あー旦那   作:古い狩人

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第二章 6 海葬炎華

 

 

 バーハラ王立士官学校の日程は

 年の始まりを基点として始まり

 それぞれ5か月程度の長さの

 前期、後期に分かれている。

 

 前期と後期のあいだ、

 夏から秋にかけては、

 約2か月にわたる長期休暇が存在する。

 いわゆる 夏休み であろう。

 

 多くはその休みに国元に帰省したりするが

 一部の成人した者は傭兵として働く事もあった。

 

 

 アーダンは家族への手紙をシグルドに託し

 王都バーハラに残る道を選んだようだ。

 

 

 雲が片手で数えられる程少ないからか

 道に写る建物の影が、いちだんと濃くなっている

 王都バーハラはもうすぐ夏の盛りを迎えようとしていた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 両親の記憶はない

 

 子供の頃はブラギ様が親だと思っていた

 そう聞かされて育ったからだ 

 

 

 神の教えに習い、良く神の言葉を紐とき

 神の愛を皆に分け与え、また神に捧げる

 

 

 聖戦士ブラギの言葉、私の誓いでもある

 

 13になり、エッダの司祭になりたいと

 司教様に願いでたとき

 両親の出自を知った  

 

 

 ロプトだった

 

 

 エッダ教会は

 元はロプト教団の仕組みを継承したもの

 数は少ないがロプトの末裔が

 教会内に今も身を潜め生きているという

 

 この身に流れるというロプトの血

 

 私は感情の命ずるまま

 引退した高名な司教様や

 同じロプトだという司祭様を尋ね

 教えを請うた 救いが 欲しかった

 

 

 ブラギ神の教えに従って生きるのだ

 神の愛は無限であり、また情け深い

 神の言葉を聞け、神に身をゆだねよ

 

 

 司祭になればブラギの塔への道が開かれる

 そこでブラギ神に尋ね、答えを得るがいい

 

 

 目の前にその塔がある

 神は我が問いに答えてくださるだろうか

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「…こんなもんか」

 

 決闘はあっけなく終わった

 

 病で弱っていたのは知っていたが

 あれほど強く、

 大きかった男が嘘のように縮んで

 その屍を晒している

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ブラギの塔内部、祈祷の間

 司祭らしき人影たちが

 死体のまわりに集まり

 何かの儀式の準備を行なっている

 

 

 「ヘルの書はここでいいか?」

 

 「いや、ヨツムンガンドが頭だ、

  ヘルは心臓の位置に置くのが正しい」

 

 「新たな同胞の誕生、実に喜ばしい」

 

 「用意は整ったようですな、

  ではバルキリーの杖を持って参ります」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「で、ピサールはどこいった?いないのか?」

 

 「…あー、ピサールのアニキはその…

  ブラギの塔にいくやつを見つけたみたいで…

  何人か連れていっちまったっす」

 

 「ちっ…、じゃあ今日はもどりそうにねぇな…

  俺がカシラだぞあの野郎…」

 

 オーガヒルの砦、かつて頭領だった男の部屋で

 男たちがなにやら探し物をしているようだ。

 

 「おかしら、力の腕輪はありやしたが

  カネはチョッピリしかなかったっす

  これじゃオイラの方が金持ちですぜ

  姐御を返したときの宴で

  全部使っちまったんかな…」

 

 「足輪はアイツに持たせてたのは見た

  他にはなにかなかったか?」

 

 「デカイ宝箱はあったっすけど…

  なぜか薪がたくさん入ってたんすよ」

 

 

 ➖…義賊なんてくだらねぇものやらされたが…

   アンタのそういうとこは嫌いじゃなかったよ

 

 

 「…昔の古いピクトはな

  自分の葬式の焚き木を準備しておいたんだよ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「よぉ司祭様よ、今日は祝いだ!  

  オーガヒルの海賊の恐ろしさ

  たっぷり楽しまさせてやるぜ!」

 

 「くふふ・・・

  ばかな人間どもよ・・・

  わが暗黒魔法のえじきとなれ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 オーガヒルの東にある砂浜で

 男たちがイカダを作っている

 

 かつて頭領だった男の死体が

 椅子に縛りつけられながらも

 その作業を見守っていた

 

 

 

 

 

 

 古いピクト族の風習で

 流行り病や病気で死んだ人間は

 

 イカダの中心に簡素な椅子を作り

 その上に座らせて大量の木材で覆い

 火をつけて夜の海に送りだす

 

 というものがあった。

 

 

 

 

 

 

 その日の夜

 

 

 頭領だった男は、そうして海へと送りだされた

 

 神の炎、聖武器ファラフレイムは地獄の炎だという

 

 

 

 男の祖父も父親も、そうして海に送りだされた

 

 ならば昏い夜の海に煌々と輝いているこの炎は

 

 

 

 妻と娘もそうして海に送りだされた

 

 何の炎と表現すればいいのだろうか

 

 

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