「―――っく~~~~~、着いた!やってきたぜデュエルアカデミア~!」
「寝起きで元気だなぁ…」
デュエルアカデミアは、太平洋にポツンと存在する無人島に建設されている。
十代や昴たち入試合格者は、専用のヘリで束の間の空の旅を楽しんできた。
「まずは校長挨拶だったな。俺の荷物は……あった」
昴は自分の荷物を見つけると、人の波に乗って入学式の会場へ向かった。
『ようこそ、デュエルエリートの諸君。君たちはこの狭き門を実力で開いてやって来てくれました。未来のデュエルキングを夢見て、楽しく勉強してください―――』
デュエルアカデミア校長の鮫島先生の挨拶は想像していたほど長くなく、只々長いだけの話が苦手な昴でもなんとか起きていられた。
「――では、各自自分の寮に向かってください。その後は自由行動とします。ただし、デュエリストとしての誇りを持って生活するように。くれぐれも、問題行為は謹んでください」
こうして入学式を終え、初日は解散となった。
「俺はイエローか……」
各自割り当てられた寮に向かった昴が到着したのは、イエロー寮だ。
レッド以上ブルー以下のこの寮は、ボロすぎず豪華すぎないといういい塩梅を保っており、部屋も1人1部屋と十分な高待遇と言えるだろう。
デュエルアカデミアは絶海の孤島という性質上、完全寮制の学校で、生徒は成績により3つの寮に仕分けられる。
青い制服を着たエリートが入る"オベリスク・ブルー"は唯一男女で寮が分かれており、いち学生には豪華過ぎるであろう屋敷が寮として与えられている。
黄色の制服を着た者が配属されるのは"ラー・イエロー"
入試の成績優秀者も最初はここに所属し、今後の頑張り次第でブルーに昇格できる。
昴はここに所属することになった。
そして残る1つ──赤い制服の"オシリス・レッド"だが……
この学校におけるレッドというのは、レッドゾーンということを意味する。
つまり、成績も何もかもが絶望的なドロップアウト必至の集団ということだ。割り当てられている寮もボロアパート同然で、少ない部屋数をシェアしているようだ。
受け取った制服に袖を通し、軽く身だしなみを整える。
窓に写った自分の姿を改めて見てみると、どうも昴は黄色があまり似合わない。前世で寒色系の色ばかり着ていたからだろうか。
使っているデッキも真っ青なわけだし、早いところブルーに上がって青の制服を着たいものだ。
「──で、ぶっちゃけやること無くなったんだが…どうすっかな」
そもそも荷物が無いに等しい昴はすぐ手持ち無沙汰になり、とりあえず何か面白いことでもないかと外に向かう。
丁度寮を出たところで、外から戻ってきたらしい三沢とすれ違った。
「君も島を見て回るのかい?」
「まぁそんなとこ。お前はもう見てきたのか?」
「とりあえず校舎の中は一通りね。流石デュエルアカデミア、最先端の設備が揃ってるよ。──ああ、そういえば、例の1番くんとも会ったよ。オシリス・レッドに配属されたようだ。あのクロノス教諭に勝ったというのに、不思議で仕方ない」
「あー……まあ、色々あったんだろ」
そう、
「暇をしているなら、デュエルアリーナに行ってみたらどうだい?もしかしたら、同じ新入生がデュエルをしているかもしれない」
「……それもそうだな。ありがとう、行ってみる」
三沢に一言礼を言った昴は、校舎の中にあるデュエルアリーナへ向かった。
「っと……ここか」
配布された
島に来る途中、機内で流し読みした学校のパンフレットによれば、ここは最新鋭のソリッドビジョンシステムを搭載したとにかくすごいフィールド…らしい。
「(そもそも俺のいた世界ソリッドビジョン無かったから、最新鋭とか言われてもよく分からんのだよなぁ……)」
PDAをポケットに突っ込んで歩き出した昴は、前方にどこか見覚えのある姿を見つける。オベリスク・ブルーの制服を着た金髪の女子生徒…確か……
「──あら?」
向こうも昴に気づいたらしく、こちら近づいてくる。
よく見ればかなり容姿端麗で、スタイルもいい。これが所謂金髪美女というやつなのか。
「あなた、入試の実技試験で10番だった人よね?受験生で唯一儀式モンスターを使ってた」
「……そうだけど」
どぎまぎしながらもそう返事をした昴だったが、突然金髪美女はクスクスと笑い出した。
「あの時と全く同じこと言ってるわよ?」
「あの時…?って、どこかで会ったっけか?」
記憶を探ってみるが、それらしい記憶は見当たらない。
「──もうすぐ試験の時間よ、急いだ方がいいんじゃない?」
見かねた様子の彼女が口にしたその言葉で、ようやく思い出した。
「あぁ、あの時の!──その節は本当に助かった」
「別に気にしないでいいわ。代わりと言ってはなんだけど、面白いデュエルを見せてもらったしね。私、天上院明日香。よろしく」
「加々美昴だ、こちらこそよろしく頼む──で、1つ聞きたいんだが…儀式召喚ってそんなに浸透してないのか?」
「そうね……改めて考えると、使ってる人はあまり見ないかも。プロでもほんの数人だし、この学園でもあなたを除けば1人しかいないわ」
「1人だけ……」
道理でやたらと噂されるはずだ。
確かに、この頃は儀式モンスターそのものが少ない上に全体的にパワー不足で、精々打点がちょっと高いくらいしかアドバンテージのないバニラモンスターがほとんどだった。
そう考えれば、コンボに重点を置いた【リチュア】が皆の注目を集めるのは当然と言える。
「同じ学園にいるんだから、いつかあなたも会えるわよ。なんなら紹介して─「何だよお前たち!」──えっ?」
何やら騒がしい声が明日香の話を遮る。デュエルフィールドの方で何かあったようだ。
「喧嘩でも起きたのかしら…行ってみましょう!」
明日香と共にフィールドへ向かう。
大きなドーム上になっているアリーナの中央には最新ソリッドビジョンシステムを搭載したデュエルフィールドが設置されており、その上に2人の男子生徒が仁王立ちしていた。制服の色は青――オベリスク・ブルーの生徒だ。
「ここはお前達みたいなドロップアウトの来るところじゃないぞ?上を見てみろ」
そう言ってブルーの生徒が指さしたのは、背後にある彫刻。
そこにはなにかの顔らしきものが彫られているのだが……
「(なぁにあれ……?)」
ブルー生徒が言うには、どうやら【オベリスク】の紋章らしい。
昴の脳裏にオベリスクの巨神兵のイラストが浮かび上がるが、この彫刻と比較すると随分簡略化されていることが分かる。
本来ならもう少しゴツい顔なのだが、尖った部分が排除されたせいでどちらかというと【デーモン】にいそうな顔となってしまっている。不憫だ。
「う~ん…じゃあ俺とお前で勝負しようぜ!それなら問題ないだろ?」
そう言いだしたのは、ブルー生徒2人組と睨み合っていたレッドの生徒──十代だった。
「はぁ?何言って……って、誰かと思ったら。万丈目さん!こいつ実技でクロノス教諭に勝った110番ですよ!」
ブルーの片割れがフィールドを囲むギャラリーに向かってそう叫ぶと、新たに1人、ブルーの生徒が現れる。
「あぁ俺、遊城十代!…で、あいつ誰?」
素でそう尋ねた十代に、ブルー2人は信じられないといった様子で目を見開く。
「万丈目さんを知らないのか!?同じ1年でも中等部からの生え抜き、超エリートクラスのナンバーワン!」
「未来のデュエルキングと名高い万丈目準さまだ!」
「いやいや、流石に尾ひれ付き過ぎだろ……あっ」
壁に隠れて事の成り行きを見ているだけのつもりだったのが、口をついて出た言葉でその場の全員の視線が昴に向けられる。
「お前は……確か試験官にノーダメージで勝った10番!お前もこの110番の仲間か!?」
「いや、仲間ってほど交流もしてないんだが……まぁいいや。──んで?超エリート様らしいオベリスク・ブルーがこんなとこで何してる?」
「こいつ…!イエローの分際で身の程を弁え――「
「あまりはしゃぐな。そいつら、お前たちより
「まぐれだって言いたいのか?残念ながら実力さ」
「その実力とやら、ここで見せてもらいたいもんだな」
一触即発の空気の中、十代と万丈目が睨み合う。
そこへ、凛とした声が響き渡った。
「あなたたち!何してるの!?」
俺の背後から出てきたのは、明日香だった。事態の悪化を防ぎに来てくれたらしい。
長い金髪を揺らして立ち止まった明日香は、気丈に万丈目たちを睨む。
「天上院くん。この新入り共があまりに世間知らずなんでね、学園の厳しさを少々教えて差し上げようと思って」
「そろそろ寮での歓迎会が始まる時間よ」
明日香の言葉を聞くなり、万丈目とその取り巻きたちはデュエルフィールドから引き上げていった。
「あなたたち、万丈目君たちの挑発には乗らないことね。あいつらロクでもない連中なんだから」
「…随分嫌ってるんだな」
「別に彼ら個人を嫌ってるわけじゃないわ。ただ、レッドとかイエローというだけで見下した態度を取るのが気に入らないだけよ」
「ま、それに関しては同感だな。心配してくれるのは有難いが、俺は大丈夫だ。舐めプする連中になんぞ負けてられないからな」
そう言って嘆息する昴を見て、明日香は興味深そうに微笑む。
「面白いこと言うのね。…あなた、確か実技でクロノス教諭に勝った生徒よね?」
「ああ!俺、遊城十代。お前は?」
「天上院明日香よ。──それより、そろそろレッドとイエローでも歓迎会が始まるんじゃない?」
「そうだよアニキ!早く戻ろう!」
「……俺も戻るか。じゃあな、天上院」
いつの間にか弟分になったらしい翔に急かされ、十代はフィールドを後にする。昴もそれに続いて寮に戻っていった。
この話を投稿した時点で、書きかけのストックが尽きました…以降、完全新規書き下ろしの話となります。
…なんか「完全新規書き下ろし」って言うと自分が売れっ子にでもなったかのような錯覚を覚えますね。