あー旦那   作:古い狩人

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第三章 4 十字架の耳飾り

 

 

 とりあえずこの場所は離れよう と

 シルヴィアに提案して了承を得たアーダンは、

 周りを警戒しながらも、挫いた足を気遣いながら

 彼女を連れて、バザールの商店に向かった。

 

 絹織物を扱う女主人に事情を話したところ

 鞭を腰につけていた男は、孤児などに芸を仕込み、

 育った踊り子をサーカスに売り払う事で

 生計を立てている、腕は確かだがその指導は厳しく

 毎年のように何人か逃げ出すとのことだった。

 

 通報はしないのか? そう問いかけると

 女主人は織物を手にして答えた お客様ならね と

 もともとアーダンもそのつもりだったので

 予算をつたえ、交渉はスムーズに進んだ。

 

 シルヴィアの服が裁断されるのを待つ間、

 アーダンは念の為に向かいの店でも

 お土産を兼ねて、いくつか品物を購入した

 視線を向けると店主は黙ってうなずいた

 

  

 ➖楽団は1週間ほどで王都を離れる…

   その間は屋敷で匿うしかないだろう…

   さっきチラッと見えた腕の鞭の跡が

   説得材料にはなるとは思うけど…

   いや、それよりもアレの事を後で聞かないと…

 

 

 

 

 

 「へへ〜ん、教会のシスターみたいでしょ」 

 

 「そう注文したからな」

 

 「ノリ悪いな〜そこは褒めるとこでしょ〜」

 

 「はいはい、かわいいかわいい、

  で、だ、屋敷の人達にかけあってはみるが、

  ダメなら教会に匿ってもらうしかないぞ

  あまりオススメはしないがな」

 

 「…ありがとう。

  でも、どうしてここまでしてくれるの?」

 

 「髪の色に感謝するんだな、

  うちのホントにかわいい妹達を思いだしたんだよ」

 

 

 ➖…嘘ばかり上手くなる…

 

 

 

 

 

 

 シルヴィア という少女について語る必要があろう

 

 まずは彼女を評する声を紹介したい

 

 「ちっ、いま泣いてたと思ったら、もう笑ってる

  まるで子供みたいな娘だな…」

 

 (知り合いの天馬騎士に対して)

 「変にすれて、シルヴィアのようになっても困る」

 

 ちなみに上記の2つとも同じ男性の発言である。

 少数意見も紹介しておこう。

 

 「いいえ、あなたは美しい方です

  それに気品もあります、私にはわかりますよ」

 

 

 原作の聖戦の系譜はFEシリーズの中でも

 ハードなシナリオとシリアスな物語の展開を持つ。

 

 そのシリアスさを柔らげるためだろうか、

 コミカルな一面を少し強調したキャラクターが

 何人か存在している。物語の前半部には3人いた。

 

 アーダン と 盗賊の少年、そしてシルヴィアである

 

 アーダンと盗賊の少年については

 その生い立ちが触れられる事は無かったが

 彼女については、ある神父との会話の中で

 彼女自身が語っている

 

 「あたしは孤児なの、小さいときに親方にひろわれて

  踊りを仕込まれたのよ

  でも、そいつがそれはひどいヤツでね

  なにかとムチで叩くの、いいかげんイヤになって

  一年前に逃げ出してきちゃった」

 

 そして彼女の正体についても

 同じ会話の中である程度、明示されている

 

 「神父様に妹が?」

 

 「ええ、まだ赤んぼうの頃に拐われたのです

  ずっと探し続けたのですが

  未だに見つかりません…」

 

 拐われすぎだろ との声は此処では扱わない

 先の少数意見もこの会話の中で出された。

 

 この会話から2つの事がわかる

 

 おそらく彼女と神父は兄妹なのだろう

 原作の開発者によると

 結ばれれば他人、結ばれなければ兄妹 だそうだ

 

 そして当然の事ながら

 彼女の本当の名前はどちらにしろ

 

 シルヴィア ではない事もわかる

 

 

 

 

 

 

 「王都の南門、西門は待ち伏せされているだろうから

  遠回りして北門から入る、足はもう大丈夫か?」

 

 「うん、大丈夫、なんなら踊ってあげよっか?」

 

 「じゃ、出発だ。

  俺が護衛役で後ろからついてく

  あと、話しかけられたら俺が対応するからな」

 

 「踊ってあげよっか?」

 

 「表にでてる店主の合図がでたら左に曲がって

  しばらくはそのままだ、髪も今のうちに

  下ろすなりまとめるなりしておくといい」

 

 

 

 

 

 

 

 

 屋敷の人間の説得は

 アーダンの想定よりもあっさり簡単に成功した

 

 屋敷の女使用人による怪我の確認の際に

 治りきってない鞭の跡が背中にもあったそうだ

 

 鞭による跡は2、3日で治るものらしい

 女使用人の聞き取りでは

 昨日の晩に打たれたとのことだった

 

 アーダンの普段の家族自慢も効を奏したのだろう

 妹達を思いだしたから の嘘を突かれることはなかった

 

 ちょっとした話し合いのあと 

 屋敷の主人である公爵家の人間が戻るまでの間は

 匿うことが決定した。

 

 だが、実のところは

 屋敷に残る人間の中で唯一の騎士爵持ちだったのが

 1番の理由だったことはアーダンは知る由もなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 使用人用の一部屋がシルヴィアに宛てがわれた

 監視も兼ねて女使用人も一緒に寝るそうだ

 アーダンは迷惑料の意味もこめて

 彼女にミレトス産のガラス製品の小物を渡した

 

 

 

 夕食の時間になり、

 バザールで食べてきました と自分の分を辞退して

 その分をシルヴィアに出す夕食に上乗せしてもらい

 女使用人と共にシルヴィアの部屋に食事を届ける

 

 

 「貴族様のお屋敷でもあんまり食事変わんないね」

 

 「まぁ、今は公爵様一家はお留守だから

  食事は使用人のメニューなんだ、ガッカリしたか?」

 

 「んーん、あったかいよ…」

 

 

 

 

 シルヴィアが食事を終えたところで切り出す

 

 

 「ところで、その耳飾りは自分で買ったのか?

  似合ってるけど、盗んだことにならないか

  ちょっと心配なんだ、教えてほしい」

 

 

 「あー、コレ?大丈夫だよ、右のヤツは偽物だし

  もともと私が持ってたものなんだってさ」

 

 「最初から片方しか無かったのか?

  十字架とかあまり見ないデザインだから

  気になったんだ」.

 

 女使用人も疑問に思っていたようだ

 

 「そうですね、十字架はあまり良い意味は

  ありませんから、確かに珍しいですね」

 

 「えっ、そうなの?」

 

 「あっ、ごめんなさい、そうじゃなくて

  教会以外の方がつけると良くないって意味よ」

 

 「ヤバっ、教会の人に怒られちゃう?」

 

 「鏡十字(♀)なら良くあるけど、

  十字架はね…磔の意味もあるから…」

 

 「そうなんですか?知らなかったな…」

 

 「一応、うちの騎士団のシンボルにも似てるけど

  アレは聖剣ティルファングを表してるのよ」

 

 「それも知らなかった…」

 

 「本には書いてないことも多いから

  疑問に思ったらなるべく聞くことね、アーダン君」

 

 「私のコレは結局、大丈夫なの?大丈夫じゃないの?」

 

 「教会関係者以外はあまり良くないってだけよ

  年配の方には教会関係者と勘違いされるかもね」

 

 「じゃ、大丈夫なんだ、ビックリさせないでよ〜」

 

 「踊り子になる前から持っていたなら、

  両親のどちらかか、もしくは両親ともが

  教会関係者の方かもしれないですね…」

 

 「別にさがさなくてもいいよ、

  捨てられたかもしれないし…」

 

 「だったらソレは持たせないでしょう?」

 

 「そうね…本物なら結構するやつよ、その耳飾り」

 

 「そうなのかな…わかんないや…」

 

 「エーディン様が帰ってきたら

  その伝手で探してもらうようお願いしてみます」

 

 「そんなこと言って、会いたいだけでしょう?」

 

 「エーディンって誰?美人ってことはわかるけど」

 

 ➖女子には敵わんな…早く部屋に帰りたい…

 

 その後、アーダンいじりと恒例の年齢ネタ、

 アーダンとシルヴィアが

 それほど年が離れていない事がわかった所で

 王都バーハラの夏祭りの初日は終わった。

  

 





 耳飾りの件については後日、外伝にて言い訳しますん
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