この半人半霊の庭師に祝福を!   作:心紅 凛莉

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第四話 『爆裂娘』めぐみん

 

「募集の張り紙を見させて頂きました、まだパーティメンバーの募集はしてますか?」

 

突然聞こえて来た一同への言葉は大人しめの少女の声だった。その内容に妖夢とカズマは首を傾げる。まず2人としてはパーティメンバーの募集などはした覚えはない。一方アクアに目を向ければ、当然のように対応していた。

 

「あぁ、流石にもう1人くらい欲しいと思って私が提示板に募集の張り紙を貼っておいたのよ、ほらこれ」

 

アクアは少し歩いて提示板から張り紙を取り出すとそこにはアクアが書いたと思われるパーティメンバー募集の件が書かれている。よく読むと上級職限定などと駆け出しの街では難しいと思われるような内容で正直よく加入者がいたなと思われるものだ。

 

「ふっ…この邂逅は正に世界が選択し運命……私は…貴方達のような方々を待ち望んでいた…!」

 

そんな雰囲気の変わった類稀な少女を一瞥する。背は低く小柄で風変わりなとんがり帽子をかぶり、マントを羽織り色彩は赤と黒が目立つ。黒髪で片目に眼帯をしている。杖を持つことからも魔法職であろうことが窺える少女は意を決したようにマントを翻した。

 

「我が名はめぐみん!アークウィザードを生業とし最強の攻撃魔法『爆裂魔法』を操る者!!」

 

妖夢は硬直した。これはどう対処したらいいのか妖夢には全く浮かばなかった。幻想郷にも個性豊かな面々はいるので個性的な者との対応は妖夢としても初めてではない。少なくとも初対面でここまで目立つ自己紹介をする者は幻想郷にはいない。…ただあえて評価をするならその自己紹介自体には無駄が少ない、しっかりと自己紹介にはなっている。めぐみんという名前で職業はアークウィザード、そして爆裂魔法とやらを扱えるらしい。

しかしこの謎のテンションの自己紹介は真似た方がいいのだろうか?少なくとも自分はやりたくないと妖夢は考えを巡らせる。

 

「…冷やかしに来たのか?」

 

「ち、ちがやい!!」

 

妖夢がそんな無駄な悩みを抱えていたらカズマは冷淡に冷やかし扱いしていた。そんな中、アクアはふとめぐみんを見て

 

「もしかして貴女も紅魔族なの?」

 

「……貴女も?私以外にどなたか紅魔族がいるのですか?」

 

紅魔族。この言葉で妖夢は自然と酒場側にいるウェイトレスをしている咲夜に顔を向けると同時に咲夜は静かに首を横に振っていた。どうやら無関係らしい。もっともここは異世界、幻想郷ではないのだからそれもそうだと考え至るが同時に呆気にとられてしまう。何故なら今妖夢達がいる場所と咲夜との間の距離はとてもこちらの声が聞こえる位置ではないのだ。

 

「…うーん、とりあえず仮パーティってことで1度クエストに行ってみるか…俺も修行の成果が気になるし」

 

「いいでしょう、我が爆裂魔法の力、とくとお見せいたしましょう…と、その…前に…」

 

めぐみんは段々と力尽きるようにその場に倒れた。これには3人ともに慌てた様子で駆けつける。

 

「…すみません…ここ3日ほどロクに何も食べてません…何か食べさせてもらえませんか…?」

 

この子本当に大丈夫か?という視線を向けてしまうのも仕方ないことだった。

 

 

……

 

 

 

 

めぐみんに食事をご馳走した後に受けた依頼は変わらずジャイアントトード5匹の討伐。ジャイアントトードは普段からアクセルから少し離れた近郊にいくらでも出没し、なおかつ付近の農家の家畜や子供を捕食してしまうのだという。更にジャイアントトード自体が食糧ともなる為に買取も行っている。よってジャイアントトードの討伐クエスト自体はいつ見てもあるいわばデイリークエストに近いものだった。

 

「我が爆裂魔法は最強、それ故に準備に時間がかかりますのでそれまでに獲物を引き寄せておいてもらえますか?」

 

「…でしたら丁度いいですね、カズマさん、この3日で私が教えたことを実践してみましょうか」

 

「…本気でやるのか?」

 

カズマはこの3日間、妖夢による徹底指導でひたすらに剣を教えて貰っていた。とはいえカズマ本人としては何かが変わった実感は少なく不安でしかない。実際に剣の才能は皆無とまで言われているのだからそれも仕方の無いことだった。

 

渋々ながらカズマは草原を走り、1匹のジャイアントトードに向かい走る。そしてジャイアントトードもそれに気が付いたようで、カズマを見るなり捕食体制になり口を開け、長い舌をカズマに向けて発射する。

一方カズマはショートソードを構えると、それを横に避けると同時に両手で持った剣を舌へと振るう。

 

「ほう…冒険者と聞いて期待はしてませんでしたが、中々様になっているではないですか」

 

「本当にそれよ、3日前は逃げ回るしかできなかったのよ?」

 

「カズマさんに剣の才能自体はありません…ですがあの集中力はかなりのものと思います、落ち着いて対処できればあれくらいはできると確信はしてました」

 

妖夢がこの3日でカズマに教えたのは集中力を鍛えることと剣の基本的な使い方。とくに妖夢の攻撃には初日は為す術もない状態だったが、3日目にはごく稀に避けられるまでには成長していた。

 

「…なんだこれ?こんなに違うのか?」

 

実際3日間妖夢の変則的な攻撃を見てきたカズマとしては、ただまっすぐ伸びてくるだけのジャイアントトードの舌など避けるのは難しくはなかった。迫る速度も妖夢の剣の方が断トツに早い。

カズマは集中する、ジャイアントトードの目を見れば舌を出すタイミングを掴んで、隙を見て懐に飛び込むと、勇敢にショートソードを上から大振りに落としてカエルの額を直撃させる。

それは以前の剣を使って叩くような素人のものではなく、基礎を最低限身につけたしっかりした斬撃。打撃には強いジャイアントトードも、斬撃には弱く、傍目から見ればまるでバターでも切るかのように額を割ることに成功すると、ジャイアントトードはそのままその場に倒れ伏した。

 

 

「お、おおぉぉぉ!?」

 

この結果にはカズマも興奮するしかできない。その場でグッとガッツポーズを決めればその表情もまた爽やかなものだった。3日前は全く勝てる気がしないとしか思わなかったジャイアントトードを自分の力のみで倒せたのだ、確かに感じた自分の成長に素直に喜ばない理由は何もない。

 

「へぇー…やるじゃない…」

 

これにはいつもバカにしていたアクアも素直に賞賛するしかなかった、妖夢にしても成果が出たことで軽く微笑んでいる。しかしそんなことを知らないめぐみんは不機嫌だった。

 

「何をやってるのですか!倒してしまっては私の出番がないではないか!」

 

「まぁそう言うなって、ジャイアントトードならまだいくら…でも…?」

 

カズマは1匹倒したことで完全に油断していた。右手に持った剣はだらりと下げられ、左手は頭を掻いている。

そんな中めぐみんの声に反応していて気付くのが遅れてしまった。急に自身に影がかかったことに。

 

「え?…ちょちょっ!?2匹は無理だぁぁ!?」

 

背後から迫るは色違いの2匹のジャイアントトード。たまらず走るカズマを見てめぐみんはニヤリと笑う。

 

「そのまま引き付けといてくださいよ…!」

 

大袈裟にマントを翻しためぐみんはその瞳を閉じて念じるように詠唱する。

 

「黒より黒く闇より暗き漆黒に我が深紅の混淆を望みたもう。覚醒のとき来たれり。無謬の境界に落ちし理。無行の歪みとなりて現出せよ!」

 

詠唱によりめぐみんの掲げる杖の先端から7色の光とともにマグマの塊のような球体が精製される。

 

「踊れ踊れ踊れ、我が力の奔流に望むは崩壊なり。並ぶ者なき崩壊なり。万象等しく灰塵に帰し、深淵より来たれ!これが人類最大の威力の攻撃手段、これこそが究極の攻撃魔法……!!」

 

次第にそれは大きくなり、杖の目指す先はカズマを追うジャイアントトード2匹。

 

「エクスプローージョン!!」

 

球体が7色の光を纏いてジャイアントトードに頭上から襲いかかればその着弾と同時に巨大赤い花が咲いたと表現するような爆発とともに生まれる爆風は至近距離にいたカズマを吹っ飛ばし、直撃を受けたジャイアントトードは塵一つ残さず消えていて、着弾地点には大きなクレーターが出来上がっていた。

 

妖夢はこの光景を見て思い出す。あれは確か以前博麗神社の宴会で地底の八咫烏、霊烏路空が酔った勢いで、爆符『ギガフレア』と叫び神社から見える山に向けて撃ったものに非常に酷似していた。

また、こんなものを人間が撃てると知れば、普段から弾幕はパワーだぜと豪語する普通(人間)の魔法使い霧雨魔理沙がどう思うだろうか?とも思う。

妖夢個人で見ても脱帽物だ、幻想郷でもここまでの火力を出せる者はそう多くはないし少なくとも自分には無理なのだから。

 

「これは素直に驚きました……」

 

呆気に取られる妖夢だがそこでドサッという音に思わず振り返る。するとめぐみんがその場でうつ伏せに倒れていた。

 

「…我が爆裂魔法はその威力は絶大かつ…消費魔力も絶大…よって…もう身動き一つ取れません…」

 

「…貴女はそれでその後どうするつもりですか…?」

 

「どうもできません…できたらおぶってください」

 

チラリとアクアに目を向ければサムズアップしていた。一体何に対してなのだろうと妖夢は若干困惑する。

もっとも…理には適っていた。いくら潜在魔力の高くても見た目幼い人間の少女がこんな強力な魔法を撃てばこうなるのは当たり前だ。おそらく同じ人間の魔法使いである霧雨魔理沙が使ったとしても同じ結果になるかもしれない。

 

「し…死ぬかと思った…って、このロリっ子なんで倒れてんの?」

 

「魔力切れだそうです…あれだけ強力な魔法なら妥当なところかもしれませんが…」

 

「…ま、まぁ爆裂魔法に拘らなくても、他の魔法を使えば…」

 

「使えません」

 

「えっ」

 

「私は、爆裂魔法しか使えません」

 

妖夢とカズマは妙に冷たい風を感じたような、そんな錯覚を受けた。普通に考えたらありえない。幻想郷の魔法使い連中が聞いたら何馬鹿な事言ってんの?と一蹴することは間違いない。あのような大爆発が起こせて他の魔法を覚えていない方がおかしい。

応用として色々小回りが効きそうな魔法が使えそうだ。…とはいえこの世界のスキルや魔法はスキルポイントさえあれば冒険者カードをいじるだけで覚えられるのを考えたら不可能なことではない。

 

その後爆裂魔法によって釣られてきたジャイアントトードを討伐した後、アクセルへと帰投するのだった。

 

 

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