ある平穏な一日
人間は慣れる生き物だ。どんな不思議なことがあろうとそれが毎日のように続くとそれに違和感を持たなくなる。
「まだちょっとは気になるけどな」
「ん?今何か言った?」
俺の隣を歩くオレンジ色の髪の少女が振り返る。
「いや、なんで外国人の血が交じってない純日本人がそんなオレンジ色の髪の毛してるんだってな」
「うーん……偶然?」
咄嗟についた嘘に真剣に考え込んでいる彼女の名前は藤丸立香。そう、Fate/Grand Orderと言うスマホゲームの主人公と同じ名前である。
「いや、お前は主人公属性でもついてるんだ多分。じゃなけりゃお前がそんな美少女面しているわけが無い」
「ねえそれ褒めてる?」
「…………………………(ニッコリ)」
沈黙って素晴らしい。
さて、長くなったが話を戻そう。と言っても俺の隣に藤丸立香がいる時点で大体言いたいことはわかってくれると思う。
俺、転生しました。詳しいことは省くがまあ、マインクラフトっていうゲームをしていたら家に雷が落ちたんだ。そして使ってたパソコンが一気に強い電流が流れたせいなのかなんなのか、爆発した。
んで、気づいたら赤ん坊になってました。まあ『なんじゃそりゃああああ!?』となる訳ですよ。だが驚くのはまだ早いぜー!
なんと!魔術師の家系に産まれていたのだー!(爆発音)なんでも昔から細々と続いてる家系らしいのだ。そうしたら、俺も魔術使いたいってなるんだが、そこで俺の異常性が発覚した。
俺、マイクラの能力が使えた。物を壊してブロック化、ブロックの設置、インベントリへの収納……まあ他にもあるがこんなところだ。
この能力のせいなのか視界がマイクラの画面なのが問題なのだが。全てが四角く見えるとかではないんだが、下の方にHPやらインベントリやらが見える。そして更に凄いのが「お、献血だって。リックも行こうよ」へいへい思考に割り込むでないぞ。
あ、自己紹介が遅れたな。
「リック早くー!置いてくよー!」
「いでででで、腕ちぎれりゅ〜」
やだこの娘力強い……。
☆献血中☆
「アイムハングリ」
血を抜かれたので腹ぺこである。普通は血を抜かれた程度で腹は空かないが俺は空くのだ。
恐らくこのマイクラ視界が関係しているのだろう。マイクラをやっている人ならわかると思うが、ダメージを受けるとHPの隣に表示される満腹度?を消費してHPを回復するのだが、採血されている最中は常にHPが少しずつ減り続け、同時に満腹度を消費して回復し続けていたのだ。
つまり怪我して治すと腹が減る。
「何か食べに行こっか「ボリボリボリゴクン」何食べたの!?」
「リンゴ」
マイクラあるある、異常に速い食事。
「いいなー。私にもちょーだい?」
「はいよ」
右手に力を込めると何も無い所から少し角張ったリンゴが出現する。これもマイクラの能力による物だ。マイクラに登場する物は自由に作れるのだ。ん?(まだ)一般人の彼女に能力を見せても大丈夫なのかって?
「うーん、何回見てもタネがわかんない……まあいっか!」
彼女には大体手品で通していますのでご安心を。
そんな彼女は美味しそうにリンゴを食べている。
「ボリボリボリゴクン、ボリボリボリゴクン、ボリボリボリゴクン、ボリボリボリゴクン」
あ、これは俺です。
満腹度はリンゴ1つで4つ回復するので何個か食べないといつまで経っても空腹感が消えないのだ。あとこのリンゴ凄い美味い。
「なんであんなに速いんだろう……(ボソッ)」
「ボリボリボリ……ん?どしたん?」
何故かこっちを見つめている彼女に質問を投げかける。
「ううん、なんでもないよ?」
「そっか。ボリボリボリゴクン」
「……………………ボリボリボリッ!?〜!?」
マイクラ能力の難点、途中まで食べても一旦食べる行動を止めると最初から食べなければならない。これは傍から見たら食べかけのものが何事も無かったかのように元通りになる怪奇現象の出来上がりだ。なので普段は普通に食べている。今回は腹ぺこ過ぎたのでノーカン。
んー、なんか隣が、具体的には彼女、いやその内沢山女子出てくるから彼女じゃ伝わりにくいな、主人公ちゃんが静かだ。
「………………」
顔が青い、胸をどんどんと叩いている、食べかけのリンゴ。判定・リンゴが喉に詰まった。
「なんでや!?ここで死ぬ気かお前は!?まだ死ぬなよお前の活躍はまだ始まってないだろうが!?」
主人公の背中を強めに叩いていると、ゲホッ、と大きく咳き込むと同時に詰まっていただろうリンゴの破片が口から飛び出た。
「し、死にかけたよ……」
「午後3時20分、リンゴ詰まりで藤丸氏死去」
「その死因はちょっとやめて……」
仮に死にかけても俺からしたらポーション投げれば即体力回復出来るからセーフなんだが、窒息とか回復しても意味無いやつはご勘弁願う。……牛乳飲めば窒息の状態異常も治るのか?
「そういや、このあとどうする?」
「んー、少し買い物したいんだけど、私財布家に忘れてきちゃったんだよね〜」
「じゃあ今日の所は解散でよき?」
「よきよき。また明日会おうね!」
「おう、んじゃーなー」
互いに手を振って帰路に着く。
とりあえず家に帰ったら窒息は牛乳で治るのかの実験をしよう。
☆帰宅中☆
「ただ〜いま〜」
少し古びた木のドア──実は魔術的なセキュリティが掛けられている──を開け中に入る。
足元を見ると、脱ぎ散らかしてある高そうな紅白スニーカーがあった。
綺麗に向きを直してから靴箱に置いてあった置くタイプの消臭剤を靴の中に突っ込んでおく。ちゃんと片付けないからこうされるのだ。
「ただ〜いま〜!」
「おか〜」
リビングのドアを開け、返事がなかったので先程よりも大きな声で言ったらやる気のない返事が返ってきた。
テレビの前のソファに姉が寝転がっていた。少し汚れた本を読みながらリラックスしている。
「何読んでんの?」
「落ちてたエロ本」
「拾うな読むな持ってくるな」
「今時ってこれで巨乳って言うんだな〜」
自前の双球を下から手のひらで持ち上げるように動かしている姉に真夏のクーラーの風(施設内の鳥肌立つレベル)並に冷たい目を送ってやろう。
「止めたれ、比べられる人が可哀想だ」
「私が魅力的にだからなー」
「変人と比べられるのが可哀想だ」
「ぅおい!?誰が変人だよ!」
「それは、キミ☆Yeah」
「誰がそのネタわかるんだよ」
「少なくとも目の前の姉はわかってる」
「あ、バレた?」
まあ、モ〇スターズ・インクのエンディングのラストのラストのセリフだからなぁ……そこまで見てる人も覚えてる人もあまりいないだろうな。
「てか、今日仕事はいいのか?」
「だーいじょうぶだってー!これが一つ売れる度に私の懐は豊かになるんだからなー!」
ヒラヒラと動く手に持っているのはもう見慣れたスマホ。
そう、スマホ。この世界ではスマホを創ったのは林檎社では無く目の前の姉なのだ。
「そんなに金が有るなら髪切ってこいやー」
「んー?そうだな。そろそろ切るか〜!」
太陽の光を固めたような綺麗な金髪も手入れが雑なので宝の持ち腐れだろう。と言うより手入れしてないのに何故そんなにサラサラツヤツヤなのか。
そんな時に我が家のチャイムが鳴った。
「リクー、行ってこーい」
「たまには働け」
「働いてまーす」
姉の妄言を無視して玄関のドアを開けると、少し、いやかなり怖い人がいた。
筋肉質・男性・スキンヘッド・黒サングラス・黒スーツ。こんな人がいきなり来たら怖くない訳が無い。
だが、知人なのでそんなに怖くない。
「おー
「実は、社長がまた会社を抜け出しまして……」
この人は姉の会社で働いている社員の高羽さんである。姉は優秀なのだがやらかす事もある為この人がお目付け役となっている。その為会社での地位は高い方である。
「あー今居ますよ」
「……………………失礼ですが、家の中に上がらせて頂いても構いませんか?」
「どぞー」
家の中に上げると、迷うことなく──何度か来ているので迷う訳も無く──リビングに到着した。
「リクー誰だった……ゲッ、タカ!?」
読んでいた本から顔を上げて高羽さんを確認した瞬間、姉の目が見開かれた。
「社長!まだ本日の業務は終わっていませんよ!」
「えー、明日やるから……」
「今日、今、スグです。さ、戻りますよ」
「いーやーだー!っておい何処触ってんだ変態!」
「安心してください。私は社長を乙女として見ていませんので」
「失礼だなこいつー!嫌だー助けてー!」
哀れな────いや自業自得か?姉は高羽さんに米俵のように担がれ連行されていったのだった。
「嵐は去った……」
ポツリと呟いた言葉は静かな部屋によく響いた。
このキャラはこういう感じのキャラだよ!とかがあれば参考にしますのでどうかよろしくお願いします!
追記・一話のリンゴの満腹量回復度を修正しました。今のリンゴって4つ回復するんですねー。
『昔は2個だったような気が……』
「動画しか見てないからこうなるんだぞ」
『何故いるしリック』
2020:9:11 文章追加