アヤメさん@ビキニアーマー! 今更ながらバトローグ見た勢いで書きました。

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登場機体の動画です。
ドラグーン・ゼロ https://www.youtube.com/watch?v=yIcRABEUImU


お腹がスースーするよぅ(>_<)

「ついに……」

 感涙にプルプル震えて、どーん!

「ついに来ちゃった!」

 拳を頭上に突き上げて、わが生涯に一点の悔いなし!

 一面の草原。遠くにそびえる雪山の頂き。

 眼前に広がるのはヨーロッパの田舎風牧歌的風景。

 蛇行しながら地平線に消えていく街道沿いに、ポップな感じのイラスト付き立て看板。

 カラフルなデフォルメされたクマっぽいロボットの横。漫画風の吹き出し。

『ここより、くまくまランド』

 

 

 

 わたし、ビルドダイバーズのくのいちアヤメことフジサワ・アヤは無類の可愛いもの好きだ。

 可愛いのが好きだからSD乗りダイバーやってるのは公言してるし、隠してない。

 が、自室がぬいぐるみで溢れてるのは話してない。

 よしんば、そのぬいぐるみひとつひとつに名前をつけて溺愛しているなどと、話せたものでは無い。

 わたしにもイメージというものがある。フォース内では年長組で、クールなお姉さんキャラなのだ。

 当初はスパイ。それが激闘を経て和解、途中から仲間に加わった。特撮物で言うならば『黒』担当の、クールでアダルティーな大人(リアルでは高校生だが)の女なのだ。

「……ましてや」

 そんなわたしがくまくまランドに行くのが夢だなんて言える訳が無かった。

 

 

 

 ここで『くまくまランド』について説明しよう。

 GBNは無数のサーバーに仮想世界を構成する負担を分担されて成立している。

 その中のひとつ。とある世界有数の資産家の個人サーバー内の、個人所有が許されたエリア。

 そこには架空の王国がある。

 王様はプチッガイ。女王様もプチッガイ。王子様もお姫様も大臣も、というか住人全員がプチッガイなのだ。

 くまのくまによるくまのための国。

 それが、くまくまランドである。

 素晴らしい。

 可愛いものしか無い、可愛いものだけで成り立つ、まさにパラダイス。件の資産家殿も、さぞかし可愛いもの好きなのだろう。

 そして、このくまくまランド、個人エリアにも拘らず一般公開されている。誰でも無料で入国可能なのだ。

 ただし条件がひとつ。

 剣と魔法(?)の世界観を壊さないファンタジックな外見のアバター、もしくは、それに準ずるコスチューム着用であること。

 要はドレスコード。

 これに、くのいちルックが引っ掛かった。

 ゲーム的和洋折衷世界なら問題無いと思うのだが、どうやら資産家殿はハイファンタジーにこだわりがあるタイプらしい。

 幸い、手持ちのビルドコインには余裕があった。コス変更用アイテムを買い揃え、そして本日。

 晴れて、入国と相成った訳だ。

 

 

 

「うう。ちょっと恥ずかしいけど……」

 自分の身体を見下ろして、少し顔を赤らめる。

 中世西洋風の鎧に剣。ただし、やたらと露出度が高い。特にお腹が丸出しで、自分で自分のおへそが見える。

 俗に言う、ビキニアーマーというやつだった。

 購入した時点では普通の鎧に見えたのだ。

 それが、実際に着用してみると、途端にこうなった。

 どうやらアバターの性別や体格に応じて、自動調節する機能が備わっていたらしい。

 とんだセクハラ機能である。便利と言えば便利だが。

 もちろん生身ではなく所詮アバターなんだけど、恥ずかしいものは恥ずかしい。同じぐらいの露出度でも、これが水着とかなら全然平気なのに。何が違うんだろう?

「……よしっ!」

 気を取り直して端末をタップ。機体を実体化させる。

 光と共に出現する3等身のシルエット。

 外装パーツを取り外したSDガンダムの素体。いわゆる軽装モード。

 普段使っている零丸では無い。

 せっかくなのでコスチュームに合わせて新規に造ったガンプラ。レジェンドBB魔竜剣士ゼロガンダムをベースに改造、というよりもオプションパーツを追加した機体。

 登録名『ドラグーン・ゼロ』

 『コクピット内部に移動する』アイコンをタップ。

 ドラグーン・ゼロを操作して抜剣、シンプルな長剣ファルコンソードを頭上高く掲げる。

「合体!」

 ガチャン、ガチャン!

 やはり発光エフェクトを纏って出現した外装パーツの群れが、音を立てて組みあがっていく。瞬く間に、そこには……

「竜機ツアラードラグーン!」

 二足歩行する小型のドラゴン。ファンタジー作品でお馴染みの『騎竜』を模した支援メカが駐機状態でスタンバイしていた。

「とうっ!」

 掛け声も勇ましくツアラードラグーンに騎乗。ギャロップで駆け出す。

 さあ冒険(?)の始まりだ。

 

 

【挿絵表示】

 

 

 程なくして最初の村に到着した。

 入口のメルヘンチックなアーチには『ベアベア村』と丸っこい文字で書かれている。

 ブンブンブン!

 第一村人もといクマが短い手足を振り回す。ジェスチャーだ。『ベアベア村にようこそ!』と言っている。わたしには分かる。

「えへへ」

 ふにゃ~、となる。絶妙に可愛い。

 こちらもジェスチャーで返す。

 ブンブンブン!

『こんにちは。わたしはアヤメと言います』

『こんにちは。僕はプチッガイです。あと、普通に喋っても大丈夫ですよ』

「なら、お言葉に甘えて。さっそくだけどこの村に冒険者ギルドはあるかしら?」

『こっちだよ』

 付いて行く。

 冒険者ギルド。

 GBNでは耳慣れない、逆にそれ以外のゲームではお馴染みのワード。GBN全体ではミッションと呼ばれる、このくまくまランド限定でクエストと呼ばれる(中身は同じ)依頼を受注する施設の名称だ。

 言い忘れていたが、今日ここに来ていることをフォースの仲間には話していない。

 端末の通知設定もオフにしているから通信は繋がらないし、ログインしているかどうかさえ確認できないようになっている。

 心ゆくまでプライベートを楽しむのだ。

『ここだよ』

 到着。

 丸まっこい剣と盾の図案が描かれた看板の下、両開きの大きな扉。建物自体は丸太小屋に近い。

 案内してくれたクマに礼を言って中に入る。

「こんにちは。クエストを探しているのだけど」

 カウンター奥に座っていた別のクマに声を掛ける。

 頬に漫画的に誇張された傷跡の走る、おそらく歴戦の冒険者が引退してギルド職員になったとか、そんな感じの設定を思わせる外見。

(なるほど、そっち系ね)

 大体、冒険者ギルドの受付と言えば、若い女の子かこのタイプのどちらかだ。

『お前さん、冒険者登録は?』

 ジェスチャーも微妙にシブい。シブ可愛い。

「いいえ、してないわ」

『なら先に済ませよう。この空欄に記入してくれ』

 やはり丸文字で書かれた登録用紙を手渡され、必要事項を記入する。

「これでいい?」

『……ああ、問題無い』

 言いながら、何枚かの書類を取り出す。カウンターに並べて、

『今受けれるのは、この辺だ』

「えーと、ゴブリン退治に薬草採取……って」

 思わず二度見する。

「マンティコア退治⁉」

 確か、かなりの強敵だ。こんな序盤の村で出くわすようなものなの?

「これってどこに出るの?」

『村の裏の森とかだな』

 超近所! 治安!

 ……まあ、だから冒険者が必要なんだろうけど。

『攻略難度はC+といったところだな。報酬はここに書いてある通りだ』

「ふむ」

 難易度的には問題は無い。ギャランティも悪くない。何より新規機体の慣らし運転に丁度いい。

「この依頼受けるわ。依頼達成の証明はどうすればいい?」

『パーツデータかアイテムをドロップするはずだ』

「落とさなかったら?」

『運が無かったと思ってくれ』

 クマなのにシビアだ。

 そしてニヒルに肩をすくめる仕草は、無駄にキュートだ。うん、キュンキュンするわー。

 バン!

 そんな時、不意にドアが押し開けられた。

『たっ、大変だ!』

 

 

 

 鬱蒼と生い茂る針葉樹が、モスグリーンの残影になって後方に流れていく。

 まさに飛ぶような速さで駆ける。

「いたら返事をして!」

 呼び掛ける声も置き去りにしてゆく。

 

 

 

 ところ代わって村の裏手、森の中。

 思いのほか深い森だ。むしろ何でこんな場所に村造ったの?

 

 

 

 先ほどギルドに駆け込んできたのは、当たり前だが……クマだった。

 特に特徴の無いプチッガイがグリングリン、クネクネして伝えたところによると、子供がいなくなったらしい。

 書き置き、というかメモ書きに『森に薬草を取りに行く』と書いてあったそうだ。

『馬鹿野郎! 森は危険だって言ってなかったのか!』

『言ったさ! けど女房が、あいつの母親が病気で』

『くそっ! なんてこった!』

 などと、傍目にはただただユーモラスなダンスを最後まで見ること無く、

「わたしに任せて!」

 と、ギルドを飛び出したのが数分前。

 所詮子供の脚だ。どれぐらい前の話かは分からないが、日帰りで行ける範囲なんてたかが知れている。

 ツアラードラグーンの速度ならもう追いついていないとおかしいぐらいだ。

(まさか方角を間違えた? けど、こっちしか……)

 いささか不安になってきた時だった。

 GYAAAAAAAAAA!

 つんざくような咆哮が鳴り響いたのは。

(近い! そこだ!)

 吠え声を頼りに飛び出す。

 引きちぎられた針葉樹の葉を漂わせた視界の中。

(いた!)

 そこにうずくまった、小柄なプチッガイ。そして。

 マンティコアの巨体が天を突くように屹立していた。

 

 

 

「いや、大きすぎるって!」

 第一声はそれだった。

 マンティコア。

 顔は猿、身体はライオン、尾はサソリでコウモリの羽根が背中から生えている。

 そして全高20メートル。

 まさかの4本足で立った状態の頭の高さがモビルスーツを超えている。全長で言ったら50メートル以上あるんじゃない、これ。

「序盤の村だよね⁉ ゲームデザイナー何やってんの!」

 とは言いつつ、プチッガイも大きさは人間の何倍もある。案外、適正サイズなのかも……インパクトすごいけど。

「とりあえず行って! あの子を助けてあげて!」

 飛び降りざま、ツアラードラグーンに指示を出す。

 剣先を向けてマンティコアを牽制する背後から、竜機の走行音。

 ツアラードラグーンはただの乗り物じゃない。ある程度自立行動も可能なAIを搭載した支援メカなのだ。

 GURRRR……

 マンティコアが低く唸る。警戒している。意外と知能が高い。

 試しに一歩踏み込んでみる。

 マンティコアが同じだけ下がる。

 もう一歩。下がる。

 さらに一、

 GURR、GYAAAAAAAA!

 物理的な圧力すら感じさせる魔獣の咆哮。

「くっ⁉」

 吹き飛ばされそうな錯覚。

 一拍遅れて叩きつけられる現実の爪牙。間一髪避ける。

 ブゥオオオン!     

 さらに遅れて風圧と、空気の分子間結合すら切り裂きそうな擦過音。

「これでC+ですって?」

 冗談じゃない。一発でも貰えばただじゃ済まない感が凄いんだけど。あとで色々抗議しよう。

 マンティコアがジリジリと距離を詰める。

 ドラグーン・ゼロが同じだけ下がる。

 攻守を入れ替えて、さっきと同じ展開……いや。

 ピピ! ツアラードラグーンから簡易通信。命令完了の表示。

(よし! 今だ!)

「フォームチェンジ!」

 音声コマンドを入力。

 ツアラードラグーンから外装パーツが射出される。

 ガチャン、ガチャン!

 音を立てて軽装モード素体に装着されていく。刹那ののち。

「魔竜剣士ゼロガンダムTipe-Ⅰ!」

 そこには純白のマントを翻す、西洋甲冑を身にまとったSDガンダムの姿があった。

 GYAAAAAA!

 再度咆哮。攻撃。

 上から押し潰す前足の一撃を、絡めとるようなマントの捌き。手にした長剣ファルコンソードの剣先が円を描く。

 

【挿絵表示】

 

 力を受け流されてバランスを崩したマンティコアがつんのめる。その隙に。

「フォームチェンジ! Tipe-Ⅱ!」

 2回目の外装チェンジ。

 より攻撃的に姿を変えた甲冑の背、巨大な青水晶で構成された大剣が抜き放たれる。

 ブゥオオン!

 紫電を纏わせる袈裟斬りの一撃がマンティコアを切り裂く。

 

【挿絵表示】

 

 GIYAA! 苦鳴。だが浅い。SDの体格から繰り出される狭い殺傷範囲では、致命傷には程遠い。

(なら!)

 マンティコアが体勢を立て直す一瞬前。既にサソリの尾が、独立した別の生き物のように動き出している。一刻の猶予も無い。

「フォームチェンジ!」

 3度目の宣言。ツアラードラグーンから、それぞれ前足、首、羽根のパーツが撃ち出される。

 ドラグーン・ゼロに突き刺さるように合体。四肢と胴体を延長、さらに頭部が入れ替わる。

「リアル等身モード! ドラグーン・ゼロ!」

 刹那より速く体高を2倍強に増したドラグーン・ゼロが、大剣を大上段に構える。

 古流剣術で火の構えと称される超攻撃的な型。天高く掲げられた剣の切っ先はマンティコアの頭上遥か上。

「サンダーソード!」

 一閃。

 

【挿絵表示】

 

 遅れて迸る、弾けあう紫電。轟音。空気が同心円状に波打つ。

 ドン!

 その音に押し出されるように、マンティコアが脳天から左右に分かれていく。

 2枚おろしが地に触れる寸前、ワイヤーフレームに戻り解けていく。

「ふう」

 残心を解いたドラグーン・ゼロが振り返る。

 ツアラードラグーンの上。ちょこんと座ったプチッガイに手を振る。

 向こうもプルプルしながら振り返す。超可愛い。お持ち帰りしたい。

「結局ドロップしなかったんだけど、証言ってありなのかな……」

 

 

 

 アヤメのくまくまランド滞在記は、こんな感じの幕開けとなった。




ご読了ありがとうございました。

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