汚い幼女が多過ぎるので片っ端から虐待()して減らすことにした 作:ブラブレ8巻難民
私達から普通に生きる権利を奪っておきながら、被害者面をしている大人が……大嫌いだった。
「今帰ったッスよ〜」
「……おかえり、なさい」
「なーにをそんなに震えてるんスか? 今日の虐待は朝ので終わりッスよ〜?」
……だけどこの人は、今まで見てきた大人とは何もかもが真逆だった。
『奪われた世代』でありながら、己を『加害者』であると言って憚らない。誰よりも残虐な言動をしておきながら、実際には私達を助けてくれる。
……でも、
「ねぇ、私の引き取り手は……見つかった?」
「あぁ、それで震えてたんスか。ヒャヒャ! 残念ながらお察しの通り、一日で引き取り手が見つかることなんてまずまずないッスよ!」
……あぁ、良かった。
緊張が解かれ、力の入っていた肩が落ちる。そして落ち着くために、深呼吸を一つ。
引き取り手が見つかってしまったら、もうここにはいられない。やっと出会えた優しい人と、離れ離れになってしまう。
いつかこの生活が終わるのは、解っているけれど。それが、少しでも長く続けばいいと────
「──ですが、運が良かったッスねぇ!
「──ッ」
そん、な……
もう、終わりなのか。まだたったの二日だ。たった二日で、またあの地獄が始まるというのか。
「いや、だ」
世界が『
「なんでもするから、どんな虐待だって受け入れるから──私を、捨てないで……!」
それに対し、彼女は────
*
「──今、『どんな虐待もだって受け入れる』と言ったッスね?」
「う、うん!」
「クックック……それが何を意味するか、本当に分かってるんスかぁ? 今までは合法的な範囲に抑えていやしたが、これからの虐待は倫理も常識も無視した厳しいものになりやすよ? それでもいいんスね?」
「いいよ! あなたの虐待なんて怖くないんだから!」
「その威勢がいつまで持つか、見ものっスね……」
そうして掃除屋は部屋を出て、虐待の準備を始めた。
(ククク、たしかアレが──あった)
指揮棒のように長い針を持ち、彼女は邪悪に笑う。
更にはデコボコとした鉄板を取り出し、加熱を始めた。
(どれだけ『赤目』が頑丈でも、所詮は人間。粘膜の部分はあーし達と同じく無防備。しっかり温度も感じるし、心は歳相応に脆いことが多い。だから『赤目』を虐待する時は、この辺りを責めるのが定石)
……なんだか雲行きが怪しいが、大丈夫なのだろうか。
(という訳で今回はセオリーに従って──タコ焼きを作りやしょう)
──いや、いつもの掃除屋だった。
(クックック、辛い虐待を覚悟したところにこのタコ焼き……警戒心は確実に緩む。そんな状態でコレを口にすれば大火傷待ったなし! しかも今回は残虐性マシマシ──中身に大量のカラシが入ったものが含まれているロシアンタコ焼き!! 我ながら、自分の発想が恐ろしいッス……)
おそろしく平和な発想である。
「さぁ、できたッスよ〜☆」
「…………たこ焼きだ」
少女も『怖くない』と言いつつ一抹の不安はあったのか、胸を撫で下ろしている。
「いただきます!」
(計画通り……)
少女は無警戒にたこ焼きを頬張り、美味しそうに食べている。
どうやら熱さには耐性があるらしく、掃除屋は内心下を巻いた。
(やるじゃないッスか……流石に『怖くない』と言うだけのことはありやすね……
ですが、本命はカラシの方! さぁあと三つッス。流石にこれを耐えられる訳が──)
──と、その時。少女は何かに気付いて箸を止めた。
「……どうしたッスか?」
「……掃除屋さんは、食べないの? そういえば、あなたが何か食べてるところ、見たことない」
「あ゛ぁ ん ? ガキに心配される程落ちぶれちゃあいねぇんですよぉ」
「……やっぱり、食べてないんだ」
「食ってるッスよ! お前達『赤目』にやってるのとは全く別のモンを、たっぷりと!」
「別のモノって?」
「あ゛? ……教える義理が無いッスね」
「…………残り、食べていいよ」
「──んなっ」
(まさかコイツ、中身に気付いて……!?)
「元々あなたが作ってくれたものなんだし、
(コイツ──間違いない、勘付いている! ここで食べないということは、中身に細工をしたと認めるも同然。仕方ない──)
「一つでいいッス。本当に、ちゃんと他で栄養は摂ってるッスからね」
そして掃除屋は、たこ焼きを一つ摘んで口元に放った。
(確率は1/3! えぇいままよ!)
「はい、ご馳走さんッス。
そうだ、あーしは急用を思い出したんで少し留守にするッスが、その間に逃げようとか考えないことッスね」
「え、ちょっと! あなたこそ逃げないで! コラ! ちゃんとご飯は食べなさーい!!」
…………そうして一人になった部屋で、少女は残りのたこ焼きを口にした。
「……私も料理、覚えなきゃ」
── 一方その頃、外周区に絶叫が響き渡っていたらしいが……それは特に関係のないお話である。
*
「お前、才能あるッスね。今度から虐待する側になる気はないッスか?」
「是非!」
そして密かに、虐待()大好き人間が一人増えていたのだった。