを手前に倒し蓋を閉める。そこから数分待ち、表面に少し焦げ目が付いたら完成だ。

 

「こりゃ絶対うまいわ。特にこの寒空の下で食うラ○チパックの旨さといえばもう!」

「確かに、表面に焦げ目付ける事でより一層旨そうに見えるなぁ……」

「せやろせやろ。早速食べようぜ」

 

 ちなみに、中身の具はもちろんたまごだ。やっぱたまごが一番だって偉い人も言ってた。世間ではピーナッツとかいうのが一番ウケてるらしいが、いつかたまごがその人気を追い抜いてくれるはずだ。

 

「私、ラ○チパックやとピーナッツが一番好きやなー」

「この裏切り者め!」

「い、いきなりどうしたん……」

 

 まあピーナッツも普通に好きなんだが、焼くならたまごだな。

 

「うーん、やっぱうまい」

「これ、すごい外サクサクで美味しいなぁ」

「たまごに寝返る気は?」

「やからさっきから何言ってるん……」

 

 ラ○チパックをサクサクと食べ進めていき、撤収準備を進める。飯を食ってたらもう9時だ。姉さんが迎えに来るまで後1時間。荷物やテントを片付けてたら丁度いい時間になるだろう。

 

「あおいはテーブルとか道具片付けといて。俺は寝袋しまうわ」

「椅子は最後でええの?」

「いえす」

 

 テントの上で干していた寝袋は日に照らされてすっかり乾いたようだ。後は袋に寝袋を入れるだけ。何回もやってきた作業なのでサッサと入れる。

 

「こっちは終わったで」

「じゃあテント畳むか。とりあえず中の荷物は外に出そう」

 

 畳む時ももちろん2人で畳まないととてもじゃないが畳めないので、あおいと一緒に畳む。中の荷物を外に出してからまずフライシートを外す。フライシートとはテントの一番外に被せるやつだ。水滴が付いてるのでできるだけ落としてから外して畳んでいく。

 

「外す方が楽やなぁ。私これだけやりたい」

「テント建てるのも結構楽しいよ。やってく内に早くなっていくし」

 

 フライシートを外した後に四隅のペグを抜いていく。

 テントを支えていたポールを抜いてから折りたたみ、中のテントも綺麗に畳んでから部品類を全部袋に入れていく。これでテントの収納は完了だ。

 しかし、水滴がまだ付いてたり湿ってたりするとテントの寿命は落ちていくので、帰ってからしっかり干す予定だ。

 

「意外と早く片付いたな。今何時?」

「もうすぐ10時やね。座るかな思って椅子置いといたけど、しまう?」

「そうだな。そろそろ姉さん来るだろうし、ちょっと待っとくか」

 

 時間が余れば座りながらゆっくり富士山でも見とこうかなと思ったんだが。ちなみに今日も雲が少ないので富士山はハッキリ見える、最高のコンディションだ。

 

「そういえば、富士山単体は撮ったけどウチら写ってるの撮ってないやん。せっかくやし撮ろか」

 

 あおいは携帯を取り出し、富士山をバックに微笑みながらそう言う。あおいと太陽が重なりあおいが輝いて見える。天使かな? 

 

「富士山後ろにして〜、この角度がええかな〜」

「なんでもいいが早く撮らないか」

 

 さっきから密着している所為で胸が当たっている。乙女的に、いくら幼馴染とはいえ異性との距離感は大切なのでは? 

 いや、よく思い返してみれば普段も結構この距離感だな……。今更なのか。

 

「よし、撮れたで〜。ほら見てみいや、めちゃ良い感じや」

「おーいいね可愛い」

 

 おっと、つい本音が。

 

「かっかわいいとか言わんでええからっ!」

「うん。いい感じに撮れてるな。うん」

「もー、あほ……」

 

 あおいは赤くなった顔をパタパタと仰ぎながら携帯をしまう。

 

「おーい、そこのバカップルー。早く荷物積み込みな」

 

 そうこうしている内にいつの間にか姉さんが到着していたらしい。

 相変わらず時間ピッタリに行動するな。さすがだ。

 

「じゃあ荷物積み込むか……あおい?」

「カカカップルって……」

 

 相変わらず顔赤いな。

 あおいが呆けている間に荷物を積み終え、車に乗り込む。

 

「あおいちゃーん。早く乗りなー」

「ハッ……! いつの間に……」

 

 呆けていたあおいがハッとした様子で意識を取り戻し、車に乗り込む。

 車が走り出した所で姉さんが話し出した。

 

「やっぱこの辺は富士山良く見えるね」

「だろ? 姉さんも一緒にキャンプしたらよかったのに」

「いや、あんたらと一緒にいたら砂糖吐きそう……」

「なんで砂糖?」

 

 さて、この後はどうしよう。恐らく帰ったら11時ぐらいだろうから、昼飯食ってから家でゆっくりしてるか。

 

「なあ、あんた家帰ったらどうせ暇やろ? ウチでお昼食べて妹と遊んでやってくれん?」

「暇とは失礼な。暇だが。あかりちゃんと遊ぶのはいいけど、今日はあまり激しい遊びはできないぞ」

「あかりには適当にキャンプ雑誌渡しとけばいいと思うで。あんたとやったらなんでもええやろうし」

 

 あかりちゃんとはあおいの妹である。あおいをそのまま小さくした感じの、まさにミニあおいみたいな子だ。小学生の頃のあおいそっくりですごくかわいい。

 

「それならいいけども。じゃあ帰ってシャワー浴びてからそっちいくわ」

「んーわかった。ウチもシャワー浴びなあかんなぁ」

「あんたたち昨日お風呂かシャワーか入ってないの?」

「あのキャンプ場どっちもなかったんです。おかげで昨日は……あれ? 昨日私どうしたんやっけ?」

「自分で拭いてただろ。半分寝ながら」

 

 そーやっけ……。と言いながら、あおいは昨日の事を思い出そうとしているのか、頭を捻っている。

 あまり思い出そうとしない方がいいと思うが。

 

「んー思い出せへん。まああんたが言うからには拭いてたんやろ」

「俺が体拭く前に、タオルからなんか良い香りしたからちゃんと拭いてたはずだけど……っと」

 

 今のは失言だったかもしれん。

 

「まっまさか……私が体拭いた後のタオル使ったん……?」

「いやまあ、体拭く用のタオル一枚しか持ってきてなかったから、仕方なく。言わなければよかったな」

「いっいやまあ……別にあかんとは言うとらんけども……」

この子ら無意識にイチャイチャするんだよねぇ……

 

 

 △△△△△△△△

 

 

 

「さて着いたよ。じゃあまたね、あおいちゃん」

「はい! 尊さん、今日はありがとうございました〜」

 

 家に着き、あおいは自分の家に入っていく。俺は今から荷物を庭にある倉庫に持っていかないといけない。その後はあおいの家に行かなきゃいけんし、ちゃっちゃとやり終わる。

 

 意外と重労働だったため冬なのに汗をかいてしまった。昨日は濡れタオルで体を拭いただけだから体が少しベタベタする。しかも割と時間を食ってしまった。早くシャワー浴びるか。

 

「あれ、兄さんおかえり」

「ただいま。どっか行くのか?」

「友達と遊んでくる。てかあおい姉さんとキャンプ行ってたんでしょ。どうだったの? 距離縮んだ? もう告白された?」

「いやどした。距離はいつも通りだよ」

「あーはいはい。砂糖吐きそう」

 

 妹も姉さんと同じような事を言うな。歳が少し離れているとはいえ、さすが姉妹といったところか。

 ちなみに、妹が14歳の中学2年生。俺が16歳の高校1年。姉さんが20歳の大学生だ。

 妹はあおいのことはあおい姉さんと呼び慕っているらしい。犬山家とうちは家が隣同士でずっと親しい間柄だから、自然とその呼び方になったのだろう。

 

「兄さんは今からあおい姉さんのところ行くの?」

「そう。あかりちゃんと遊んでくれってさ」

「それじゃあ、冷蔵庫にプリン作って置いてるから持っていってあげて」

「おーありがと。あかりちゃん、お前の作ったプリン好きだから喜ぶよ」

「私、あかりちゃんのためならなんでもできる」

 

 妹はあかりちゃんに対してはすごく甘々だ。3兄妹の一番下だから妹が欲しかったのだろう。

 

「それじゃ、行ってくるね」

「おう。気を付けて、暗くならないうちに帰ってこいよ」

「はーい」

 

 妹が出掛けた所でシャワーをサッと浴びる。服も着がえてから妹特製のプリンを手にあおいの家のインターホンを鳴らす。

 

「あー! やすくんやっと来た! あおいちゃーん、やすくん来たでー」

「遅いで! もー、お昼今から作るから」

 

 玄関が開きあかりちゃんが騒がしく出迎えてくれる。

 荷物を片して妹と話してシャワーを浴びていたら、いつの間にか結構時間が経ってしまっていたらしい。

 あおいもご立腹だ。

 

「すまんすまん。ほら、これ妹からプリン」

「やったー! ゆきちゃんのプリン大好き!」

「あかり、ゆきちゃんにまたお礼言っとこなぁ」

「もう言ったー」

 

 あかりちゃんは携帯を素早く操作し妹にお礼メールを送ったらしい。

 さすが、現代っ子はお礼の行動も素早いな。

 

「あかりちゃん、これ冷蔵庫入れといて。あおい、せっかくだし作るの手伝うよ」

「んーじゃあお願い。助かるわ」

 

 パパパっとあおいと協力して昼飯を作っていき、食べてからあかりちゃんと一緒に過ごす。

 俺があぐらをかいた足の間にあかりちゃんが座り、俺が家から持ってきたキャンプ雑誌を一緒に読む。

 俺やあおいのキャンプ趣味に触発されたのかどうかは知らないが、あかりちゃんもキャンプ好きになった。キャンプ経験自体はあまりなく、去年の冬に俺と妹の雪とあおいとあかりちゃんの4人で行ったぐらいだ。

 

「これも良いなぁー。なあやすくん、これ買ってやー」

 

 あかりちゃんが無垢な顔でウン万円する寝袋を指差しながら言ってくる。

 確かに寝袋は高ければ高いほど良い物が多い。しかしあかりちゃん、お目が高いがそれは高すぎる。

 

「もうちょっと安いやつにしようね〜」

「わかった〜!」

「わかったらあかん! あんたも、あんまあかりを甘やかさんといて」

「あおいちゃん嫉妬してる〜」

「してへん! それより、3時やからプリン持ってくるで」

 

 言いながら、プリンを用意しにあおいがキッチンに行く。

 あかりちゃんに言われるとどうしても甘やかしてしまう。仕方ないよね。

 

「やすくん、あおいちゃんとキャンプ行ったんやろ? どうやったん? 距離縮んだ? もうキスした?」

「いや、してないが。あかりちゃんまで妹みたいなこと言うなぁ。仲良しか?」

「なんやー。あおいちゃんヘタレやから、やすくんからグイグイいかな進展せんでー」

「こっこらあかりっ! それ以上言うたらプリンあかりだけなしやで!」

「それは嫌やー!」

 

 ごめんあおいちゃ〜ん、と言いながらあかりちゃんはあおいからプリンを受け取る。

 俺もプリンを受け取り食べ始める。いつ食べても妹の作るプリンはうまいな。プリンに限らずデザート系ならなんでも作れる妹だが、一番試行錯誤して作ったのがプリンらしい。単純にあかりちゃんの好物だからだと思うが。

 

 プリンを楽しんだ後、またさっきと同じ体勢であかりちゃんと座り、あおいも一緒に雑誌を読んでいく。

 

「このテントおっきいなぁ。これでキャンプ行きたいなぁ」

「よし買おう」

「あーかーりー?」

「ぶーぶー」

 

 バイトもっと頑張っちゃおうかな。

 

 その後、同じようなやりとりを2、3回繰り返した。

 

 

 △△△△△△△△

 

 

 すっかり日も暮れ、現時刻は19時。

 離れないあかりちゃんをなんとか剥がし、俺は犬山家から帰宅してきた。遊びに行くと毎回なんだが、あかりちゃんはなかなか帰してくれない。大体あおいが引き剥がすんだが。

 

「おかえり兄さん。またあかりちゃんに捕まってた?」

「あぁ、可愛かったぞ」

「良いなー。私も今度行こっと」

「ご飯できたよ。やすも早く手洗ってきな」

 

 飯を食い、明日は普通に学校なので準備をする。

 しかし、ソロキャンプもいいが誰かと行くキャンプもやっぱりいいな。

 それが好きな相手とあれば尚更だ。今のこの関係もいいんだが……次のキャンプで告白してみるか……。

 

 その決心を胸に眠りについた。

 

 




キャンプ知識はたまに間違ってるかもしれません。
あと原作のあおいちゃんとはちょっと性格違うかも。
今の話で原作1巻の最初らへんのつもりです。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。