ボラー連邦との戦線が奇妙な静けさを見せている間、地球防衛艦隊はSUSに対しての攻勢を行っていた。
初期のコンタクト以来、大きな動きは無かったものの、懸命な偵察活動や情報収集により本星がウエスト恒星系という星系にある事、そして名も無き宙域に建造中の要塞がある事を防衛艦隊司令部は把握、ウエスト恒星系に侵攻しての本星攻撃作戦が練られる中、建造中の要塞の奪取もしくは破壊を実行する作戦が決行された。
「仕事があるって事はいいものだ」
火星自治州軍宇宙艦隊旗艦アンドロメダ級アルカディアの司令席に座る自治州艦隊司令のメイカー・ラザレンコ大将は集結した艦隊を見つめながら呟いていた。
本来ラザレンコは自治州艦隊司令という立場である為、現場に出ることは殆ど無いのだが、自治州艦隊総旗艦アルカディアの出撃や各国艦隊を纏める必要もある為、今回は前線に現場指揮官という立場で出ていた。
集結した艦隊の攻撃目標はSUSが建造中の要塞であり、守備兵力も少なからず存在すると把握されている為、それなりの規模の攻略艦隊が編成されており、地球防衛艦隊は勿論のことエトス、ベルデル、フリーデも艦隊を出していた。そしてこれら艦隊の中核が火星自治州艦隊であり総旗艦がアルカディアである。火星自治州艦隊はこれが初陣であり、将兵皆士気は非常に高く艦隊の練度も高かった。
この攻略艦隊は2205年8月10日にバダルメ恒星系を出撃、一路SUSが建造中の要塞がある宙域を目指し、12日は到着したのである。
建造中の要塞がある宙域に到着した攻略艦隊は直ちに戦闘態勢に移行、攻略作戦を発動した。
これに対しSUS軍も守備艦隊を差し向け、戦闘の火蓋は切られた。
「全艦攻撃を開始せよ」
ラザレンコの号令を受け、攻略艦隊はSUS艦隊に向け攻撃を開始した。
攻略艦隊の布陣は中央に火星自治州艦隊、右翼にエトス艦隊、左翼にフリーデ艦隊、後衛にベルデル艦隊と予備戦力の第一戦列波動砲艦隊であった。
この内ベルデル艦隊は航空戦力の投射を目的とし第一戦列波動砲艦隊は切り札という扱いであった。この第一戦列波動砲艦隊は50隻の無人ドレッドノート級と旗艦のブルーリッジ級作戦指揮艦からなり、その圧倒的火力と波動砲にて敵を粉砕する艦隊である。本作戦では予備戦力として用意され、不測の事態の際には前面に出て敵を粉砕するのが目的とされた。
そしてベルデル艦隊が艦載機を発艦させ航空戦力を展開、第一戦列波動砲艦隊は待機の状態で始まった艦隊戦はお互いが正面からの撃ち合いとなった。
火星自治州艦隊を筆頭に連合国艦隊は建造中の要塞への攻撃を阻止せんと向かってくるSUS艦隊に猛撃を浴びせ次々と撃沈艦を発生させる。勿論SUS艦隊からも攻撃が行われ、損害が出るが許容範囲であった。SUS艦は火力が高く一撃一撃が重いものの波動防壁やビームかく乱幕を展開し応戦している連合国艦隊に対して決定的な有効打を出すことは出来ず、逆にその脆い防御力が災いしてベルデルファイターの機銃掃射や砲撃が掠っただけでも轟沈する艦が相次いでいた。
「脆いな」
ラザレンコは轟沈艦が相次ぐSUS艦隊を見ながら呟いた。
強力な火力を持つショックカノンならまだしもショックカノンより威力が劣るエトス、フリーデ艦隊からの砲撃でも轟沈艦が相次いでいるのを見るとSUS艦の防御力には問題があるレベルだとラザレンコには思えた。先の戦闘のレポートにも目を通してはいたが、いざ相対すると「艦を守るどころか兵も守れんではないか」そう言葉を発しそうになる状況であり、此方はエトス、フリーデ艦隊も被弾艦が相次いでいるが未だ戦線離脱艦のみで撃沈艦が出て無いのは幸いだし、命を落とす兵が少ないのは良い事であり、SUS艦隊とは正反対の状態であった。
そんなことをラザレンコがふと戦局を見ながら考えているとオペレーターから報告が入った。
「司令、敵艦隊右舷後方より新手が接近。数50」
その報告を受けるとラザレンコは撃沈艦が相次いでも引かない闘志に感心すると共に、脆い防御力の艦を戦術も無くただ戦列に追加するように思え、命を粗末にしながら戦っているようにも見えた。
「承知した。新手の敵には後方の火力投射隊にミサイル攻撃を実施させろ。戦列に加われても厄介だ」
「了解。火力投射隊に攻撃命令を出します」
オペレーターはラザレンコの命令を自治州艦隊後方に展開していた火力投射隊に伝達した。
この火力投射隊はミサイル攻撃を主力火力とした部隊であり、その編成はグラニート級火力投射艦20隻、鹵獲アマンガ型10隻、レパント級20隻からなる艦隊であり。グラニート級はアマンガ型と似たような船体だがミサイルランチャーを倍増させている他、上部甲板、下部甲板にVLS、側面にもミサイル発射管を多数装備しておりそのミサイル斉射火力は圧倒的という言葉が相応しいものでもある。
その火力投射隊にミサイル攻撃命令が下されると、各艦の側面に装備されたミサイルランチャーから続々と対艦ミサイルが発射された。
発射されたミサイルは砲撃戦が続く戦場の上を通り、新手のSUS艦隊50隻に降り注いだ。
降り注いだミサイルはSUS艦に命中するとその威力を開放、元々防御力が弱いSUS艦を次々と轟沈させ瞬く間に50隻を宇宙の藻屑に変えたのであった。
「新手の50隻全艦撃沈しました。攻撃中の敵艦隊も抵抗力は弱まっています」
「うむ。このまま攻撃を継続せよ。火力投射隊にも第二派攻撃を実行させろ」
ラザレンコは正面の相対するSUS艦隊の攻撃を強めさせた。特に火力投射隊による攻撃は敵に大打撃を与えさせると共に彼が進める火力投射隊構想をより前進させる意味合いもあった。この火力投射隊構想はラザレンコが進めるミサイル攻撃を主力とした艦隊を整備する構想であり、この戦闘に参加している火力投射隊による区撃はその戦闘力を図る意味合いもあった。
そして火力投射隊各艦から一斉に発射されたミサイルによる第二派攻撃はSUS艦隊に壊滅的な被害を与えた。200を超えるミサイルが殺到したSUS艦隊は必至な迎撃をする多数のミサイルを迎撃しきる事は到底出来ず、ミサイルは次々と命中し轟沈する艦艇が相次ぎ組織的な抵抗力を失ったのである。
組織的抵抗力を失ったSUS艦隊は只の的と化し次々と撃沈されることとなり、守備艦隊が壊滅するまでさほど時間は掛からなかった。そしてSUS艦隊壊滅後、作戦は要塞制圧へと移った。
「艦隊を落としたら降伏すると思ったのだがな」
ラザレンコは戦闘が終結し陥落した建造中のSUS要塞を見ながら呟いた。
守備艦隊を殲滅し建造中の要塞に取り付いた連合国艦隊は降伏勧告を行ったものの、SUS側が拒否した為、後方の揚陸艦から制圧隊を突入させる事となった。問題は警備兵は勿論だが作業員すら抵抗してきたため制圧に思ったより時間が掛かる事になったのである。
「徹底抗戦、命を捨てて皆兵で抵抗か」
軍人はおろか民間人と思われる作業員まで命を惜しまず戦い抵抗し捕虜にすらならないSUS人を見ると彼らのメンタリティは想像を絶するものではないかとラザレンコには思えたのであった。
2205年8月15日、建造中のSUS要塞は制圧され銀河連合の手中に収まった。