遊戯王~(GXの)アカデミアに転生~   作:不可視の人狼

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第3の刺客

 セブンスターズとの戦いが始まってから暫く──既に2人の刺客を退けた今、七精門は1つが解放された。

 以降、特に目立った動きを見せていないセブンスターズ達だが、鍵を巡る戦いに連敗を喫した事で三幻魔の解放を諦めたということでもないだろう。必ず次の刺客はやって来る。その時に備えて、特訓は欠かせない。

 

「──アン・ドゥ・ドロー!アン・ドゥ・ドロー!」

 

 とある早朝。レッド寮の近くにある岸壁に顔を揃えた十代、翔、隼人、そして昴の4人。右腕にデュエルディスクを装着した彼らの前では、同じくデュエルディスクを装着した三沢が一心不乱にカードをドローしていた。

 

「なぁ、どうして急に特訓なんて言い出したんだよ?こんな朝っぱらから……」

 

「(来るんじゃなかった……)」

 

 思い返せば30分程前──珍しく早くに目が覚めた昴だったが、二度寝を決め込もうとした瞬間PDAに着信が入った。見れば、鍵を有する決闘者全員に一斉送信された三沢からのメッセージ──「デュエルの早朝特訓を実施するので、起きている者はレッド寮前の岸壁まで来られたし」──という旨が。

 …正直、めんどくせー。と感じたものの、もし他のメンバー達が揃う中で昴だけが不参加となった場合非常に気まずい。たまには早起きもいいだろうと自分を納得させ、いざ指定された場所へ向かってみればこの有様だ。昴を除けば参加しているのはレッド寮の面々のみ──翔と隼人に至っては鍵を巡る戦いに参加しておらず、十代共々、三沢に無理やり叩き起されたのだと言う。

 

「──ドローを制する者はデュエルを制する。ドローを制する為にはまず素振りだ!美しいフォームでドローしないと、デッキは応えてくれないぞ!」

 

 曰く、ストレッチなどにも用いられるヨガには「心・技・体を高次のモノと結びつける修行法」という語源がある。その為に正しいポーズを取る必要があることを踏まえると、正しいドローのフォームを取ることで自分のデッキ──そこに宿っているカードの精霊達と心を通わせ、運命力を引き寄せられると解釈すれば、一応、三沢のこの特訓も全く無意味ではないように思えるのだが。

 

「……十代。お前フォームとか気にした事は?」

 

「あるわけねぇって……大体、そんなの気にしてたらデュエルに集中できないだろ」

 

「──だからこそ!無意識に正しいドローを行えるよう、こうして身体に覚え込ませるんだ!さぁ、もう30本!」

 

 いつになく熱血な三沢にどこかデジャヴを感じつつ素振りを繰り返していると、隼人が翔のドローしたカードに目を留めた。

 

「あれ?そのカード──【雷電娘々(らいでんにゃんにゃん)】なんダナ!」

 

「えへへ、僕のアイドルカード!実はデッキに1枚だけ入れてあるんだ」

 

「分かるんダナ。実は俺も……」

 

 コアラデッキを愛用する隼人が見せてきたのは【治療の神 ディアン・ケト】。自分のライフを1000回復する至ってシンプルな魔法カードだ。

 

「……随分年上好みなんだね!」

 

 ──丸藤翔、諸々を飲み込んだ最大限のフォローである。

 

「これ見ると、田舎の母ちゃんを思い出してナ。お守り代わりに入れてるンダ」

 

 

「喝ァ~~~ッ!」

 

 

 同好の士を見つけて嬉しそうに笑い合っていた翔と隼人へ、三沢の一喝が飛んでくる。

 

「お前達、何がアイドルカードだッ!女の子にかまけていて、セブンスターズとの戦いに勝てると思っているのか!?」

 

「いや、俺達はセブンスターズとは戦わないシ……」

 

「真剣にデッキを組んでいれば、そんな不純な理由でカードを入れることはない…はずだッ!」

 

 途中、不自然な間を挟んだ三沢は、自分の意見が正しい事を証明するべく、昴達にも矛先を向ける。

 

「2人を見ろッ!戦略と魂に満ちた彼らのデッキには、アイドルカードなんか1枚も入っていないぞ!」

 

「そんな事ないっスよねアニキ!?」

 

「お気に入りのカードくらい、誰だってあるんダナ!」

 

 話を振られた昴達は、

 

「そりゃあ、俺にだって好きなカードくらいあるさ!──まず【フレイム・ウィングマン】だろ。【フェザーマン】に【バーストレディ】、【スパークマン】もカッコイイよなァ……!」

 

「いや、そういう事じゃなくて……昴君はッ!?」

 

「俺は……そうだな。やっぱりコイツだ」

 

 そう言って昴が見せてきた1枚は【リチュア・エリアル】だった。

 

「あれ、【マインドオーガス】とか【ジールギガス】じゃないんだね?ちょっと意外かも」

 

「強さと思い入れは必ずしもイコールじゃないってことだ。十代だって、好きなカードの中に入ってるんだろ?【ハネクリボー】」

 

「当然!俺の大事な相棒だからな!」

 

「──これではっきりしたね、三沢君!」

 

 昴と十代もデッキにお気に入りのカードが入ってるのを確認したことで調子付いた翔は、得意げに胸を張って三沢に向き直る。

 

「いいや。十代のデッキには【進化する翼】を始め、しっかりと【ハネクリボー】を活かす為のカードが入っているし、昴の【リチュア・エリアル】だってしっかりデッキとシナジーを持ったカードだ。隼人の【ディアン・ケト】はまだしも、機械族の【ビークロイド】デッキに漫然と入れてあるだけの【雷電娘々】と一緒にするべきじゃない!」

 

「う…だ、だって機械族は可愛いモンスターいないし……」

 

 それを聞いた昴が機械族のモンスターをざっと想像してみるが……

 

「(……確かに。【閃刀姫】が存在してない以上、女の子的な可愛さを持ってる機械族って1人もいないんじゃ……)」

 

 一応、綺麗系で通せそうな数少ない機械族として【ナノブレイカー】、変わり種として【レアメタル・レディ】等が存在しているものの、恐らく翔の好みには合わないだろう。前者なら可能性もあるが……「カード名を冠してるのは武器の方」とは言わぬが花だろうか。

 

「そ、それに!こういうカードがあると、ピンチの時も癒されるでしょ?」

 

「心頭滅却すれば、ピンチもまた涼し!邪念を払えば、いつ如何なる時も平常通りにデュエルを進めることが出来るものだ。さ、練習を続けるぞ──アン・ドゥ・ドロー!」

 

「三沢君、女の子に興味ないのかな……?」

 

「どうだかな。案外、過去に女絡みで何かあったのかもしれん」

 

「きっとアイツは、ラストサムライってやつなんだよ!」

 

「なんだか、よくわかんないんダナ……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 早朝特訓を経て、始業時刻──教室ではいつものように授業が始まったのだが……

 

「うーん……これは一体、どうした事ですにゃ?」

 

 授業を受け持つ大徳寺の困った声。その原因は、生徒たちが腰を下ろす座席にあった。

 デュエルアカデミアは、各学年ごとに寮の垣根を越えて同じ授業を受ける。必然、教室には全ての寮の生徒が所狭しと一堂に会しているはずなのだが、今日は随分と空席が目立つ。風邪などで体調を崩して欠席というには余りにも数が多かった。

 

「突然これだけの数の生徒が一斉に無断欠席なんて……ただ事じゃないぞ」

 

「となると……やっぱりそういう事か?」

 

 同じ考えに行き着いたらしい三沢と昴が顔を見合わせる、そこへ、学園の職員がどこか急ぎ足で教室へ入ってきた。その手にはボストンバッグが抱えられている。

 

「コレが、森の中で発見されたそうなんですが……」

 

「このバッグは……レッド寮の川田君の?」

 

 姿を消した生徒達と、その1人である川田のバッグが発見された事。これらを踏まえた結果、やはりセブンスターズ絡みの事件と睨んだ大徳寺は今日の授業を自習とし、鍵を持つ者達を集めてバッグが発見されたという森へ向かうのだった。

 

 失踪した生徒達の身を案じながら捜索を続けること暫く──突如として森林が開け、一行はその先になんとも奇妙なものを目にした。

 

「なんだアレ……?」

 

「……見た感じ、闘技場っぽいが」

 

 切り拓かれた森の中で異彩を放つ建造物は、確かに中世ローマで剣闘士達が戦ったとされる闘技場(コロッセオ)そのものだった。状況的に、あの場所に何かがあるのは明白だ。一行は注意を払いながらも、闘技場へ足を踏み入れた。

 

「これは……どういう状況だ?」

 

 闘技場の中でまず最初に目にしたのは、デュエルアカデミアの制服を着た生徒達が建築作業に勤しむ光景だった。石切り場から石材を運搬し、工具で形を整え、表面を均す。そうして整形された石が積み上がり、この闘技場を形作っていた。

 生徒の中には件の川田を始め、見知った顔がいくつも見られることからも、突然姿を消した生徒達は全員ここで働かされていたという事で間違いないようだ。

 

 尚、生徒達に混じって教師であるクロノスも労働力として徴用されていたらしく、そういえば数日姿を見ていなかった事を大徳寺は今更のように思い出したのは余談である。

 

「とにかく、早くあいつらを連れ戻そうぜ!おい皆──って、うぉッ!?」

 

 生徒達の元へ駆け寄ろうとした十代だったが、その前に巨大な虎が立ちはだかった。鋭い爪と牙を剥き出し、獰猛な唸り声で威嚇する虎は右目に大きな傷跡が残っており、大自然の生存競争を生き延びてきた強者なのだという事実が見て取れる。

 

「これは流石にやべぇ……逃げろ──ッ!」

 

 十代に続き、皆一目散に虎から逃げ回る。当然追いかけてくる虎から逃れようと、揃って闘技場の柱によじ登るが、やがて体力が限界を迎えれば下でガリガリと柱を引っ掻く虎の餌食になってしまうだろう。

 

「クロノス教諭!一体どういうことですのにゃー!?」

 

「ここにいる全員、その虎に連れてこられたノーニャ!それ以外は分からないノーニャ!」

 

「その通り──」

 

 突如として闘技場に響き渡った凛々しい声。声のした方に目をやると、そこには逞しい体をした精悍な女が佇んでいた。

 

「者共、感謝するぞ!お前達のお陰でこうしてコロシアムは完成した!」

 

 女は虎──どうやらパーズという名前らしい──を十代達の元から退かせると、働いていた生徒達を周囲に集める。

 

「皆さん。ありがとうね、協力してくれて。お陰で立派なコロシアムが出来たわ!──これほんの気持ち」

 

 迫力ある風体とは裏腹に、にこやかな笑みを浮かべた女は、生徒1人1人に感謝の言葉をかけながら小さなぽち袋を渡していく。強制的に連れて来られたにしては誰一人嫌な顔をしてないと思っていたが、その理由はこうしてきちんと対価を受け取ることが確約されていたからだったようだ──ただし、クロノスだけ気色悪いという理由でタダ働きとなってしまったわけだが。

 

「──さて、待たせたな。勇敢なる戦士達よ。私はタニヤ、偉大なるアマゾネス一族の末裔にして長──そして、セブンスターズの1人でもある」

 

 アマゾネスといえば、ギリシャ神話等にも登場する女性だけで構成された部族だ。先の吸血鬼カミューラといい、セブンスターズはこの手の出自を持つ者が多いのだろうか。

 

「これより貴様達には、このコロシアムで七精門の鍵をかけた神聖なる決闘を行ってもらう──ただし、私と戦えるのはただ1人。漢の中の漢だけ……さぁ、我こそはという漢はいるか!?」

 

 この時点で女である明日香と雪乃は対象から弾かれ、残るは十代、万丈目、三沢、昴の4人なわけだが……

 

「だったら俺が!」

 

「いや、俺だ!」

 

「いいや俺だろ!」

 

「待て、闇のデュエルなら俺が!」

 

 タニヤは前に進み出た4人を品定めするように眺める。

 

「ふむ…全員面構えは悪くないが…よし、お前に決めた!」

 

「ふっ、いいだろう!」

 

「ちぇ~」

 

「三沢、気をつけろ」

 

「心配には及ばない。任せておけ」

 

 指名された三沢は意気揚々とコロシアムのフィールドに向かう。

 

「──ねぇ見てお姉さま!タニヤがデュエルをするんだって!私もやりたいわ!」

 

「グレース!勝手に出歩くなとタニヤに言われてるだろ!」

 

 両者が向かい合う中、どこからか可愛らしい声が聞こえてくる。見れば、客席へと通じる通路からこちらを覗くように2人の少女がいた。

 

「グレース、グロリアと2人で部屋にいるよう言っておいたはずだぞ」

 

「ごめんなさい。でも、私だってアマゾネスの末裔だもの、未来の旦那様とデュエルしたいわ!」

 

「だ、旦那様だと……!?」

 

 タニヤの元へ駆け寄ってきた金と銀の髪をした少女達。どうやら姉妹の妹らしい銀髪の少女は、デュエルをしたくて仕方ないようだ。

 

「そう──私が行うのは、闇のデュエルではない。魂など奪った所で、何の意味もないからな」

 

「どういうことだ!?」

 

「私が欲するのは()()()()──つまり、私が勝てばお前を婿として村へ連れて帰るッ!」

 

「むッ婿だとォッ!?訳の分からんことを……!」

 

「そんなことないわッ!私達アマゾネスは、昔からこうやって仲間を増やしてきたんだもの!」

 

「そうだ!神聖なる決闘を否定するのは許さないっ!」

 

 姉妹の言葉に尚更困惑する三沢を他所に、タニヤは膝をついてグレースと目線を合わせる。

 

「グレース。グロリアが言ったように、これは神聖なるアマゾネスの決闘。幼いお前にはまだ早い」

 

「やだやだやだ!私もデュエルするのー!相手だってもう決めてるんだから!」

 

 そう言ってグレースが指をさしたのは──

 

「あなた!私の旦那様はあなたに決めたわッ!」

 

「えっ……俺?」

 

「そう、あなたよ!」

 

 グレースの指名を受けた昴は、三沢以上に困惑する。どうすればいいのか?という助けを求めてタニヤを見る始末だ。

 

「はぁ……こうなっては、もう取り消すこともできん。グレース、デッキは持ってきているな?」

 

「もちろん!タニヤとお姉さまと一緒に練習したデッキよ!」

 

「グロリア、グレースについてやれ。グレースはまだまだ未熟だ、何より、お前達姉妹は2人で1つだからな」

 

「わかった……グレース、頑張るぞ!」

 

「うん!」

 

「これはつまり……どうなるんだ?」

 

 昴の疑問に、タニヤが答える。

 

「少々予定変更だ。このデュエルはバトルロワイヤルルールで行う」

 

「バトルロワイヤル……?」

 

「そう。2対2のタッグデュエルとは違い、複数のプレイヤー達がお互いを敵として戦うのだ。もちろん、協力するもしないも個々の自由となる」

 

 1つのフィールドを2人で共有するタッグデュエルとは違い、このバトルロワイヤルルールでは各プレイヤーが独立して戦う。言わば1vs1vs1vs1の戦い──言葉にしてしまえばそれだけだが、単純なように見えて奥の深いルールだ。

 タニヤが言ったように、結託して特定のプレイヤーを集中攻撃することもできるし、2対2の変則タッグデュエルを行うこともできる。しかしルール上はあくまでも自分以外は全員敵扱いな為、例えば【サンダー・ボルト】のような一掃系カードを発動すると、協力関係にあるプレイヤーのカードまで破壊してしまうのだ。加えて、タッグデュエルと違いプレイヤー間の意思疎通も難しくなる。バトルロワイヤルルールに於ける共闘というのは、言葉以上に高度なプレイングを要求されるという訳だ。

 

「闇のデュエルでないとはいえ、鍵を賭けた戦いであることに変わりはない。この戦いに敗北すれば、お前達の持つ七精門の鍵を頂いていく。そこは問題ないな?」

 

 三沢も昴も、タニヤの確認に首肯を返す。斯くして、戦いの舞台は整った。

 

「それでは始めるぞ!我らアマゾネスの神聖なる決闘を──!」

 

 

 

「「「「決闘(デュエル)!!」」」」

 

 

 




古より続くテーマ故にカードが多く、私の頭ではアニメでタニヤがやってたように2種類の性質の違うデッキを考えるのはできなかったので、やや強引かなと思いつつデュエル自体は次回の1度で決着となります。その都合タッグ相手としてシレっと登場してもらったロリタイラー姉妹。歳はレイの1つ下(小4)くらいをイメージしてます。
タイラー姉妹、あなたはどちら派?私はグレース派。

そしてArc-Vから引っ張ってきたバトルロワイヤルルール。当然乱入なんて出来ません。

…にしても十代、中々デュエルの機会が訪れませんね。下手すりゃアムナエルまでお預けコースですわコレ。
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