遊戯王~(GXの)アカデミアに転生~   作:不可視の人狼

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吸血鬼の恐怖、開かれし幻魔の扉

 三幻魔のカードを解放する為、七精門の鍵を狙うセブンスターズ。その第1の刺客であるダークネスとのデュエルが行われた後日──目を覚ました昴が最初に見たのは、保健室の天井だった。

 

「ここは……」

 

 徐々に視界が鮮明になっていく。壁の時計を見ると、時刻は夜中を指していた。

 一体どれだけの時間こうして眠っていたのか。体を起こそうとした昴がベッドに手を付くと……

 

「──ぁんっ」

 

「──ん?」

 

 妙に扇情的な嬌声と、手元にベッドとはまた違った柔らかい感触が。

 

「んっ、もう……いけない子ね、いきなり鷲掴みにするなんて。でもそうやって情熱的に求められるのも悪くないかも……」

 

 中途半端に捲れた布団の下には、見覚えのある藤色の髪が覗いている。その時点で、大方の状況は察せた。

 

「お前、何してんの……?」

 

「見て分からないかしら?体温を分け与えていたのよ。未来の伴侶だもの、当然でしょう?」

 

 ベッドに潜り込んでいた雪乃は、昴の身体を跨ぐ形で覆い被さると、妖艶な笑みを浮かべてにじり寄ってくる。

 

「頑張ったいい子には、ご褒美をあげないと──」

 

「ご褒美、って……」

 

「男と女が同じベッドで寝てるのよ?この状況でする事なんて、1つしかないじゃない」

 

 雪乃の白く柔らかい手が昴の頬を撫でる。均整のとれた美貌が近づいたかと思えば──

 

 

 チュッ

 

 

 と、額に柔らかい感触。思わず目を瞑ってしまっていた昴は、恐る恐る目を開く。

 

「ふふっ、相変わらず可愛い反応ね──冗談よ。ここから先はまた今度、ね」

 

 流石の雪乃も、いつセブンスターズの襲撃を受けるか分からないこの状況をしっかり認識しているらしい。曰く、こうして昴の傍にいたのも、次なる刺客に寝込みを襲われる危険性を鑑みてのことだったようだ。……尤も、ベッドの中にまで潜り込む必要があったのかは疑問だが。

 

「それより、あれから──俺がダークネスと戦ってからどれだけ経った?」

 

「丸3日ってところかしら」

 

「その間、誰か奴らと戦ったか?」

 

 昴の問いに、雪乃は神妙な面持ちで閉口する。まさか、昴が寝ている間に誰かが闇のデュエルを……?

 

「……結論から言えば、イエスよ。そして──クロノス先生が敗北したわ」

 

「なっ……おい待て、何でクロノス先生がデュエルしてるんだ!?あの人は鍵を持ってないだろ!」

 

 確かにクロノスは鮫島校長が当初集めた、鍵を守る7人の内の1人だった。しかし乱入してきた雪乃がその椅子に座った事で、クロノスは大徳寺共々生徒達のサポート役に回ったはずだ。

 

「ええ、その通りよ。けれど──ここからは、順を追って話しましょう」

 

 昴がダークネスに勝利したその翌日からだ。学内では「夜中の湖に吸血鬼が出た」という噂が囁かれていた。タイミング的にも、これはセブンスターズの次なる刺客であると睨んだアカデミア陣営は夜中の湖に出向き、噂の吸血鬼──カミューラと対峙。彼女本人の指名で、当初は亮が相手を務めるはずだったのだが……

 

 

 ──ストップなノーネ!私は闇のデュエルなんて眉唾を信じるつもりはありませンーガ、シニョール加々美がああなった以上、君達生徒に危険なデュエルをさせるわけにはいきませンーノ!

 

 

 と、名乗りを上げたのがクロノスだったというのだ。頑として譲らないクロノスに、カミューラは渋々ながらこれを承諾。前哨戦とも言えるデュエルが行われた。

古代の機械(アンティークギア)】を駆使した巧みな戦術で善戦するクロノスだったが、何度倒しても蘇るカミューラのアンデットデッキの前に惜敗を喫してしまう。その結果……

 

「……クロノス先生は、魂を人形に封印されてしまったわ」

 

「……ある意味、俺が原因か。俺がこんな無様な姿を晒してなければ……」

 

 闇のデュエルが危険なものであることに変わりはない。だからこそ、経験者である自分か十代が矢面に立ち続けるべきだと昴は予てより思っていた。その点ではクロノスと同じ考えだったと言えるだろう。……セブンスターズ側が相手を指名するケースを考慮していなかった事もあり、楽観的な考えとも取れるのだが。

 

「必要以上に自分を責めるのは止しなさい。それに、少しは私達のことを信用して欲しいものね。あなたとダークネスの戦いを経て、私達は闇のデュエルがどれほど危険なものかを知った。それでも、誰ひとりとして怖気づいた者はいなかったわ──カイザー亮もね」

 

「……まさか」

 

「ええ。今夜カミューラと戦うのは、丸藤亮よ」

 

「カイザーが……」

 

「アカデミアの帝王の実力は、あなたも理解してるはずよ」

 

 直接目にしたのは1度だけだが、亮のデュエルは見事だった。魂を賭けた闇のデュエルともなれば、手加減など一切ない本気で臨むはずだ。亮の使用するサイバー流の本気……それがどれ程強力かは、昴とて骨身に染みている。

 

「そうだな……ッと」

 

「……まさか、行くつもり?」

 

「当然だ。せめて見届けなきゃな」

 

 嘆息した雪乃はベッドから出ようとする昴の身体を支える。保健室の出口に向かう途中、別のベッドに目が止まった。

 

「こいつは……」

 

「そういえば、まだ知らなかったわね。彼は天上院吹雪──明日香が探していた、実の兄よ。ダークネスに憑依されていたのを、あなたがデュエルに勝利したことで解放されたようね。命に別状は無いそうよ」

 

「そうか……なら、ボロボロになった甲斐もあったな」

 

「明日香も心配してたわよ。後でちゃんと挨拶しておきなさい」

 

 そう言って、昴と雪乃は戦いの地──吸血鬼の居城へと向かうのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 島の中に広がる大きな湖──その湖面に敷かれた不思議なレッドカーペットを渡った先に、その城はあった。廃墟同然の古ぼけた城の広間には、デュエルを見守る明日香や十代達の姿が。

 

「──昴!あなた、身体は大丈夫なの!?」

 

「まぁな。心配かけて悪かった──それで、カイザーのデュエルは?」

 

「これから始まる所だ。吸血鬼カミューラ……あのクロノス先生を破った実力は確かだが」

 

「なぁに、カイザーなら勝つさ!なんたって、俺を倒した決闘者なんだぜ!」

 

「フン、貴様のようなドロップアウトを倒した程度、自慢にもならんだろ──だが今日のカイザーは一段と気迫がある。あの吸血鬼、終わったな」

 

 万丈目が目を向ける先でカイザーと向かい合う相手──肩を大きく露出した赤いドレスを身に纏う美しい女。アレが話に聞く吸血鬼カミューラなのだろう。

 

「どうやら観客も揃ったようね。改めてルールを──勝者は次なる戦いへ、敗者はその魂をこの愛しき人形に封印される──覚悟はよろしくて?」

 

「御託はいい。始めるぞ」

 

 双方デュエルディスクにデッキをセットし、戦いの準備が完了する。

 

 

「「決闘(デュエル)!!」」

 

 

   亮   :LP4000 手札×5

   VS

 カミューラ:LP4000 手札×5

 

 

「先行は頂くわ。ドロー!私は【ヴァンパイアの幽鬼】を召喚!」

 

 カミューラが召喚したのは、ボロボロの黒装束に身を包んだ怪しげな吸血鬼。その姿は名前の通り幽霊の様に霞んでおり、赤い双眸が存在感を放っている。

 

 

【ヴァンパイアの幽鬼】

 ☆3 アンデット族 ATK1500 DEF0

 

 

「召喚成功時、手札の【ヴァンパイアの眷属】を墓地に送って【ヴァンパイアの幽鬼】の効果を発動するわ。デッキからレベル4以上の【ヴァンパイア】を手札に加え、更にレベル2以下の【ヴァンパイア】を墓地に送る」

 

 アンデット族はとりわけ墓地を利用した戦術を得意とするデッキだ。サーチに加え、2枚の墓地肥やしは大きなアドバンテージと言える。

 

「続けて永続魔法【ヴァンパイアの領域】発動!」

 

 突如として、城の中に怪しげな光が差し込む。ひび割れた壁の隙間から空を見上げれば、今まで優しい光で地上を照らしていた月が赤黒く変色していた。その色は正しく、カミューラの操る【ヴァンパイア】の瞳と同じ血のような赤──

 

「【ヴァンパイアの領域】の効果!ライフを500払い、私はこのターンもう一度だけ【ヴァンパイア】を通常召喚出来る。よって【ヴァンパイア・ソーサラー】を召喚!」

 

 

 カミューラ:LP4000→3500

 

 

【ヴァンパイア・ソーサラー】

 ☆4 アンデット族 ATK1500 DEF1500

 

 

「更に魔法カード【ヴァンパイア・デザイア】!場の【幽鬼】を墓地に送り、墓地の【ヴァンパイアの眷属】を守備表示で特殊召喚!」

 

【幽鬼】の身体が無数のコウモリとなって立ち消え、再凝集したコウモリ達は元とは違う、4足歩行の獣の姿を形作った。

 

 

【ヴァンパイアの眷属】

 ☆2 アンデット族 ATK1200 DEF0

 

 

「カードを1枚伏せてターンエンド──さ、あなたのターンよ」

 

 

   亮   :LP4000 手札×5

   VS

 カミューラ:LP3500 手札×1

【ヴァンパイア・ソーサラー】

【ヴァンパイアの眷属】

 永続魔法:【ヴァンパイアの領域】

 伏せ×1

 

 

「俺のターン、ドロー!」

 

 ドローしたカードを一瞥した亮は、すぐさま動き始める。

 

「魔法カード【エマージェンシー・サイバー】を発動!デッキから【サイバー・ドラゴン】を手札に加える。続けて魔法カード【おろかな埋葬】でデッキから【サイバー・ドラゴン・ヘルツ】を墓地へ。墓地に送られた【ヘルツ】の効果で、デッキから2枚目の【サイバー・ドラゴン】を手札に加える。そして手札から【サイバー・ドラゴン・コア】を召喚!」

 

 

【サイバー・ドラゴン・コア】

 ☆2 機械族 ATK400 DEF1500

 

 

 亮が召喚したのは、全ての【サイバー・ドラゴン】の(コア)となる素体。装甲も武装も持たない機械竜は戦闘能力こそ低いものの、通常の【サイバー・ドラゴン】には無い力を秘めている。

 

「【サイバー・ドラゴン・コア】は召喚成功時、デッキから【サイバー】及び【サイバネティック】と名のつく魔法・罠カードを1枚手札に加える事ができる」

 

「あら。沢山カードを使った割に、出てくるのはその可愛らしいおもちゃだけかしら?【サイバー・ドラゴン】は自分の場に他のモンスターが存在しない場合しか特殊召喚ができない──順番を間違えたわね」

 

「黙れ。クロノス教諭の魂を封じ込め、あまつさえそのデュエルを踏みにじった貴様とのデュエルを長引かせるつもりはない。サイバー流の力を思い知らせてやる──【パワー・ボンド】発動!」

 

「出た、カイザーの最強融合魔法!」

 

「早くも勝負を決めに行くつもりか!」

 

 後攻1ターン目にして早速の【パワー・ボンド】──1枚でデュエルを決着させる力を秘めたキラーカードの発動に、十代や三沢達も色めき立つ。

 

 

「俺は手札にいる2体の【サイバー・ドラゴン】と、フィールドの【サイバー・ドラゴン・コア】を素材に融合召喚!──現れろ!【サイバー・エンド・ドラゴン】!!

 

 

【サイバー・エンド・ドラゴン】

 ☆10 機械族 融合 ATK4000 DEF2800

 

 

 満を辞して現れた、サイバー流の頂点に君臨する三つ首の機械竜。その威光は闇のデュエルの中にあっても尚健在であり、猛々しい咆哮が古城に木霊する。

 

「お兄さん……」

 

 広間から亮の姿を見上げる翔は、驚きと感動を隠せずにいた。普段の亮のデュエルスタイルはリスペクトデュエル──相手を尊重し、その戦術を全て受け止めた上で倒すというものだ。しかし今回は違う。カミューラが布陣を整えるより先に【パワー・ボンド】で王手をかけた。

 先程の亮の言葉──「デュエルを長引かせるつもりはない」──こそが、リスペクト精神を排した「倒す為だけのデュエル」の証左……クロノスとのデュエルを踏みにじったカミューラに対する、亮の怒りの程を表している。

 

「確かに攻撃力4000のモンスターは強力だけど……少し勝負を急ぎ過ぎではなくて?【パワー・ボンド】が抱える大きなリスクは、あなたもよく知っているはずよ」

 

【パワー・ボンド】のデメリット──発動したターンのエンドフェイズに、このカードで融合召喚したモンスターの元々の攻撃力分ダメージを受けてしまう。そして【サイバー・エンド】の攻撃力は4000、未だ全快状態の亮のライフでさえ一撃で消し飛んでしまう。

 

「言われるまでもない。俺より先に、貴様のライフを削りきればいいだけの話だ──【パワー・ボンド】の効果で融合召喚した【サイバー・エンド】は、攻撃力が2倍の8000にアップする」

 

 

【サイバー・エンド・ドラゴン】

 ATK4000→8000 DEF2800

 

 

「【サイバー・エンド・ドラゴン】は守備モンスターを攻撃した場合貫通ダメージを与える──この意味が分かるな」

 

 亮が睨む先にいるカミューラのモンスター ──守備表示の【ヴァンパイアの眷属】は守備力0。【サイバー・エンド】の攻撃を受ければ実質ダイレクトアタックとなり、その一撃で亮の勝利が決定する。

 

「バトルフェイズ──!」

 

「勝負を急ぎ過ぎだと言ったはずよ──ッ!メインフェイズ終了前に、私の墓地に眠る【ヴァンパイアの幽鬼】の効果発動ッ!」

 

「何ッ!?」

 

「【ヴァンパイアの幽鬼】は、お互いのメインフェイズにライフを500ポイント払い墓地の自身を除外することで、【ヴァンパイア】を1体召喚することが出来る。私は場の【眷属】と【ソーサラー】をリリース!──目覚めの時間よ!【ヴァンプ・オブ・ヴァンパイア】ッ!!

 

 

 カミューラの呼び声に応じて現れたのは、怪しくも可憐な女吸血鬼。カミューラが残していた手札の最後の1枚だ。

 

 

【ヴァンプ・オブ・ヴァンパイア】

 ☆7 アンデット族 ATK2000 DEF2000

 

 

カミューラ:LP3000

 

 

「……確かに、相手ターンに召喚してきたのは驚いたケド、それでも攻撃力2000なら【サイバー・エンド】の敵じゃないんダナ!」

 

「ああ!生半可な壁モンスターで止められる程、カイザーの最強モンスターは甘くないぜ!」

 

 新たな【ヴァンパイア】の出現に面食らいつつも彼我のステータス差に安堵する隼人と十代だったが、その隣でただ1人、昴だけが切迫した表情を浮かべていた。

 

「ここで【ヴァンプ】だと……ッ!?カイザーッ!」

 

「ふふっ。生半可かどうか、教えてあげるわ──ッ!【ヴァンプ・オブ・ヴァンパイア】の効果発動!この娘は召喚成功時、自身よりも攻撃力の高い相手モンスター1体を魅了し、その力を我が物にできるのよ!」

 

 今亮の場に存在するのは【サイバー・エンド】のみ。その攻撃力は8000と【ヴァンプ】を大幅に上回っている。このままでは【サイバー・エンド】が吸血鬼の魅了の力で、【ヴァンプ・オブ・ヴァンパイア】の装備カードとなってしまう──!

 

 しかし亮もただ無策で【サイバー・エンド・ドラゴン】を召喚したわけではない。彼はこのデュエルアカデミアの頂点に君臨する帝王(カイザー)だ。当然、カミューラが何かしらの抵抗を見せてくるであろう事は予測済みだった。

 

「速攻魔法【融合解除】!──【サイバー・エンド】をEXデッキに戻し分離。融合素材となった2体の【サイバー・ドラゴン】と【サイバー・ドラゴン・コア】を攻撃表示で墓地から特殊召喚する!」

 

 本来、【サイバー・エンド】の融合素材は【サイバー・ドラゴン】を指定している為、派生モンスターである【コア】や【ヘルツ】といったモンスターは素材に出来ず、また【融合解除】で呼び戻すことも出来ない。しかしサイバー流のモンスター達はその大部分がフィールド・墓地に於いて【サイバー・ドラゴン】として扱う効果を有しているが故に、こうして自由自在に融合と分離を行うことが可能となっているのだ。

 

 

【サイバー・ドラゴン】

 ☆5 機械族 ATK2100 DEF1600

 

【サイバー・ドラゴン・コア】

 ☆2 機械族 ATK400 DEF1500

 

 

「──上手い!これで【ヴァンプ・オブ・ヴァンパイア】の効果対象から外れた!」

 

「しかも【サイバー・ドラゴン】の攻撃力はあの【ヴァンパイア】を上回ってる!」

 

「このまま総攻撃すれば、2600の大ダメージなんダナ!」

 

 カミューラの反撃を躱してみせた亮は、忌々しげに口元を歪める吸血鬼を指し示す。

 

「バトルだ!【サイバー・ドラゴン】で【ヴァンプ・オブ・ヴァンパイア】を攻撃!──エボリューション・バースト!!」

 

 亮が攻撃宣言をした瞬間──歪んでいたカミューラの口元が不敵な笑みに変わった。

 

「罠カード【ヴァンパイア・シフト】発動!その効果でデッキからフィールド魔法【ヴァンパイア帝国(エンパイア)】を発動するわ!」

 

 カミューラの発動したフィールド魔法によって、周囲の景色が塗り替えられていく──廃墟同然だった古城は在りし日の姿を取り戻し、吸血鬼の城を現代に蘇らせた。

 

「【ヴァンパイア・シフト】は私の場に存在するモンスターがアンデット族のみの場合、フィールドゾーンにカードが存在しなければ【ヴァンパイア帝国】を発動出来る罠カード──ついでに墓地の【ヴァンパイア】を復活させることも出来るけど、それはしないわ──必要ないもの」

 

【サイバー・ドラゴン】の放つ高出力レーザーが、【ヴァンプ・オブ・ヴァンパイア】に襲いかかる──!

 

「【ヴァンパイア帝国】は、場のアンデット族モンスターが戦闘を行うダメージ計算時のみ、攻撃力を500ポイントアップさせる──おもちゃのドラゴンを返り討ちになさい!【ヴァンプ・オブ・ヴァンパイア】!」

 

 放たれた閃光をひらりと躱した女吸血鬼は、その細身からは想像出来ない怪力で【サイバー・ドラゴン】の身体を真っ二つに引きちぎってみせた。無造作に投げ捨てられた機械竜の残骸は爆散し、亮に僅かながらも反射ダメージを与える。

 

「永続魔法【ヴァンパイアの領域】の効果で、私の【ヴァンパイア】達が戦闘で奪ったあなたのライフは、全て私のものとなる」

 

「ライフの吸収……なる程、吸血鬼らしい」

 

 

 亮:LP4000→3600

 

 カミューラ:LP3000→3400

 

 

「私のカウンターに対する【融合解除】を使ったタクティクス、褒めてあげる。流石、この中で1番タイプなだけあるわ──もっとも、この攻撃を凌いだ時点で私の勝ちは決まったようなものなのだけど」

 

「悪いが、俺にも好みくらいある。それと勘違いするな、デュエルはまだ終わりはしない──魔法カード【一時休戦】を発動し、お互いにカードを1枚ドローする。カードを1枚伏せてターンエンド」

 

 

   亮   :LP3600 手札×1

【サイバー・ドラゴン】

【サイバー・ドラゴン・コア】

 伏せ×1

   VS

 カミューラ:LP3400 手札×1

【ヴァンプ・オブ・ヴァンパイア】

 永続魔法:【ヴァンパイアの領域】

 フィールド魔法:【ヴァンパイア帝国】

 

 

「【一時休戦】で【パワー・ボンド】のデメリットを帳消しにすると同時に、次のターンも耐え凌ぐことは出来るが……正直、手詰まりだな。あのフィールド魔法がある限り【サイバー・ドラゴン】の高い攻撃力も意味を成さない。そして永続魔法でライフを吸収され続ければ、それだけ逆転も難しくなる」

 

「何言ってんだ三沢!カイザーはこんな程度で怯むような決闘者じゃないぜ!なぁ、翔!?」

 

「う、うん!お兄さんはあんな奴なんかに絶対負けない!」

 

「その通りよ。【サイバー・エンド・ドラゴン】は、なにも無敵のモンスターというわけじゃない。これまでのデュエルでも破壊されることはあったわ。それでも亮はアカデミア無敗の帝王として君臨し続けている──」

 

 明日香の言葉の続きは、各々の胸の中に自然と浮かび上がってきた。

 カイザー亮のエースモンスターは紛れもなく【サイバー・エンド・ドラゴン】だが、そのエースを失わせたからといって、亮に勝利できるわけではないのだと。

 

 明日香達と考えを同じくしてか否か──カミューラのターンが始まる。

 

「私のターン!──墓地の【ヴァンパイア・ソーサラー】を除外して効果発動!このターン中、私はレベル5以上の【ヴァンパイア】を召喚する際、一度だけリリースを無視できるわ」

 

「リリース無しで高レベルモンスターを……!」

 

 

来なさい!【竜血公(ドラクレア)ヴァンパイア】!!

 

 

 魔術師の助力を受けてフィールドに現れた、竜を従えし吸血鬼の公爵。手にした三叉槍から滴る赤黒い血を舌で舐めとる様は、これまで登場したどの【ヴァンパイア】よりも吸血鬼らしい獰猛さの中に、どこか気品を感じさせた。

 

 

【竜血公ヴァンパイア】

 ☆8 アンデット族 ATK2800 DEF2100

 

 

「【竜血公】の効果!召喚時にあなたの墓地のモンスターを2体、私のフィールドに守備表示で特殊召喚出来る!」

 

「そんな!お兄さんの【サイバー・ドラゴン】が!」

 

「それだけじゃないわ!【ヴァンプ・オブ・ヴァンパイア】の効果は、他の【ヴァンパイア】が召喚された時にも発動する──フィールドに残っている【サイバー・ドラゴン】も頂くわよ!」

 

 カミューラの効果が全て通れば、亮の場に残るのは【サイバー・ドラゴン・コア】のみ。墓地から復活する2体は守備表示な為戦闘に参加することはないが、【竜血公】と【ヴァンプ】だけでも亮のライフを削りきる事が可能だ。加えて【ヴァンプ・オブ・ヴァンパイア】は、自身の効果で装備したモンスターの元々の攻撃力を自らに加算する効果も有している。一転して高打点のモンスターが2体並ぶという劣勢も劣勢な状況が出来上がってしまうのだ。

 

 そしてカミューラは恐らく、バトルフェイズをスキップする筈。【一時休戦】でダメージが通らないのも勿論だが、迂闊に攻撃して亮のフィールドにモンスターが居なくなれば、【サイバー・ドラゴン】の特殊召喚条件を満たすことになる。【大嵐】など発動されようものなら【ヴァンパイア帝国】だけでなく、【ヴァンプ】の効果で折角装備したモンスターも消えてしまう。

 

──全ての効果が通れば、の話だが。

 

「罠発動──【サイバネティック・オーバーフロー】!」

 

「なんですって!?」

 

「アレは……前のターンに【コア】でサーチしたカードか!?」

 

「俺は墓地に存在するレベル5の【サイバー・ドラゴン】とレベル1の【ヘルツ】、そして場にいるレベル2の【コア】──異なるレベルの【サイバー・ドラゴン】達を3体除外。除外した数だけ、相手の場のカードを破壊する!」

 

 荒れ狂う3体の【サイバー・ドラゴン】達を以て亮が破壊したのは【竜血公ヴァンパイア】【ヴァンプ・オブ・ヴァンパイア】【ヴァンパイアの領域】の3枚。

これにより、魅了した相手を装備できなくなった【ヴァンプ・オブ・ヴァンパイア】の効果は不発。墓地の復活対象を失った【竜血公】の効果も不発。効果未使用の【ヴァンパイアの領域】を失った今、【竜血公】に次ぐ2度目の通常召喚も行えない。

 

「カミューラの戦術も敵ながら見事だったが、カイザーはその更に上を行っている……!」

 

「やっぱお前の兄ちゃんすげぇな、翔!」

 

「うん!」

 

 たった1枚の罠カードでカミューラの戦術を崩壊させた亮の戦術に皆が舌を巻く中、カミューラは忌々しさを隠そうともせず亮を睨みつけていた。

 

「やってくれたわね……!」

 

「俺の【サイバー・エンド】を上手く躱したつもりだろうが、その程度で勝った気になられては困る──サイバー流の力を思い知らせてやると言ったはずだ」

 

「っ……カードを伏せてターンエンドよ!」

 

 

   亮   :LP3600 手札×1

【サイバー・ドラゴン】

   VS

 カミューラ:LP3400 手札×0

 フィールド魔法:【ヴァンパイア帝国】

 伏せ×1

 

 

「俺のターン!【強欲な壷】を発動し2枚ドロー!……【異次元からの埋葬】で前のターンに除外した【サイバー・ドラゴン・コア】と【ヘルツ】を墓地に戻す。そして【サイバー・リペア・プラント】を発動!デッキから【サイバー・ドラゴン・コア】を手札に加え、これを召喚!」

 

 再び召喚された機械竜の素体の効果で、亮はデッキからサイバー流魔法・罠を手札に加える。

 

「俺は今加えた魔法カード【サイバーロード・フュージョン】を発動!」

 

「また融合召喚するつもり……ッ!?」

 

【サイバーロード・フュージョン】は、フィールド及び除外されている【サイバー・ドラゴン】達をデッキに戻すことで融合召喚を行う。先程の【異次元からの埋葬】で【サイバー・ドラゴン】を1枚だけ墓地に戻さなかったのは、この効果で融合素材にする為──サイバー流最強のドラゴンを、再びこのフィールドに呼び寄せる為だったのだ。

 

 フィールドにいる【サイバー・ドラゴン・コア】、そして同じくフィールドと、除外されている2体の【サイバー・ドラゴン】──3体の機械竜が融合し、亮のエースモンスターが再び姿を現す──!

 

 

舞い戻れ!【サイバー・エンド・ドラゴン】!!

 

 

 帰還した【サイバー・エンド】の行く手を阻むモンスターは存在しない。このまま攻撃力4000のダイレクトアタックが通れば、亮の勝利となる。

 

「バトル!【サイバー・エンド・ドラゴン】でダイレクトアタック──!」

 

「させないわッ──!罠カード【ヴァンパイア・アウェイク】!デッキから【ヴァンパイア・フロイライン】を守備表示で特殊召喚!」

 

 突如として古城に響く鐘の音。目覚めを告げる時の音に連れられ、どこからともなく現れた無数のコウモリ達が現れる。コウモリ達はやがて形を成し、傘を持った吸血鬼の令嬢となった。

 

 

【ヴァンパイア・フロイライン】

 ☆5 アンデット族 ATK600 DEF2000

 

 

「ならば【ヴァンパイア・フロイライン】を攻撃!──エターナル・エボリューション・バースト!」

 

「【ヴァンパイア・フロイライン】の効果!私はライフポイント3000を払い、【フロイライン】の攻守を3000アップする!」

 

 

 カミューラ:LP3400→400

 

 

【ヴァンパイア・フロイライン】

 ATK600→3600 DEF2000→5000

 

 

「守備力5000だと……ッ!?」

 

【ヴァンパイア・フロイライン】は、自分を含めたアンデット族が戦闘する際、ダメージ計算時に1度だけ発動できる強力な効果を持っている。100の倍数のライフを払うことで、払ったライフを戦闘を行うモンスターに分け与えることが出来るのだ。カミューラはこの効果で強化出来る上限値──3000ポイントものライフを【フロイライン】に与え、【サイバー・エンド】の攻撃力を上回る守備力を獲得。貫通ダメージを防いだ上で亮に1000ポイントの反射ダメージを与えることに成功する。

 

 

 亮:LP3600→2600

 

 

「くっ……まだこんな手を隠し持っていたか──カードを1枚伏せ、ターンエンド」

 

 亮がターンを終了すると同時に、カミューラを救った令嬢は姿を消す。【ヴァンパイア・アウェイク】で特殊召喚されたモンスターは、エンドフェイズに破壊されるのだ。

 

 

   亮   :LP2600 手札×0

【サイバー・エンド・ドラゴン】

 伏せ×1

   VS

 カミューラ:LP400 手札×0

 フィールド魔法:【ヴァンパイア帝国】

 

 

「はぁ…ッ…はぁ……ッ──本ッ当に、憎たらしい……可愛さ余って憎さ百倍とはこの事ね……!私のターンッ!」

 

 吸血鬼の本性を現したということか、美貌を歪めて牙を剥き出しにしたカミューラは、ドローしたカードを見て笑みを浮かべる。

 

 

「フフフ……おしおきよ──魔法カード【幻魔の扉】発動──ッ!」

 

 

 カミューラの背後に禍々しい巨大な扉が出現する。ただならぬ気配を感じた亮は身構えた。

 

「【幻魔の扉】……?あんなカード知らねぇぞ」

 

「俺もだ……」

 

 十代を始め、万丈目や明日香、三沢、教師である大徳寺すら初めて目にするという謎のカード。当然、昴もあんなカードは見たことがない。

 

「【幻魔の扉】は、発動時に相手フィールドのモンスターを全て破壊するわ……!」

 

「くっ……!」

 

 扉が開かれ、内より溢れ出た邪悪なオーラによって、亮のフィールドを守っていた【サイバー・エンド・ドラゴン】が破壊される。

 

「これだけじゃなくてよ?【幻魔の扉】の更なる効果──お互いの墓地にいるモンスターの中から1体、あらゆる召喚条件を無視して私のフィールドに特殊召喚できる!」

 

「馬鹿なッ……フィールドの一掃に加えて無条件の蘇生効果だとッ!?」

 

「嘘みたいな効果よね?でも本当よ──勿論、その代償は高くつくけど」

 

 不意に、邪悪な光を発する扉を背にしたカミューラの姿が2つに分かたれる。突如現れたもう1人のカミューラは、本物と揃って不敵に笑う。

 

「このカードの発動条件──それは、私自身の魂を三幻魔に預ける事──このカードは発動したが最後、デュエルに敗北すれば、使()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

「魂を捧げるカード……そうまでして鍵が欲しいというのか」

 

「うふふっ、やっぱりそう思うわよねぇ?ええ、私としても鍵は欲しいわ。けど、その為にいちいち命なんか賭けてられない──だからね、私考えたの。折角揃った闇のデュエルと闇のカード、最も相応しい使い方を……!」

 

 視線を下げたカミューラの視界には、このデュエルを見守っている昴達の姿がある。更にその中の1人と、バッチリ目が合った。

 

「決めたわ──カイザー(あなた)の弟に、私の身代わりになってもらいましょう!」

 

 

「っ──逃げろ、翔──ッ!!」

 

 

「えっ……?」

 

 突然名を呼ばれた翔は、反射的に兄の方を見上げる──その背後に忍び寄る吸血鬼の分身に、気づくのが遅れた。

 

 

「──ぁぐッ!?」

 

 

「翔ッ!」

 

 カミューラの分身に首筋を噛まれた翔は気を失い、助けようとした仲間達の手をすり抜けて本体の元へと連れて行かれてしまう。

 

「さぁ、三幻魔!差し出す生贄はこの子の魂よ!──【幻魔の扉】の効果で、あなたの墓地から【サイバー・エンド・ドラゴン】を特殊召喚──ッ!!」

 

 無理矢理墓地から呼び起こされた【サイバー・エンド】は、3つの(あぎと)を亮に差し向ける。サイバー流継承者である亮の心強いエースが、一転して彼を敗北へ追い込む脅威へと変わってしまった。

 

「バトル!【サイバー・エンド・ドラゴン】でダイレクトアタック!──エターナル・エボリューション・バースト!!」

 

「ッ──罠カード【次元幽閉】!攻撃してきた相手モンスター1体を除外する!」

 

 虚空に開かれた次元の裂け目が機械竜を飲み込み、亮は生きながらえることに成功する。

 

「ちっ、中々しぶといじゃない──でも忘れないことね?私がデュエルに敗北すれば、大事な大事な弟の魂が犠牲になるという事を」

 

 そう。【サイバー・エンド】を処理したところで、大勢は変わらない。翔の魂を人質に取られている以上、亮はカミューラにトドメを刺すことが出来ないのだ。加えて……

 

「──やはり妙だ。いくらなんでもおかしい」

 

「三沢……?」

 

「カミューラの使うデッキだ。以前クロノス先生とのデュエルで使用したカードが、ここまで全く見えていない。ただの1枚もだぞ?」

 

「それってつまり……あの時とは違うデッキを使ってるって事?」

 

「ああ、その事ね──」

 

 三沢と明日香の会話が耳に入ったらしいカミューラは、興味なさげに淡々と語る。

 

「デュエルとは情報戦──相手がどんなカードを使い、どんな戦い方をするか。それをいち早く掴んだ者が勝負を制するのよ。カイザー(本命)との戦いの前に手の内を晒すなんて馬鹿な真似、この私がする訳ないじゃない。たかが学校の教師程度、あのデッキで十分だったわ」

 

「待って……それじゃあなた、事前に私達のデッキを盗み見てたっていうの!?」

 

「あら、うっかり口が滑ったわ。別に隠す必要もないけれど──ええ、そうよ。私の可愛いコウモリ達が一生懸命働いてくれたお陰でね」

 

「くっそ──卑怯だぞカミューラ!何で正々堂々とデュエルしないんだッ!」

 

「正々堂々なんて言葉、聞くだけで虫酸が走るわ。そんなものに拘るから、ダークネスは負けたのよ。けど私は違うわ──さ、ターンエンドよ。あなたに何ができるかしら?」

 

 

   亮   :LP2600 手札×0

   VS

 カミューラ:LP400 手札×0

 フィールド魔法:【ヴァンパイア帝国】

 

 

「俺のターン──……っ!」

 

 亮がドローしたカードは【マグネット・リバース】──自分の墓地及び除外されているモンスターの中から、通常召喚できない機械族か岩石族のモンスターを特殊召喚する速攻魔法。

 このカードを発動すれば、前のターン【次元幽閉】で除外した【サイバー・エンド・ドラゴン】を復活させ、ダイレクトアタックでカミューラの残り少ないライフをゼロにできる。

 

「(だがっ……そうなれば俺の勝利と引き換えに、翔の魂が……ッ!)」

 

「どうしたの?何か出来るならやってご覧なさい!大事な弟の魂がどうなってもいいのならねぇ!」

 

「くっ……!」

 

 勝利か、翔の魂か──天秤に揺られ歯噛みする亮の耳に、小さな声が届いた。

 

おにい…さん……

 

「翔っ!」

 

「かっ…て──僕なんかの為に、負けちゃだめ──」

 

 翔にとって亮は憧れであり、目標であり、自慢の兄だ。アカデミアの皇帝(カイザー)として頂点に君臨する兄のことを、誰よりも誇りに思っている。一方で、そんな兄の弟である自分は最底辺のオシリス・レッドで腐るばかり。十代に亮との兄弟関係を明かしていなかったのだって「あのカイザーの弟がドロップアウト必至のダメダメ決闘者」という醜聞が付くのを嫌ったから──輝かしい皇帝の道に、自分という汚点がシミを残すことを拒んでいたからだった。

 

「大丈夫…どうなったって、僕はお兄さんを恨んだりなんか、しない……だから──っ」

 

「……あの制裁タッグデュエル以来──お前は、良いデュエルをするようになった。あの頃と見違えるようにな」

 

え……?」

 

「お前はもっと自信を持っていい。卑屈になるな。胸を張って前を向け──そうしなければ、勝てるデュエルも勝てない」

 

「おにい、さん──」

 

 ああ。兄はきっと、自分に最後の餞別を手向けてくれているんだ──そんな翔の思いは、最も最悪の形で裏切られる。

 

 

「──これからも、頑張れよ」

 

 

「ぇ──ダメだ、にいさんッ!!」

 

 

 翔の制止も空しく、亮は何もせずターンエンドを宣言した。

 

 

   亮   :LP2600 手札×1

   VS

 カミューラ:LP400 手札×0

 フィールド魔法:【ヴァンパイア帝国】

 

 

「ふふっ──アハハハハハハッ!そうよねぇ!大事な弟を犠牲にして勝つことなんて出来ないわよねぇ!」

 

「そ、そんな……!」

 

 絶望を滲ませる翔を尻目に、カミューラはカードをドローする。

 

「魔法カード【生者の書-禁断の呪術-】発動!あなたの墓地の【サイバー・ドラゴン・コア】を除外し、私の墓地から【竜血公(ドラクレア)ヴァンパイア】を特殊召喚!」

 

 アンデット族専用の蘇生カードで【ヴァンパイア】を復活させたカミューラは舌舐りをして亮を見据える。

 

「何か言い残すことはあるかしら?」

 

「………」

 

 亮は何も答えない。ただじっと黙するのみ。つまらなさそうに舌打ちしたカミューラは、自らのモンスターに攻撃を命じた。

 

「バトル!【竜血公ヴァンパイア】でダイレクトアタック!──ブラッディ・カズィクル・ベイ!」

 

【竜血公】の三叉槍が地に突き立てられたかと思えば、亮の周囲に血溜りが出現──その中から生えるようにして出現した血濡れの槍が、アカデミアの皇帝の身体を深々と貫いた──

 

「カイザーッ!!!」

 

「おにいさぁぁぁぁぁん──!!!」

 

 

 亮:LP2600→0

 

 

 デュエルが決着し、敗北に膝をついた亮の首から七精門の鍵が消失──カミューラの手に渡る。

 

 同時に──亮の瞳から光が消え、怪しげな光に包まれる。光はカミューラの持つ人形へと流れて行き、やがて亮を模った小さな人形へと形を変える。

 

「鍵と人形は確かにいただきましたわ──安心なさい、この子は私のコレクションとして、大事に大事に可愛がってあげる」

 

「カミューラ……ッ!」

 

 卑劣な手段で亮を倒したカミューラへ怒りを抑えきれない昴達は、揃って同じ言葉を口にしようとする──「次は自分が相手になってやる」と──しかしそれに先んじて、カミューラの前に進み出る者がいた。

 

「………」

 

「……へぇ、いい目ね。いたぶり尽くして全裸で土下座させたくなるくらい生意気な目だわ」

 

 静かにカミューラを見上げるその瞳が一切揺らぐことはない。ただただ真っ直ぐ、目の前の吸血鬼を捉えていた。

 

「いいわ。次の相手はあなたにしてあげる。でも今日はここまで……また次の夜に会いましょう──っふふ、アハハハハハハッ──!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 2戦目にしてセブンスターズへ初めて敗北を喫したアカデミア陣営は、揃って沈痛な面持ちでいた。

 自分達の中でも一二を争う──最強だとすら思っていたアカデミアの皇帝が敗北してしまったのだから、無理もない。

 

 何より1番傷ついているのは翔だ。亮のラストターン──あの目はきっと、勝利を掴む方法があったに違いない。にも関わらず、勝利よりも自分という重荷を優先させてしまった。その結果、魂を封印されてしまったのだ。自責の念に堪えないだろう。

 

 皆が気を落ち込ませる中で尚、湖に浮かぶ古城を見据える者がいた。昴はその者に声をかける。

 

「……本気、なのか?」

 

「ええ。皇帝が敗れたのなら、次に戦うべきは女帝……でしょう?弔い合戦なんて柄じゃないのだけれど」

 

 

 アカデミアの女帝──藤原雪乃は、来る戦いを待ち望む。必ずやあの吸血鬼を倒して見せると、心に決めるのだった。

 

 




いやはや…マージでお久しぶりです。死んだかと思ってたでしょう?私は思ってました。
最後の更新以降「私に書けるのか…?やれんのか?」とちょっとナイーブになりまして。
時間に任せてのほほんとマスターデュエルしたり読み専になっておりました。

更新が継続できるか、ハッキリ言って保証出来ませんが「気分が乗ったら書くかぁ」程度の気楽なスタイルで行こうかなと。
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