遊戯王~(GXの)アカデミアに転生~   作:不可視の人狼

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長い腕とかぎづめが特徴の奇妙な姿をした悪魔


選ばれたのは、【モリンフェン】でした

 以前も言ったと思うが、デュエルアカデミアは学校だ。

 デュエルの為の施設とはいえ、学校である以上は絶対に避けては通れない関門が存在する。

 

 

 そう……テストである。

 

 

「──月(いち)テストねぇ……授業じゃそんな難しいことやってなかったと思うけど、どんな内容が出るんだ?」

 

 とある日の朝、イエロー寮の食堂で朝食を取っていた昴は、向かいで単語帳を捲りながらサンドイッチを齧る三沢にそれとなく聞いてみる。

 

「それはその時になってみないと分からないさ。俺はどんな問題が来ても対応できるよう、昨日の内に要点を纏めておいたが、昴はどうだ?テスト勉強」

 

「一応教科書だけざっと読み返したけど、通常モンスターのフレーバーはいつまで経っても覚えられる気がしない……覚えてるの【青眼(ブルーアイズ)】と【真紅眼(レッドアイズ)】に【モリンフェン】だけだぞ?」

 

「その2体と並ぶのが何故【モリンフェン】なのか非常に気になるところだが…まぁ大丈夫さ。君ならブルーに上がりこそすれ、レッドに降格することはないだろうしね」

 

「……あそっか。この成績如何でブルーに行けるんだよな、俺」

 

 デュエルの世界は実力主義。このテストで平均を大きく落とすようなことがあれば、現在ブルーに所属する生徒でも一気にレッドへ転落する可能性がある。

 逆もまた然りで、レッドにいる生徒でもここでいい成績を残せば、一足飛びにブルーへ……は無理でも、イエローには昇格できるのだ。

 

 食堂でのやり取りで三沢からテスト範囲のヤマを聞けるかもと思っていたが、そう上手くはいかないものだ。

 

 ともあれ、昴のテストに対するモチベーションが少しだけ上がった。

 

 

 

 

 

 

 

「『高い攻撃力を誇る伝説のドラゴン。どんな相手でも粉砕する、その破壊力は計り知れない』──」

 

 筆記テスト開始2時間前──随分早い時間だが、教室では既に結構な数の生徒が必死に暗記を繰り返していた。窒息しそうな空気を嫌った昴は、新鮮な空気を求めて校舎の外でこれまたフレーバーテキストを呪文のように繰り返していた。

 

「『真紅の眼を持つ黒竜。怒りの黒き炎はその眼に映る者全てを焼き尽くす。』──『長い腕とかぎづめが特徴の奇妙な姿をした悪魔』……ダメだ。この3つが精一杯か」

 

 食堂を出る時に1つだけ、三沢が助言をくれた。

 曰く、通常モンスターのフレーバーは書き取りではなく、選択問題で出題される傾向が強いらしい。つまりはカードのイラストとセットで出題されるということだ。

 

 であれば、そのイラストから得た情報を選択肢と結びつけることで対抗できるかもしれない。片っ端から暗記をする必要はないのだ。

 とはいえ胡座をかいていては足元を掬われるのが世の定め。そうならないように、さっきの3枚のテキストをひたすら脳に刷り込んでいたところだ。

 

「──こんな所にいたのね、探したわ」

 

「ん?……あぁ、明日香。暫くぶりか?」

 

 昴の元へ現れたのは、そよ風に金髪を揺らした明日香だった。

 

「そんなに経ってないわよ。テスト勉強であまり顔を合わせなかっただけ」

 

「へぇ…やっぱりブルーでもちゃんと勉強するんだな」

 

「どういう意味よ?…どうせ万丈目君たちの事考えてたんでしょうけど、彼らも授業中は真面目だし、テスト期間中しっかり勉強してるのよ」

 

 思いっきり図星を突かれた昴は口篭もり、話題転換を図る。

 

「そういえば…探してたって何のことだ?」

 

 生憎明日香には胸の内を見透かされていたようだが、特に咎めるようなことはしてこない。実際そっちの用件の方が重要だったらしく、本題に入った。

 

「雪乃のことよ。この間はあなたたちを引き合わせて、その後は任せきりにしちゃったから…あの娘に勝ったんですってね?」

 

「ギリギリだったけどな……それに、彼女は本気じゃなかった」

 

「ええ…それも聞いた。私からも謝るわ、ごめんなさい。…でもね、あの娘凄く楽しそうな顔してたのよ。『次は本気で戦いたい』って──雪乃の心にもう一度火を点けてくれたのはあなたよ、昴。本当にありがとう」

 

「そんなに畏まらなくていいって……俺も途中からはただ彼女に勝ちたいと思って戦ってたし、運良く結果オーライに落ち着いただけだ」

 

 昴の脳裏に、雪乃とデュエルした後の記憶が蘇る──

 

 決着後の艶めかしくもどこか晴れやかな微笑み…昴の唇をゆっくりとなぞる白く細い指。

 

 そしてその指が雪乃の唇に──

 

 そこまで再生したところで、急に昴の顔が熱を帯び始める。自分では確認できないが、下手したら【キラートマト】並に赤くなっているのではないだろうか。

 

「……昴、どうしたの?なんだか顔が赤いわよ?」

 

「い、いやっ、大丈夫だ。気にするな」

 

「でも息も荒いし…熱でもあるんじゃ……」

 

 昴の額に、明日香の手がピタリと当てられる。初めて触れる同年代の女子の手というのは予想外に柔らかく、一瞬だけ冷静になった思考もすぐにぐちゃぐちゃになる。

 

「本当に、大丈夫だ。ほら、慣れない勉強したから…知恵熱が出たんだろ。顔でも洗ってスッキリすれば──」

 

 心の奥底では名残惜しく思いながらも明日香の手を払った昴は、いそいそと立ち上がってトイレに向かおうとするのだが……この時、昴は初めて女神だか妖精だかの悪戯というものを味わうことになる。

 

「テスト前で倒れられても困るし、途中まで私も一緒に行くわ」

 

 踏み出そうとした足の靴紐がいつの間にか解けており、そしてそれをもう片方の足で踏んでいることに気付かず………

 

 

「───えっ!?」

 

「ちょ、昴!?───きゃっ!!」

 

 

 盛大に足を縺れさせた昴は、そのまま前のめりに倒れていく。明日香は反射的に昴を支えようとしたが、年頃の男子学生の体重を支えるには姿勢がやや不安定で……

 

 

「「……………」」

 

 

 2人はそのまま倒れこみ──昴が咄嗟に身体を反転させたお陰で──気付けば、明日香が昴に覆い被さる形で密着状態になっていた。

 腕も足も地面に着いていない、完全な密着状態……昴の意思に反してどんどん鋭敏になっていく感覚は、明日香の体の柔らかさをこれでもかと伝えてくる。

 

 そして極めつけには……

 

「(前からスタイルいいとは思ってたが…まさか、こんな………っ!!!!!)」

 

 ブルーの制服に包まれた──年齢を考えればかなり発育のいい──明日香の豊満な胸が、昴の体とで挟まれて水風船のように形を変えていた。

 そういえば明日香に呼ばれて女子寮に向かった際に風呂場から聞こえた会話で、明日香の抜群のプロポーションについてももえが言及していた事を、昴の頭が頼んでもいないのに思い出させる。

 

 制服2枚を隔てているというのに、重力に従って押し付けられる2つの膨らみの感触が次第に思考を侵食していき、理性が危険アラートを鳴らす。このままではまずい、()()()()()まずい。

 

 

 ──と、ここまでの思考が時間にして約1秒弱で昴の脳裏を駆け巡っていることを知ってか知らずか、明日香は自分が昴を下敷きにしてしまっていることに気付き、すぐさま立ち上がる。

 

「ご、ごめんなさい!大丈夫!?」

 

「あ、ああ…そっちに怪我がないならそれで……」

 

 思考の侵食が止まった昴は足が覚束無いながらも立ち上がると、一目散にダッシュで男子トイレに向かう。

 そして水道の水をバッシャバッシャと顔面に叩きつけた。

 

「(煩悩退散悪霊退散心頭滅却プトレノヴァインフィニティサモサモキャットベルンベルン──!)」

 

 自分で言ってて訳のわからない呪文を出鱈目に念じながら(物理的に)頭を冷やす昴。暫くして口から出た第一声は

 

 

「………最低だ」

 

 

 という切ない一言だった。

 

 一方、1人残された明日香はというと……

 

 

 

「(い、今、私昴のこと……!)」

 

 明日香は客観的に見て、自分が昴の事を押し倒す形になっていた事実を認識する。

 事故なのだと頭では理解しているのだが、そうと飲み込めないのには理由があった。

 

「(昴の心臓、凄くドキドキしてた……それって私で、その…ドキドキしてくれた。ってことなのかしら……)」

 

 完全密着状態だったからこそ伝わった昴の鼓動……それが次第にどんどん激しくなっていくのを明日香は直接感じていた。

 

 元々明日香は色恋沙汰にはそこまで興味がない。雪乃と並んで女王・女帝等と呼ばれているが、そういった話が浮上するのは雪乃の方が断然多かった。

 そりゃあ勿論、小さい頃は白馬の王子様に出会いたいというメルヘンな夢を抱いたことはある。しかしそれも時が経つに連れて卒業したし、何よりデュエルに打ち込むようになってからはそれどころではなくなった。

 

 だから、自分の事を慕ってくれる者はいても、異性として魅力を感じる者がいるとは、思っていなかったのだが……。

 

「やだ、私ったら……」

 

 不意に、自分の体温が上がっていることに気付く。一度深呼吸してから、自分の胸にそっと手を重ねてみると、自らの心臓もまた、昴と同じようにトクン、トクンと早鐘を打っている。

 

「……流石に考えすぎ、よね」

 

 そう自分に言い聞かせ、校舎の中に戻る。そろそろ筆記テストの15分前だ。教室にいた方がいいだろう。

 

 道すがら、もう一度胸に手を当ててみる──胸の高鳴りは先程よりは落ち着いたようだが、それでもまだ、力強く拍動を続けていた。

 

「(…けど、もし叶うなら……)」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「──ぐぁ~~、終わったぁ」

 

 筆記テスト終了を告げるチャイムが鳴り響き、教室内の緊張が一気に解ける。

 これで肩の荷が1つ下りたと思った矢先に、周囲の生徒たちは我先にと教室から出て行ってしまう。

 

「起きろ2人共!試験はとっくに終わったぞ!」

 

 そう言って机に突っ伏して寝ている十代たちを起こしてるのは、今回も成績トップであろう三沢だ。

 

「三沢、何なんだ今の……トイレ争奪戦?」

 

「そうじゃない、皆購買に行ったんだ。今日の昼休みに新しいカードが大量入荷する予定になってるからな」

 

「ほう、新カード……」

 

「皆午後の実技試験に向けてデッキを補強しようと、血眼になってるんだよ」

 

「ままままじで!?うぁ~~っ!折角勉強した筆記は寝ちゃうし、新カードには出遅れるし、もうおしまいだぁ~~~!」

 

「泣くなよ翔…そんなことより、早く購買向かった方がいいんじゃないのか?完売するのも時間の問題だぞ」

 

「はっ!そうだよアニキ!早く行こ!」

 

 まだ寝ぼけ眼を擦る十代を引きずるようにして、翔は購買へと走っていった。教室には昴と三沢だけが残される。

 

「お前はいいのか?新カード」

 

「俺は今のデッキを信用してる。変に新しいカードを入れても、却ってバランスが悪くなるからね」

 

 三沢の言うことももっともだ。

 新カードは確かに魅力的だが、あの様子では恐らくラインナップが公開されていない。加えて入手方法は従来通りのパック開封なのだから、必ずしも使えるカードを引き当てられるわけではない。

 こと昴に至っては、九分九厘自分のデッキと全然噛み合わないカードが出てくるだろう。

 

「(この時に儀式で強いカードってーと…やっぱ【高等儀式術】か)」

 

 先日のデュエルで雪乃が使用していた儀式魔法は強力だが。残念ながら通常モンスターのいない【リチュア】には採用できない。

 

 よって今出来ることと言えば、デッキを手直しするくらいか。

 昴は一旦寮に戻り、自室でカードを広げた。

 

「今のままでも戦えてはいるが……どうすっかな」

 

 様々な戦闘スタイルを持つ【リチュア】の中で、現在昴が使っているのはコントロール寄りの構築になっている。今までは十分に戦えていたし、勝利も収めてきたが、この先ずっとこのままではいられないだろう。

 

 雪乃とのデュエルで彼女が使っていたのは【破滅の女神 ルイン】──であれば、その後ろに控えているのが何なのか、予想はつく。

 

 行く行くはそれを相手にしなければいけない以上、新しい戦力──具体的には儀式召喚後も場に残って効果を発動でき、アドバンテージを稼げる存在が必要だ。

 だがデッキタイプを完全に変えるにはカードが微妙に足りない。そういえば別のデッキに何枚か出張させていたのを思い出した。

 

 半端に混ぜて安定感を失うくらいなら、まだこのままで行こうかと思ったとき──

 

 

 ──大丈夫。僕達と、僕達が一緒に戦うマスターを信じて──

 

 

 と、謎の声が聞こえた。周囲を見回してみるも、当然誰もいない。部屋の中は昴1人だけ。

 

 だが今の声は不思議と胸に響いた。

 

「………やってみる価値はあるか」

 

 そう呟いて調整用カードのケースを開けた昴は、その中から数枚のカードを取り出すと、手早くデッキを組み替え始めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『アーアー、マスカルポーネマスカルポーネ──それデワ、午後の実技テストを始めるノーネ!』

 

 クロノスのアナウンスで始まった実技テスト。体育館には新入生が勢揃いしており、各々緊張や不安に震えているようだ。

 

「よう昴!調子はどうだ?」

 

「十代…調子もなにも、いつも通りデュエルするだけだ。──そういや購買行ったんだろ?新カードは手に入ったか?」

 

「それが聞いてくれよ…なんかカード買い占めた奴がいたらしくてさ、俺と翔で1パックずつしか手に入んなかったんだ。──けど、俺のデッキはまた強くなったぜ!」

 

 パックの買い占め…前世なら大ブーイングしてやるところだったが、今回昴は関係ないのでスルー。だが十代も何かいいカードが手に入ったらしく、得意げな笑みを浮かべていた。

 

『早速始めますーノ。まずはブルーの生徒から。呼ばれた生徒はコートに下りて来るノーデス』

 

 1人、また1人とブルーの生徒が下りていくのを見送っていると……

 

『ドロッp──遊城十代、下りてくるノーネ!』

 

「えっ?なんで俺?──まぁいいや。行ってくる!」

 

「……クロノス教諭、また何か企んでるな」

 

 

 今回の実技テストは、基本的には同じ寮の生徒同士で戦う事になっているはずだ。人数の都合上ブルーとイエローの生徒が戦うことはあるかもしれないが、いきなりレッドの十代が呼ばれるのは明らかにおかしい。

 

 他の生徒も困惑する中、コートに出た十代の前に立っていたのは、不敵な笑みを浮かべた万丈目だった。

 

「何で俺が万丈目と!?」

 

「入試デュエルであれだけの成績を残したキミとオシリス・レッドの生徒では釣り合いが取れないーノデス。そこで、シニョール万丈目がキミの相手に相応しいと考えたーノデス」

 

 クロノスが持ちかけてきた条件は「ラー・イエローへの昇格」──筆記テスト全滅であろう十代を、実技の成績だけで昇格させようというのだ。

 

 明らかに何かを仕組んでいるのが透けて見えるが、そこはデュエルジャンキーの十代君。餌には微塵も興味がない様子で、挑戦を受けた。

 

「行くぜ万丈目──!」

 

「万丈目"さん"だ──!」

 

 

「「決闘(デュエル)!!」」

 

 

 十代 :LP4000 手札×5

 VS

 万丈目:LP4000 手札×5

 

 

「先行は俺だ!ドロー!……【E・HERO クレイマン】を守備表示で召喚!」

 

 

【E・HERO クレイマン】

 ✩4 戦士族 ATK800 DEF2000

 

 

 頑丈な粘土のボディを持つ屈強なヒーローが両腕をクロスさせ、十代を守るように現れる。

 

「ターンエンドだ」

 

 

 十代 :LP4000 手札×5

【E・HERO クレイマン】

 VS

 万丈目:LP4000 手札×5

 

 

「ッフフ……雑魚揃いのダメヒーローデッキめ、お前の脆さを見せてやる──俺のターン、ドロー!…俺は魔法カード【打ち出の小槌】発動!」

 

【打ち出の小槌】は、手札のカードを任意の枚数デッキに戻してシャッフル、その後戻した分と同じ枚数ドローする手札交換効果を持つカード。

 

 ただしアニメでは効果が微妙に異なり、手札だけではなく、発動した【打ち出の小槌】自身もデッキに戻る。その上、戻した【小槌】もドロー枚数にカウントされるというインチキ効果になっている。

 

 その効果で万丈目は計5枚の手札を交換。その中にあった【打ち出の小槌】を再度発動し、今度は2枚の手札を交換した。

 

 

「【打ち出の小槌】の効果もそうだが、引き直しで的確に次の【小槌】を引き当てる万丈目の引きも異常だな…3積しててもそうできることじゃないぞ」

 

 

「──いでよ【V-タイガー・ジェット】!攻撃表示で召喚!」

 

 

【V-タイガー・ジェット】

 ✩4 機械族 ATK1600 DEF1800

 

 

「更に永続魔法【前線基地】を発動!1ターンに1度、手札のレベル4以下のユニオンモンスターを1体特殊召喚できる!──来い!【W-ウィング・カタパルト】!」

 

 

【W-ウィング・カタパルト】

 ✩4 機械族 ユニオン ATK1300 DEF1500

 

 

 万丈目のフィールドに2体のモンスターが現れる。身構えた十代に、万丈目は更に畳み掛ける──!

 

「まだだ!フィールドの【V-タイガー・ジェット】と【W-ウィング・カタパルト】を融合合体!──この2枚をゲームから除外することで、EXデッキから【VW-タイガー・カタパルト】を合体召喚!」

 

 万丈目の手により、2体の戦闘機が変形合体──1体の大型モンスターへと姿を変えた。

 

 

【VW-タイガー・カタパルト】

 ✩6 機械族 融合 ATK2000 DEF2100

 

 

「融合モンスター…!【融合】を使ってないのに!」

 

「ククク…それが貴様の見ていた世界の狭さだ!【VW-タイガー・カタパルト】の効果発動!手札を1枚捨て、相手モンスター1体の表示形式を変更する!」

 

「なにっ──!?」

 

【クレイマン】の体が見えない力によって動かされ、無理矢理攻撃表示へと移行させられる。粘土の戦士が持つ攻撃力は僅か800…戦闘を行えばどうなるかは誰の目にも明らかだ。

 

「行くぜ十代!VW-タイガー・ミサイル発射!【クレイマン】を粉砕せよ──!」

 

 左右の砲門から大量のミサイルが発射され、クレイマンを爆炎で包み込んだ。守りでは強力なヒーローも、こうなっては為す術がない。

 

 

 十代:LP4000→2800

 

 

「カードを1枚伏せて、ターン終了」

 

 

 十代 :LP2800 手札×5

 VS

 万丈目:LP4000 手札×2

【VW-タイガー・カタパルト】

 魔法罠:【前線基地】

 伏せ×1

 

 

「なんの!まだデュエルは始まったばかりだぜ──!俺のターン!【E・HERO スパークマン】を守備表示で召喚!カードを1枚伏せて、ターンエンドだ」

 

 

【E・HERO スパークマン】

 ✩4 戦士族 ATK1600 DEF1400

 

 

 十代 :LP2800 手札×4

【E・HERO スパークマン】

 伏せ×1

 VS

 万丈目:LP4000 手札×2

【VW-タイガー・カタパルト】

 魔法罠:【前線基地】

 伏せ×1

 

 

「あれ、守備表示なんてアニキらしくない……」

 

 昴の横でデュエルを見守っていた翔がそう零す。

 

「攻撃力2000のモンスター相手ではああするしかない。逆転の手段があるとすれば融合召喚だが……恐らく、今十代の手札にはその為のパーツが揃っていないんだ」

 

 三沢の言うとおり、雷撃の戦士も今回ばかりは守りに徹するしかない。開幕での上級モンスター召喚は、それだけで戦況を大きくリードできるのだ。

 

「俺のターン、ドロー!【X-ヘッド・キャノン】を召喚!更に【前線基地】の効果で【Z-メタル・キャタピラー】を特殊召喚!」

 

 

【X-ヘッド・キャノン】

 ✩4 機械族 ATK1800 DEF1500

 

【Z-メタル・キャタピラー】

 ✩4 機械族 ユニオン ATK1500 DEF1300

 

 

「マズイ…XとZを出してきたということは──!」

 

「──リバースカードオープン!【リビングデッドの呼び声】!墓地から【Y-ドラゴン・ヘッド】を特殊召喚だ!」

 

 

【Y-ドラゴン・ヘッド】

 ✩4 機械族 ユニオン ATK1500 DEF1600

 

 

 赤いボディのドラゴン型メカが召喚されたことで、万丈目のフィールドにX・Y・Zの3体が揃った。

 

「XYZを合体させ──合体召喚!【XYZ-ドラゴン・キャノン】!!」

 

 

【XYZ-ドラゴン・キャノン】

 ✩8 機械族 融合 ATK2800 DEF2600

 

 

「攻撃力2000以上のモンスターが2体……!十代に勝ち目はないか……!?」

 

「それだけじゃない、まだ万丈目の展開は続くぞ…!」

 

「そんな!これ以上!?」

 

「これで終わりだと思うなよ!俺は【VW-タイガー・カタパルト】と【XYZ-ドラゴン・キャノン】を融合──合体召喚!【VWXYZ(ヴィトゥズィ)-ドラゴン・カタパルト・キャノン】!!」

 

 戦闘機と大型戦車が更に変形合体し、巨大な人型メカとなる。V~Zまで全てのメカの力を総結集させた【VWXYZ(ヴィトゥズィ)】は、その力を誇示するようにフィールドへ降り立った。

 

 

VWXYZ(ヴィトゥズィ)-ドラゴン・カタパルト・キャノン】

 ✩8 機械族 融合 ATK3000 DEF2800

 

 

「【VWXYZ(ヴィトゥズィ)】の効果発動!【スパークマン】を消し去れ!」

 

「…っそんな!【スパークマン】!」

 

 これが【VWXYZ(ヴィトゥズィ)】の恐るべき能力。1ターンに1度、フィールドのカードを無条件で除外できるのだ。破壊ではないから墓地に行かず、再利用の手段も限られる。

 

「いけぇ!【VWXYZ(ヴィトゥズィ)】でプレイヤーにダイレクトアタック──!」

 

「待った!罠発動【ヒーロー見参】!──このカードは俺の手札から1枚を相手に選ばせ、それがモンスターだった場合、フィールドに特殊召喚できる。さぁ選べよ万丈目!」

 

「万丈目"さん"だ!──一番右だ!」

 

 果たして万丈目が選択したカードは……

 

「……おっ、ラッキー!お前が選んだのは【バーストレディ】!守備表示で特殊召喚だ!」

 

 

【E・HERO バーストレディ】

 ✩3 戦士族 ATK1200 DEF800

 

 

「守備表示で出そうが無駄だ!【VWXYZ(ヴィトゥズィ)】が戦闘を行う際、俺の意のままに相手モンスターの表示形式を変更できる!──やれ!VWXYZ(ヴィトゥズィ)-アルティメット・ディストラクション!」

 

 巨大メカの砲撃は炎を操る女戦士を打ち抜き、戦場から跡形もなく消し去った。

 

 

 十代:LP2800→1000

 

 

「フハハハッ!ターンエンドだ。これでまた丸裸…お前も守るモンスターはもう1体も居やしないぜ」

 

 

 十代 :LP1000 手札×3

 VS

 万丈目:LP4000 手札×0

VWXYZ(ヴィトゥズィ)-ドラゴン・カタパルト・キャノン】

 魔法罠:【前線基地】

【リビングデッドの呼び声】

 

 

「十代の劣勢だな……」

 

「どうしよう、このままじゃアニキ負けちゃうよ!」

 

 確かに戦況は芳しくない。だが勝機はまだあると、昴は思っている。何故なら十代にはアレがあるからだ。

 

「俺は諦めない…!一緒に闘ってくれるモンスターたちがデッキの中にいる限り、絶対に諦めたりしない!行くぜ、俺のターン──ドローッ!」

 

 ──そう。アレとは即ち、土壇場で逆転の1枚を引き当てる奇跡のドローが!

 

「ヘヘッ!俺は【ハネクリボー】を守備表示で召喚!」

 

 十代がこの局面で呼び出したのは、羽の生えた【クリボー】だ。クリクリ~!と可愛らしく鳴くこのモンスターに、とても戦況をひっくり返す力があるようには見えない。

 

 

【ハネクリボー】

 ✩1 天使族 ATK300 DEF200

 

 

 その後も十代はこれといったアクションを起こすことなく、カードを伏せるだけでターンを終了した。

 

 

 十代 :LP1000 手札×2

【ハネクリボー】

 伏せ×1

 VS

 万丈目:LP4000 手札×0

VWXYZ(ヴィトゥズィ)-ドラゴン・カタパルト・キャノン】

 魔法罠:【前線基地】

【リビングデッドの呼び声】

 

 

「俺のターン!──無駄だと言ったはずだ!戦闘ダメージを0にするその毛玉野郎がいたところで、バトルする前に【VWXYZ(ヴィトゥズィ)】が消し去る!」

 

VWXYZ(ヴィトゥズィ)】の胴体から伸びた砲門が【ハネクリボー】に狙いを定めた瞬間、十代の口元に笑みが浮かぶ。

 

「この瞬間──速攻魔法【進化する翼】を発動!手札2枚を墓地に送ることで【ハネクリボー】を進化!【ハネクリボー LV10】を召喚!」

 

 光の力により【ハネクリボー】の背中の羽が巨大化し、竜を象った姿へと変わった。

 

 これこそ十代が手に入れた新しいカード…彼が人知れず行った善行の結果である。

 

 

【ハネクリボー LV10】

 ✩10 天使族 ATK300 DEF200

 

 

 脅威だった【VWXYZ(ヴィトゥズィ)】の除外効果はチェーン処理の結果、目標を失い空撃ちとなり──しかし発動自体はしていたため、このターン中二度と使うことはできない。

 

「ちぃっ!だが進化したところで攻撃力は変わらん!【VWXYZ(ヴィトゥズィ)】で消し飛ばしてやる!──アルティメット・ディストラクション!!」

 

「万丈目!お前に俺の相棒の力を見せてやるぜ!【ハネクリボー LV10】の効果発動!バトルフェイズ中に自身をリリースすることで、相手の攻撃表示モンスターを全て破壊し、その攻撃力の合計分ダメージを与える!──全てのエネルギーをアイツに返してやれ!【ハネクリボー】!」

 

 眩く輝く翼に蓄積されたエネルギーが解き放たれ、【VWXYZ(ヴィトゥズィ)】を呑み込む。

 

 爆炎と共に破壊された【VWXYZ(ヴィトゥズィ)】の攻撃力分のダメージが万丈目に与えられた。

 

 

 万丈目:LP4000→1000

 

 

「ぐぅ……っ!ターンエンド……っ!」

 

 

 十代 :LP1000 手札×0

 VS

 万丈目:LP1000 手札×1

 魔法罠:【前線基地】

【リビングデッドの呼び声】

 

 

 これでライフは互角、モンスターはおらず、メインフェイズ2に何もしなかったことから万丈目の手札もモンスターカードではない。対する十代も手札は0枚、互いに攻撃の手段を持っていない。

 

 つまり勝敗を分けるのはドロー──"引き"の力。

 

 先にモンスターカードを引いた方が勝利を手にする。

 

「──なあ万丈目!ここで俺が攻撃力1000以上のモンスターを引いたら面白いよな?」

 

「何を戯言を!そう簡単に………っ!」

 

「でも引いたら面白いよなぁ──!?俺のターン、ドロー!」

 

 

 十代が引いたカードは………!

 

 

「俺はこのカード──【E・HERO フェザーマン】を召喚!プレイヤーにダイレクトアタック!」

 

 

【E・HERO フェザーマン】

 ✩3 戦士族 ATK1000 DEF1000

 

 

 彼の元に駆けつけたのは、白い翼を持つ風の戦士。

 その翼を羽ばたかせ飛び立った【フェザーマン】は、鋭い鉤爪で万丈目の体を切り裂いた。

 

「うわあああああぁぁあ───っ!!!」

 

 

 万丈目:LP1000→0

 

 

 なんとも熱い劇的な勝利に、デュエルを見ていた生徒たちも一斉に沸き立つ。

 こうなっては最早オシリス・レッドだろうが関係ない。手に汗握るラストターンを制してみせたのは、他ならぬ遊城十代なのだから。それを素直に祝福しない方が無粋というものだろう。

 

「やった!やったよ!アニキが勝ったー!」

 

 

「──ガッチャ!楽しいデュエルだったぜ!」

 

 

「これで十代もイエローか……負けていられないな」

 

「ああ…あいつの変態ドローには本当に驚かされる。どんな引きしてるんだか」

 

 未だ興奮冷めやらない中、あからさまに不機嫌なクロノスのアナウンスが響き渡る。

 

『えー、テストの続きを行なうーノ。次は…ゲッ……おほん──ラー・イエローのシニョール加々美。下りてくるノーネ』

 

「ん、俺の番か」

 

 デュエルディスクを装着し、コートに続く階段を下りる。その途中で、戻ってきた十代とすれ違った。

 

「次は昴か。絶対勝てよ!熱いデュエル、期待してるぜ!」

 

「お前ほど熱いのは無理かもだけどな。まあ頑張るさ」

 

 十代と、真っ先に彼の元へ駆けつけた翔に見送られ、デュエルフィールドに立つ。

 

 そこで昴を待ち構えていたのは───

 

 

「──数日振りかしら。また会えて嬉しいわ、カワイイ昴」

 

「……藤原、雪乃」

 

 

 オベリスク・ブルーの藤原雪乃──先日昴と戦って敗北したものの、本当の実力を出していなかったアカデミアの女帝が今、再び牙を剥こうとしていた。

 




サブタイトルは超適当につけました。一応内容には掛かってるからいいよね!

今回のデュエルはアニメをほぼ完コピになってしまいました…たまには昴以外のデュエルも書いた方がいいかなと。
(じゃあ明日香のテスト戦とか書けば良かったんじゃないですかねぇ?)←仰る通りです

さて、その明日香ですが…どうだったでしょうか?
前回の雪乃が初対面にしては攻め攻めだったので、明日香もどうにかして追い上げというか、ヒロインムーブをどうにかせねばと思い、色々と提案を頂いたりしてこの形になりました。
所謂ラッキースケベ(?)です。

こう、「ムニュッ」っとさせようかなーとか思ったんですけど(何をとはry)
ごめんなさい日和りました…非力な私を許してくれ……

次回は雪乃(本気)VS昴になるかと思います。更新を気長にお待ちください。
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