遊戯王~(GXの)アカデミアに転生~   作:不可視の人狼

11 / 30
タッグデュエル

 廃寮での一件を経た翌日……学園の授業が休みにも関わらず、昴はデュエルアカデミアの校長室を訪れていた。隣には明日香と隼人の姿もある。

 

「──あの夜、廃寮には俺達も居ました。ですから、十代と俺でタッグを組ませてください。当事者同士なら問題はないはずです。俺が駄目なら、明日香でも隼人でもいい──」

 

「そうです!それに、私は彼らを巻き込んでしまった責任があります!」

 

「お、俺、今まで自分がダメだって思ってましタ。でも十代のデュエルを見て、もう一度真剣にデュエルに取り組んでみようって思ったんです!十代は、この学園に必要な奴です!」

 

 必死に鮫島校長に掛け合う昴達だったが……

 

「君達の思いはよく分かった…しかし遊城君達のタッグは、査問委員会で決定したことだ。もう我々の一存ではどうにもできない。……力になれず、すまないね」

 

「……分かりました、失礼します。──行こう」

 

 まだ納得しきれていないが、学内の最高権力者である鮫島校長でもどうにもできないというなら、最早打つ手はない。

 

「……どうしましょう。あの2人で勝てるのかしら?」

 

「十代は心配いらないだろうけど、問題はタッグ相手の方なんダナ」

 

「ああ……十代が上手く説得してくれてりゃいいんだがな」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 場所は移り、オシリス・レッド寮──

 

「ただいまー……」

 

「はやどぐううううん!僕なんかがタッグデュエルなんて、勝てるわけないよぉ!きっとボコボコにされて退学になるんだ!後生だよ!代わっておくれよぉ~~っ!」

 

 自室に戻った隼人に泣きついてきたのは翔だ。その後ろでは十代が困った様子で頭をガリガリと掻いている。

 

「そう思って頼んでみたけど、査問委員会で決まったことは変えられないって……」

 

「そ゛ん゛な゛あ゛あああああああ~~っ!」

 

 絶望の形相で大泣きする翔。そんな翔を何とか宥める隼人の後ろから顔を出したのは、一緒に付いてきた昴と明日香だった。

 

「いい加減にしろ翔。隼人も言ったろ、もう決まったことだ。お前も男なら腹を括れ」

 

「えぐっ…ひぐっ……退学になる覚悟しておけってことぉ……!?」

 

「そうじゃなくてだな………」

 

 翔がこんな事になっているのには勿論理由がある。

 昨夜、立ち入り禁止の廃寮に侵入したことがどういうわけか学校側にバレた十代と翔は、アカデミアの最高法規である倫理委員会に連行され、校則違反に対する処罰として退学を賭けた制裁タッグデュエルを受けることになったのだ。

 

「翔君。気持ちは分かるけど、そうやって逃げてばかりじゃ何も変わらないわ。私達も力を貸すから、ね?」

 

「──そうだぜ翔。要は勝ちゃあいいんだ、俺とお前なら大丈夫だって。早いとこデッキ組んでタッグデュエルの練習しないと、勝てるデュエルも勝てないぜ」

 

「アニキはそんな簡単に言うけど、タッグデュエルなんてやったことあるわけ?」

 

「ない。だから練習するんだよ。──それに初めてのタッグデュエルだぜ?ワクワクするじゃんか」

 

「で、でも……」

 

 踏ん切りがつかない翔を見かねた昴は、ベッドに置かれたデュエルディスクを翔に投げ渡す。

 

「習うより慣れろ──デュエルは実戦あるのみだ。こうなった以上、翔を徹底的に鍛えるしか方法はない。俺と明日香、隼人もできる限りの協力はする。だからお前も根性見せろ。十代の弟分だろ」

 

「うぅ……っ分かった!僕頑張るよ!」

 

 

 

 

 

 

 

 レッド寮前の海に面した岸壁で、4人の決闘者達が向かい合っている。

 

 片方は十代と翔。その相手をしているのは、明日香と隼人だ。

 昴はというと、気になった点を書き込む為のノート片手に崖の上から全体を見下ろしている。

 

「(さっき見せて貰った翔のデッキは機械族の【乗り物(ビークロイド)】──機械族自体サポートも豊富だし、ちゃんと使いこなせば十分勝ちを狙えるだけのポテンシャルはある。なのに翔があそこまで自信無さげだったってことは……)」

 

 あまりこういう言い方はしたくないが、使っている翔自身に何か問題があるということだろう。

 

 考えている間にも進行しているデュエルの様子を確認してみると……

 

 

 

 十代 & 翔 :LP2100

【E・HERO フレイム・ウィングマン】

【パトロイド】

 伏せ×1

 VS

 明日香&隼人:LP3100

【サイバー・ブレイダー】

【デス・コアラ】

 伏せ×1

 

 

「行けぇ!【リミッター解除】で攻撃力が倍になった【パトロイド】で【デス・コアラ】を攻撃!──シグナル・アタック!」

 

 手足の生えたパトカー型ビークロイドが腕のタイヤを高速回転させ、呑気な顔でユーカリをムシャムシャと食べるコアラに攻撃を仕掛ける。

【パトロイド】の攻撃力は【リミッター解除】で倍になって2400、対する【デス・コアラ】の攻撃力は1100だ。この攻撃が通ればライフをほぼ互角まで持ち込めるが……

 

「この瞬間、罠カード発動!【聖なるバリア-ミラーフォース】!相手の攻撃表示モンスターを全て破壊するんダナ!」

 

「えぇっ!?」

 

 光の障壁から放たれた閃光で、十代チームのフィールドが一掃されてしまう。

 

「そんなぁ……ターンエンド」

 

 

 十代 & 翔 :LP2100

 伏せ×1

 VS

 明日香&隼人:LP3100

【サイバー・ブレイダー】

【デス・コアラ】

 

 

 タッグデュエルのルールに則り、隼人に代わって明日香がターンを引き継ぐ。

 

「私のターン!──バトルよ!【サイバー・ブレイダー】でプレイヤーにダイレクトアタック!──グリッサード・スラッシュ!」

 

 地面を滑るように接近した【サイバー・ブレイダー】は、長い脚を駆使した必殺の蹴りを叩き込んだ。

 その攻撃力は2100──丁度、十代チームの残りライフと同じ。

 

「うわああああああ──っ!」

 

 

 十代&翔:LP2100→0

 

 

「うーん…負けちまったか。ドンマイだぜ翔!」

 

「アニキ……ごめんよ」

 

 しょんぼりする十代チームとは裏腹に、明日香チームは……

 

「今の罠、良かったんじゃないかしら。上手く翔君の攻撃を誘えてたわよ」

 

「【デス・コアラ】は攻撃力そんなに高くないから…【ミラーフォース】を発動させる為に、わざと攻撃表示にしておいたんダナ」

 

 対照的な両チームを見て嘆息した昴は、岸壁から下りてデュエルの反省を行う。

 

「えーそんじゃ、まずは明日香チームからだな。隼人、最後の【ミラーフォース】誘導はナイスだ。けど、ちょいと露骨だった気もするな…攻撃力が低いモンスターでも、前のターンで攻撃に参加させて、怪しまれないようにするって手もある。魔法やモンスター効果で補助してやれば、同じ下級モンスターなら殴り勝てるだろうからな」

 

「成る程…勉強になるんダナ」

 

「次、明日香。全体的に目立った問題点は無かったが、【ドゥーブルパッセ】の発動タイミングは工夫できるかもしれない」

 

「そっか…どうせライフに余裕があるなら、小さいダメージには目を瞑って、高打点モンスター同士の戦闘で発動するって手もあるのね。そうすれば、相手により大きなダメージを与えられる……」

 

「そういうこと。じゃあ次、十代チームだが──」

 

 ノートを見返しながら昴が振り向くと、

 

「ハハハ…やっちまった…アニキ、やっぱり僕じゃダメだよ。2人揃って退学するんだ……」

 

「おい翔、しっかりしろ!まだ時間はあるんだし、なんとかなるって!」

 

 岸壁に向かって縮こまる翔を、十代がなんとかフォローしているところだった。

 

「はあ……翔、確かに今回はお前のミスが原因で負けたが、じゃあそれがどんなミスか分かるか?」

 

「えっと……」

 

 翔の口から答えが出るのを待ってみるも、オロオロするばかりでその気配はない。

 

「【パトロイド】の効果、忘れてたろ」

 

 翔が召喚していた【パトロイド】は、メインフェイズに1度だけ相手の場にセットされたカードを確認する効果を持っている。その効果を使用していれば、少なくとも【ミラーフォース】を踏みに行くことはなかったはずだ。

 

 加えて、【リミッター解除】もセットカードを確認してから発動の是非を決めていれば、次のターン相手が【パトロイド】を攻撃してきた際にコンバットトリックで返り討ちにすることもできた。

 

「厳しい言い方をすれば、モンスターの攻撃力ばかりに目が行きがちってことだな」

 

「うぅ………」

 

 止めを刺され、一層落ち込む翔。少し言い過ぎたかと思った昴は、話題転換に取り掛かった。

 

「──そういえば、最後のターンにドローした時変な顔してたな。何引いたんだ?」

 

「えっ、あ、それは……」

 

 何故か言い淀む翔。その背後から、十代が翔の手札を確認した。

 

「えーっと……おっ、【パワー・ボンド】があるじゃねぇか!翔、何でコレ使わなかったんだよ?」

 

「いや、だって…ほら、伏せカードが……」

 

「お前俺のセットしたリバースカード確認しなかったのか……ほら──」

 

 十代がセットしていたのは罠カード【砂塵の大竜巻】。謂わば罠版【サイクロン】であるこのカードを発動していれば、【ミラーフォース】を処理した上で【パワー・ボンド】により手札の【ジャイロイド】と【スチームロイド】を融合させた【スチームジャイロイド】を召喚できた。

 しかも【パワー・ボンド】の効果で融合召喚したモンスターは攻撃力が倍になるため、【リミッター解除】も合わせれば一気にゲームエンドまで持って行けたはずなのだ。

 

「……【パワー・ボンド】は絶対に使えないんだ。お兄さんに封印されてるから……」

 

「兄さん…?封印って……」

 

 昴が聞き返す間もなく、翔は十代の手からカードをひったくるように取り戻す。

 

「やっぱり僕じゃダメなんだ!アニキみたいな強い決闘者とタッグを組むなんて、無理なんだよっ──!」

 

 そう言って、翔は十代の制止も聞かずに走っていってしまった。

 

 

 

 

 

 

「──実は、翔君には本当のお兄さんがいるのよ。この学園にね」

 

 翔の兄である丸藤亮は、デュエルアカデミアの3年生──オベリスク・ブルーの生徒だ。

 非常に高いデュエルの実力から、付いた渾名が「アカデミアの帝王」──"カイザー"。

 

「カイザー……そいつと翔の間に何かあったのは確かなんだろうが……」

 

 肝心の翔は何も話さずに行ってしまった。隼人が後を追っているが、戻ってくる気配はない。

 

「十代。お前はどう思う?」

 

 海に向かって無言で佇む十代は、暫く考えると……

 

「──よっし!ならまずはそのカイザーとデュエルだ!人を知るにはデュエルが一番だろ!」

 

「流石デュエルジャンキー…でもま、カイザーと接触するならそれが一番か」

 

 

 

 

 

 

 

 意気揚々と走り出した十代は、学園の購買部に向かう。そこでデュエル申請の書類を書いていたのだが……

 

「──くっそー!クロノス先生め、何も目の前で破ること無いじゃんかよ!」

 

「相当目の敵にされてるみたいだな……カイザーとデュエルする為には、正攻法じゃ無理そうだ」

 

 隠れて申請を通そうにも、ブルー男子寮の寮長も務めているクロノスの目には必ず止まるだろう。

 

「こうなったら殴り込みだ!待ってろカイザー!」

 

「え………マジで言ってる?」

 

 先に走り去ってしまった十代を遅れて追いかけた昴。

 ブルー寮前に到着すると、そこには十代とブルーの上級生2人がおり、何やら口論が繰り広げられていた。

 

「──身の程を知れ!オシリス・レッドのドロップアウトめ」

 

「お前のような奴がカイザーに近づくことなど、許されると思っているのか?」

 

「何だと──!?」

 

 負けじと食い下がる十代だったが、ブルーの上級生たちはバケツに汲んだ水を十代に向かってブチ撒ける。ずぶ濡れになった十代を嘲笑いながら建物に戻っていく上級生達。あまりの仕打ちにムッとした昴は……

 

 

「──じゃあ俺ならどうです?」

 

 

「あん…?」

 

「お前は確か…最近ブルーに上がってきた新人だったな」

 

「同じブルーの1年生がアカデミアの実力トップと名高いカイザーに下克上……中々面白い話だと思いませんか」

 

 口ではこんな事を言っているが、勿論昴は本気で下克上など狙っていない。全てはカイザーをこの場に引っ張り出す為の方便だ。

 

 自身満々にとんでもない事を言い出す昴を見た彼らは──

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ダメかぁ……」

 

「何なんだよあいつら!馬鹿にしやがって!」

 

「それだけカイザーは皆の憧れってことだろ。…流石に神格化し過ぎじゃないかとは思うが」

 

 結局──まるで【カイザー親衛隊】とでも言うべきあの上級生達は頑として譲らず、昴は水こそぶっ掛けられなかったものの、見事に追い返されてしまった。

 にしても…レッドだからといって水まで掛けるとは、この学園のカースト差別も行き過ぎではないだろうか?どうしてこんな状態になるまで放置していたのか──誰も問題とは感じなかったのだろうか?

 

「俺は諦めない!絶対にカイザーとデュエルしてやる!」

 

「……今日はもう無理そうだな。明日また、隼人とか明日香の意見も聞いてみよう」

 

 そう言ってレッド寮前で十代と別れた昴は、踵を返してブルー寮へ戻ろうとしたのだが……

 

「ん……明日香?」

 

 夕焼けの中、港に向かって歩いていく明日香の姿を見かけた昴は、カイザーに会うにはどうすればいいか相談しようと、その後を追った。

 

 

 

 

 港の奥──灯台の足元には既に先客がおり、腕を組みジッと夕陽に向かって佇んでいる。

 

「……明日香か。何か掴めたか?」

 

「ううん、いつもと変わらない1日。何事もなく過ぎ去っていく──兄の事も、波の中に消えていくよう……」

 

「焦るな。いつかきっと……」

 

「分かってる──そういえば、聞いた?あなたの弟のこと」

 

「制裁タッグデュエルのことか。それがどうした?」

 

「今日、当日に向けてタッグデュエルの練習をしたんだけど……その時のことで、遊城十代があなたと戦いたがってるわ、亮」

 

「遊城十代……ああ、入試でクロノス教諭に勝った……」

 

「受けてみる?」

 

「………」

 

 明日香の勧めに少し考えている様子の亮。そこへ割って入るように、彼の名を呼ぶ声があった。

 

 

「──あんたがカイザーだな。翔の実の兄だっていう」

 

 

「君は……翔の友人か?」

 

「昴…?どうしてここに」

 

「偶然お前を見かけたんでな。相談したいことがあったんだが……その必要はなくなった」

 

「加々美昴か……覚えている。入試でのデュエルは見事だった」

 

「そりゃどうも──だが今回はそんな話をしに来たんじゃない。翔のことだ」

 

 亮は一瞬眉を顰めたが、昴に話を続けるよう目で促す。

 

「もう明日香から聞いたかもしれないが、今日のデュエルで翔は【パワー・ボンド】を使わなかった。使えば間違いなく勝てる状況だったにも関わらずだ。その事について、話を聞きたい」

 

「なんだ、そんな事か──簡単なことだ。翔はまだ──「アニキ!?」─っ!?」

 

 不意に、翔の声が聞こえた。周辺を見回してみると、岸壁の隅で(いかだ)を浮かべている翔の姿が。そしてその後ろからは、彼を追ってきたのであろう十代の姿もあった。

 

「何してんだアイツ───!?」

 

 昴と明日香は翔達の元へと向かう。亮もその後に続いた。

 

 

 

 

 

 その頃……島を逃げ出そうとしていた翔は、追いかけてきた十代に捕まっていた。

 

「行かせておくれよアニキ…僕のことは放って、アニキだけでも退学を免れておくれよ……」

 

「だからつべこべ言うんじゃねぇ!俺は決めたんだ、パートナーはお前だって!」

 

「アニキ…でも僕が一緒じゃ……」

 

「──不甲斐ないな、翔」

 

 崖の上を見上げた翔と十代。そこには、鋭い目つきでこちらを見下ろすカイザー──亮の姿があった。隣には明日香と昴の姿もある。

 

「お兄さん……」

 

「兄さん…?ってことは、こいつがカイザー亮……!」

 

「逃げ出すのか?」

 

「ぼ、僕は……」

 

 責めるでも、引き止めるでもない。淡々とした言葉で問いかけてくる亮に、翔は何も答えることができない。

 

「……それもいいだろう」

 

「なっ……!?」

 

 そんな翔を見て亮が言い渡した言葉は、冷たいものだった。せめてもう一言くらいないのかと期待した昴だが、亮が口を開く様子はない。

 

 肩を落とした翔は、周辺に壊れて散らばった筏のパーツを集め始める。しかしその手もやがて止まり、波の音に混じって嗚咽が聞こえてきた。

 

「……おい!行っちまうってよ、アンタの弟」

 

「翔が自分でそう決めたのなら、仕方ないな」

 

 何も言葉をかけてやる様子のない亮に歯噛みした十代は、

 

「だったら!餞別でもくれてやろうぜ、俺とアンタのデュエルで!」

 

「ほう……いいだろう。上がって来たまえ、遊城十代」

 

 明日香の言ったとおり、自分に挑んできた十代に少し意外な顔をしながらも、亮はそれを承諾。

 

 港でのデュエルが始まった。

 

 

「「決闘(デュエル)!」」

 

 

 十代:LP4000 手札×5

 VS

 亮 :LP4000 手札×5

 

 

「俺の先攻!ドロー!…【E・HERO フェザーマン】を攻撃表示で召喚!」

 

 

【E・HERO フェザーマン】

 ✩3 戦士族 ATK1000 DEF1000

 

 

「カードを1枚伏せて、ターンを終了するぜ!」

 

 

 十代:LP4000 手札×4

【E・HERO フェザーマン】

 伏せ×1

 VS

 亮 :LP4000 手札×5

 

 

 

「カイザーのターンか……アカデミアの帝王の力、見せてもらうぞ」

 

「言うまでもない事だと思うけど、亮は強いわよ」

 

 

 

「俺のターン、ドロー…手札から【サイバー・ドラゴン】を特殊召喚!」

 

 

【サイバー・ドラゴン】

 ✩5 機械族 ATK2100 DEF1600

 

 

 亮の背後に現れた銀色の機械竜は「相手の場にのみモンスターが存在する」という条件下でのみリリース無しで特殊召喚できる強力なモンスター。

 当時のデュエルにおいて長らく語られてきた「先攻絶対有利」の法則をぶち壊したことでも有名なカードだ。

 

「更に速攻魔法【サイクロン】発動!キミの伏せカードを破壊する!」

 

 十代が場に伏せていた罠カード【ヒーローシグナル】が破壊され、後続確保の手段が1つ潰されてしまう。

 

「【サイバー・ドラゴン】で【フェザーマン】を攻撃──エヴォリューション・バースト!」

 

 機械竜の口から閃光が放たれ、戦闘態勢を取る風の戦士を跡形もなく消し飛ばした。

 

「ぐぅ……!」

 

 

 十代:LP4000→2900

 

 

「メインフェイズ2──魔法カード【タイムカプセル】を発動。デッキからカードを1枚選び、発動から2回目の俺のターンが訪れるまで、カプセルに入れて封印する」

 

 選んだカードは非公開情報として扱われる為、類似効果を持つ【封印の黄金櫃】と違って対策を取れない。

 弱点として、カード回収前に【タイムカプセル】を破壊されてしまうと、その効果で除外していたカードは帰ってこないのだが、十代のデッキにはその手のカードが何枚入っているのか……

 

「俺はこれでターンエンド」

 

 

 十代:LP2900 手札×4

 VS

 亮 :LP4000 手札×3

【サイバー・ドラゴン】

 魔法罠:【タイムカプセル】

 

 

「俺のターン!──魔法カード【融合】発動!手札の【クレイマン】と【スパークマン】を融合し、【E・HERO サンダー・ジャイアント】を召喚!」

 

 

【E・HERO サンダー・ジャイアント】

 ✩6 戦士族 融合 ATK2400 DEF1500

 

 

「【サンダー・ジャイアント】の効果発動!──ヴェイパー・スパーク!」

 

【サンダー・ジャイアント】には自身よりも打点の低いモンスターを破壊する効果がある。

 機械竜は天から降り注ぐ雷撃の餌食となり、その身を爆散させた。

 

「ガラ空きの本陣突破だ!【サンダー・ジャイアント】でダイレクトアタック!──ボルティック・サンダー!」

 

 雷撃の力を宿す巨人の戦士は、両手に溜めた電撃を一気に放出する。常人ならソリッドビジョンだと分かっていても怯んでしまうその攻撃を、亮は眉ひとつ動かさずに受けきった。

 

 

 亮:LP4000→1600

 

 

「っし!今のは効いたんじゃねぇのか?──カードを1枚伏せて、ターンエンド」

 

 先制攻撃で戦況をリードしたかに見えた亮だったが、そこは十代も譲らない。瞬く間に逆転してみせた。

 

 

 十代:LP2900 手札×1

【E・HERO サンダー・ジャイアント】

 伏せ×1

 VS

 亮 :LP1600 手札×3

 魔法罠:【タイムカプセル】

 

 

「俺のターン。再び【サイバー・ドラゴン】を特殊召喚。続けて【死者蘇生】を発動し、破壊された【サイバー・ドラゴン】を復活させる!」

 

 亮のフィールドに2体並び立った機械竜が咆える。しかし攻撃力ではまだ【サンダー・ジャイアント】の方が勝っており、このままでは延命にしかならないと思われていたが、亮は次なるカードを発動した。

 

「魔法カード【融合】──【サイバー・ドラゴン】2体を融合し、EXデッキから【サイバー・ツイン・ドラゴン】を融合召喚!」

 

 融合カードの作り出した異次元の渦に飲み込まれた2体の機械竜達は、巨大な双頭竜の姿となって舞い戻る。

 

 

【サイバー・ツイン・ドラゴン】

 ✩8 機械族 融合 ATK2800 DEF2100

 

 

 

「攻撃力2800……!?これじゃあ十代の【サンダー・ジャイアント】が破壊されちゃうんダナ!」

 

「それだけなら良かったが…【サイバー・ツイン】には2回攻撃を行う効果がある!」

 

 

 

「その通りだ。俺は【サイバー・ツイン・ドラゴン】で攻撃!──エヴォリューション・ツイン・バースト!」

 

 十代のライフは2900。【サイバー・ツイン】の連続攻撃を通せば、敗北が決定してしまう。

 

「させないぜ!罠発動【ヒーロー見参】!」

 

 自分の手札を1枚相手に選ばせ、それがモンスターなら即座に特殊召喚できるこの罠。

 十代の手札は1枚だけ…必然的に、亮はそのカードを選ぶしかない。

 

「俺の手札はモンスターカード!──【フレンドッグ】を守備表示で召喚だ!」

 

 

【フレンドッグ】

 ✩3 機械族 ATK800 DEF1200

 

 

 十代の元に機械の体を持つ犬が現れ、パートナーであるHEROと共に十代を守る。

 しかし放たれた2条の閃光の前には無力──敢え無く破壊されてしまった。

 

 

 十代:LP2900→2500

 

 

「けど、破壊された【フレンドッグ】の効果で、墓地から【クレイマン】と【融合】を手札に加える!」

 

「──ターンエンドだ」

 

 

 十代:LP2500 手札×2

 VS

 亮 :LP1600 手札×2

【サイバー・ツイン・ドラゴン】

 魔法罠:【タイムカプセル】

 

 

 

「すごいんダナ……どっちも全然退かない」

 

「亮の実力は勿論だけど、十代もなんとか食らいついてるわね」

 

「今のところはな。だが次のカイザーのターン、【タイムカプセル】で除外したカードが手札に加わる。奴が【サイバー流】使いなら、恐らく……」

 

【サイバー・ドラゴン】を主軸に据えたデッキである以上、間違いなく【あのモンスター】も入っているはず。そしてそれを最大限活かす為のカードが、【タイムカプセル】に封じられたカードである可能性が高い。

 

 十代はそれに対し、このターンで亮のライフを削りきるか、もしくは防御を固める必要があるのだが……

 

 

 

「俺のターン!…手札から【E・HERO バブルマン】を召喚!フィールドに他のカードが無い為、【バブルマン】の効果で2枚ドローする!」

 

 

【E・HERO バブルマン】

 ✩4 戦士族 ATK800 DEF1200

 

 

「………俺は【融合】を発動!手札の【クレイマン】と場の【バブルマン】を融合し──【E・HERO マッドボールマン】を守備表示で召喚!」

 

 水と土くれの戦士の力が合わさり、滑らかな球状のボディを持った泥団子の戦士が現れる。

 

 

【E・HERO マッドボールマン】

 ✩6 戦士族 融合 ATK1900 DEF3000

 

 

 守備力3000と最上級モンスターの攻撃にも耐えられる【マッドボールマン】での防御を試みたようだ。

 十代はこれでターンを終了した。

 

 

 十代:LP2500 手札×2

【E・HERO マッドボールマン】

 VS

 亮 :LP1600 手札×2

【サイバー・ツイン・ドラゴン】

 魔法罠:【タイムカプセル】

 

 

「俺のターン、ドロー!──この瞬間【タイムカプセル】を破壊することで、中に眠っていたカードが手札に加わる」

 

 地面より掘り起こされた柩が砕け散り、中に入っていたカードが露わになる。

 そのカードの正体を正確に予測できているのは、そもそものコントローラーである亮と、【サイバー流】デッキに関する知識を持つ昴。そして、亮の弟である翔だけだった。

 

「十代……このデュエルもいよいよ大詰めだ」

 

「ああ!一体どんな攻撃を仕掛けてくるのかワクワクするぜ!」

 

「そうだろうな……キミはキミの持てる力を存分に出し切っている。そんなキミに対して、俺も全力を出すことができた──キミのデュエルに敬意を表する」

 

 十代に向けられているようで、その実翔に向けたものにも聞こえる亮の言葉。

 決闘者たるもの、対戦相手への敬意を忘れてはならない──亮が翔に伝えたかったのはそういう事だ。

 

「行くぞ十代──!速攻魔法【融合解除】発動!【サイバー・ツイン・ドラゴン】をデッキに戻し、融合素材となった【サイバー・ドラゴン】2体を墓地から特殊召喚!」

 

 双頭竜がその体を2つに分ち、2体の機械竜に戻る。

 

「そして手札から魔法発動──【パワー・ボンド】!」

 

 これこそ、亮が【タイムカプセル】から発掘したカード──このカードが発動された瞬間、昴はこのデュエルの勝者を悟った。

 

 

「このデュエル───十代の負けだ」

 

 

「俺はフィールドにいる2体の【サイバー・ドラゴン】と、手札にいる3体目の【サイバー・ドラゴン】を融合する──現れろ!【サイバー・エンド・ドラゴン】!!」

 

 3体の機械竜が強力な電流による熱で溶接融合され、巨大な3つ首のドラゴンへと変貌する。

 首が増えただけ、と言えばその通りなのだが、先程の【サイバー・ツイン】と比べても圧倒的なまでのプレッシャーを放っていた。

 

「更に【パワー・ボンド】の効果により、攻撃力は2倍となる」

 

 

【サイバー・エンド・ドラゴン】

 ✩10 機械族 融合 ATK4000→8000 DEF2800

 

 

 

「攻撃力、8000……っ気張れぇ十代!このターンさえ凌げば、【パワー・ボンド】の効果でお前の勝ちだ!」

 

 隼人の言っていることは正しい。機械族融合モンスターに強力な殺意を与える【パワー・ボンド】だが、それ相応のデメリットもある。

 このカードを発動したターン終了時に、【パワー・ボンド】によって融合召喚されたモンスターは破壊され、その元々の攻撃力分のダメージを受けるのだ。

 

「だが【サイバー・エンド】は貫通効果持ちだ。いくら守備力が高い【マッドボールマン】でも、この攻撃は耐えられない……」

 

「バトルだ!【サイバー・エンド・ドラゴン】で攻撃!──エターナル・エヴォリューション・バースト!!」

 

 3つの(あぎと)から光が放たれる。圧倒的なまでの破壊の光は、守りに秀でた泥団子の戦士諸共十代を飲み込んだ。

 

 

 十代:LP2500→0

 

 

「十代が…負けた……!?」

 

 信じられないものを見たかのような明日香。その気持ちも分かる。これまでどのようなピンチに陥っても切り抜けてきたあの十代が、初めて地面に膝をついたのだ。

 

「へへっ…楽しいデュエルだったぜ。カイザー」

 

「フッ…ああ、俺もだ」

 

 そう言って去っていく亮。明日香がその後を追いかけたことで、昴もそれに続いた。

 十代と翔に付いていてやるべきかとも思ったが、今のデュエルで翔は何かを掴んだらしい。あの気弱な印象は鳴りを潜め、決意に満ちた表情をしていた。あの様子なら大丈夫だろう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「──どうだった、亮?」

 

「翔はいいアニキを持ったな」

 

「いつかちゃんと腹を割って話してやれよ?兄弟なんだろ」

 

「…それはつまり、翔と戦えということか?確かに、決闘者同士が語らうにはデュエルが一番だが……」

 

「……あー、はいはい。十代となんか通じ合ってた理由が今分かった」

 

 要するに、亮も十代と同じデュエルジャンキーということだろう。言いたいことはデュエルで伝える類の人間というわけだ。

 

「それより、キミはこっちにいていいのか?十代や翔たちと親しい仲なんだろう?」

 

「別に問題ないだろ。翔も吹っ切れたみたいだし、後は本人達の方で上手くやるだろうさ」

 

「……キミはいい奴だな。明日香から聞いていた通りだ」

 

「はいはい、どうも──って、は?何故明日香が出てくる?」

 

「ちょ、ちょっと亮──!」

 

「何故もなにも、以前からあの灯台で明日香にキミの話を聞かされていたんだ。授業でキミが儀式について弁舌を振るったことや、この間のテストでのデュエルとか──そういえば、その時の明日香(おまえ)は随分と楽しそうにしていたな?」

 

「亮!お願いだから少し黙って!」

 

「明日香……お前、何か変なこと言ってないだろうな?」

 

「言ってない!この間の雪乃のことでちょっとだけ嫉妬したとか、そんなこと言ってないわ!」

 

「嫉妬?……何に?」

 

「あっ…!~~~~ッ!!!!わ、私もう帰るっ!また明日っ!」

 

 早歩きで女子寮に向かっていった明日香。去り際にチラと見えたのだが、端正な顔がすっかり赤くなっていた。

 

 少しだけ考えた結果、明日香が顔を赤くする理由がひとつ浮かんだものの、「ないない」とすぐに削除する。

 

「最近の明日香は少し明るくなった。もしキミのお陰だというなら、友人として礼を言わせてもらう」

 

「そんなに大した事してないと思うんだが…一応受け取っておく」

 

「今日はもう遅い。早く戻るとしよう」

 

 亮共々ブルー男子寮に戻った昴だが、不意に腹の虫が鳴き始める。

 

「──そういや夕飯まだだったな」

 

「ん……言われてみれば。時間的に夕食も終わっているな」

 

「しゃあない、明日朝一で購買行って何か買って来るか」

 

 この空腹を満たすには流石に朝食だけでは足りないだろう。

 

「俺の部屋に購買のパンの買い置きがある。もし君さえ良ければ、いくつか渡そうか?」

 

「え、いや悪いだろ」

 

「遠慮はいらない。何故か後輩や友人から色々と食べ物を貰う事が多くてな。このまま手を付けないでいる方が勿体無いだろう」

 

 そう言われ、迷った末に亮の厚意に甘えることにした。彼が自室から持ってきた購買部で売っているパンを4~5個程受け取った昴は、一言礼を言って自分の部屋に戻ろうとする。

 

 

「──いつか、キミとも戦いたいものだな、昴」

 

「……それはこっちのセリフだ、カイザー亮」

 

 

 別れ際に交わしたこの言葉が現実のものとなるのは、まだ少し先の話である。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 その後、自室に戻った昴が早速パンを一口齧ってみると……

 

「……中身何も入ってないのか」

 

 所謂「具なしパン」。おしゃれな言い方をすれば「プレーン味」というやつだ。

 まぁたまには悪くないと思いながら具なしパンを食べ終え、2つ目に手を付ける。

 

「ん……これも具なし……?」

 

 ……嫌な予感がした。一先ず今開けた2つ目は置いておき、3つ目、4つ目のパンを半分にちぎってみると……

 

 

「──コレ全部具なしパンじゃねぇか!」

 

 

 昴は知らなかったのだ……実は亮は食べ物の好き嫌いが激しいということを。

 




マッドボールマンを「泥団子の戦士」と表すことにジワってしまう……w


それはさておき、制裁タッグデュエルどうしましょうね?
裏ではこんなことが起きていた…みたいな感じにするか、それとも制裁タッグの後日談にするか…いっそ日常回ってのも有りですかね?


そして…そしてそしてぇ!

やっと明日香にまともなヒロインムーブをさせられた気がする……っ!
ナイスだ天然カイザー!


お気に入り・評価・感想などくださった皆さん、ありがとうございます!
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。