主人公VSダンデ inバトルタワー ※ダイマックスなし、ただ戦ってるだけの話。ポケモンバトルの描写って難しくない??と思ったので書いてみました。めちゃくちゃ難しかったです。

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ヨロイ島から帰ってきた直後の設定です。(時間的には前の短編「時には父親の話をしようか」の続きですが内容はまったくつながっていません。)







時には真面目にバトルをしようか

『マサルから電話ロト~』

 

 ダンデは書類を置いた。

 

「もしもし」

『あっ、ダンデさん? ご無沙汰してます』

「久しぶりなんだぜ。ヨロイ島はどうだった?」

『その辺の話はまた後ほど。すぐ会いに行きますんで、ウォーミングアップしておいてください』

「お、あぁ、ん?」

 

 マサルは一方的に通話を切った。不審に思ったダンデが窓から下を見ると、この高さからでもよく分かる特徴的な帽子を被った少年が、跳ねるような足取りでタワーに向かってくるところだった。

 

「……事務仕事は一旦お預け、だな!」

 

 あの感じでは最速で突破してくるに違いない。ウォーミングアップに残された時間は、一時間もあるだろうか。その間に体を温めて、最終確認をしなくては。

 

(ようやく、対マサル用に考え続けていた戦法を試せるんだぞ……!)

 

 はやる気持ちを抑えて、ダンデは入念な準備を始めた。

 

 †

 

 呼び出されたのは五十分後だった。

 バトルコートに入る。

 すっかりスイッチの入ったマサルが、静かな顔つきで待っている。

 

(相変わらず、“言葉なんかいらない”って感じだな、マサル)

 

 けれどダンデはにっかり笑って、

 

「やぁ、久しぶりだな、チャンピオン・マサル!」

 

 と語りかけた。

 タワーオーナー・ダンデとの対戦の様子は、録画されて配信されるのだ。多少のパフォーマンスはしなくてはならない。少なくとも、始めと終わりくらいには。

 今すぐボールを投げたい気持ちを無理やり抑えつける。

 

「来てくれてありがとう。君とのタワーでの戦績は一勝二敗だ。そろそろドローにしたいところなんだぜ」

「……負けません」

 

 マサルは呟くように言った。言葉は少ないが、欲望がめいっぱい詰め込まれている。

 彼はいつものように、右手を心臓のあたりに置き、左手を背中側へ回してボールを握る構えをした。そのまま頭を下げればジェントルマンのお辞儀なのに、年齢も空気感もまったく紳士的ではない。もともと張り詰めていた空気がよりいっそう冷え込んだ。

 きんちょうかん――いや、プレッシャー。

 配信に適さない顔になりそうだったのを、咄嗟にキャップで隠した。その下で無理やり笑顔を作り、ダンデはボールを掴む。

 

「それじゃあ始めようか! 今までで最高の試合をしよう!」

「はい。――行きます!」

 

 二人は同時にボールを投げた。

 

「いっておいで、ウーラオス!」

「いくぜ、ゲンガー!」

 

(やはり、ウーラオスか!)

 

 ヨロイ島に行くと言っていた時から、マスタード師匠に捕まるだろうことは予測していた。そして、マサルなら師匠の課題をすべてクリアして、確実にダクマを育て上げてくるだろう、と。

 

(俺は結局、辿り着けなかったからな……道に迷って)

 

 などと懐かしんでいる暇はない。

 

(あのウーラオスは“いちげきのかた”――つまり、タイプはあく・かくとう!)

 

 まったく不利な状態だ。

 

「ウーラオス、あんこくきょうだ!」

 

 裂帛の気合とともに放たれた拳が、ゲンガーの急所に突き刺さった。こうかばつぐん。とても耐えられるものではない。

 ゲンガーの体が揺らぐ。

 ――が、

 

「ゲンガー、マジカルシャイン!」

「っ!?」

 

 ゼロ距離から打ち出された輝かしい光が、ウーラオスの巨体を吹き飛ばした。

 マサルの目がわずかに開き、そしてスッと細まる。

 

「きあいのタスキ……」

「ご名答!」

 

 一撃で沈められる技を受けた時、ギリギリのところで持ちこたえるための道具。ゲンガーが口の中に隠し持っていたのだ。使い物にならなくなったそれを、ゲンガーはペッと吐き出した。

 

「お疲れさま、ウーラオス。――いこうか、カビゴン!」

「二体目はカビゴンか!」

 

 カビゴンと言えばその巨体に見合った体力の高さが特徴だ。こうかばつぐんの技でない限り、削り切るのは難しい。

 

(だが、上手くハマれば――)

 

 指示を出すスピードを調整する。どうせ同時に言ったとしても、カビゴンよりゲンガーの方がすばやさで勝っているのは確実だ。

 二人の声が重なる。

 

「ゲンガー、みちづれ!」

「カビゴン、たくわえる!」

「むっ……!」

 

(さすがチャンプ、読まれていたようだな!)

 

 不発に終わった“みちづれ”が、ダンデの次の一手を確定させた。

 

「ヘドロウェーブ!」

 

 ゲンガーを中心に毒の波が流れ出る。しかしほとんどノーダメージのようだった――狙いは単純なダメージだけではないが。

 カビゴンは重たい体で波をのっしのっしと踏み分けて、

 

「したでなめる!」

 

 こうかはばつぐんだ。

 

「オーケー、ゲンガー。ナイスファイト!」

 

 そう簡単に行くとは思っていない。なんていったって相手はチャンピオンだ。自分を二度も――リーグを含めて三度も負かした少年。

 

(だが、今回は負けないぜ!)

 

「いこう、ドラパルト! りゅうせいぐん!」

 

 体力が多いなら削りきるまで!

 ドラパルトの咆哮によって生み出された隕石が無数に降り注ぎ、カビゴンに突き刺さる。ポケモンの技にも耐えきる特殊な床材の上で隕石が砕け散り、真っ白い粉塵が濛々と立ち上った。

 大威力の代償に下がったとくこうは、しろいハーブでリカバリーして次に備える。

 

「さぁ、これで――」

 

 言いかけた瞬間、ごんっ、と重たい音がして、ドラパルトが呻き声とともに固まった。透けた尻尾がゆらりと垂れて、ふらふらとその場に崩れ落ちる。

 

「なっ……あれは……」

 

 足元にごろんと転がった黒い塊――くろいてっきゅう。

 

「なげつける、か……っ!」

 

 最も高威力を叩き出す道具。

 

(もともと遅いカビゴンに持たせても大して目立たないし、一ターンなら耐え切れると踏んだか!)

 

 たくわえるも布石だったのだろう。

 だが――晴れた粉塵の向こう側で、カビゴンの巨体がぐらりと落ちた。どくが効いていたらしい。

 

「お疲れ、カビゴン。――ラストです」

「ああ、クライマックスだ!」

 

 お互いの三匹目は分かっている。

 

「「リザードン!」」

 

 二体のリザードンが同時にコートへ躍り出た。

 

「いわなだれ!」

 

 先手を取ったのはマサルのリザードンだった。知っている。すばやさは向こうの方がわずかに上だ。さらに向こうは物理攻撃を得意としている。対するこちらはとくぼうよりぼうぎょの方が低い。だから、

 

「リザードン、ひるむな!」

 

 ダンデは声を張り上げた。

 頭上から猛烈な勢いで雪崩れ落ちてくる土砂に押しつぶされ、リザードンはこうべを垂れ翼を折られそうになっている。

 だが、“きあいのタスキ”を持たせているから体力はかろうじて残る。

 これを耐えて、怯むことなく、そしてあと少しだけ頑張ってくれたら。

 

「リザードンっ!」

 

 ダンデの声に、彼は応えた。

 頭を上げ、咆哮を轟かせ、翼を打つ。

 

(よし、ひるまなかった!)

 

「げんしのちから!」

 

 周囲に巻き散らかされた岩がふわりと浮かんだ。リザードンの遠吠えに呼応するように、それが一気に刃となって相手の翼を滅多打ちにする。

 マサルのリザードンは大きく体勢を崩して床に落ちた――が、倒れなかった。

 

(まずいっ、仕留めきれなかった?!)

 

 敗北の予感にドクン、と心臓が跳ねる。それを振り払うようにして、

 

「いわなだれ!」

「げんしのちから!」

 

 同時に下された最後の指示は――

 

 ――もう一度浮かび上がった岩が、マサルのリザードンを撃ち抜いた。

 

 ズン、と床が振動する。リザードンの巨体が崩れ落ちたのだ。

 

 戦闘不能。

 それを確認したマサルは、信じられないという目でダンデを見た。

 ダンデは大きく息を吐いて、肩から力を抜いた。

 

「俺の勝ちだぜ、チャンピオン!」

 

 ダンデのリザードンが勝ち誇った声を上げた。

 それでようやく現実を飲み込んだらしい。マサルは大きく口を開けて――次の瞬間、勝った時と同じようにへらりと間の抜けた笑顔になると、

 

「あー、負けたーっ!」

 

 とその場に大の字に寝転がった。それなりに高いジャケットが砂まみれになるのもお構いなしだ。

 ダンデはリザードンをねぎらってボールに収めると、ゆっくりとそちらに近寄った。大人げなくガッツポーズして飛び跳ねたい気持ちもあったが、それには頑丈に蓋をする。

 

(……ニヤけちまうのは勘弁してほしいぜ!)

 

 リザードンをボールに戻したマサルは、ぼーっと天井を見上げたまま呟いた。

 

「……そっか、げんしのちから……」

「十パーセントに賭けるのはちょっと怖かったぜ」

「三十パーセントに裏切られた時点で、流れはそっちのもんでしたよね……」

 

 いわなだれを受けてひるむ確率は約三十パーセント。

 げんしのちからですべてのステータスが上がる確率は、約十パーセント。

 わずかしかないすばやさの差をひっくり返すには、これ以外に方法がなかったのだ。――本当はドラパルトで少し削っておいて、確実に決めに行くつもりだったのだが。

 

(ああ、ひやひやしたぜ……!)

 

 予定が狂うなどよくあること。特にマサルが相手だと、予定なんてあってないようなものだ。彼の実力の前にはそんなもの簡単に覆され、想像も出来なかった盤面が目の前に広がる。

 それがまたこの上なく楽しくて仕方がない。

 

「運頼みにさせたのは君の実力だ。素晴らしい試合をありがとう、チャンピオン!」

 

 差し出した手を、マサルはしっかりと握り返して起き上がった。

 

「次は負けませんから」

 

 爛々と輝く目が、ダンデを真正面から見据えている。まったく闘志を失っていない、まばゆい目だ。

 

(そうだ。この目がある限り、俺たちはもっともっと強くなれる。――最高だぜ、チャンピオン!)

 

 コート内に備え付けられているポケモン回復装置にボールを入れながら、マサルがふと切り出した。

 

「ところで、僕がウーラオスを使ってくること予想してました?」

「もちろんだぜ! 君なら絶対マスタード師匠に捕まると思ってたからな!」

「うわー、そっかぁ」

「この間のキャンプしてた時の君のメンバーに、あくタイプがいないことも分かってたしな。だからきっといちげきのかたの方にしてくるに違いないと踏んでたんだぜ」

「なるほど。それでマジカルシャイン……」

「でもみちづれが決まらなかったのは痛かったな……定石とはいえ、もう少し上手い使い方があったかもしれないな」

「そうですね。ゲンガーがきあいのタスキを持ってたら確実に次はみちづれだなって思います。あとはどのタイミングでそれを使ってくるか、になりますけど……こっちとしてはたくわえるをしておけば、みちづれがきても攻撃がきてもどうにでもなるんで」

「そうだよなぁ」

「でもあそこでどくにさせられた時はちょっとビビりました」

「どうせ大差ないダメージなら、追加効果がかかるかもしれない方がいいと思ってね。けど、りゅうせいぐんで削り切れなかったのは予定外だったな」

「あれはマジでギリギリでしたよ。僕のカビゴンはとくぼうにかなり自信があるんで、どうにか持ちこたえましたけど、たくわえるがなかったらやられましたね。見てくださいよこのステータス」

「うわ、本当にとくぼう特化だな」

「ふふーん、でしょう? でもやっぱりゅうせいぐんは痛いですね。どうせしろいハーブとか持たせてたんでしょう?」

「ばれてたか。でも削り切れないなら、攻撃力を上げるタイプの持ち物にしておくべきだったな」

「いのちのたまとか?」

「うん、ありだな。いっそその方がいいかもしれない」

「りゅうせいぐんを決め技にそれ以外でも充分攻められますもんね」

「君のリザードンは何を持っていたんだ?」

「ヨロギの実です」

「あー、なるほど、仕留めきれないわけだ!」

「ラストがお互いリザードンなのは分かってるんで、絶対いわタイプの技でくるでしょう? それならこっちはいわなだれで、当然そっちも対策してくるはずですから、二発当てるつもりでいないと駄目だなーって。ひるんでくれたらラッキー、ひるまなくてもヨロギの実で耐えきって二発目で決める……って予定だったんですけどね! ああーもうままならないなぁ! あははははっ!」

「ふっふーん、そういうもんだぜ!」

「ちなみにですけど、ドラパルト以外の候補っていました?」

「そうだな、二匹目だけは何を使ってくるか分からなかったから、どんなタイプが相手でも頑張ってくれるやつにしたんだぜ。ギルガルドかゴリランダーか、オノノクスか……この辺りで迷ったな」

「そういうときのダンデさんってドラパルト選びがちじゃないですか?」

「……はっ?! そうかもしれないな?!」

「やっぱり気付いてなかった」

「思考のクセだな……気を付けよう」

「きっとドラパルトにすると思ってカビゴンにしたんで」

「そうだったのか!」

「ゴリランダーだったら完敗だったな……確かかくとう技使えましたよね?」

「うん。それで仕留めきれてたな。けど結局、リザードンには沈められただろうから、カビゴンを倒せてもその先がな――」

「そっか、それじゃあ微妙ですね。なら――」

「あれは――」

「これは――」

 

 感想戦が長いです! とスタッフが飛び込んでくるまで、あと三十分――

 

 

 

 








お粗末さまでした。


後半の感想戦は読まない方がいいです(じゃあ書くな)。
あと作者はバトル下手なのでわりとよくある戦法しか取ってません。ごめんなさい。





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