Nordic iron storm 〜陸上の海賊〜 作:COTOKITI JP
森の中、利恵率いるAチームは利恵の搭乗するDelat tornを最後方に置き、散開。
駆逐であるPvkvⅡには左側の丘上から索敵をさせている。
《こちら愛仁、敵に動きあり。 まだ我々には気付いてないと思われる》
PvkvⅡの車長の西川 愛仁は双眼鏡でBチームの動きを観察する。
車両の編制に関しては既に双方把握しているので無線で伝える必要は無い。
と言うよりAチームBチームも駆逐等を除けば編制は大して変わらない。
軽戦車にはStrv m/41 S-Ⅱを採用している。
中戦車には利恵も乗っているStrv m/42 Delat torn。
駆逐にはPvkvⅡとfm/43-44、Sav m/43(1946年型)。
やむを得ず復元した車両もあるが、完璧な状態を保たれた車両がかなり現存していた為、低価格で購入する事が出来た。
どれも皆いい車両ばかりだ。
軽戦車は軽快な足回り、決して侮れないAPDSを発射する37mm砲。
中戦車は装甲は薄いものの、搭載された75mm砲は半自動装填装置によって高い発射レートを有する。
駆逐もPvkvⅡは貫徹力の高い砲に16倍のスコープを搭載しており、遠距離の狙撃に適している。
他にも足回りの優秀な自走砲に高貫徹力を誇るHEATを発射する駆逐戦車と、ウチでは特に遠距離戦に力を入れている。
まぁ、連携が取れなければ全くの無意味なのだが。
《おっしゃあぁぁぁぁ!!見つけたぞぉ!!吶喊ッッ!!!!》
《ブッ殺せェェェェェエエエエエエエエエエ!!!!》
《頭ねじ切ってオモチャにしてやる!!》
《ハハッ、ゲイリー!》
《………………あぁっと……敵チームも吶喊を始めたぞ……うん》
「…………………………」
とても戦車兵がやるとは思えない原始的かつ豪快な戦いを利恵は虚ろな目で見ていた。
ある者は敵車両に体当たりをカマして横転させたり、ある者は戦車から飛び降りて外でリアルファイトを始めたり、またある者は戦車で相撲をしている。
砲声だけでなく明らかに何かが壊れてそうな金属同士が激しく衝突する音が森の中に響き渡っていた。
そう、今の光景があの一年間の屈辱の全ての原因と言えるだろう。
「………………この学校……終わってんな」
今更過ぎることを、利恵は呟いた。
「……成程な……」
模擬戦の間、席を外していたアルヴァに結果を報告すると彼女は悩ましげに頭を抱えた。
「敵を視認した瞬間AチームBチーム共に暴走、結局Aチームの駆逐が全て撃破……まぁ予想はしていたがな」
もしあの時愛仁がいてくれなかったらきっと今頃地獄絵図が出来上がっていたに違いない。
「奴らは狂犬だ。 戦車に乗る前にブートキャンプにブチ込んだ方が少しはマシになるだろうよ」
隣にいた愛仁が冗談三割本気七割の提案をしながら部屋に入って来た。
愛仁の事だから何か用事があって来たのだろう。
「確かにそうかもしれんな。 それで、なんの用だ?」
「あぁ、少し日日が遅れたが明日教官が来る」
「ほう」
教官という言葉を聞いたアルヴァは興味ありげに目を見開いて愛仁を見た。
練度の向上をしようにも経験者のいないこの高校にとって、教官という存在は今すぐに欲しい人材だった。
「なんでも、かなり熟練の戦車兵で男らしい。 元ロシア……いや、正確にはソヴィエト時代から軍に所属していたようだ」
「だとするともうジジイだな」
「しかし何十年という長い年月の中で培って来た技術には興味があるな」
この翌日、生徒会長の部屋は再び叩かれた。
「お待ちしていましたよ、教官殿」
「いやぁここは賑やかだねぇ。 おっと、私はアレクセイ・レマノフ。 本日付けでこの学校の戦車道教官として働かせてもらうよ。 第三次世界大戦ですらノコノコ生還した死に損ないの老人だが、頼りにしておいてくれ」