アーダンが11になり、ひと月ほどたった冬の朝、
アーダンの祖父は体調の不安を、
かねてから付き合いのある老シスターに訴えていた。
自らの死がちかい事を感じていたのか
遺書を書いて写しをシスターに預け、
執事には感謝と
やや相場よりかは多めの退職金を渡すなどの
身辺整理を始めていた。
大陸南部にちかく温暖な気候といえるシアルフィでも
それなりに寒い冬場も終わりにさしかかり、
すこし勇み足をした木々が
ぽつりぽつりと花を咲かせていたとき、
魔法授業を終え、これからは本格的に戦闘術を学びたい
と祖父にお願いをしようと
祖父の部屋を訪ねたアーダンは
寝台から上半身がすべり落ち
仰向けに大きく口を開いたまま動かない祖父を発見した
遺書と、
アーダンの知らないところで
両親と話しをしていたのであろうか、
葬儀はおこなわれず、近親者による別れの会のあと、
村の東側にある丘の中ほど、村を一望できる場所に、
老シスターによる簡易な儀式のあと埋葬された。
墓碑には祖父の名が刻まれていた。
トールキン
帰り道の途中、アーダンはダゴンに
君がよければ教会で司祭見習いにならないか?
と話しかけられた。
アーダンは突然の誘いに心が動いているのを感じたが
➖これがロプトのやりくちなのかもしれない…➖
と自分に言い聞かせて
自らの名前の由来を理由に断った。
ダゴンが祖父に何かしたという可能性は
一欠片も頭によぎらなかった。
このときの誘いにアーダンが乗り、
ダゴンのもとにいったならば
ダゴンがロプトから抜け出す
そんな未来もあったのかもしれない。
老シスターに託されたトールキンの遺書の写しが
資料として現代に残っている。
内容は全11条におよんでいるが、
はじめの5つまでは屋敷や財産、爵位についてのもの。
あとは短い条文で
・自分の葬儀は不用なり、弔問も断るように手配を頼む
・長い間皆に世話になった。わがままをいってすまない
・墓はあの丘の妻のちかくにたのむ
・シルマリル、クリストフ
アーダン、ベオル、ハドス、ハドル
皆元気でいるように
・アーダンは騎士にならずともよい
じぶんのなりたいものになるといい
と、短い文章のなかに
たくさんの思いがこめられているのがわかるだろう。
トールキンは幼少時、体が弱く
たびたび教会の世話になっていたが
成人になってからは健康で、
酒も飲まなかったという話が伝わっている。
理由としては酒を飲まない騎士は当時相当珍しかった。
ちなみに現在でもシアルフィやドズル地方では
酒を飲めない男性を
➖お前はトールキンなのか?➖とからかう事がある。
トールキンはシアルフィに属する騎士であったが
剣や槍の才能がなかったからか
シアルフィでは珍しい斧騎士だった。
酒の件もあり同僚とは微妙な距離があったに違いない
当時の騎士団は
兵種を統一することが良しとされるうえに、
酒の席でのコミュニケーションが重視されていた。
相当苦労したのだろう。
最後にアーダン向けの遺言の手前にあった
ひとつの条文をしめして終わりとしたい
自分は努力だけはしてきた
好きだったからだ
思うように成果はなかったが
…元ネタは作家の松本清張氏の遺書とエピソードです…
参考文献
知識人99人の死に方 荒俣 宏・岩川 隆
しんみりとしているけどどこか暖かい話に
ネタをはさみこむのは無理でした…
お気に入りをはずしてください!訴えますよ?運営にも相談します!あなたがなにをしたかお分かりですね!プレッシャーなんです!いつでもエタる準備はできてます!覚悟の準備をしておいてください!次の更新は数年先です!