遊戯王~(GXの)アカデミアに転生~   作:不可視の人狼

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今更ですが、本作ではルール上の生贄→リリース、融合デッキ→エクストラ(EX)デッキという呼称で統一しようと思います。
(幻魔の扉とか、生贄って表現の方がしっくりくる場合はそっちを使うかもです)


青の洗礼

 万丈目達と一悶着あった夜。アカデミアの各寮では、新入生の歓迎パーティーが行われていた。

 聞く所によれば、ブルー寮は御伽話の舞踏会も斯やという豪勢な食事を振舞われているらしい。

 

 一方、昴や三沢のいるイエロー寮でも──実際見ていないから他所と比較しようがないものの──十分なご馳走がテーブルに並んでいる。

 

「(万丈目達、変に突っかかってくるようなことが無きゃいいんだけどな……あ、コレ美味い)」

 

 黙々と料理を口に運ぶ昴は、日中のことを思い出していた。

 どうも昴と十代は入試デュエルで目立った結果彼らに目をつけられていたらしく、特に十代に至っては、彼らを煽るような発言をしたせいでいい印象は持たれていないようだった。

 

 見たところブルーの生徒はプライドの高い者が多く、最底辺のレッドは無論のこと、イエローの生徒も見下しているきらいがある。そんな彼らがポっと出の新入生に「1番強いの俺だから」と言われれば、機嫌が悪くなるのもまあ頷ける。昴が彼らの立場なら、程度の違いこそあれどカチンと来ただろう。

 

 決闘者である以上、リアルファイトという最強の盤外戦術で制裁を下すような真似はしないと思うが、今後しつこく付き纏うようなことになられてもそれはそれで困る。

 

「(……次に向こうからアクションを起こしてきたら、デュエルして諦めてもらうしかないか)」

 

 皿に乗っていたローストビーフ最後のひと切れを飲み込んだ昴は、きちんと手を合わせ、食器を下げてから食堂を出た。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ふぅ~、久しぶりに湯船浸かった……ん?」

 

 そこから暫くして、風呂から上がった昴は、脱衣カゴに入れていたPDAにメッセージが来ていることに気づいた。着替えもそこそこに音声ログを再生してみると……

 

『よう10番。今夜0時、デュエルフィールドに来い。ベストカードを賭けたアンティルールで勝負しようじゃないか』

 

「……そう来たか」

 

 万丈目からの果たし状…というよりは、リンチのお誘いだろうか。

 

 アンティルール──早い話が"賭けデュエル"。

 昴も遊戯王を始めたばかりの頃、知り合いからよく持ちかけられた。デッキパワー的に絶対勝てないことは分かっていたので頑としてやらなかったが。

 

 万丈目は昴にデュエルで勝って、何かしらカードを巻き上げるつもりらしい。標的になるとしたら……【マインドオーガス】か【儀水鏡】あたりだろうか。いや、【リチュア】のアイドル【エリアル】という可能性もある。

 どれにしても大切なカードだ。負ける気はしないが、正直受けていいものか迷う。

 

「………」

 

 考えた末、一応呼び出しには応じることにした。

 この際ハッタリでも何でもかまして、とにかくアンティルールを諦めてもらえさえすれば…まあなんとかなるだろう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 そして約束の午前0時──昴はやや急ぎ目にデュエルフィールドへ向かっていた。

 

「仕方ないよな。ほら、慣れないヘリとかで疲れてたんだよきっと」

 

 誰にでもなくブツブツと呟きながら歩く昴は、ついさっきまで普通に寝ていた。時間まで仮眠を取るつもりが、思いの外ガッツリと睡眠を取ってしまったようだ。呼び出し時刻は少し過ぎることになるが、多分大丈夫だろう。

 

 照明が殆ど落とされている校舎内で唯一明かりの灯るデュエルフィールドには、デュエルディスクを構えた万丈目とその取り巻き2人に、今まさに彼とデュエルを開始する十代の姿があった。

 

「……俺が呼ばれたなら、そりゃあいつもいるよな」

 

「あっ、昴くん!」

 

「──おや?ようやく来たのか10番。ビビって来ないのかと思ったぜ」

 

「…なあ万丈目、アンティルールはやっぱ止めないか?お互い大切なカードは失いたくないだろ」

 

「なんだ怖気づいたのか?入試が凄かったとはいえ所詮イエローか。お前の相手はこの僕だ。お前のベストカード……いや、何ならデッキごと頂いてやる!」

 

 そう言ってきたのは、万丈目の取り巻き──メガネをかけた方だ。

 

「取り付く島も無しか……!やってやる!」

 

 昴もデュエルディスクを展開し、十代達の横で新たな戦いが始まる。

 

 

「「決闘(デュエル)!!」」

 

 

 昴 :LP4000 手札×5

 

 VS

 

 取り巻き:LP4000 手札×5

 

 

「先攻は僕だ、ドロー!僕はモンスターをセット!カードを1枚伏せてターンエンドだ」

 

 

 昴 :LP4000 手札×5 

 VS

 取り巻き:LP4000 手札×4

 セットモンスター×1

 伏せ×1

 

 

 昴が入試デュエルで取ったのと全く同じ盤面を作り上げる取り巻きのブルーは、明らかに何かを仕込んだ様子でニヤニヤしている。

 それがモンスターなのか伏せカード(バック)なのかは分からないが、動かないことには始まらない。

 

「俺のターン!──魔法カード【おろかな埋葬】を発動!デッキから【リチュア・アビス】を墓地に送る。そして【リチュア・ビースト】を通常召喚!」

 

 

【リチュア・ビースト】

 ✩4 獣族 ATK1500 DEF1300

 

 

「【ビースト】は召喚成功時、墓地にいるレベル4以下の【リチュア】を蘇生できる──さっき墓地に送った【リチュア・アビス】を守備表示で特殊召喚!」

 

【リチュア・ビースト】の雄叫びに応え、獰猛な獣の隣に鋭い牙を持つ鮫が並び立つ。

 

 

【リチュア・アビス】

 ✩4 魚族 ATK800 DEF500

 

 

「【アビス】の効果で、デッキから【ヴィジョン・リチュア】を手札に。続けて【ヴィジョン・リチュア】を墓地に送り、デッキから【リチュア】儀式モンスターを手札に加える」

 

 昴はこの効果で、デッキから【マインドオーガス】を手札に加えた。

 

「見せてみろよ、お得意の儀式召喚を!」

 

「…ならお望み通り見せてやる。儀式魔法【リチュアの儀水鏡】発動!フィールドの【リチュア・ビースト】と【リチュア・アビス】を墓地に送り、儀式召喚!」

 

 光り輝く儀水鏡に、2体のモンスターの魂が吸い込まれていく……。

 

「──降臨せよ!【イビリチュア・マインドオーガス】!!」

 

 儀水鏡の中から現れたのは、少女の肉体を憑代にした異形の存在。召喚を終えた儀水鏡は異形の持つ杖と一体化し、【リチュア】の紋章を浮かび上がらせた。

 

 

【イビリチュア・マインドオーガス】

 ✩6 水族儀式 ATK2500 DEF2000

 

 

【マインドオーガス】の召喚時効果は強制効果な上に必ず1枚以上のカードをデッキに戻す必要があるため、昴の墓地から【おろかな埋葬】をデッキに戻す。

 

「バトルだ!【マインドオーガス】でセットモンスターを攻撃!」

 

「掛かったな!僕はセットしていたリバースモンスター【人喰い虫】の効果を発動!お前の【マインドオーガス】を破壊だァ!」

 

 

【人喰い虫】

 ✩2 昆虫族 ATK450 DEF600

 

 

 鋭いカギ爪を持った虫が【マインドオーガス】の杖に貫かれるが、死の寸前に自らの体を破裂させて敵を道連れにする。

 

「ハハハハッ!見たか!お前らの入試デュエルを綿密に研究した天才万丈目さんのアドバイスで、対策は完璧なんだよ!ご自慢の儀式モンスターも、破壊されたら意味がないだろ!」

 

「………カードを1枚伏せ、ターンエンド」

 

「どうした?お気に入りの怪物ちゃんが破壊されて声も出ないか!」

 

 明らかに相手を馬鹿にするような言葉にも、昴は言い返す様子がない。

 

 

 昴 :LP4000 手札×2

 伏せ×1 

 VS 

 取り巻き:LP4000 手札×4

 伏せ×1

 

 

 

「あわわ……どうしよう。アニキも昴君も大ピンチだ……!」

 

 十代の方はというと、エースカードである【フレイム・ウィングマン】が万丈目の罠カード【ヘル・ポリマー】によってコントロールを奪取されていた。アタッカーをほぼEXデッキのモンスターに依存している十代の手札には、【フレイム・ウィングマン】の攻撃に耐えうるモンスターがいない。

 

「──全く、だから挑発に乗るなって言ったのに……」

 

「明日香さん!」

 

 呆れた声でそれぞれの戦況を確認した明日香は、苦しげに顔を歪める。

 

「まずいわね……エースモンスターを奪われた十代は勿論だけど、昴も手札がたった2枚じゃ儀式召喚の為の素材が用意できるかどうか……」

 

 

 

「──僕のターン!ドロー!もう一度モンスターをセット!リバースカードを伏せて、これでターンエンドだ」

 

 

 昴 :LP4000 手札×2

 伏せ×1 

 VS 

 取り巻き:LP4000 手札×3

 セットモンスター×1

 伏せ×2

 

 

「俺のターン、ドロー……」

 

 カードを引いた昴は、無言でジッと3枚の手札を見つめている。

 

「何をしたって無駄さ!デュエルは緻密な計算で勝利を導き出すんだ。エリートであるオベリスク・ブルーに敵うわけないだろ!」

 

「……それはどうかな?」

 

「何……!?お前の手札はたった3枚、こっちには裏守備モンスターにリバースカードが2枚もあるんだぞ!挙句の果てに儀式モンスターまで破壊されたこの状況で、何ができるって言うんだ!」

 

「お前が言ったんだろ、デュエルは計算して勝つもんだって。正直俺は数学とか苦手なんだが……生憎このデッキでならそういうのは大得意でね」

 

 手札から目を離した昴の口元には、不敵な笑みが浮かんでいた。

 

「【リチュア】の力──見せてやる!俺は墓地に存在する【リチュアの儀水鏡】の効果を発動!このカードをデッキに戻すことで、俺の墓地にいる【リチュア】儀式モンスター1体を手札に戻すことができる。これで【マインドオーガス】を回収──!」

 

「墓地で魔法カードを発動だと!?」

 

「そして手札の【シャドウ・リチュア】を墓地に送って、効果発動!デッキから【リチュアの儀水鏡】を手札に!続けて、手札から魔法カード【サルベージ】発動!墓地にいる【シャドウ・リチュア】と【ヴィジョン・リチュア】を回収し、この2体の効果でデッキから【ガストクラーケ】と2枚目の【儀水鏡】を手札に加える」

 

 目まぐるしく回転する昴の手札に、万丈目の取り巻きも、デュエルを見守る明日香と翔さえも目を丸くしている──当然だ。あれだけのカードを使用しておきながら、昴の手札は減るどころか、5枚に増えているのだから。

 

「【リチュアの儀水鏡】発動!手札の【ガストクラーケ】を墓地に送り、【マインドオーガス】を儀式召喚!」

 

 再びフィールドに舞い戻った【マインドオーガス】が杖をひと振りすると、お互いの墓地に眠るカードが宙に浮かび上がる。

 

「召喚成功時の効果で、俺の【サルベージ】とお前の【人喰い虫】をデッキに戻す。──マインド・リサイクル!」

 

「っ……何度出てきても無駄なんだよ!罠カード【奈落の落とし穴】!今度こそお前のモンスターとはおさらばだ!」

 

「【奈落】にチェーンして罠発動【儀水鏡の反魂術】!俺のフィールドの水属性モンスター──【マインドオーガス】をデッキに戻し、墓地の水属性モンスター2体を回収する」

 

 これにより対象を失った【奈落の落とし穴】は不発となり、昴の手札にはまたも【シャドウ・リチュア】と【ヴィジョン・リチュア】の2枚が加わる。

 

「もう一度、墓地の【儀水鏡】の効果。自身をデッキに戻し【ガストクラーケ】を回収。【ヴィジョン・リチュア】でデッキから【マインドオーガス】を手札に」

 

「まさか、また……!」

 

「ああ、そのまさかだ──【リチュアの儀水鏡】を発動!【マインドオーガス】を墓地に送り、【イビリチュア・ガストクラーケ】を儀式召喚!」

 

【マインドオーガス】に代わり現れたのは、例の如く異形の姿をした少女だった。赤い髪の可愛らしい少女の下半身が、烏賊のような軟体動物となっている。

 

 

【イビリチュア・ガストクラーケ】

 ✩6 水族儀式 ATK2400 DEF1000

 

 

「【ガストクラーケ】の効果。召喚成功時に相手の手札を2枚見て、どちらか1枚をデッキに戻す──ガスト・スキャニング」

 

 取り巻きの手札が2枚選択され、【闇魔界の戦士 ダークソード】と【二重召喚(デュアルサモン)】が露わになる。

 

「【二重召喚】はデッキに戻してもらうぞ」

 

「ふざけるなぁっ!罠カード【激流葬】発動!モンスターを全て破壊だぁ!」

 

 凄まじい勢いで放たれた水流が、取り巻きブルーのモンスターごとフィールドを一掃する。しかし発動されたハンデス効果は止められない上に、【ガストクラーケ】の道連れで破壊されたのは【スフィア・ボム 球体時限爆弾】だった。

 

「勿体無いな。ここは【激流葬】を使わずに攻撃させていれば、少なくとも次のターンまでの延命と俺のライフを半分以上削れたろうに。ブルーのエリート様がデュエル中に冷静さを欠いてプレイミスか?」

 

「うるさい黙れ!これでお前の手札はまた2枚に逆戻りだ!もう儀式召喚もできないだろ!」

 

「だから冷静になれって。もう終わりだと思うか?」

 

「嘘…だろ……?」

 

「残念、ホント。──墓地の【儀水鏡】をデッキに戻し、【ガストクラーケ】を回収。【シャドウ・リチュア】の効果で【儀水鏡】を手札に加え、再び【サルベージ】を発動!」

 

 再度手札を増やして儀式召喚の準備を進める昴を見て、取り巻きブルーは頭を抱える。

 その間も昴は着々とカードを回していき、手札に【テトラオーグル】と【リチュアの儀水鏡】が加わった。

 

「──【リチュアの儀水鏡】発動!舞い戻れ【イビリチュア・ガストクラーケ】!!」

 

 赤い髪をなびかせた【ガストクラーケ】の微笑みからは、「絶対に逃がさない」という意思すら感じる。

 

「【ガストクラーケ】の効果……は、さっき説明したとおりだ。止める手段は無いな?」

 

 先端に儀水鏡を付けた【ガストクラーケ】の杖がひと振りされると、取り巻きブルーの残る手札2枚が公開される。

 

 公開されたのは【死者蘇生】と、先程と同じ【闇魔界の戦士 ダークソード】。

 

「……【死者蘇生】をデッキに」

 

「あっ……!」

 

「バトルだ!【イビリチュア・ガストクラーケ】でダイレクトアタック!──イビル・テンタクルス!」

 

「うわぁっ──!」

 

【ガストクラーケ】の触手が一斉に襲い掛かり、取り巻きブルーのライフを奪う。

 

 

 取り巻き:LP4000→1600

 

 

「……メインフェイズ2。墓地の【儀水鏡】の効果で【マインドオーガス】を回収して、ターンエンド」

 

 

 昴 :LP4000 手札×1

【イビリチュア・ガストクラーケ】 

 VS 

 取り巻き:LP1600 手札×1

 

 

「…僕の、ターン……」

 

 震える手でカードを引いた取り巻きブルーは、先程ピーピングされた【ダークソード】を召喚。絶望に満ちた顔でターンエンドを宣言した。

 

 

【闇魔界の戦士 ダークソード】

 ✩4 戦士族 ATK1800 DEF1500

 

 

 昴 :LP4000 手札×1

【イビリチュア・ガストクラーケ】 

 VS 

 取り巻き:LP1600 手札×2

【闇魔界の戦士 ダークソード】

 

 

「俺のターン。【リチュア・ビースト】を召喚して、効果で墓地の【リチュア・アビス】を特殊召喚。更にその効果で、デッキから【シャドウ・リチュア】を手札に加え、墓地に送って効果発動。【リチュアの儀水鏡】を手札に」

 

 流れるように次々とカードをサーチする昴の動きは淀みなく、あっという間に盤面と手札を整えた。

 

「──【リチュアの儀水鏡】発動。【ビースト】と【アビス】を生贄に、儀式召喚──【イビリチュア・マインドオーガス】!」

 

 三度(みたび)現れた異形の少女は、その力で選別した【サルベージ】と【スフィア・ボム】をあるべき場所へと還していく。

 

「バトルフェイズ。【ガストクラーケ】で【ダークソード】を攻撃!──イビル・テンタクルス!」

 

 触手で手足を縛られ動きを封じられた漆黒の戦士は、異形の杖に貫かれ消滅する。

 

「くぅ……っ!」

 

 

 取り巻き:LP1600→1000

 

 

「これで終わりだ!【イビリチュア・マインドオーガス】でプレイヤーにダイレクトアタック!──ハイドロ・ガイスト!」

 

【マインドオーガス】の杖から大量の魂が解き放たれ、取り巻きブルーに襲いかかる。

 

「う…ぁ……うわああああああああ───っ!!」

 

 

 取り巻き:LP1000→0

 

 

 

 

 

 

 

「凄いや!昴君が勝った!」

 

 歓喜の声を上げる翔とは裏腹に、未だ十代とデュエルを続けている万丈目は憎々しげに口元を歪めている。

 

 

 十代 :LP1600 手札×1

【E・HERO スパークマン】

 伏せ×1

 VS

 万丈目:LP3600 手札×4

【E・HERO フレイム・ウィングマン】

 伏せ×1

 

 

「ちっ…イエローに負けるとは情けない奴め。このドロップアウトボーイを叩きのめしたら、次はお前だ儀式使い!そこで大人しく待っていろ!」

 

「そう言うセリフは勝ってから言えよ。今お前の相手をしてるのは俺じゃないだろ」

 

「へへっ……その通りだぜ!」

 

「その空元気もいつまで保つかな?行け!【フレイム・ウィングマン】!──フレイム・シュート!」

 

 禍々しい姿に炎を纏わせた【フレイム・ウィングマン】が、同胞である【スパークマン】に攻撃を仕掛ける──!

 

「罠カード【異次元トンネル -ミラーゲート-】発動!」

 

【ミラーゲート】はモンスター同士の戦闘を行う時、互いのモンスターのコントロールを入れ替えるトラップ──これにより、十代のフィールドに【フレイム・ウィングマン】が舞い戻った。

 

「いけぇ!──スパークリング・ブレイカー!」

 

【フレイム・ウィングマン】と掴み合う【スパークマン】は、自らの電撃を逆流させられ破壊されてしまう。

 

「ぐぁ……っ!」

 

 

 万丈目:LP3600→3100

 

 

「──更に【フレイム・ウィングマン】の効果で、破壊した【スパークマン】の攻撃力分のダメージを受けてもらうぜ!」

 

「がああああああぁぁぁ──っ!」

 

 

 万丈目:LP3100→1500

 

 

「流石アニキ!」

 

「これで十代が僅かにリード…このまま押し切れればいいんだが」

 

「クソっ…調子に乗るな、ドロップアウトのオシリス・レッドが!手札から魔法カード【ヘル・ブラスト】を発動!自分のモンスターが破壊されたターン、フィールド上のモンスター1体を破壊!その攻撃力の半分のダメージを相手に与える!」

 

 

 十代:LP1600→550

 

 

「【フレイム・ウィングマン】……っ!」

 

 互いにフィールドは更地。万丈目の場に伏せカードが1枚残るのみだ。

 

「更に罠カード【リビングデッドの呼び声】発動!墓地の【地獄戦士(ヘルソルジャー)】を特殊召喚。そして【地獄戦士】をリリースして、アドバンス召喚!【地獄将軍(ヘルジェネラル)・メフィスト】!!」

 

 

【地獄将軍・メフィスト】

 ✩5 悪魔族 ATK1800 DEF1700

 

 

「どう転んでも俺の勝ちだ!アンティルールでお前のベストカードを貰う!」

 

「そいつはどうかな?例えたった1%の運でも、俺はそいつに賭ける。俺のドローは奇跡を呼ぶぜ!俺のターン──ドロー!」

 

 引いたカードを確認した十代は、勝利を確信したかのような笑みを浮かべた。

 

「(本当に引いたのか?逆転のカードを──)」

 

 その様子を固唾を飲んで見守る昴たちだったが…突如、明日香が廊下の方を振り返る。

 

「──ガードマンが来るわ!アンティルールは校則で禁止されてるし、時間外に施設を無断利用してるし…バレたら最悪退学よ!」

 

 彼女の言葉を裏付けるように、数人分の足音が反響して聞こえてきた。隠れようにもこの開けた場所では遮蔽物になるものが殆ど無い上に、この人数だ。やり過ごしてデュエルを続行するのはまず不可能だろう。

 

「や、ヤバイですよ万丈目さん!」

 

「ちっ……今日はここまでだ。俺の勝ちは預けておいてやる」

 

「ふざけんな!まだ勝負は決まってないだろ!」

 

「アニキ!このままじゃ見つかっちゃうよ~!」

 

 流石に退学にはなりたくない十代もここは逃げた方がいいというのは分かっているのだろう。だが消化不良で終わったデュエルに対する心残りが、彼の足をしつこくフィールドに縛り付けているようだった。

 

「ぐううう……嫌だ!俺はここを動かない~~~っ!」

 

「あーもう、ったく!行くぞ十代!」

 

 見かねた昴が十代を羽交い締めにして、翔と2人でフィールドから連れ出す。自分たちよりも学内の構造に詳しい明日香の先導もあって、ガードマンに出くわすことなく外に出ることができた。

 

 

 

 

 

 

 

「──全く、世話の焼ける人ね」

 

「全くだ……」

 

 正門前までやってきた一行は、ようやく緊張感から解放される。

 

「ちぇっ……余計なことを」

 

「それで、2人共どうだった?オベリスク・ブルーの洗礼を受けた感想は?」

 

「正直、あそこからひっくり返される可能性もあっただろうな」

 

「え?でも昴君、今回もノーダメージで勝ったじゃない。そんなに謙遜しなくても……」

 

「謙遜じゃないさ。最後のターン──あいつが引いたカードによっては逆転負けも有り得たよ。モンスター1体出すだけで終わったのは運が良かった」

 

【ガストクラーケ】でピーピングハンデスできたのは2枚。強力な蘇生札である【死者蘇生】をハンデスできたのは良かったが、もしドローカードが【地割れ】だとか【ライトニング・ボルテックス】のような破壊系カードや、攻撃力を大幅にアップさせる装備魔法だった場合、【ガストクラーケ】を処理されてもっとデュエルは長引いていたはずだ。

 

 その上で勝てたかどうかは…正直断言しかねる。

 

「俺はまぁまぁかな!もう少しやるかと思ってたけどね」

 

「その自信はどこから来るのかしら…邪魔が入らなければ、今頃アンティルールで大事なカードを失うところだったんじゃないの?」

 

「いや──今のデュエル、俺の勝ちだったぜ!」

 

 そう言って十代が見せてきたのは、先程ドローしたカード──【死者蘇生】だった。

 

「そっか!これで【フレイム・ウィングマン】を特殊召喚して攻撃すれば!」

 

 戦闘ダメージとモンスター効果により、万丈目のライフを0に───

 

「──あー、残念ながらならないぞ。【死者蘇生】じゃ【フレイム・ウィングマン】を蘇生できない」

 

 遠慮がちな昴の言葉に、十代と翔、明日香までもが驚きの表情を浮かべる。

 

「何でだよ!?【死者蘇生】は墓地からモンスターを特殊召喚できるカードだぞ!」

 

「それは合ってるんだが、問題は蘇生対象の方だ。──ちょっとカード貸してくれ」

 

 十代から受け取った【フレイム・ウィングマン】のカードを見せながら、昴は解説を始める。

 

「ほら、テキストの上に【融合召喚でしか特殊召喚できない】ってあるだろ?これは言葉通り、【融合】でしか召喚できないんだ」

 

「んん……?つまりどういうことだよ?」

 

「……あっ!もしかして、()()()()()()()()()()()ってこと?」

 

 明日香の言う通りだ。

 通常召喚権を使わない融合召喚も、特殊召喚の1つであることは間違いない。しかし【フレイム・ウィングマン】はその特殊召喚の中でも、【融合】に類する効果による()()()()()()()フィールドに出すことができないのだ。

 

 つまり一度墓地に行ってしまうと、どうにかして墓地からEXデッキに戻して再召喚を狙うか、"墓地の融合モンスターを融合召喚する"というピンポイントな効果でもない限り再利用ができなくなってしまう。

 

 なまじ強力なモンスターだけに、大きな制限を抱えているのが【フレイム・ウィングマン】の欠点だろう。

 

「……じゃあ俺、あのままだと負けてたのか……?」

 

「そうとも限らないんだが……まあ、敗色濃厚だったかもな」

 

 一応、十代の墓地にいた【E・HERO クレイマン】を守備表示で蘇生しておけば、【メフィスト】の貫通ダメージもランデスも喰らわずに済んだのだが、その後のことは全くわからない。

 万丈目が装備魔法などで壁を踏み超えにかかるか、はたまた十代がまたも奇跡的なドローで逆転したのか……

 

「……ともあれ、今回はこれで良かったんじゃないか?万丈目とはまた戦う機会があるだろ。その時までとっておけばいいさ」

 

「むぅ……しょーがねぇ。今日はこの辺にしといてやるか。次戦う時は絶対に勝つ!」

 

「その意気だ。──今日はもう帰ろうぜ。頭使って疲れた……」

 

「そうね……それじゃあ、またね」

 

 別れの挨拶をしてから、各々の寮へ歩き出す。

 大まかな方向が同じ昴たち3人とは逆の方向に歩く明日香は、ふと振り返って昴の背中を見つめる。

 

「昴……あなたになら、頼めるかもしれないわね」

 

 とある決意を固めた明日香は、足早にブルー女子寮へ帰っていった。

 

 




リチュアのコンボ文章にするとくっっっそなげぇ件について。

まさかここまで大変だとは思ってませんでした…手札の回転が凄まじいんで枚数とか内容をちゃんと考えながら構成組み立てるの難しい……!

まあ自分で選んだデッキなんで、頑張って頑張る所存です。

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