遊戯王~(GXの)アカデミアに転生~   作:不可視の人狼

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1話で2部構成、サザエさんっぽい方式でお送りします


補習の時間/昴先生のちょこっとデュエル学

 ☆

 

 しつこいようだが、デュエルアカデミアは学校だ。

 授業もあればテストもある。そして授業をサボったり、成績不振によって単位が足りないなんて事が起きれば、当然補習を受ける必要が出てくる。

 

 そしてそれは、セブンスターズとの闇のデュエルのダメージが抜けずに数日間保健室暮らしをしていた昴も例外ではなかった。──学内でもエリートとされるオベリスク・ブルーの生徒は進級に必要な単位やら出席日数が中々シビアで、本校に復帰した万丈目がブルーでは進級できない為レッドに異動したのは記憶に新しい──回復するなり目の前に積み上げられた補習用のプリントやら小テストやらで目が眩みそうになった。

 

「"Q.モンスターの種族は全部で何種類存在する?"──え~っと……サイキック族っていないよな?…いないよな?学内に使用者がいないだけで存在はしてるとかやめてくれよぉ…──あー、19……いや待て、幻神獣は?三幻神は込みなのかコレ?…くそ、注釈も何も書いてねぇし……考えろ、ここのオーナーは誰だ?そう、あの海馬瀬人だ。だったらオベリスクを回答からハブるような真似は……いやでもあの人が問題作ってるわけじゃないしなぁ……」

 

 補習2日目──今日も今日とてウンウン唸りながら回答欄を埋めていく最中、教室の扉が開く。

 

「──お疲れ様。調子はどう?」

 

「ん?──あぁ、明日香……ィや正直しんどい」

 

「確かここの授業、そんなに難しい事はやってなかったはずよ。授業を休んでたとはいえ、あなたならそう躓くような所じゃ……」

 

「あぁ、問題はそんな難しくないんだ、それは違いない。けど量が量だし偶にやたらニッチな問題入ってるしもうくっそ眠いし腹は減るし……はぁ」

 

 デュエルをしていれば日常である活字とのにらめっこも、脳みそフル回転で6時間ぶっ通しともなれば気も滅入る。そんな昴を見かねたのか、

 

「──はいコレ。購買で適当に買ってきたから、少し休憩しましょ」

 

「ありがてぇ……」

 

 ペンを置いた昴は、女王からの賜り物(サンドイッチ)ををありがたく拝領するのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

「ぁふ……」

 

「本当に眠そうね……夜更しでもしてたの?」

 

「あー、まぁそうだな……でも遊んでたわけじゃないぞ」

 

「何してたのよ?」

 

「家庭教師……的な?」

 

「家庭教師って、他のブルーの生徒に?」

 

「いや、早乙女に」

 

 さらりと出てきた聞き覚えのある名前に、明日香は数秒首を傾げてから、その人物に思い至った。

 

「早乙女って……早乙女レイ!?」

 

「そう。小5の身でアカデミアに乗り込んできた恋の暴走列車みたいな、あの早乙女レイだ」

 

「何であの子が?っていうか、どうして連絡先知ってるのよ?」

 

「ほら、帰ってった時に"卒業したらちゃんと入学する~"的なこと言ってたろ?アレ、本気で目指してるっぽくてな。もっと強くなりたい。って事で、今から勉強を始めようと思ったらしい。相当な気合の入り様だな──急に連絡してきた時はマジで驚いたけど」

 

 絶海の孤島であるデュエルアカデミアだが、オンラインならば本土と繋がることが出来る。レッド寮はともかく、ブルー寮であればその為の設備にも事欠かない。ここ最近──セブンスターズとの戦いが始まる少し前から、それを使って家庭教師の真似事をしていたのだ。

 向こうから声をかけてきた以上、知っていなければならない昴の連絡先に関してだが…PDAを返却する前に、履歴からIDをメモなりしていたのだろう。……そう考えると、レイはあの時点で既にこうするつもりだったという事になり、どこかゾクリとしたものが走るのだが。

 

「本当に大丈夫なの?こんな調子で家庭教師なんて。それにセブンスターズとの戦いも……」

 

「だから一応、俺の都合優先って事にはしてもらってる。まぁ家庭教師つっても毎日じゃないし、この眠気は主に昨日今日と続く補習のせいだからな。こいつらさえやっつけちまえばなんて事ァないさ──ごちそうさま。さぁて、もうひと踏ん張りだ」

 

 サンドイッチを完食した昴は今一度机に向かう。その間、明日香は集中する昴の横顔をじっと眺めていた。

 

 

 それから1時間弱が経過し……

 

 

「──終わったぁ……!」

 

 明日香の差し入れによる休憩が良い気分転換になったのか、ラストスパートは思っていたよりもスムーズに運んだ。全ての補習を制覇した昴は、椅子にもたれて天井を仰ぎ見る。

 

「お疲れ様」

 

「ああ。明日香も悪かったな、差し入れだけじゃなく、詰まった所手伝ってくれて。本当に助かった」

 

「気にしないで。兄さんの件のお礼もちゃんと出来てないし……」

 

「それこそ気にするな。明日香の兄さんが戻ってきたのは良い偶然の結果だ。自分の運を褒めてやれよ……俺…デュエルでかっただけだし──」

 

「それでもよ。あなたがあのデュエルで勝っていなければ、兄さんの魂は今もダークネスに囚われたままだったかもしれない。兄さんだけじゃない──あなたの身にも、もしもの事があったらって思うと……だから、私に出来ることなら──!」

 

 俯けていた顔を上げた明日香が見たのは、天井を見上げたまま寝落ちした昴だった。至って真剣な話をしていたつもりだったが、本人はあくまで気にしていない──それよりも補習との戦いの疲れから来る睡眠欲の方が勝ったらしい。呆れたように小さく笑った明日香は、聞こえていないと分かった上でそのまま言葉を続ける。

 

「──私ね。兄さんが戻ってきてくれたのは勿論だけど、それと同じくらい、あなたが無事でいてくれた事が嬉しかったわ。あなたにはずっと助けられてばかりね」

 

 明日香の脳裏に思い起こされる過去の記憶──雪乃をアカデミアに引き留めてくれた事、廃寮で謎の男に攫われた自分を助けてくれた事、決闘者猿に攫われたジュンコを助けてくれた事、墓守の一族に捕らわれた自分達を助けてくれた事──。

 

 他にも数々の思い出が浮かんでは消えていく中で、何故かやけに強調されたものがひとつ──定期テスト直前の出来事だった。

 

「(なっ、何であの時の事なんか思い出しちゃったのかしら……!?)」

 

 もっと他にあっただろう。と振り返ってみるが、どうにも例の記憶が頭の中から離れてくれない。それどころか、どんどん鮮明に思い出していってしまう。

 

 

 ──密着する2人の身体、すぐ近くで感じる彼の息、早まる心臓の鼓動、熱を帯びていく自分の身体──

 

 

「~~~~ッ!」

 

 半ば無理矢理に思考を打ち切る。ひとまず深呼吸して気持ちを落ち着かせた明日香は、自分の胸に手を当てて鼓動を感じる。思考は至って冷静だが、それとは裏腹に心臓は早鐘を打ち続けていた。

 

「(今──今、なら……)」

 

 周囲を見回す。教室には自分達以外誰もいない。誰かが廊下を歩いている気配も無い。正真正銘、2人きり。

 

 

 ──()なら──

 

 

 小さく息を呑んだ明日香は、眠りこける昴の顔を見つめる。無意識に足音を殺しながら1歩、2歩と近づき、無防備な寝顔をまじまじと見つめる。そして──

 

 

「っ…───」

 

 

 恐る恐る、昴と自らの唇を重ねた。初めて感じた微かな弾力に驚いてすぐ口を離した明日香は、つい先程まで触れ合っていた自身の口元を押さえる。

 

「(私…ッ、なんて事……!こんなのいけないわ、こんな──)」

 

 寝込みを襲うも同然な自らの行いを諌める明日香の脳裏を、再び過去の記憶が過ぎる──今度は、親友の声で。

 

 

 ──優等生もいいけれど、もっと自分に正直になりなさい。

 

 

「(こんな、の……)」

 

 自分に正直に──そんな親友の声が、明日香の理性を少しずつ、しかし着実に溶かしていく。

 

「(ダメ……ダメよ。こんなの、昴に悪いわ)」

 

 

 ──なぜ?

 

 

「(こんな、私の、か…勝手な欲求で……!)」

 

 

 ──じゃあ、どんな理由ならいい?

 

 

「(理由──り、ゆう……)」

 

 それは欲求に従いたい本能の囁きか、または溶けかけの理性が本能に同調した結果なのか──見つけた。

 

「(お礼……そう、よね…これはお礼、なんだもの──)」

 

 もう、天上院明日香は自分を止める事が出来ない。

 出来る事といえば、先程よりもしっかりと唇に伝わった感触を堪能する事。そして、このまま昴が目を覚ますまで唇を離したくないという欲求を抑え込む事だけだった。

 

「──…っはぁ、はぁ……!」

 

 心の奥底では名残惜しさを感じつつ口を離した明日香は、そのまま早足で教室を出て行く。幸か不幸か、昴が目を覚ましたのは、丁度明日香が教室を出て行った後だった。

 

「……エリアル、何ニヤニヤしてんだ?」

 

『べっつにぃ~?』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ☆

 

 ──某日の夕方、昴の部屋にて。

 

「──よし。それじゃ始めるか」

 

『うん、よろしくお願いします!』

 

 昴が向かうモニター越しに聞こえてくる可愛らしくもやる気に満ちた声は、昴の生徒である早乙女レイ。今日も今日とて昴先生の授業が始まる。

 

「さて、前回でデュエル初心者が学ぶような超基礎基本をさらい終わった訳だが……うん、全く問題ないな」

 

『当然!これでも1回アカデミアの編入試験受かってるんだから!』

 

「そう、俺はその事実をはっきり言って忘れていた。すまん。さぞ退屈な授業だったろう」

 

『……まぁ正直、うん。今更攻撃表示と守備表示とか、カードの種類教えられてもなぁ…って。あ、でもチェーンとかスペルスピードについてはいい復習になった』

 

「いや本当にすまん……まぁ終わった事は置いといて、だ。ここからはお前が俺に家庭教師を頼んできた日に言ってた言葉──もっと強くなりたい──という部分に焦点を当てていこうと思う」

 

『待ってました!で、何を教えてくれるの?強いデッキの作り方?それともすごい戦術とか?』

 

 

「まぁ落ち着け、そう慌てるな。今回のテーマはこれだ──"強さと上手さ"」

 

 

 モニターにでかでかと表示されたテーマに、レイは首を傾げる。

 

『……どういうこと?』

 

「まずは質問だ。早乙女、お前は強くなりたいと言ったが、具体的に()()強くなりたい?」

 

『どう、って……そりゃあ勿論、デュエルで勝てるように……えっと、あれ……?』

 

「うん。気づいたかもしれないが、今のお前はただ"強くなりたい"という漠然とした目標を打ち立てただけに過ぎない状態だ。その具体性──()()()()()()()()()()()()()()()()が不明瞭なままデッキや戦術の話をしても、十分な効果は期待出来ない。だから今回は、そこんトコを明確にしていこうと思う」

 

『なる程…分かった。──でも、それがこのテーマとどう関係する訳?』

 

「そうだな……まず大前提として、"強さ"と"上手さ"は広義の上じゃ同じものだ。どっちも目指すのは勝利だからな。それじゃあどう違うのかって話だが──ズバリ、(パワー)(テクニック)だ」

 

『パワーと、テクニック……あ、ちょっと分かって来たかも』

 

「流石、理解が早い──各地で行われてる大会の入賞者のデッキレシピをざっと見てみたんだが、やっぱり攻撃力の高いモンスターを並べて高火力で押し潰すパワーデッキが傾向として多い」

 

『つまり、その人達は強さ──モンスターの攻撃力を重視してるってこと?』

 

「そういう事だな。でも、だからといって技を重視するタイプが弱いなんて事はない。寧ろその逆──パワーデッキが幅を利かせる程、テクニック系のデッキは光ると、俺は思ってる」

 

『んー…でも、結局のところ相手のライフを削るのはモンスターなんだし、攻撃力の高いモンスターが多いパワーデッキの方が有利っぽいけど』

 

「よし。じゃあまずはパワー型の大まかな戦い方を見てみよう──」

 

 ──このタイプの戦い方は至ってシンプル。

 デカいモンスターを出して殴る。邪魔なカードは魔法・罠カードで破壊する。そしてデカいモンスターを出して殴る。この繰り返しだ。無論、今のはわかりやすさ重視の説明だが、究極的にはこう表していいだろう。

 

『これは分かり易いね』

 

「うん。別名"ビートダウン"──デュエルの1番ベーシックな戦い方だな。パワー型デッキの利点は、やる事がスッキリしてるからとにかく扱いやすい。サポートカードも選びやすいしな」

 

『攻撃力の高いモンスターで戦うから、相手の邪魔な伏せカードを破壊するカードとか、上級モンスターを早く出す為のカードを入れるんだね』

 

「その通り。じゃあ次は、テクニック型のデッキだ──」

 

 ──こちらはパワー型と違い、ゆっくりじっくり戦うスタイルと言えばいいだろうか。

 まず、基本的にモンスター同士の戦闘にはそこまでこだわらない。多彩なカード効果を駆使して、徐々にリソース差を広げて勝つデッキだ。

 

「"コントロール型"とも呼ばれるこのタイプの特徴は、デュエルの進捗に応じて戦い方を変える事にある」

 

『戦い方が変わる…?』

 

「まずデュエルの序盤は、相手のライフよりも()()()()()()

 

『カードを…って、それじゃ勝てないんじゃ……?』

 

「デュエルをするには、まずカードが無ければ始まらない。相手が召喚するモンスターや伏せカードといったものを、まずは処理していくんだ」

 

『でも、パワー型は強いモンスターを出す為のカードを多く入れてたりするんだよね?』

 

「そうだな。1体で2体分のリリースとなる所謂ダブルコストン効果だったり、カードの効果で特殊召喚してくることもあるだろう。テクニック型はそれにも対処していかなきゃならないし、当然押し切られる事もある」

 

『なんか、考えること一杯で大変そう……』

 

「実際その通りだ。特に、用意できる妨害の数が少ない序盤は、相手にとって"どこを妨害されたら嫌か"って部分を的確に見抜く必要がある。相手が苦労して召喚した上級モンスターを潰したり、手札を増やすカードを無効にしたりな。そうやって相手の使えるカードを削りながら、自分はカードを増やしていく。攻勢に転じるタイミングも見極めなきゃいけないから、正直言って玄人向けの戦術だな。上達までの道は長いが、その分ハマれば鬼のように強い。何より、その過程で得た知識と経験、戦術眼は、デュエルを続ける限り必ず役立つ──個人的には、決闘者人生で是非1度は触ってみて欲しいデッキタイプだ」

 

 勿論、これら2つのデッキタイプも各々で細分化することが出来る。魔法・罠で相手を抑えながらリリースを必要としない下級モンスターでさっさとライフを削りきる速攻デッキや、強力な1体のモンスターをひたすら維持して戦うデッキ等、戦い方は多岐に渡る。

 

『なる程…ただ"勝つ"ってだけでも、こんなに違いがあるんだ』

 

「さて、ここまで話した上でだ──早乙女、お前はどう強くなりたい?」

 

 画面の向こうで暫し考えるレイ。

 

『……これって、パワーとテクニック、どっちかに振り切らなくてもいいんだよね?』

 

「勿論。ただ、どちらか主軸にする戦術があった方が、作るデッキのイメージもし易くなると思う」

 

『──正直、まだ固まりきってはいないんだけど…でも、なんとなく見えた気がする』

 

「ま、何もこの場で全部決める必要は無いさ。言っちまえば好みの問題だからな、後からどんどん変わっていく事だってある。好きな戦術からカードを選ぶか、好きなカードを活かせる戦術を選ぶか──全ては早乙女次第だ。じっくり考えてみるといい」

 

『うん──実は、ちょっと気になってるカードがあるんだ。そのカードを中心に考えてみる。ありがとう、昴!』

 

「参考になったなら何よりだ。──そろそろいい時間だな、今日はここまでにしよう」

 

『ありがとうございました!』

 

「ああ、お疲れさん」

 

 

 

 

 

 

 

 

 ──本日の授業を終え、通信を切ったレイは、とあることに気づく。

 

「あ、昴のデッキ、どんなのか参考に聞いとけば良かったかな…?──ううん、次会った時デュエルするんだもん、楽しみは取っておかないとだよね」

 

 机の脇に広げられた数枚のカードの中から、1枚を手に取る。

 

「これから一緒に頑張っていこう、よろしくね!」

 

 そう言って小さな卵の描かれたカードに、レイは笑いかけるのだった。

 




今の時代じゃ速度の問題で敬遠されがちですが、コントロールデッキはマジで1回は触ってみて欲しいですね。規定ルートで先攻展開からの制圧では得られない栄養があると思ってます。オススメは閃刀姫、オルターガイスト、使い易いところでラビュリンスでしょうか。
環境デッキ相手に戦うのはもう厳しいでしょうが、エルドリッチも良さそうです。
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