王都士官学校の全校集会は王宮内の広場で行われた
来年度の聖武器継承者の在籍人数が過去最多となり
それにかかる人員の増加に対応するためなどに
士官学校寮の改築や、コースのカリキュラムの修正
(おそらくブリギッドのためだろう)の件が話されたのち
光の聖書ナーガを讃美するエッダ教の聖典の一節を
校長が読み上げたあと、散会した *1
散会したあと、シグルドは派閥の人間と魔法の授業へ
アーダンはいつもの資料室へとそれぞれわかれた。
やや指定席と化した窓に面する机の椅子に荷物を置く
「ちょっとよろしいですかな?」
「はい、なんでしょう?…って室長じゃないですか」
「いや、ちょっと聞きたい事があってね……」
アーダンの顔見知りの資料室の室長である
用件はブリギッドについてだった。
どうやらユングヴィから家庭教師の依頼があったらしい
「依頼の際に説明はあったが、正直な所、迷っているのだ
海賊の養女として育てられたとは聞いたが……
たしか君は面識があるのだろう?どういう人間だね?」
「美人ですよ」
「ほう」
「優しい人ですね」
「ほほう」
「頭も自分より良さげです」
「ほほほう」
「力も自分よりも強いです」
「ほほ……ん?」
「ぼっこぼこにされました」
「……ま、まあ聖戦士なら」
「ちょっとウソつきました」
「君ねぇ、脅かさないでくれ」
「ボコられたのは4回です」
こころよく引き受けてくれる事になった室長をあとに
アーダンは資料にある中で最も詳細な地図を閲覧していた
➖この大陸の地形はおかしいとは思ってたんだ
グランベル王国の東に位置するイード砂漠の北部、
シレジア王国に属するリューベック城の周辺を観察する
➖…リューベックでは岩塩が採掘されるなら…
このあたりは昔、海だったってことだよな…
続いて視線を下方へとイード砂漠に移していくと
砂漠の中に屹立する巨大な岩盤がいくつか確認できる
➖海だったのならこの岩山は小さな島みたいなもんか
それに…前々から思ってた疑問もいくつか解決か…
イード砂漠は北部と南部でその様相が大きく異なる
南部は崖や岩山ばかりで乾燥しており標高も高い
標高としたが正確には海抜だ。海抜は海面からの高さで
高低差は最低でも海抜数十メートル以上だ。ガチ岩砂漠だ
それに比べると北部は比較的平坦で標高も低い。
近隣の海岸との高低差も少なく海抜数メートル以下だろう
➖北部はところどころ緑地もあるから水もあるだろうに
砂漠なのは疑問だったけど砂に塩分あるなら納得だな
過去に海面が下がったなら色々と納得できる地形があった
たとえば大陸西南部のヴェルダン王国の中央部の巨大湖
巨大湖と地図にはあるが塩分を含み海水魚が生息していた
湖の北西部あたりがえぐれて谷のようになっているので
そこの部分がかつて外海と繋がっていたのだろう *2
➖……海面が下がった原因は何だ?
…氷河とかも無いしおかしいぞ…
海水はどこにいったのだろうか?
➖……ああ、魔法がある世界だったな……
…しかし、いや、規模がデカすぎる……
多少の原作知識のあったアーダンには
消えた海水の行方に心あたりがあった
ロプト帝国の創始者であるガレ司教は
若いときに、海をわたって
世界を旅したという
だがアーダンの手元にある世界地図は
海をわたって も大陸の反対側に着くだけだ
渡った海の先、旅の目的地は無い
だが、ガレの目的地が違う世界なら?
世界と世界が魔法を介して繋がるなら?
海上で転移魔法の入り口を設置したなら?
ユグドラルの海水はそこに流れこんだ?
「そんなのアリかよ……」