手持ちの小説で戦闘してるの あまり無いのです どうしよ
負け犬の臭いがする という言葉の表現がある
運動系部活の大会などで負けた試合の帰り道、
肩にかけた荷物は重く、ベルトが肉に食い込むようだ
汗もタオルで拭いたはずなのに未だにでてる気がする
将棋や囲碁の大会で自分のミスで負けた時
自分が信じられなくなる。あれほど研究した筈なのに
前に一度でもやった同じミスならなおさらだ
試合の相手にも、自分にも負けたのだ、心は乱れる
負け犬の臭いを自覚する人もいるだろう
パチンコ、賭け麻雀、競馬、競輪、競艇、
ギャンブルの類いだ
特に麻雀やパチンコは長時間拘束される事もあって
頭はフラフラ、体調は異変を来たし変な脂が出る
脂と汗が化学反応を起こし、自覚できる程に臭いがする
そして自嘲するのだ 負け犬の臭いがする と
近年はあまり見かけないが
創作物の敵役がこの言葉を使う場合、
彼らはどこでその臭いを知ったのだろうか
どこかで酷い『負け』を経験しないと出ない言葉だ
何も試合やギャンブルだけが『負け』ではない
様々な『負け』がある、
人間的に、恋愛的に、子供の頃に思い描いていた未来に
だが『負け』を糧とする人間もいる
王都の夕暮れを背に
シアルフィ公邸宅への帰り道を歩く2つの影がいた
「…負けてしまったな」
「ええ、負けましたね」
ユングヴィ公邸宅からの帰り道は男2人だけだった
シグルドの妹であるエスリンは
女性陣で交流を深めるらしく、お泊まりである
「…強い女性だったな」
「ええ、強かったです、ぼっこぼこですよ
でも、強いだけじゃなく、優しい女性でした」
ユングヴィとシアルフィの交流を兼ねた模擬戦は
ブリギッドの独壇場と言っても良かった
シグルドは2戦し、一敗一分け、エスリンも2戦2敗
アーダンに至っては前哨戦を除き4戦全敗である
「……泣いていたな」
「泣かせてしまいました」
「アーダン」
「なんです?シグルド様?」
「強くなろう」
「そうですか」
「あのひとよりも強くなろう」
「どっちです?ブリギッド様ですか?」
「両方だ、アーダン。一緒に強くなろう」
➖やっぱり主人公なんだな、この人は
「何も戦いだけが強さじゃないですよ」
「ああ、わかっている。私には何もかもが足りない」
2人の身体からは
汗と土と脂の入り混じった、
例えるならば 負け犬の臭い がしていた
だが『負け』を糧にできる人間はいる
ユングヴィ公邸宅の中庭で対面した少年と少女
原作主人公である主人の敗北を目の前にしても
少年の心中には驚きこそあれど動揺は無かった
「さあ?その身で確かめてみては?」
そう言葉を返しながら剣を鞘から抜きつつ、
少年は少しづつ少女に近づき間合いを詰める
「アンタにそれができるのかい?」
「では参ります」
開始の合図がわりにアーダンは鞘を投げつけた
「…ッ⁉︎」
多少驚きはしたものの危なげなく躱す が
続けて剣を両手に駆け寄る構えに違和感を覚えた
──剣先が低い…突き?…違う!
アーダンの次の手は目潰しも兼ねた牽制だった
剣の間合いまであと3歩程といったあたりで
地面に斜めに剣を突き刺すと、そこから跳ね上げた
──此処は芝生だよ!おバカさん!
アーダンの想定とは違ったのだろう
芝生の根で土は塊になり、容易に避けられる
とはいえ、庭に穴を開けたのだ。
その代償は支払って貰おうではないか
剣を振り上げた状態のアーダンに駆け寄る
力の強い相手には慣れている
あらくれども並の少々汚い戦法もお手のもの
伊達に海賊の頭領の後を継ごうとはしてない
が
一瞬の悪寒に咄嗟に身を退いた
アーダンの剣を振り上げた姿勢は罠だった
間合いを詰め駆け寄るブリギッドに対して
後方に跳躍しながら剣を振り下ろしたのだ
剣道でいうならば『引き面』といった所か
刃を水平に傾けてはいたが
当たれば相当のダメージとなっていただろう
「もう少し"本気"で、きてもいいんだよ?」
「無茶を言わないで下さい…ここは交流の場ですよ」
剣の刃を水平にした事を言っているのであろう
いくら回復魔法のアテがあるからとはいえ
ブリギッドの要求はいささか無理があった
「それじゃ、仕切り直しといこうか」
「ええ、そう「ブリ姉さんやっちゃえ〜」…オイ!」
「フフフ…、シルヴィアもこっち側みたいだね」
「……エーディンさ「…ごめんなさいアーダン…」
…まあ…そうですよね…
……ええい!アンドレイ様!」
「何故僕に聞くんだ!関係ないじゃないか!」
「アンドレイ様は私と姉君
どちらを応援するのですか‼︎」
「……姉上だ!当たり前だろう!」
「だそうですよ。ブリギッド様」
「……お前は気を遣いすぎだよ」
「これでも妹2人、弟も1人おりますので」
➖…アンドレイは大丈夫そうだな。
…来年から士官学校に入るらしいし…
…ブリギッドとアンドレイが同級生か…
ユングヴィの面々は失った家族の時間を取り戻すためか
王都に生活の拠点を移すとのことだった。
次期ユングヴィ公爵になるブリギッドは士官学校にて
歩兵コースと騎兵コースのダブル受講をするらしい。
エーディンも王都教会にてシスター課程をやり直す
アンドレイもついでに士官学校にいれるのだろう。
…2人の配偶者探しも兼ねているのだろうか…
TIPS
原作開始時、エーディンが独身だった理由は
手元に聖戦士ウルの血を残しておきたい
という父親の意思もあったのかもしれない
ユングヴィ領内で相手を探していたのだろう
もしかしたらあの緑髪の弓兵は父親公認だったり?
仕切り直したあと、牽制で剣撃を幾つか重ねたのち
互いに近づき鍔迫り合いに移行した
アーダンはブリギッドの力強さに驚愕していた
➖これだから弓兵は!インチキくせぇ!クソが!
原作でのクラス別ステータス腕力トップは複数あるが
歩兵の弓兵上級職『スナイパー』も名を連ねている
ブリギッドは原作登場時、この職についていた。
ちなみに、この『スナイパー』に能力の男女差は無い
ちなみに原作アーダンの最終職ジェネラルより上である
ちなみ下級職の腕力No. 1は原作アーダンのアーマー系
ちな現在、それなりに力が均衡しているのは
ブリギッドがまだ『スナイパー』ではないからであろう
TIPS
ち、原作ゲームの登場クラスのステータス最高値は
最終面手前の章のBOSSのクラス エンペラー である
全ての上限値が人類の限界値 30 を誇る が
プレイヤーはチートなしでは使用できないので除外した
そしてブリギッドもまたアーダンの腕力に感心していた
──ちっ、これで13歳だって?
…うちのあらくれども並じゃないか!
鍔迫り合いによる拮抗状態は
次第にアーダンにとって優位な態勢になりつつあった
鉄の剣 と 鋼の剣 武器自体の重さもあった
アーダンの方が身体が大きいので
上から覆い被さる形になる。重力を味方につけたのだ
否、それだけではない
ブリギッドはアーダンの狙いを察知した
──右利き、重心は退いた左足、
ん?この視線は…巻き上げか!
西洋剣術において重要な技術に『巻き上げ』がある
刃と刃が近い距離にあるとき
相手の刃を巻き込むように引っかけて下から跳ね上げ
相手の手元から剣を跳ね飛ばすのだ
アーダンの次の手が察知されたのは
巻き上げて跳ね飛ばした剣が
何処に飛ぶかを確認するための視線移動が原因だった
アーダンの巻き上げに対してのブリギッドの答えは
巻き上げに逆らわず、逆に利用することだった
「目を閉じなかったのは良かったけど、
剣を手放して足を掴もうとしたのは減点だね」
巻き込む力に逆らわず自らアーダンに向かい跳躍、
巻き込みに合わせてアーダンの腕力を利用し回転、
そのまま斜め回転からの回し蹴りを顔面に見舞った
アーダンは咄嗟に額で受け、掴もうと手が出てしまった
そのせいで剣の両手持ちが片手になったところに
鉄の剣 の平面の部分による打撃を右腕に受けてしまう
掴もうとした手が利き手ではない左だったのも敗因か
利き手にダメージを受けたあとの戦いは
ブリギッドによる指導のような形になった、完敗である
「……もう大丈夫ですよ、エーディン様」
「ごめんなさいね……痛かったでしょう?」
エーディンの持つライブの杖による回復魔法治療は
アーダンの右腕外側に受けた打撃痕を癒していく。
アーダンは初めての回復魔法による治療を観察していた
「アンタの話をしてるんだ。聞いているのかい?」
「すみません、回復魔法は初めてなもので、つい」
痛みは驚くほど無かった。
皮膚の下、肉の内側が熱く、むず痒い事が難点だろうか
「確かに初めてだと痒くてたまらなかったな…」
「あ〜確かに、皮の内側がムズムズすんだよね…」
前髪パッツンとシルヴィアが話しをしている
アーダンは2人の距離の近さに軽いショックを受けた
「いい勉強になっただろう?
じゃ、もう一戦といこうか」
「…はい?」
ぼっこぼこにされました
「剣の振り、横方向が強いね、握りもそうだし
本当は斧が得意なんだろう?」
「実家では、斧と弓を良く使ってました」
「腕力があるなら、斧を使いなよ。
力のある大人の男はそうするのが1番だ」
「……オーガヒルの海賊が代替わりしたと聞きました」
「……ああ、知ってるよ」
「……強い人だったんですか?」
「ああ、あんなに強い男はいない。
いないんだ…もう…」
➖…しまった…ミスったか…
「……もう1人の父親みたいな人だったんでしょう?」
「……アンタ、何が言いたいんだい」
「…自分はちょっとした事情があって
祖父が父親がわりみたいなものでした」
「それで?」
「ベッドで死んでいた祖父を発見したのは自分です」
「……」
「後から考えると
何が起きていたのかわかってなかった」
「……」「……」「……」
「ただただ周りの流れに流されて
気がつくと時間が経ってました」
「涙も出ませんでした、
こんなものなのかと思っただけです」
「すみません、自分でも何が言いたいのか…
…たぶん、言いたいのは、
泣きたい時は
泣くのが自然だと思いますってことです」
「だって、貴女、泣いてるじゃないですか」