本日の夕食は
シアルフィ流のフルコースとなります
形式として文字サイズはリセットになります
試験的に中央揃えに合わせております
食中酒として
適度なタイミングでお飲みになってください
誤用の際は
Digestivo 食後酒
バイロンの士官学校時代は栄光に満ち溢れていた
長身、甘いマスク、実力、家柄、友人
加えて彼はファッションについても高い興味を示し、
現在のシグルドの着ているような簡礼服を完成させた
襟のたった前開き、袖を少しめくり裏地を見せるシャツ
これは、大陸キャラバンに付随するサーカス団の衣装、
ペガサス乗りの女性を見て、その装飾を取り入れた物
当時の士官学校、歩兵コースの普段の服装は *2
古代ローマ風のトーガやチェニックが主だった所に
彼は騎士の履き物とされたタイトなズボンと、
現代のYシャツのようなスッキリとした服装で登場、
男女問わず周囲の注目をあつめた。
喉元を華麗に装飾するレースの白い前掛け
これは、トラキアの傭兵たちが寒冷地に赴く際に
寒さ対策に首の周りに巻いた布を見て取り入れたもの
バイロンはこれをアグストリアの白シルクでアレンジ
騎士階級やアグストリアの貴族階級に元々あった
黒地の肩掛けに白く丸いヒダがついた衣装の装飾を
首周りを覆うヒダを華麗な前掛けに変える事で
こちらもスッキリとしたシルエットとなり、
騎士階級に大評判、アグストリアにも逆輸入された。
見た目のカッコよさもあっただろうが、
ファッションリーダーたる彼自身が
最高クラスの貴族だった事も影響力に拍車をかけた。
彼の バイロン・スタイル は
騎乗する貴族階級の服装のスタンダードとなり
騎兵コースに留学していた他国の聖戦士を通じて
王国内のみならず、アグストリアやマンスター地方、
果てはトラキアにまで広がっていった。
バイロンは当時の王都の女性の注目を一身に集めた
彼は女性の扱いについても一流だった
彼と浮名を流した女性は数えきれない。
その栄光の輝きに隠れてしまい
悔しい思いをした同じ学年の男達がいた
魔法系の聖戦士一族のため、
十代後半になって歩兵コースに入った ヴィクトル と
バイロンと同じ年に生まれた ランゴバルト である
「シグルドよ、ワインの味は覚えたか?」
「たしなむ程度には…ですが父上にはかないません」
「忘却するほどに呑まねば酒は覚えられんぞ」
「父上は飲み過ぎです、また階段で眠ったら
エスリンに叱られますよ、次はかばいませんからね」
「そうですよ、バイロン。貴方は飲み過ぎです。
いつまでも若いわけじゃないんだから…」
バイロン、シグルド、エスリンの母親が *3
食後のお酒を味わいながら家族の団欒を過ごしていた
「若い頃は老いて死ぬのはゴメンだったが
こうして白髪になってみると悪くはないな」
「あら、また同じ話かと思ったら。
いつ宗旨替えしたのかしら?」
「アーダンだよ」
「あの子?」「アーダンがですか?」
「アレを見てるとトールキンを思い出す
トールキンは死んでも、その生命は繋がっている
わし達が死んでも、シグルドエスリンお前達がいる」
「…父上…」「…貴方…」
「…湿っぽくなってしまったな。
どれ、もう一本開けようか。
…ん?…呼び鈴はどこにいった?」
「…父上、左手に持っているものはなんですか」
「もうお部屋に帰りましょうね。
シグルド、お願いできる?」
Dolce お菓子
イード砂漠に近いイザーク王国内、
砂漠沿いに屹立する山脈のふもとにある城 ソファラ
その城下町で
お菓子の人気店の行列待ちをしている兄妹がいた
「兄上、今日こそは買ってみせます」
「何もお忍びで抜けだす事ないだろうに…
誰か使いの者に頼めば良かっただろう」
「皆、母上に止められているのです」
「あ〜なるほどな…。お前は食べすぎなんだよ、
イードの降臨祭のお祝いだからって *6
ひとりで1キロもいったんだろう?」
「私の体はカハクでできているのです
もう、ひと月近く食べてない…ああ…カハク…」
「剣とお菓子にしか興味はないのか、この妹は…」
Formaggi デザート前のチーズ
ドズル公国が王都バーハラ内で蔑視されていた理由は
何も人頭税や文化レベルの話だけが原因では無かった
各地で乱暴を働く賊たちの扱う武器は斧が多い
との理由もあったが、1番の理由はそれでは無かった
視覚的な効果によるものである
王都バーハラからは、崖下にあるドズル城が見えるのだ
高所から見下ろすという優越感に抗える人間は少ない。
お前たち は 下 で 私たち は 上 なんだ
そんなドズル城の一室で喜びの声を挙げた人間がいた
「よくやってくれた!妻よ!
新たな聖戦士の誕生だ!」
ランゴバルトの長男、ダナン だ。
彼の見つめる先には、
助産師に抱かれて泣き声を上げる赤ん坊がいた。
赤ん坊の首の後ろには *8
聖斧スワンチカの継承者を示す 卍 の印があった
赤ん坊には、ブリアン と名付けられた *9
Contorno 付け合わせ
オーガヒルの海賊たちは苦境に立たされていた
先代の頭領は義賊としてオーガヒルを治めていた。
彼の統治はオーガヒルの地に安定をもたらしていた
結果、近隣の諸国から入植がはじまり、
税金代わりの上納金が海賊達に入ることになった。
だが、彼は死に海賊たちは入植者の村を略奪した。
新たな頭領は頭を抱えていた。これでは先細りだと
「ちっ、どうすりゃあいいってんだ…
あのバカは司祭にやられちまったし…
入植者も逃げ出しちまう…クソが…」
おかしら〜、また決闘の儀の要請ですぜ〜
「俺達は海賊なんだぞ……
なんで義賊の時より金が無くなるってんだ…」
義賊との取り引きと海賊との取り引きでは
信用 に大きな差があった。物価は跳ね上がった。
そして商船の護衛依頼もさっぱり無くなった。
おかしら〜、ま〜た頭が痛いんですかい〜
「うるせぇ!決闘は明日の昼に受ける!黙ってろ!」
あ〜い、わかりやした〜
シレジアやアグストリアの賊とも戦いになった
獲物の競合が起こるようになったのだ。
縄張り争いは激しさを増し、危険な海と世に認識され
結果、主な獲物である商船も運航をへらしていった。
「……やるしかねぇか…やるしかねぇ…
……陸にでるしか俺達の未来はねぇ…」
Secondo Piatto 主食、メインの一皿
風の聖戦士セティによって建国された
シレジア王国は、
勇猛なる天馬騎士団と風の魔道士たちに
守られ、建国以来 百年間、
他国に侵略される事もなく、
完全な中立を保ってきた。 *14
「あの泣き虫はどこにいる!」
「どうしたの?あの子に何か用?」
そんなシレジアに暮らす国民たちには
2つの心配事があった
「また泣いてるのかお前は…
…仔馬の世話はどうした?」
「……あっ」
近海の海賊たちの動向と
突然の病に倒れた国王の容態である
「このまま国王が斃れたら次の王はだれだ? *15
まさかあの子供じゃないだろうな」
「王子はまだ幼い、代王として姉上が立つだろう
王子が大人になるまでは、だがな」 *16
シレジアの大地は美しい
天馬騎士団の乙女たちも美しい
極北に生きる人間たちの営みもまた美しい
「……父上……」
「ああ……そんな……あなた…」
原作のシレジアも、ただただ美しい
死の彩りさえ、ある種の輝きをはなつ
Primo Piatto 最初の一皿
ある子供がいた
産まれる前から盗賊だった
胎の中で兄弟の生命を盗んで食べた
ある子供がいた
産まれてからも盗賊だった
母親の乳から生命を盗もうと産声をあげた
ある子供がいた
父親も母親も盗賊だった
子供が少年になる前に両親は捕まり首がさらされた
両親が死んだそのとき子供はサフランの花畑にいた
花のメシベを盗んでいた。盗賊だったからだ。
子供は少年になる頃に、森と湖の国
ヴェルダン の地に活動の拠点を移すだろう
「ん〜、次はなにを盗もうかな〜?」
Antipasto 前菜
オーガヒルの南方、グランベル王国の西に位置する
アグストリア諸国連合
先代から代替わりした海賊達の方針転換を受けて、
オーガヒルに最も近いマディノ城近辺では
緊張感が高まっていた。
逃げ出してきた入植者たちから
海賊の内情が察せられた。
連合国王 イムカ は
やがて侵攻してくるだろう海賊たちへの
対策、備え として、
魔剣の使い手にマディノ城への駐留を指示した。
魔剣とは聖武器 ミストルティン の事である
使い手は本来なら家族に見守られながら病で死ぬ
Stuzzichino おつまみ、付け合わせ
「クルトよ、まだ妃は選べないのか?」
「父上、私にはあの人しかいないのです」
「私が死ぬまでには妃を選ぶのだ。それが期限だ」
グランベル国王アズムールの治世は30年を超えていた
年月を重ねた老人の指は皺くちゃに節くれ立っていた
Aperitivo 食前酒
公爵家の食事に招待されたのは褒美も兼ねていた。
ブリギッドの件ではユングヴィ卿からの褒美に
シルヴィアの処遇を願った。それは叶えられた。
だがアーダン自身は褒美を受け取っていないのだ。
ユングヴィ卿リングはバイロンに相談し、バイロンは
アーダンの処遇を引き上げる事で褒美とした。
身内認定である。爵位こそそのままだが邸宅内では
公爵家の親戚程度の扱いとなり食事の同席が許された。
バイロンはお祝いにフルコースを振る舞う事にした。
公爵家でもなかなか無い豪華な食事となった。
バイロンは飲酒でこそ怒られなかったが
結果的に仲間外れにされた娘の機嫌を直すために
代償として娘の願いを叶える約束をした
エスリンも同級生になるのだろうか?