遊戯王~(GXの)アカデミアに転生~   作:不可視の人狼

2 / 30
儀式召喚

「あっ…あの人──」

 

 天上院明日香は、たった今デュエルエリアに出てきた少年に見覚えがあった。試験が始まる前、通路の奥で1人デッキを弄っていた彼だ。

 

 時間ギリギリまでデッキに触っていたからつい声をかけてしまい、慌てて駆けていった時には大丈夫なのかと心配したが、その実彼は筆記試験10位と中々に優秀だったらしい。

 

「知り合いか?明日香」

 

「知り合いって程ではないんだけど、ちょっとね……」

 

 隣に立っていたブルーの生徒──丸藤亮も、明日香の視線を追う。

 

「珍しいな。お前が見ず知らずの男を気に止めるとは」

 

「そういうんじゃないわよ。ただ、人は見掛けに拠らないものだなって思っただけ」

 

「まあ、何はともあれここから上位10人のデュエルだ。有望な新入生がいるか、見ものだな」

 

 ざわめきの中、また新たな決闘が始まろうとしていた。

 

 

 

 

 

 

 

「──君が10番の生徒だね」

 

「…はい、加々美昴です。よろしくお願いします」

 

「うむ。実技試験デュエルは君たちの実力を測るためのものだ。合格に勝利は必須条件ではないが、私を倒すくらいの気持ちでかかってきなさい」

 

「分かりました」

 

「先攻は受験生と決まっている。もし希望すれば後攻にすることもできるが、どうするね?」

 

「そのままで大丈夫です」

 

「そうか……では全力で来なさい!」

 

 

「「決闘(デュエル)!!」」

 

 

 昴 :LP4000 手札×5

 

 VS

 

 試験官:LP4000 手札×5

 

 

「(この頃は先攻ドロー有り、っと)……俺のターン、ドロー。……俺はモンスターをセット、更にカードを1枚伏せてターンエンド」

 

 

 昴 :LP4000 手札×4

 セットモンスター×1

 伏せ×1

 VS

 試験官:LP4000 手札×5

 

 

「慎重な滑り出しだな……私のターンだ、ドロー!…私は【ブラッド・ヴォルス】を召喚!」

 

 

【ブラッド・ヴォルス】

 ✩4 獣戦士族 ATK1900 DEF1200

 

 

「そして魔法(マジック)カード【手札抹殺】を発動!お互い手札を全て墓地に捨てて、同じ枚数だけデッキからドローする。私も君も、4枚捨てて4枚ドローだ」

 

 少し苦い顔をしながら手札を入れ替えた昴は、新しい手札を見てこれなら大丈夫だと気を持ち直す。

 

「バトルフェイズ!【ブラッド・ヴォルス】で裏守備モンスターを攻撃!」

 

 黒い鎧を身に纏った戦士が、巨大な斧で昴のセットモンスターに攻撃を仕掛ける。

 

「俺がセットしていたモンスターは【リチュア・エリアル】──リバース効果で、デッキから【リチュア】モンスターを1体手札に加える」

 

 

【リチュア・エリアル】

 ✩4 魔法使い族 ATK1000 DEF1800

 

 

 とんがり帽子を被った水色の髪の少女が、手にした杖で獣戦士の攻撃を受け止める。やがて力で押し負けた【エリアル】は破壊されてしまうが、守備表示のため戦闘ダメージは発生しない。

 

「初めて見るモンスターだな……私はこれでターンエンド。しかしこの瞬間、【手札抹殺】で墓地に送られた【暗黒のマンティコア】の効果が発動!【ブラッド・ヴォルス】を墓地に送り、自身を特殊召喚!」

 

 

【暗黒のマンティコア】

 ✩6 獣戦士族 ATK2300 DEF1000

 

 

「(【生還の宝札】が無くてよかった……まさか【エクゾ】は入れてないだろうが)」

 

 

 昴 :LP4000 手札×4

 伏せ×1

 VS

 試験官:LP4000 手札×4

【暗黒のマンティコア】

 

 

「俺のターン、ドロー!俺は手札から魔法(マジック)カード【ワン・フォー・ワン】を発動!手札1枚を捨てて、デッキからレベル1のモンスター──【鰤っ子姫(ブリンセス)】を特殊召喚!」

 

 昴の呼び声に応じて姿を現したのは、黄色い鱗を持った1匹の鰤。アクセサリーの珊瑚で頭を飾っており、試験官と周囲の人々にファンサービスの投げキッスを振り蒔く。

 

 

【鰤っ子姫】

 ✩1 魚族 ATK0 DEF0

 

 

 次の瞬間、方々から笑い声が聞こえてきた。その内容たるや、散々な言いようだ。

 

 

 ──「なんだよあのモンスター」「攻守ともにゼロなのに、わざわざ攻撃表示で出すとは」「何であんな弱いカード入れてるのかしら」──

 

 

 確かにステータスこそ低いが、このカードの真価はそこではない。打点至上主義の連中に目に物見せるべく、昴はデュエルを続行する。

 

「【鰤っ子姫】の効果!自身を除外することで、デッキからレベル4以下の魚族モンスターを1体特殊召喚する──【リチュア・アビス】を守備表示で特殊召喚!」

 

【鰤っ子姫】が渦潮で自身を覆い隠すと、その中から鮫の頭を持つ人型モンスターが姿を現す。

 

 

 リチュア・アビス

 ✩2 魚族 ATK800 DEF500

 

 

「【リチュア・アビス】は召喚成功時、デッキから守備力1000以下の【リチュア】モンスターを手札に加える事ができる。この効果で【シャドウ・リチュア】を手札に加え、効果発動!【シャドウ・リチュア】を墓地に送り、デッキから【リチュア】儀式魔法を手札に加える」

 

「儀式魔法だと……!?」

 

「続けて(トラップ)カード【儀水鏡の瞑想術】を発動!今手札に加えた儀式魔法を相手に公開することで、墓地に存在する【リチュア】モンスターを2体回収する」

 

 俺の周囲に魔法陣が展開され、墓地に眠る【エリアル】と【シャドウ・リチュア】を手札に呼び戻す。

 

「さあ行こうか──手札から、儀式魔法【リチュアの儀水鏡】を発動!」

 

 カードをデュエルディスクにセットすると、ソリッドビジョンによって頭上に細やかな装飾の施された鏡が出現する。

 

「俺はフィールドにいる【リチュア・アビス】と、手札の【リチュア・エリアル】を墓地に送り、儀式召喚を行う──」

 

【エリアル】が淡い光を発する儀水鏡を捧げるように掲げ、【アビス】は自らの体を光に変えて鏡の中へ飛び込む。同胞の魂を内包した儀水鏡を【エリアル】が両腕で抱きしめると、鏡が一際眩く輝いた。

 

「──儀式召喚!降臨せよ、【イビリチュア・マインドオーガス】!!」

 

 光が収まると同時にフィールドに現れたのは、異形の怪物だった。上半身こそ【エリアル】の面影があるが、下半身はホウボウに似た六つ眼の魚類となっている。

 

 

【イビリチュア・マインドオーガス】

 ✩6 水族 儀式 ATK2500 DEF2000

 

 

 注視すればする程鳥肌が立つような姿に、会場の受験生・在校生だけでなく、昴の相手をしていた試験官までもが言葉を失った。

 

 そんなドン引き空気(フィール)をひしひしと感じる昴もまた、彼らに同情の意を禁じえない。

 正直に言えば、確かにかっこよくはない。どっちかっていうと気持ち悪い部類だろう。

 それでもアンデットとか昆虫とか爬虫類族よりは絶対マシだろと自分に言い聞かせ、プレイを続ける。

 

「…【マインドオーガス】の効果!儀式召喚成功時に、お互いの墓地からカードを合計5枚まで選んでデッキに戻す。──マインド・リサイクル!」

 

 昴と試験官の墓地に存在するカードが宙に浮かび上がり、その内3枚に明かりが灯された。

 昴の墓地から【サルベージ】と【儀水鏡の瞑想術】、試験官の墓地からは、放置しておくと厄介な【超電磁タートル】がそれぞれ持ち主のデッキに還っていく。

 

「更に【リチュア・チェイン】を通常召喚。効果でデッキトップ3枚を捲り、その中から儀式魔法か儀式モンスター1枚を手札に加える」

 

 

【リチュア・チェイン】

 ✩4 海竜族 ATK1800 DEF1000

 

 

 捲れたカードは【リチュア・ビースト】【イビリチュア・テトラオーグル】【浮上】の3枚。

 その中から【テトラオーグル】を手札に加えて、残りは好きな順番でデッキの上に戻した。

 

「バトル!【マインドオーガス】で【暗黒のマンティコア】を攻撃!──ハイドロ・ガイスト!」

 

【マインドオーガス】が手に持った杖を掲げると、先端の儀水鏡から湧き出た霊魂が屈強な獣戦士に襲いかかる。豪腕と尻尾で懸命に霊魂を振り払おうとする【マンティコア】だったが、実体を持たない魂に飲み込まれてしまう。

 

 

 試験官 LP4000→3800

 

 

「続けて【リチュア・チェイン】でダイレクトアタック!」

 

「ぐうっ──!」

 

 投げつけられた鎖が試験官を貫き(勿論ソリッドビジョンなので怪我はない)、更にライフが減算されていく。

 

 

 試験官 LP3800→2000

 

 

「カードを1枚伏せて、ターンエンド」

 

 

 昴 :LP4000 手札×2

【イビリチュア・マインドオーガス】

【リチュア・チェイン】

 伏せ×1

 VS

 試験官:LP2000 手札×4

 

 

 

「──あの10番、やるな。【手札抹殺】で試験官の墓地に落ちたカードの中に、バトルフェイズを強制終了させる【超電磁タートル】があったことを即座に見抜き、あの儀式モンスターの効果で封じてみせた」

 

「ええ。それに儀式召喚は本来手札の消費が激しい上に、召喚までもっと時間がかかるはずよ。なのに、僅か3ターン目でもう儀式モンスターを召喚するなんて…何者なのかしら、彼」

 

「フッ……お前も中々いい勘を持っていたみたいだな、明日香」

 

「全くの予想外だけどね」

 

 昴のデュエルをジッと見つめる明日香は、不思議と目が離せずにいた。

 

 

 

 

「私のターン!手札から魔法カード【死者蘇生】を発動!更に【早すぎた埋葬】も発動し、墓地のモンスターを2体蘇生する!甦れ【暗黒のマンティコア】、【ブラッド・ヴォルス】!」

 

 試験官のフィールドに、2体のモンスターたちが並び立った。前世では強くて禁止カードだった【早すぎた埋葬】が、この頃はまだ現役だったことを思い出す。

 

 ……本当なら【蘇生】の効果を処理してから【埋葬】を発動しなければいけないのだが、デュエルディスクがちゃんと処理してくれているのか警告音も何も鳴らないのでスルーした。

 

「早くも私のライフを半分削ったのは見事と言う他ない。だがそれもここまでだ!永続魔法【一族の結束】を発動!私の墓地に存在するモンスターの種族が1種類だけだった場合、自分フィールドにいる同じ種族のモンスターの攻撃力は800ポイントアップする!」

 

 試験官の墓地にいるのは【イグザリオン・ユニバース】と【ミノケンサテュロス】──どちらも獣戦士族のモンスターだ。よって、試験官のモンスターはどちらも攻撃力が上昇する。

 

「君のモンスターの効果を逆に利用させてもらった。これで攻撃力はこちらの方が上!バトルフェイズだ!行け、私のモンスターたち!」

 

「攻撃宣言時、罠発動!【狡猾な落とし穴】!フィールドに存在するモンスターを2体破壊する!」

 

 攻撃に踏み込もうとしていた2体の獣戦士は、突如ポッカリと空いた大穴に吸い込まれていく。

 

 

 

「──なるほどな。10番はこの為に」

 

「どういうこと?」

 

「あの儀式モンスターの効果で、10番が自分の墓地から戻したカードを覚えているか?」

 

「確か…【サルベージ】と、その前に使った罠カードよね」

 

「そうだ。【狡猾な落とし穴】は、自分の墓地に罠カードが1枚もない状態でなければ発動できない特殊なカード──奴は試験官の反撃に備え、あらかじめ下準備を終えていたわけだ。デッキが試験用とはいえ、デュエルアカデミアの教師のプレイングを先読みするとはな」

 

 

 

「……私はこれでターンエンドだ」

 

 

 昴 :LP4000 手札×2

【イビリチュア・マインドオーガス】

【リチュア・チェイン】

 VS

 試験官:LP1200 手札×2

 

 

「(え、罠1枚も引いてないのか…?)俺のターン。メインフェイズをスキップして、バトルフェイズ!【マインドオーガス】でダイレクトアタック!」

 

 振り下ろされた杖が試験官を直撃し、残るライフポイントを消し去った。

 

「おめでとう。試験デュエルは君の勝利だ」

 

「…ありがとうございました」

 

 

 

 

 

 

 

 あまりにあっさりと勝ち過ぎて釈然としなかったが、とりあえず合格は確実なのでそのまま客席に戻る。

 妙に周りからの視線が多い気がして、試験前にデッキを弄っていたあの場所へ退避しようと足を速めた昴の前に、2人の少年が立ちはだかった。服装からして同じ受験生だろうか。

 

「なぁお前!さっきのデュエル凄かったぜ!」

 

「あ、ああ…そりゃどうも」

 

「儀式召喚なんて僕初めて見たよ…あのデュエルキング・武藤遊戯が使ってた【カオス・ソルジャー】みたいで、かっこよかったなぁ…!」

 

「そ…そうか?」

 

「あ、そうだ!さっきお前が使ってた儀式モンスター、見せてくれよ!」

 

「いいけど……」

 

 デッキケースから【マインドオーガス】を取り出し、目の前の少年たちに見せる。

 

「こいつがお前のフェイバリットモンスターか!」

 

「うーん…でもやっぱり、ちょっと怖いよ……」

 

「ハハ……まあ、長く使ってるとそうでもないさ」

 

「そうだぜ。人のフェイバリットカードを悪く言うなよ」

 

「そ、そんなつもりじゃ…ごめんよ」

 

「別に気にしてない」

 

「俺、遊城十代!よろしくな!」

 

「ぼ、僕は丸藤翔っていうんだ。よろしくね」

 

「加々美昴。こちらこそ、よろしく」

 

 差し出された十代の手を取ろうとしたところで、昴の腕に何かがぶつかった。

 

「ああ、すまない。不注意だった」

 

 そう謝罪してきたのは、白い制服を着たオールバックの受験生だった。どうやら左腕につけているデュエルディスクが当たってしまったらしい。

 

「キミ、さっきデュエルしてた三沢大地君だよね?凄かったよ最後のコンボ!さすが筆記試験1位だね」

 

「まあな。だけど、そこの彼も随分早い内に決着をつけたようじゃないか。戻ってくる途中、皆噂してたよ。儀式モンスターを使ってノーダメージで勝った受験生がいた、ってね」

 

 そんなに注目されるようなことだっただろうか。少なくとも前世でのデュエルと比べれば至極真っ当に"デュエル"をしたつもりだったのだが。

 

「確かに、お前たちは受験生の中でも2~3番目くらいに強いと思うぜ?」

 

「どうして?だって三沢君は筆記1位なんだよ?」

 

「だって、1番強いのは俺だからさ。筆記試験だけで決闘者(デュエリスト)の実力が決まるわけじゃないだろ」

 

 自信有りげにそう言い切ってみせた十代は、アナウンスで自分の名前が呼ばれたのを聞いて意気揚々とデュエルエリアへ向かっていった。

 

「面白い奴だ。俺が本当に2番だとするなら、君は11番ってことになるが、いいのかい?」

 

「俺は別に筆記試験受け……るだけ受けただけで、順位とか拘りないしな。その点に関しちゃ、十代と同意見だ」

 

「やっぱり優秀な人は考える事が違うんだなぁ…僕なんか119位で落ち込んでたのに」

 

「……なあ三沢、筆記ってどんな問題出たんだっけ」

 

「覚えてないのか?デュエルのルールやカードに関する基本的な問題から、テキストや効果を答える問題が出たんだ。中には通常モンスターのフレーバーテキストを正確に答えないといけない問題もあったな」

 

 三沢が教えてくれた問題を実際に解くところを想像してしまい、昴は軽い目眩に襲われる。ルールやカードの種類ならまだしも、通常モンスターのフレーバーを一字一句間違えるなというのはさすがに玄人向けというか、意味があるのだろうか?

 

 ……いや、我らが【モリンフェン】様のフレーバーなら有りか。

 

「ってか、それ答えられたんだな。それだけでもすごいと思うぞ」

 

「決闘者として基本的な知識さ──それより、1番くんのデュエルが始まるみたいだぞ」

 

 三沢と翔は十代が立つデュエルエリアに目を向ける。その向かいには、デュエルアカデミア実技担当最高責任者クロノス・デ・メディチが仁王立ちしていた。

 クロノスのことを知っている者ならば、見逃す手はないと注目するところだが……

 

 

「(マジで?じゃあ俺決闘者じゃなかったのか……?あれぇ、決闘者って、なんだっけ)」

 

 

 十代が【フレイム・ウィングマン】でデュエルに大勝利するのを他所に、昴はそもそも決闘者とはどのような存在なのかという哲学染みたことを1人悶々と考えていた。

 




カイザーの解説とか、GX時代に言いそうな発言をちょこちょこ挟みましたが……自分で書いてて「こんなこと言うか?言う…のかぁ?」って気持ちになってました。
まあGX見てた頃コントロール奪取系の効果使ったらとりあえず「自分のモンスターで倒される気分はどうだ?」とか言う人多かった印象なんで、現状この路線で行きます。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。