第四章 1 強欲由来と交流戦
夏祭りも終わり、授業が再開された士官学校
主人が税制などを学んでいる教室の壁に控え
アーダンも講義の内容を聞いていた。
➖…ランゴバルトが強欲と言われるわけだ…
グランベル王国は実質的にはグランベル七公国である
各国ごとにさまざまな税制の違いがあった。
税制の違いの主な理由は主産業などが原因であるが
それ以外はある程度共通している点が多く、
それほど複雑な内容でないのが救いだった。
➖…人頭税ねぇ…平民には評判悪いだろうな…
ランゴバルトの領地、
ドズル公国では人頭税が採用されていた。
人頭税とは簡単に説明すると
成人1人につき決まった税を払う というものだ。
聞くだけならそれほど悪くなさそうだが、
実際には貧困層や平民にとって重い負担となる。
ランゴバルトがたちが悪いのは
ドズル以外の各国が採用している
限度額つきの累進課税の共通制度に上乗せして
税金を徴収しているところだろう。
➖…大陸キャラバンの収入が少ないのはわかるけど
これじゃ、どうしようもないやんけ…
ランゴバルトの言い分もわからないではなかった
大陸交易路"シルクロード"の順路に入ってないのだ。
キャラバンはヴェルトマーから南下したら、
本隊はそのままエッダに向かうので、
ドズル公国に来るのはワインを買いつけにくる
小規模の分隊だけだから、関税収入も少額になる。
また、商隊にワインを売る際も
高めの税率をかけているようで商人にも評判が悪い。
こうして、税制の授業にあまり良くない例として
取り上げられている事からして、
貴族達にも好印象ではなさそうだ。
➖ドズル公国の子弟達がいる講義ではどうするんだ?
同じ事を思ったのか、主人であるシグルドが教師に
「ドズル公国出身の生徒がいてもこの授業を?」
返ってきた答えは
「まさか、ここまではやらないよ。
他に人頭税を採用しているのは、
ヴェルダン王国、トラキア王国、
イザーク王国の一部と紹介するだけでおしまいだね」
「ドズルからの士官学校生は、嫡子と従者だけなんだよ
彼らの多くは騎士団内の教育で済ませてしまうのさ」
「ここだけの話だが、…あくまでもここだけの話ですよ
ドズルの文化レベルは蛮族どもとそう変わらないよ」
➖……王国内では下に見られていたのか…
この教師の態度からして根は深そうだ…とはいえ、
バイロンとランゴバルトが対立しているのは
それだけが理由じゃなさそうだけど…
「もう少し"本気"で、きてもいいんだよ?」
ある休日の昼下がり、ユングヴィ公邸宅内庭にて
武を司る家同士ならではだろうか
ユングヴィ姉弟たちとシアルフィ兄妹たちの
交流を兼ねた模擬戦が行われていた。
ユングヴィからはブリギッド、
シアルフィからは最初はシグルドの妹、
エスリン がでてきたが軽く一蹴された。
「まだまだだね」
「あいたたた、やられちゃった〜」
エスリンが駆け寄り振りかぶった所を足払い、
尻餅をついて握りが緩くなった剣を打ち払って
喉元に刃を突きつけた。完勝である。
驚きなのはシグルドも負けたことである。
海賊剣術とでもいうのだろうか、
開始後しばらくは互角に渡りあっていたが
鍔迫り合いになった瞬間に、自らの服の一部を
シグルドの腕に巻き付け不意を突くと、
そのまま投げに移行して倒れた所に、
右ひざをみぞおちに落としたのち馬乗りになり
剣の刃をまたも喉元に添えて勝利をもぎとった。
「お姉さま!やりすぎです!もぅ!」
「アンドレイの前じゃ負けられないんだよ」
エーディンは倒れたシグルドに駆け寄ると
癒しの杖を掲げて傷を治療しながら注意をしている。
アンドレイは複雑な表情をしていた。
「あとは…そっちのゴツいのだね…やるだろ?」
「…アーダンと申します…」
「ああ、アンタがアーダンかい。
ありがとね、礼をいうよ」
「いえ、
シルヴィアも世話になってますしお気になさらず」
「フフフ…、そっちの礼もいわないとね…」
「武器はどうしましょう?」
「その剣でいいよ、飾りじゃないんだろう?」
「さあ?その身で確かめてみては?」
ぼっこぼこにされました