暗い。その言葉は色んな時に使える。部屋が暗いとか、雰囲気が暗いとか、顔が暗いとかが当てはまる。
そしてそれら全てが当てはまった状況が今である。
洞窟の中であるが故に物理的に暗く、先程の出来事の後で尚且つ敵同士でお互いに黙っているからどんよりと暗い雰囲気が漂い、必死の弁解をした方もされた方も話題の内容が内容だからか顔に影がかかってとても暗い。今洞窟の中で暗くないのはぐだ子と遊希と俺くらいだろう。
「「「「……………………………………………」」」」
「
「俺のせいだと思うよ?」
「おぬしだったのか」
「YESYESYES!」
「あのー、皆一旦さっきの事忘れない?」
お、ぐだ子が会話を切り出した。さすがコミュ力EXだな。
「そ、そうですね。先輩の言う通りです!このままでは話が進みません!アーチャーさん先程はすみませんでした。なのでここを通してください!」
「話が繋がってないようだが、それを許すと思うのかい?」
マシュが会話を切り込み、アーチャーがゆっくりと剣を構え戦闘態勢に入る。
「ねえアーチャー?私達はどうしても戦わないと駄目なのかな?」
「当然だ、貴様等を通せば彼女を倒そうとするだろう?」
立香がアーチャーに問いかけるがアーチャーは聞く耳を持たない。王を傷つけんとするものたちを守護者が通す訳が無い。
「行くぞ、カルデアの者達よ。私を倒せぬ様ならば彼女には届かないぞッ!」
その言葉を合図に、戦闘の火蓋が切られた。
弾丸の様な勢いで疾走するアーチャーが最初に狙ったのは、戦闘力の少ない二人のマスター。橙色の髪の少女は盾持ちの少女に守られている為、フードを被ったマスターに狙いを定めた。
(奴だけは必ず殺すっ!)
やはりホモ疑惑を掛けられたことがショックだったのか、フードのマスター──舞寺理来──を見る目が殺意に溢れている。
アーチャーの握る双剣の刃が舞寺理来の首に迫り、
キィンッ!と硬質な音がした。
「アーチャーよ、俺を殺ろうとしたのが間違いだったなあ?」
双剣を受け止めているのは、洞窟に入ってきた僅かな光を乱反射して輝く透明な剣。不思議な青紫色の光を放つそれの切っ先をアーチャーに向けて。
「俺はお前に勝てる」
俺は勝利宣言をした。
「抜かせっ!」
再度アーチャーが切りかかる。狙いは一撃必殺が可能な眉間。
だが。
ガゴンッ!と突如目の前に現れた何かに防がれた。
突如現れたそれ──木製の盾──に隠れながらニヤリと笑った。
「コマンドオン。ゲームモード・サバイバル」
ポケットの中のコマンドブロックに触れてそう呟いた、しかし何も変化は起こらなかった。
「何をしたかったのか知らないが、どうやら不発のようだな」
「いんや?ちゃーんと成功してるぜ?」
不発に見えるのも当然、このコマンドは派手な演出も何も無い。ただ、俺の体の性質が変わるだけなのだから
不敵な笑みを浮かべながら理来はインベントリから装備を取り出した。
一瞬にして理来の体を淡い紫色の光を放つ結晶質の鎧──ダイヤモンド(エンチャント済み)が覆う。
誰かが驚いた声を上げたが些細なことだ。マイクラではエンチャントダイヤモンドフル装備は常識であるからだ。むしろこれでも一撃必殺する敵がModにはいるのだ。
「今度はこっちの番だ!」
アーチャーに切りかかるも、振り下ろした剣を後ろに跳んで避けられた。
淡く光る剣はどんな能力があるかわからない。ここは回避して様子を見るべきだ、とか思考たんだろうな。
だが無意味だ。
「何っ!?」
普通の剣であれば確実に当たらないはずの距離、しかしアーチャーの腕には深い切り傷が出来ている。
「マインクラフターの間合いを甘く見すぎなんだよ!」
追撃しようとしたが、いきなり現れた剣を俺に投擲してきた。
「マシュ!リックの援護をお願い!」
「はいっ!ハアアアアアッ!」
その剣をマシュは身に余る大きな盾で防いだ。
「遅いわ!だがよくやったマシュマロ!」
「マシュ・キリエライトです!ヤアッ!」
大盾を振り下ろしアーチャーにぶつけようとするもするりと避けられてしまった。
……よし、今のうちに透明化しよう。奇襲しかけたる。マシュの大盾に隠れるようにして予めインベントリに入れて置いたポーションを呑む。……パインサイダー美味いな。
「嬢ちゃんしっかり守れよ!喰らいなぁ!」
マシュの追撃をアーチャーが避けて姿勢が崩れた所にキャスターが火炎を勢いよく飛ばした。
「まったく、面倒な奴だ」
アーチャーは苦言を漏らしながらも冷静に状況を確認する。盾持ちの少女は戦闘経験が未熟、キャスターは的確に火球を飛ばしてくるが槍が無いためスキをついて斬れば良い。そしてあの、恐らくダイヤモンド製であろう叩けば割れる物で鎧を作る愚かな男は…………。
「あの巫山戯た男は何処に行った?」
いつの間にか
(あれ程目立つような奴が隠れられる場所など無い筈、なら何処にいる?)
洞窟は視界が悪いが、紫色に光るダイヤモンドフル装備男を見失う程では無い。
そう、見えていれば確実に目立つ。
(アーチャーくんよ、背後には気をつけな)
そう耳元で囁きたいのを我慢して、決して声には出さずに、透明化ポーションを飲み干し透明になった理来がアーチャーの背後にゆっくりと迫っていた。このまま行けば気づかれること無く倒せるだろう。
ジャリッ、と足元で音がした。
(やべ、石踏んだっ!?)
「そこかっ!」
アーチャーが振り向き様に剣を突き出した。それは見えない筈の理来の首に正確に届き──。
ザシュッ、と肉を斬る音がした。
アーチャーは一人仕留めた事を確信した。剣が骨を貫いた感覚がしている。引き抜くと、ドサリ、と何かが倒れる音がした。
「さて、一人減った訳だがまだ続けるかい?カルデアのマスターよ」
盾持ちの少女の背に護られた橙色の髪の少女は呆然としていた。彼女も音を聞いたのだろう……もう、あの男の生存は絶望的だろう。確実に首を切り落とした、そう言った確信がアーチャー──エミヤの中にあった。どうやって透明になったのかは知らないが、鎧に護られていなかった首を斬られて死ぬとは笑い話にもなりはしないだろう。
「野郎っ……!」
ギリリッ、とキャスター──クー・フーリンが歯を強く噛み締めた。その目は人を容易く殺せそうなほどの濃厚な殺意に満ちていた。
「ふむ、どうやらこれで終わりのようだな」
「まだだよ」
「む?」
橙色の髪のマスターが前に一歩踏み出した。
「まだ、私たちがいる」
その瞳に闘志を燃やして。
「まだ、私たちは、戦える」
その瞳に輝く雫を溜めて。
「私たちは、絶対に貴方を倒す……お願い、マシュ、キャスターさん!力を貸して!」
その時、少女はマスターとして覚醒した。
「シュー!?(主人公死んだあああああああっ!?)」
『いやいや、死なんでしょ。ゲームモード・ハードコアじゃあるまいし』
「シュ?シュー?(うん?じゃあ生きてるの?)」
『さ、キャメロットクリアしよ』
「シュ(おいこら)」
まだ続きます。