……ダン……い……もう…すよ……
王都バーバラの貴族街にあるシアルフィ公邸宅にて
…ーダン君……さい……もう2週間たち……よ…
使用人の女性にお尻を叩き起こされる少年がいた
「アーダン!」バチーン!
「あら、いい音ね。若いとハリも違うのかしら?」
女使用人の後ろにいたエスリンの母親は
どうやらかなりファンキーな人間のようだ
尻を叩き起こすのは彼女の指示だった
窓から射し込む穏やかな太陽の光が部屋の中を彩る
光の角度は60度に近く、朝の9時頃といったところか
侵入した光は床や白地の壁に反射して部屋中を照らす
光と影がきらめく海辺の波の紋様のように美しい
やや歪んで作られていた窓ガラスのおかげだろう
「座ってままでよろしいですよ」
「お手数をかけてしまい申し訳ありません」
現実の窓ガラスの起源は古く、古代ローマ時代まで遡る
ローマ時代以前からガラス自体は存在したが
吹きガラス技法が開発されて窓ガラス生産が始まったのは
1世紀前後の古代ローマであった。
「はい、濡れタオルです」
「ありがとうございます。……おお……」
「つい先ほど汲んだばかりの水ですから」
「こういうのは、若さは関係ないのね」
吹きガラス技法とは現実のガラス職人がやるように
細い鉄パイプに息を吹きこんで膨らませる技法である
これによりガラスは様々なカタチをとるようになった
サイズの大小、色合いの濃淡、なにより『職人』の誕生
「着替えは後にして、ついてきてくださいな」
「はあ、何用でしょうか?」
やや話が逸れてしまった。
要するに聖戦の系譜には窓ガラス要素があるということ
ゲームのプレイ時に買い物や闘技場のメニューがある
原作ゲームの自陣の城下町などにある背景には
街角の通りが映し出される事がある
「次は貴方にシグルドのお尻を叩かせます」
「……はい?」
「奥様の仰せに従ってください」
通りの窓には窓ガラスを嵌めるための格子があるが
窓の格子には、窓ガラスは無く、取り外されている
現実の19世紀の中頃まで窓ガラスは高価なものであり
世の情勢が不安になると暴動などで割れるのを警戒し
窓ガラスは取り外されて奥にしまわれる事が多かった
盗難も多かったとのことだ。戦時中ならなおさらだろう
「その次はバイロンです。貴方に叩いて貰います」
「奥様の仰せに従ってください」
原作ゲーム画面の窓ガラスは取り外されていた
窓ガラスをドットで表現出来なかった訳ではない
戦時中の街角の風景を表現していたのだ
「…いや…しかし…ちょっとそれは…」
「奥様の仰せに従ってください」
妙に細かいところに仕込まれた表現があったりする
聖戦の系譜はあなどれないゲームなのだ
ちなみにシグルドは既に起床しており難を逃れた
バイロンの尻の音は ペスッ だった
「…んっ、フーッ。士官学校は午後からとの事だが…」
軽い昼食の場にてアーダンも一席に参加するなか
バイロンとシグルド親子の会話がなされていた。
アーダンは尻の件もあり、ただ黙しているしかなかった
「はい、午後イチで全校集会があります」
「おそらく、そこで通知されるだろう」
「何がですか?内容を知っておられるので?」
バイロンによると士官学校寮の改築、増設だそうだ
歌劇や音楽の発表会の後のタイミングで
寮生やお付きの者たちは退去し、工事をするとの事だ
「それにしても突然ですね…」
「来年、アグストリアの魔剣の継承者と
レンスターの地槍の継承者が揃って来るらしい」
「ああ…なるほど」
「学校寮自体も100の歳をこえたろう?
それにレンスターからマンスター諸国からも何人か
留学させたいと受け入れの要請があったそうだ」
レンスターとはユグドラル大陸の南東の方角にある
トラキア半島の北部一帯に勢力を構える
マンスター諸国連合同盟の盟主である一国である
レンスター国の王族は聖戦士の血族であり
地槍ゲイボルグを代々継承していた
「マンスター諸国からも?」
「トラキアのトラバント王が各地の紛争に
積極的に傭兵として軍団を派遣しているとのことだ
トラキアの侵攻に備えて関係を深めたいのだろう」
「関係を深める?」
「継承者自体はこれまでどおり騎兵コースだが
マンスターのほうは歩兵コースらしいからな…
それに加えて何人かの子女も留学させたいそうだ
婚姻関係による結びつきといったところだな」
マンスター諸国連合同盟よりさらに南東にある
半島の南部を治める半島の名前を冠した軍事国家
トラキア王国はたびたびマンスターの地に侵攻していた
大規模な侵攻こそ先代のトラキア王の時代からは無いが
トラキアはマンスターを諦めてはいない
「警戒したほうがよいという事ですか」
「いや、他国との血の混じり合いは王国も望んでいる。
むしろこの機会に嫁のひとりくらいは見つけてこい」
トラキアは今代のトラバント王になってから
小規模衝突や諍いこそあるものの本格的な侵攻は無く、
マンスター同盟との間には奇妙な平和が保たれていた
だがトラバントはトラキア半島統一の野望を持っていた
「それはともかくとして、
……戦争はいつ頃になるのでしょうか?」
「今回の婚姻外交が上手くいかなければ
だいたい5年から10年以内には侵攻してくるだろうな」
「何故わかるのですか?」
「トラキアの主産業は傭兵派遣やアレが主だからな
収入面から推測するとそれぐらいになるというのが
宰相殿と我等との検討会の結論だ」 *1
原作ではこの婚姻外交は成果を結び
地槍ゲイボルグ継承者のレンスターの王子が
シグルドの妹 エスリン と
同時に留学していたレンスターの貴族の子女と
魔剣ミストルティン継承者のノディオン王子が結ばれた
原作のトラキア王トラバントの苛立ちが察せよう
「まあ、今は話はこのくらいにしておこう。
集会で残りの学期中の住まいなども説明があるだろう
派閥の者は振り分け済みだから安心するといい」
「助かります。家にも何人か受け入れるのですか?」
「お前とアーダンは屋敷から通うことになるし
エスリンも暫くはこっちにいたいというしな
わが屋敷は除外させてもらったよ」
➖……魔剣ミストルティンの継承者って
たしかアグストリアのエルトシャンだよな?
嫁は士官学校時代に見つけたんか?恋愛結婚か…
原作ゲームの前半部の主要人物にエルトシャンがいる
彼は隣国のアグストリア諸国連合に属する
ノディオン公国の王であった。あー旦那時代は王子だ。
原作では嫁の名前は明示されないが
後に開発者から グラーニェ とファンに伝えられた
グラーニェ は色々と関連作品や厄介なキチファンから
酷い扱いを受けたが名前の元ネタが グルニエ ならば
それは開発者や元ネタにとても失礼なおこないである
エルトシャンはシリーズ前作にあたる
紋章の謎関連に登場した カミュ という人物の
セルフオマージュであることはファンなら周知の事実だ
この黒騎士カミュの属する国の名前は グルニア である
エルトシャンの元ネタのカミュの元ネタの話になるが
フランスの作家に同名の アルベール・カミュ がいる
経緯はアレだがノーベル文学賞にもなった作家だ
この作家と親交の深かった人物に
作家であり、教授であり、哲学者であった
ジャン・グルニエ という人がいた
カミュの生涯に渡って支援した友人である
TSさせた開発者も失礼と言われたら返す言葉もないが
エルトシャン と グラーニェ
2人の仲が悪かったという事はおそらく無い
むしろ、きっと穏やかな時間が流れるような
暖かかな関係だったことだろう
カミュ と グルニエ にはそれだけの絆があったのだから
この度の窓の話は投稿当日の先程に視聴したる日本放送協会公報九時の米国大統領選の紐育の暴動に備えし街並みを見て思いつきし候う。作者は単純なりき阿呆にて許されよ