遊戯王~(GXの)アカデミアに転生~   作:不可視の人狼

1 / 30
……なんて、いつから錯覚していた?

茶番はさておき、本作における主人公は決闘者歴こそ長いですが、アニメGXだけピンポイントで履修していません。有名なネタであったり、ざっくりとしたことは知っていますが、十代やカイザーと顔を合わせても誰が誰だか全く知りません。

……はい。言いたいことはわかります。自分でも都合良すぎじゃねとは思いました…すいやせん。
読まれる皆様には、何卒ご了承頂ければとおもいます。


決闘者は事故ったくらいじゃ死なない

「デュエルアカデミア入学試験を受ける者はこっちへ!受験票とデッキは絶対に無くさないよう気をつけること!それから──」

 

 デュエルアカデミア──今や世界的な文化となったデュエルモンスターズを更に発展させるため、日本各地から集まった腕に自信のある決闘者(デュエリスト)を育成する機関……要するにデュエルの専門学校だ。

 その入試が、ここ海馬ランドにて行われようとしていた。

 

 事前に行われた筆記試験にパスした者が、今回実施される実技試験を受ける資格を与えられるのだが、加々美昴(かがみすばる)はその限りではない。

 この場にいる以上、少なくとも書類上はキチンと筆記試験を合格したものとして扱われているはずなのだが、当の昴には筆記試験なんて受けた記憶がない。

 

 それもそのはず。何故なら昴は──()()()()()()()()()()()()()()()

 

 

 

 

 

 この世界に来る前──生まれ育った世界での最後の記憶は、背中に大きな衝撃を受けたことだった。

 学校帰りに行きつけのカードショップで、見慣れたメンバーでデュエルをしようと約束していた。運悪く掃除当番だった他の面子を残し、昴は一足先に店に向かっていたところ、何かが後ろからぶつかってきて……そこで昴の記憶は一旦途切れている。

 

 

 

 

 

「――――はっ!!」

 

 次に目を覚ました昴の目には、只々底抜けに真っ白な空間が広がっていた。

 

「なんだここ……何が何だかさっぱりなんだが」

 

 起き上がって周囲を見回してみるが、どこを見ても果てしない真っ白な空間が続いているだけで、何かがあるようには見えない。

 

「ああ、お前さんは死んだんだよ。トラックに撥ねられてな」

 

「へー死んだのか………って、あんた誰?ってかなに、死んだの俺!?」

 

「私か?私は神だ。お前らで言うところの【オシリス】とか【オベリスク】とか【ラー】とかと同じ存在だよ」

 

「え?ドジリスとオベリスクとヲー?」

 

 決闘者に分かるように話したつもりなのであろう自称:神だが、まだまだ甘い。

 決闘者歴の長い者にとって"神"という称号は総じて、使いにくいカードorくっそ弱ぇカードといった認識があるからだ。

 

 特に彼の三幻神が1枚である【ラーの翼神竜】に関しては、アニメ・原作でこそチート性能を発揮したものの、OCG化されるにあたって大幅に弱体化してしまった。

 

 後になって誕生したサポートモンスターである【スフィアモード】の方が強いじゃん。とまで言われる始末。

 その為、歴戦の決闘者たちからは【ヲー】だとかライフコストが重いことから【ライフちゅっちゅギガント】という不名誉なあだ名をつけられてしまったのだ。

 

 残る2枚である【オシリスの天空竜】と【オベリスクの巨神兵】は相応の性能を誇ることからも、その不憫さが伺える。

 

「お前神のカードにそんなあだ名つけてんのな……まぁいいや。お前は暴走トラックに轢かれて死んだ。ここは…そうだな、天国行きのバス停とでも思ってくれ」

 

 自称:神が指を鳴らすと、突然ベンチとバス停の標識が出現する。

 

「おぉすげ…んで、自称ヲー様。俺が死んだのってほんとなのか?めっちゃ手の込んだドッキリとかじゃなくて?」

 

「ヲーじゃねぇよ神だよ。……質問に答えると、YESだ。お前さんの後ろから走ってきたトラックは、薬物中毒の男が警察から逃げる時に奪ったもんらしい。ま、お前を轢いたすぐ後にそいつも建物に突っ込んで逮捕されたんだけどな」

 

「へーそっか。逮捕されたんだなヨカッタヨカッタ──とでも言うと思ったか!」

 

 突然叫んだ昴は、ベンチに向かって額を打ち付ける。

 

「ざけんな!マジざっけんな!いくらなんでもタイミング悪すぎんだろ!よりにもよって新パック発売前日によぉ!!!」

 

 そう……昴が死んだのは、遊戯王OCGブースターパックの新弾発売前日だったのだ。

 

 注目していたカードがあっただけに、手に入れられなかったことが心残りでならない。

 

「こんなんじゃ満足できないぜ………!」

 

「あー、終わった?そろそろ本題に入りたいんだけど」

 

 鼻をほじりながらベンチにふんぞり返る自称:ヲーは、昴が一頻り喚いて静かになったところを見計らって話を再開する。

 

「お前さんの気持ちはよ~く分かる。だから、私がお前さんを"アカデミア"に転生してやろうと思ってな。どうだ?」

 

「"アカデミア"って………あの(AVの)アカデミア!?」

 

「おうよ、あの(GXの)アカデミアだ」

 

 融合次元のアカデミアだと思っている昴と、遊戯王GXに登場するデュエルアカデミアの事を言っているヲー。

 

「お前さんのデッキはバッグ(そこ)に全部入ってんだろ?残念ながら持ってけるデッキは1つだけだ。他は調整用でしかダメ。さ、デッキを選べ」

 

 そう言われてバッグの中からデッキを取り出す。持ってきていたのは全部で3つ。

 その中で、1番付き合いの長いデッキを選んだ。ケースに一緒に入っている調整用のカードも中身を確認して、汎用カードやサポートの枚数を整える。

 

「すまない…お前たち(他のデッキ)も連れて行きたかったが、この【ヲー】が狭量だから……」

 

「ヲーじゃねえっつってんだろ」

 

「……この【イレイザー】がショボい神だから……」

 

「お前マジで失礼なやつだな──まあいい、ほんじゃ頑張ってくれ。こう見えて私も忙しいから、こっち側からなんか手助けできるとかそういうのないから。いってらっしゃい!」

 

 またもやヲーが指を鳴らすと、今度は足元にポッカリと穴が開く。その底が見えない巨大な穴は、まさしく【奈落の落とし穴】。

 

「うわぁぁああああ――――!!」

 

 当然、それを回避できなかった昴は、その穴に落ちていった。

 

 

 

 

 

 

 

 ───と、事のあらましはこんな感じだ。

 

 奈落を使われて目が覚めたら転生済み。バッグの中には昴が選んだデッキと初期型(DM時代の)デュエルディスク、そしてデュエルアカデミアの受験票が入っており、こうして会場へ足を運んだというわけだ。

 尚、デュエルディスクを見て「アカデミアってこっち(GX)かよ」とツッコミを入れたのは想像に難くない。

 

「えと、受験番号10番、加々美昴です」

 

「……よし、進みなさい。時間までは基本自由にしていていいが、デュエルディスクは使用禁止だ」

 

 受付をしていた黒服の男に注意事項を説明され、昴は会場に足を踏み入れる。

 会場内には昴の他にも多くの受験者が集まっており、中には既にデュエルアカデミアの制服を着た者も散見される。

 恐らく上級生と、中等部からエスカレーター式で進級した生徒だろう。服の色は赤青黄色とあるが、圧倒的に青の比率が多い。

 

「(始まるまでは……1時間以上あるな。どうしたもんか)」

 

 前の世界ならスマホを弄るなりして時間を潰せたが、当然それも手元にない。あるのは正真正銘カードだけだ。こうなれば仕方ない、と、昴は人気の少ない通路の奥に陣取り、デッキを弄ることにした。

 

「(んー…エクシーズとかシンクロは入ったままか。でも使えない以上、構築からは外さなきゃだよなぁ……折角だし、純構築に近づけてみるか)」

 

 調整用カードを入れたケースを開いて、デッキの中身を入れ替える。

 このデッキは前の世界──以後前世と呼ぶ事にする──では登場当初テーマ単構築だと勝目の薄いファンデッキ止まりだったのだが、時代が進むに連れて相性のいいサポートカードが登場し、それなりの実用性を手にすることができた。

 

 真価を発揮するにはEXデッキの力を借りねばならないが、この時代はまだデュエルの速度が遅かった頃だ。冒険してみてもバチは当たるまい。

 

 ……一応言っておくと、決して舐めプをするつもりはない。本当だ。信じて欲しい。

 

「んと……まずコイツらは必須枠で、あとコレとコレ…うーん、コレは抜くか?けどそれだと火力が……そうだ、アレ入れてみよう」

 

 あーだーこーだとブツブツ呟きながらデッキを組み直していく昴の表情は真剣だが、どこか楽しそうだ。

 

「……うん、こんなモンか。あとは回してみてその都度調整ってことで」

 

 1人回しができるような構築ではなくなったため、相手がいない今ではどれほどのポテンシャルを発揮できるかは分からないが、とりあえず初手事故を連発するといった事態にはならずに済みそうだ。

 

 

「──あなた、受験生よね?」

 

 

「……そうだけど」

 

 不意に聞こえた女の声に、昴は顔を上げる。目の前に立っていたのは、デュエルアカデミアの制服を着た金髪の女子生徒だった。色は青──オベリスクブルーの生徒だ。

 

「もうすぐ実技試験が始まる時間よ。急いだ方がいいんじゃない?」

 

 そう言って彼女が指差す先には時計があり、長針は試験開始時刻の3分前を指していた。どうやら時間を忘れてデッキ構築に没頭していたらしい。

 

「──うわマジか!?悪い、助かった!」

 

 昴はデッキを手早く片付け、試験が行われるアリーナに走る。時折すれ違うアカデミアの在学生を器用に避けてアリーナに到着した頃には、開始まで秒読みとなっていた。

 

「ではこれより、デュエルアカデミア入学試験を始める!ここでは諸君らが合格した筆記試験の順位がそのまま受験番号となっており、実技試験は一番最後の番号から順に行っていく。呼び出されても来ない場合は特別な理由がない限り不合格となるため、会場アナウンスは聞き逃さないように。では、まず120番から──」

 

 番号3桁代でない者はゾロゾロと客席へ戻っていく。昴もそれに続いていたのだが……

 

「俺10番なんだからそんなに急がなくても良かったってことじゃねえか……」

 

 結果論とはいえ、あの全力疾走が徒労に終わってしまったことにゲンナリとする。

 

 気を取り直して客席の一番上から他の受験者たちのデュエルを観戦していたのだが、昔懐かしのカードに目を輝かせこそすれ別段盛り上がるわけでもなく、正直暇な時間だった。

 

 途中で間食を挟んで引き続きアリーナをボーッと眺めていると、何度目かのアナウンスが会場に響き渡る。

 

 

『受験番号10番、受験番号10番の生徒。デュエルエリアへ移動をお願いします。繰り返します──』

 

 

「大分待ったな……そんじゃ、いっちょ勝ってくるか。頼むぜ、マイフェイバリットデッキ」

 

 デュエルディスクに己のデッキをセットした昴は、大きく伸びをして試験場へ向かった。

 




アカデミアのカーストが上からブルー・イエロー・レッドなのは絶対に社長の私怨ですよね
OCG的に見れば絶対イエローが底辺。(最近強化もらって強くなったからわからないかな?)
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。