汚い幼女が多過ぎるので片っ端から虐待()して減らすことにした 作:ブラブレ8巻難民
少年──里見蓮太郎が『掃除屋』の拠点を出た時にはすっかり夜も更け、彼の自宅が見える頃には、時刻は深夜二時近くになっていた。
名も知らぬ少女が誘拐(という名の保護)された後、無駄に多く存在する『掃除屋』の拠点から彼女達を探し出すため、多大な時間を必要とした結果である。
これによって疲労困憊の彼は────
「ヒヒ、こんばんは里見くん」
──目頭を揉んで、天を仰いだ。
そして流れるような動作で携帯を取り出し110番を押す。
深夜に自宅近くでふざけた格好をした変態に出待ちされていたら、誰だってきっとそうするだろう。
「ちょっ、ちょっと待とうか里見くん。今回は話をしに来ただけなんだが」
「…………手短に頼むぜ影胤。睡眠と来週の小テストの勉強に使える時間が減っちまう」
しかし丁度『話せばわかる変態』と交流を持った直後の彼は、少し迷った後、会話に応じることにした。
「単刀直入に言おう。里見くん、私の仲間にならないか?」
「……お前が『七星の遺産』をどうする気なのかによる」
「無論、大絶滅を引き起こすために使う」
「……なら、俺はお前の仲間にゃならねぇよ」
──彼はほんの少しだけ期待していた、『優しいオチ』なんてものが存在しないことを悟る。
「私につくなら金だろうが女だろうが、好きなものを好きなだけ与えられる。今すぐ用意できるだけでも──」
影胤は蓮太郎が残念そうな顔をしたことを見て取ると、手品のように地面からアタッシュケースを出現させ、足で蓮太郎の方に滑らせた。
ケースは蓮太郎の前で止まると同時に蓋が跳ね上がり、中に詰まった札束が姿を現した。
「──経済的に苦しい君からすれば大金だろうが、私には端金だ。私につけば、君の知らないソレの使い方を教えてやれる」
「興味ねぇよ。だからコレは返すぜ」
蓮太郎はケースを同じ位置に戻るように蹴り返す。
影胤はしばらく元の場所に戻って来たケースを見つめていた。その間、遠くから聞こえるエンジンの音だけが場違いに静寂を埋めていた。
「……君は大きな過ちを犯したよ、里見くん」
「過ちね……俺に過ちがあったとすれば、最初に会ったときにお前を倒せなかったことだよ、影胤」
「くだらん! あくまで任務を遂行し────」
「──危ない、アクセル全開ッ!」
そんなバカげた台詞が聞こえた次の瞬間大型バイクが影胤に突撃をかまし、斥力フィールドによって軌道を上に逸らされた。
しかしライダーは己が遭遇した怪奇現象を気にも留めず、何事もなかったかのようにバイクを停めてこちらにやって来た。
「あ、
「ん。久しぶりだね、小比奈」
「──は、ハアァァ!?」
どこからともなく現れた小比奈が『母』と呼んだライダーは、なんと『掃除屋』だった。
「しっかし、頭のおかしい格好をした奴が道路のド真ん中に突っ立ってると思ったら、旦那じゃねーですか。こんな所で何してるっすか?」
「頭がおかしい自覚はあるが、君にだけは言われたくなかったね。それに、『こんな所で何を』というのもこちらのセリフだ」
「あーしは少年の忘れ物を届けに来てやっただけっすよ」
そう言った彼女は、蓮太郎に何かを投げ渡した。
「これは……!」
──スプリングフィールドXD。
蓮太郎の拳銃だった。
「仕事道具を忘れるなんて、里見少年はおバカでやんすねぇ。その調子だと、いつか最重要アイテムのイニシエーターも忘れて現場に直行しそうで、あーしは心配でゲス」
「…………」
彼女の口調には突っ込みどころしかないが、図星を突かれた蓮太郎は目を逸らして黙り込む。
「そういえば私と初めて会った時、イニシエーターを連れていなかったようだが、まさか里見くん──」
「黙れ影胤! 余計なこと言うんじゃねぇ!」
「アヒャヒャ、既にやらかしてたっすか!」
「うるせぇ笑うな! 用が済んだんならとっとと帰りやがれッ!」
「へいへい、そんじゃあーしはこれにて失礼をば」
「……待て」
「なんすか少年。とっとと帰れと言ったのは少年でしょうが」
「いや、ナチュラルに金を持ち去ろうとしてんじゃねぇよ」
「……好きにしたまえ。元々消える予定だった金だ。大して惜しくもない」
「へへ、感謝しやすぜ旦那ァ」
──そうして彼女はケースを持って帰っていった。
……その方向から聞こえてくるパトカーのサイレンについては、三人共務めて聞こえないフリをしたという。
「なんだか抜き差しならない状況になってしまったが、どうするかね?」
「お前らもさっさと帰れ。俺は寝る」
────ちなみにこの日の授業を蓮太郎は全て寝て過ごした。
そんな蓮太郎の授業態度を知った延珠が、学校の楽しさを彼に語る日が来るのだが──それはまた、別のお話。