この半人半霊の庭師に祝福を!   作:心紅 凛莉

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お待ちしていた方には申し訳ないです、基本この小説はメインとなる「内気な少女がこのすば世界へ行ったようです」の更新に余裕がある時に書かれますのでこちらの更新は気長にお待ちくださいませm(*_ _)m


第五話『心情』あくまでも帰る為に

 

―アクセルの街・冒険者ギルド―

 

「「「乾杯ー!」」」

 

カズマ、アクア、めぐみんが無事クエストを終わった健闘を称えてジョッキを叩き合う。特に上機嫌なのはカズマだった。

全く強くなった実感のなかった地獄の3日間の特訓。おそらく師匠が妖夢という美少女でなければ彼は間違いなく逃げ出していただろう。それでもカズマは自他共に認める強さを見せつけることができたのだ。

3日前にはただ逃げるだけしかできなかったジャイアントトードの討伐。だが今回はどうだ、真っ向から対面して1VS1で見事に勝利することができたのだ。目に見える成長を実感したカズマは今までにないこの異世界への希望と期待を膨らませていたのだ。

 

「師匠!!今日の戦いの成果は師匠のおかげです!!さぁ師匠も飲んで飲んで!」

 

「い、いや、私は水で…、お酒はあまり飲み慣れていないんです…」

 

対する妖夢はあまり乗り気ではなかった。それもそのはず、普段から妖夢はお酒を飲むことはあまりないのだ。飲めない訳ではないのだが幻想郷で宴会を行う際は常に主である西行寺幽々子の身辺の気を配り安全であるように振る舞う、あるいは白玉楼で宴会がある時には宴会の準備、及び片付けに追われることになるので自身が飲む余裕など全くありはしないのだ。

そういった事が長く続いていた為、妖夢はいつしかお酒を飲むことはなくなった。酒好きの多い人妖が跋扈する幻想郷では珍しいタイプの妖怪なのかもしれない。

 

「妖夢が飲まないのなら私がもらいます!お願いですから飲ませてください!!」

 

「ダーメだ!!お子ちゃまが何言ってんだ!」

 

「なっ!?私は子供ではありません!もうすぐ14歳の成人です!!」

 

14歳で成人とはなんとも気が早い。この世界ではそういうスタンスなのだと思えば仕方ない話なのだがカズマは勿論、妖夢にとっても頷けない話である。

ちなみにこの世界で酒に関する法律はないし、幻想郷でもそんな法律はない。よってめぐみんが飲もうが飲むまいが妖夢にとってはどちらでもいいので特に何か言う事はなかった。

 

「ぷはーっ!!いやぁ、一働きした後のシュワシュワはサイコーね!」

 

「何言ってんだよ、お前は見てただけだろ?金に余裕があるわけでもないしお前はそれ一杯飲んだらおしまいな」

 

「はぁ!?」

 

「お願いですからー!!一口だけでもいいですからー!!」

 

そんな騒がしい様子を見て妖夢は微かに笑みを浮かべていた。メンバーは全く違うものの、これは幻想郷でもよくある宴会での騒ぎと変わらない。まだこの世界に来てそんなに経っていないのにも関わらず、妖夢は僅かながらに幻想郷への懐かしさを感じていた。

 

 

……だからこそ。

 

 

 

「それにしてもバランスのいいパーティになったと思うのよ私達!カズマも剣を使えるようになったし、更に凄腕のソードマスターの妖夢にアークウィザードのめぐみん、そしてこのアークプリーストの私!4人中3人が上級職よ、多分アクセルの街で1番強いパーティなんじゃないかしら?」

 

「…その話なんですが…私は皆さんとずっと居ることはできません」

 

「……え?」

 

バカ騒ぎしながら話すアクアに、妖夢は無表情のまま言い放った。それは妖夢としては当然だった。妖夢は元々魔王を倒す為にこの世界に来たのだ。決して駆け出し冒険者のお守りをする為に来た訳ではないしこうして酒場でバカ騒ぎする為でもない。自身がこの世界に観光かなにかで来たのならそれもいいかもしれないが明確な目的がある以上そうはいかない。そしてその目的を早急に果たし…、幻想郷、ひいては白玉楼へ帰らねばならない。

 

「…私にはこの世界の魔王を倒すという目的があります、ですから…」

 

「なんだ、それなら私達と一緒じゃない」

 

「…え?」

 

妖夢は耳を疑っていた。この世界に来て日が浅い妖夢だが冒険者の情勢、概念などは頭に入れていた。

この世界は女神エリスの説明通り、魔王軍によって平和が脅かされている。…とはいえ、絶望的な状況ではない。現にこのアクセルの街は長閑で平和そのものだ。冒険者は数多くいるものの、打倒魔王を謳っている冒険者などほとんどいない、冒険者のほとんどは、自身の生活の為、あるいは一攫千金を得る為という者が多いのだ。

故に一般的に冒険者とは荒くれ稼業、これがこの世界の一般的な認識である。

そしてその認識はカズマ達のパーティも変わることは無い、それが妖夢の認識だったので、アクアの言葉は意外としか思えなかったのだ。

 

「魔王ですか…?それは本気なのですか!?」

 

たかが駆け出しの街のジャイアントトードを討伐しただけでそこまでの話だ、それなのに魔王討伐となれば誰が聞いても鼻で笑うしかないだろう。

だが目の前のめぐみんは違った。その紅い瞳をキラキラと輝かせていた、まるで英雄譚でも聞いたような子供のように。

 

いつもならカズマも遠慮していたかもしれない。だがカズマは自身の成長によって確かな自信を持っていた。つまりは調子に乗っているのだ。

 

「もちろんだ、俺達はいずれこの世界を脅かす魔王を倒すつもりだ。どうだめぐみん?そんな伝説の一人になりたくはないか?」

 

「…っ!!なりたいです!いえ、なってみせましょう!やはり貴方達と出逢えたのは偶然ではなかった…!」

 

「……」

 

勝手に盛り上がってはいるがだからなんだと言うのかと妖夢は静かに頭を抱えていた。確かにカズマは成長したとはいえ、妖夢からしてみれば今のカズマでは幻想郷の低級妖怪すら歯が立たないだろう。更にめぐみんは、確かにあの一撃は凄いと素直に言える。それだけは認めたい。仮にあの火力が連発できたり他の魔法も扱えれば誰一人文句を言うことは無い心強い仲間になりうる。だがそういう訳では無いし彼女がこれから鍛えたとしてもあの火力を連発するほどになることは人間である限り不可能だろうと断言できる。おまけに彼女は他の魔法を覚える気がないとなれば彼女のランクアップは絶望的でしかない。…そもそも彼女はお試し加入ではなかったのかという疑問があるが、わざわざ口を挟むこともないかと妖夢は黙認した。

 

妖夢が唯一気になる存在、それはアークプリーストのアクアだった。まだ日は浅いもののあらゆる支援魔法や回復魔法を扱えて、あの十六夜咲夜の時間停止をも看破している、もっともこれは本人の自覚はないようだが。少し頭が足りない点を除けばかなり優秀な部類ではないかと言えるだろう、それが妖夢が出した3人の評価だった。

 

確かに成長性によってはいけるかもしれない、だがその成長にどれくらいの時間がかかるのか、という話である。1年2年なら早い部類かもしれないが妖夢は流石にそんな長期に渡りこの世界に留まるつもりは全くないのだ。

 

「…兎に角…すぐに抜ける事はありませんがこのパーティがある程度育って私がいなくなっても問題ないと思えた時には私はこのパーティを抜けるつもりです、それまではよろしくお願いします…」

 

「そ、そうか…残念だけどそういう事なら仕方ないかもしれないな…できたらそれまでにもう少し剣を教えてくれたら嬉しいんだけど…」

 

「…まぁ…それくらいでしたら…」

 

意外と妖夢は剣を教える事自体は悪く思ってはいなかった。自身が未熟故に弟子をとるなんてことは幻想郷では考えられなかった、それに剣術指南役と肩書きがあるものの、妖夢にとって誰かに剣を教える事自体が初めての経験だった。

教える事もまた修行、自身が幼い頃、剣の師匠であり祖父でもある魂魄妖忌から聞いたことがあった。

師匠は私の面倒を見てばかりでいいのですか?と聞いた祖父の答えを妖夢は確かに覚えていた。

だからこそ、妖夢は妖夢なりに貴重な体験をさせてもらっていると思っていたのだから。幻想郷では妖夢が剣を教えるような者は、おそらく現れることはないであろうから。

 

果たして、妖夢がこのパーティなら問題ないと思い安心してパーティを抜けれる日が来るのだろうか。そこが問題ではあるのだが…おそらく妖夢が今言った言葉に後悔する日が来るのは割と近いのかもしれない…。

 

 

 

 

 

 

 

━━━━━━━━━━━━━━━

 

 

 

 

 

――翌日。

 

アクセルの宿のベッドで寝ていた妖夢は窓から射し込む朝日によってふと目を覚ます。こうやって宿で過ごすようになってまだそんなに経っていないせいか、未だにこの洋式の部屋には慣れない妖夢だった。白玉楼では完全に和室だ、畳の上に布団を敷いて寝るのが当たり前だったので無理もない。

 

顔を洗った妖夢は寝癖を整え黒いカチューシャを装着すると、そのままいつもの服に着替える。腰と背に愛用の刀を佩けば、そのまま部屋を後にして、冒険者ギルドへと向かう。ここ数日はやる事がほぼ同じなのだ。

 

まずは冒険者ギルドでカズマ達と落ち合う。朝食後にクエストを探し、めぼしいものがないならカズマの修行。ゴブリンの討伐など、比較的低難易度のクエストがあればカズマ達を中心に依頼を受ける。この場合妖夢はほとんど手出しをしない。手を出してしまえばそれだけカズマの得る経験値が減るからだ。だからこそジャイアントトードを相手にした時も妖夢は見ているだけで終わった。

昼食はクエストの有無により不定期だ、時間が早かったり遅かったり、あるいは抜く場合もある。そして夕食はクエスト完了報告をして酒場で摂る。そして解散。そんな流れだった。

 

 

―冒険者ギルド―

 

「いらっしゃいませー、冒険者ギルドへようこそー!お仕事でしたら左側の窓口へ、お食事でしたら空いてる席へどうぞー」

 

入るなりウェイトレスから声がかかる。朝ではあるものの、酒場では賑わいを見せていた。…そう酒場を見ていた妖夢は違和感を感じた。

 

(…咲夜さんがいない…?厨房でしょうか…?)

 

特に用事はないものの、唯一の同郷の知人だ、一応は声をかけるようにしているのだが今日はその姿が見当たらない。とりあえずまずはクエストを見てみるかと窓口側の掲示板に向かう妖夢に、見知った声が意外な場所から聞こえてきた。

 

「あら妖夢、おはよう。クエストが決まったらこっちに持ってきてね」

 

「…あ、はい、わかりまし………っ!?」

 

妖夢は思わず声が聞こえてきたギルドの窓口を2度見してしまう。何故か昨日までウェイトレスをしていた十六夜咲夜が今は窓口で当たり前のように受付をしているのだ。その姿は幻想郷にいた時のメイド服そのままだった。

 

「……何をしているんですか…?」

 

「え?……何って…ギルドの受付だけど?」

 

「聞きたい事はそこじゃないです!…いやそこでもあるんですけど!?」

 

「ったく朝から騒がしいわね…そんなんだから未熟って言われるのよ」

 

流石に理不尽な言われ方に妖夢もカチンとくるものがある。なんにでも未熟と言えば済むと思っているのではないだろうかこの女はと思うまでに。

 

「…いつもここで受付してるルナって子だけど…ずっと休み無しで働いていたみたいだから、私が変わってあげたのよ。一通り何をすればいいのかは他の職員に聞いておいたし、何も問題はないわよ?」

 

「…な、なるほど…」

 

妖夢はそれ以上何も言えなかった、それ以前にこの人はどこを目指しているのだろうか、たった五日でギルドの受付までしているのだ、この調子でいけばこのギルドの長にでもなる日はそう遠くないような気もする。

 

「貴女のお仲間なら奥のテーブルにいたわよ、少し騒がしいから騒ぎすぎないように言っておいてくれる?」

 

「……わかりました」

 

何かを諦めたように妖夢はカズマ達のいるテーブルへと歩を進めた。するとテーブルでは座っているカズマに詰め寄っている女性の姿が見受けられた。妖夢の見た事のない人物だ。

 

金髪のポニーテール、一見凛とした風貌と装い、白と黄かアクセントとなった西洋風の鎧を身に纏う女性にしては身長は高く見える、咲夜と同じくらいだろうか。

 

「頼むっ…!どうか私をパーティに入れて欲しいんだ!」

 

鎧姿の女性はどうやらカズマにパーティに入れて欲しいと懇願しているようだ。見た目は美人とも言える風貌、男なら断る理由などなさそうなのだが…肝心のカズマはというと渋面を作っていた。妖夢としては正直意外だった。

 

妖夢と手合わせをしているカズマだが、普段真面目に取り組んでいるものの稀にスカートに視線が行ったりしているのを妖夢は気付いていた。その上でスルーしていたのだが、人間の男などそんなものだろうと適当にあしらっていたのだ。だからカズマからしてみれば目の前の女性は喜んで受け入れそうなものと思っていたのだ。…なのに露骨に嫌そうな顔をしている様子に妖夢は理解ができなかったのだ。

 

「…おはようございます、カズマさん…その方は?」

 

「あ、あぁ、おはよう師匠。いや…その…なんて言うか…」

 

「む?貴殿は確かこの男のパーティメンバーだったな。初めまして、私はダクネスという、クルセイダーを生業としている者だ」

 

妖夢はふと考えを巡らせた。確かクルセイダーという職業は自身の選択肢の1つにあったような気がする、と。剣を扱う職業で攻撃寄りなものがソードマスターなら、防御寄りなものがクルセイダーだと、簡単ながら説明を受けたのを思い出していた。

 

「…私は妖夢、…一応、ソードマスターです」

 

一度は納得したものの、妖夢の性格上職業の意味を知ってはやはり名乗りにくさがあった。なので一応などとつけてみたものの、相手は特に気にする様子はないらしい。それよりも自身の要件を優先したかったのかもしれない。

 

「実は君達のパーティに入れてもらいたくてな、こうして声をかけさせてもらったのだ」

 

「…そうなのですか?」

 

「あ、あぁ…そうなんだけどな……」

 

なんとも歯切れの悪いカズマの様子に妖夢は思わず首を傾げていた。何が問題だと言うのだろうか。駆け出し冒険者の街であるここで上級職は珍しいと聞くしこちらとしては迷う事なく仲間に入れたいと思えるはずなのだが。

 

妖夢がそんなことを考えていると、カズマは何かを閃いたように表情が変わった。

 

「そ、そうだ、まず力が見たい!だから手合わせという形で、妖夢と試合をしてみてくれないか?」

 

「なっ…!?」

 

突然何を言い出すのかと妖夢はカズマを睨みつけるものの、カズマの様子は変わらない。むしろ無言でアイコンタクトを送っている。

それを見て妖夢は察した。…なるほど、私が何故パーティに入れないのか疑問に思ってるのを察してこそこの提案をしたのだろう、そう妖夢は解釈した。

 

「…確かに腕は見せなければならないか、理屈は通っているな…妖夢と言ったな、貴女が問題ないのなら、是非ともよろしく頼む」

 

「…分かりました、ですがここだとお店に迷惑がかかります、どこか広い場所に行きましょうか」

 

その提案に、渋々ながらも妖夢は納得したのであった。

 

 

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