汚い幼女が多過ぎるので片っ端から虐待()して減らすことにした   作:ブラブレ8巻難民

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 大変長らくお待たせ致しました。拙作『赤目の守護者』において掃除屋がゲスト出演した記念で更新再開でございます。

 ……ただしシリアスさんはまだ少し息がある様子(おい)

 そして、明けましておめでとうございます(×2)


掃除屋の過去:後編

 

 ──掃除屋、ヒナミ・グリューネワルトは記憶喪失である。

 それも物語にありがちな『エピソード記憶のみの欠落』ではなく、言語や計算能力も含めた『完全な喪失』だ。

 

 故に治療後、彼女の精神は赤子と変わらぬ『無垢』から再開した。

 そして、彼女の父は言った。

 

『〝子供たち〟は、人類の希望である』と。

 

 ヒナミは機械化兵士として、モノリスの結界拡大を目的とした戦い──第二次関東会戦に出るようになった。

 ちょうどその頃は、グリューネワルト翁より少し遅れて『子供たち』の戦闘力に目を付けた国が、彼女らを実戦投入し始めた時期だった。

 ヒナミは多くの戦場でガストレアを薙ぎ倒し、人を守り、『子供たち』を守った。そして、他人との関わりが増えた彼女は気付き始める。

 

 自分や父以外の人間は口を揃えて『赤目のバケモノは、人の姿であっても駆除しなければならない』と言うのだ。

 

 ヒナミは、考えた。

 『どちらが正しい?』『正しさとは何か』『合理的であることだ』『誰もが納得できる理論こそが〝正論〟つまり〝正当〟である』と。

 

 ヒナミは、混乱した。

 『〝子供たち〟を冷遇するに足る、納得できる理由が見つからない』『父の言う通り〝子供たち〟は希望である筈だ』『しかし誰も、理解を示さない』『つまり、合理的ではない。これは正しい考えではない』『だがどれだけ考えても〝子供たち〟を冷遇するに足る理由は見つからない』

 

 ──混乱の果てに、彼女は狂い始めた。

 『どれだけ信じられないことでも、現実は変わらない』『私は間違っている』『〝子供たち〟が虐げられるべき存在ならば、そうしよう』『論より証拠、行動あるのみ』『実際にやってみれば、見えてくる事実もあるかもしれない』

 

 ……ただヒナミは、狂い切れなかった。

 生来の善性に加え、義父グリューネワルトより学んだ『命への畏敬』が彼女を踏み留まらせた。

 この『命への畏敬』については自他共に認める『正しい考え』であったので、彼女には『心身問わず子供に不治の傷をつけない』という大前提があったのだ。

 

 しかしそうなると、彼女は『子供たち』にどう手出しすればいいのか分からない。

 そこで彼女は、あ(・)る(・)親(・)子(・)を参考に虐待の手法を編み出すことにした。

 

 ヒナミが知る中で唯一の、『〝子供たち〟と人間の共生例』

 そう──

 

 

『影(・)胤(・)さ(・)ん(・)、結婚してください』

『…………正気かね?』

 

 

 戦場で何度か顔を合わせた、仮面の魔人。

 

『あなたと小比奈ちゃんを、近くで観察したいんです』

『いーよー!』

『……まぁ、小比奈がいいなら構わないがね』

 

 この頃の彼は承認欲求が満たされていたことで、特に狂気的な行動もなく……『良き夫』であり『良き父』であった。

 小比奈は感情表現が豊かであり、ヒナミにとって観察しがいのある娘のまま育った。

 夫婦は婚姻届を出しておらず、娘はウイルスによる遺伝子操作で血縁関係すら無い。そんな仮染めの関係ではあったが……ヒナミもまた『妻』として、『母』として、あらん限りの愛情を二人に注いだ。三人は、幸せだった。

 

 

 ──第二次関東会戦が、終わるまでは。

 

 

『約束の日が来てしまいましたね』

『……ねぇママ、どうしてもお別れしないといけないの?』

『うん。すっごく名残惜しいけど、今日から私と影胤さんはね、別々の場所で戦わないといけないの』

『……パパ』

『駄目だ。……これ以上一緒に居ると、別れが辛くなる』

『パパは、今お別れするなら辛くないの? 私は……今でも充分辛いよ?』

『私だって辛いとも。だが、私(・)達(・)と(・)彼(・)女(・)は(・)思(・)想(・)が(・)違(・)い(・)過(・)ぎ(・)る(・)。本来は交わらない存在なんだよ。ここでお別れするのが、一番だ』

『…………パパきらい』

 

 そうしてヒナミは、親子と別れた。

 小比奈は最後の最後まで抗議したが、手を出すことはなく、父から離れることもなかった。

 ……心の奥底で、父の言葉を理解していたのだろう。

 狂った自分達と、狂い切れない彼女は違うのだと。この先自分達が行う悪逆非道を、彼女は許せないだろうということを。

 

 だからそう、互いに解っていたのだ。次に会った時、親子と彼女の関係がどうなるのか──

 

 

 

 *

 

 

 

 そして今、死闘が始ま

 

「バタンきゅう」

「ヒヒ……やはりキミには勝てないね……」

 

 ……死闘には、ならなかった。ヒナミの圧倒。瞬殺であった。

 小比奈はコミカルな呟きを残して気絶し、影胤は手足を伸ばし切って、木に背を預けて座り込んでいる。その手に握られていた二丁拳銃は真っ先に弾かれ、今は延珠の手元にある。

 

「当たり前ッス。ス(・)ペ(・)ッ(・)ク(・)が(・)違(・)う(・)ん(・)ス(・)か(・)ら(・)。アップグレードされてないどころかメンテも受けてない旦那にゃ負けやせんよ」

 

 そう言うと彼女は、無造作に投げ捨てられていた七星の遺産(ケース)を拾い上げ、踵を返した。

 

「……何故だ、ヒナミくん」

「何のことスか?」

 

 立ち止まり、しかし振り返らず、彼女は問い返した。

 

「何故、私達を殺さない?」

「あーしの依頼は『ケースの奪取』だけッスからねぇ。余計な手間を増やしたくないんスよぉ」

「今やらないと、後悔するよ」

 

「──はぁぁぁ……」

 

 ヒナミはケースを置いて溜息を吐き、華麗なターンを披露してツカツカと影胤の方へ歩み寄って……思いっきり、股間へ足を振り下ろした。

 これには影胤も色を失い、反射で斥力フィールドを局所展開。しかし対するヒナミも『想定内』とばかりに、踵へ斥力のピンヒールを形成。彼の防御を紙切れのように貫き──局部数cm前の地面を抉った。

 

「母(私)に、小比奈(娘)の前であなた(父親)を殺せと?」

「…………甘いね。相変わらず」

「旦那にゃ言われたくないッスねぇ」

「……甘い? 私が?」

 

「だってあなた、至る所で『私は世界を滅ぼす者』とか吹聴してますけど──その実世(・)界(・)に(・)居(・)場(・)所(・)を(・)求(・)め(・)て(・)彷(・)徨(・)う(・)迷(・)子(・)でしょう?」

 

 彼は世界の混沌と闘争を望むが、決して滅亡を良しとはしない。

 『迷子』と言うには傍迷惑過ぎるが……『純悪』には、程遠い。

 

 そんな彼の内面を、よく知っているからこそ。

 

「帰る場所なら、用意してあるんスけど」

「…………やはり甘いよ、キミは」

 

  ──〝エンドレススクリーム〟

 

 斥力フィールドの槍が、ヒナミの身体を押し離した。

 それは、拒絶の意思だった。

 

(……まぁ、こうなることは分かっていましたが。フられるのって、思ってたより心にキますね……)

 

「キミが私と共に来るなら、歓迎しよう。だがキミは、拒むだろう? 私も同じだ」

「…………ハイハイ。分かりやしたよ頑固者の旦那ァ」

 

(力尽くで引き摺って帰ってもいいんスけど、『子供たち』と五翔会の相手で手一杯の現状じゃあ、面倒事が増えるだけッスからね……)

 

 ヒナミは意識を『掃除屋』としてのものに切り替え、今度こそ帰路についた。

 

 

 

 *

 

 

 

「……見逃してよかったのか? 蓮太郎」

「……弱ってても、奴はまだ斥力フィールドを使えた。俺じゃトドメは刺せなかった」

 

 それが嘘であることを、延珠は知っていた。

 しかしすぐに『無粋だったな』と頭を振り、いつものように笑いかける。

 

「まぁ、妾も蓮太郎も無事だったのだし。他は些事だな!」

「……あぁ、そうだな。報酬は貰えそうにねぇけど……」

「う゛っ」

 

 里見家のもやし生活は、まだ暫く続きそうだ。そして同時に……

 

「……木更さんの学費、どーすっかなぁぁ……」

 

 彼女の高校中退が、確定した。

 ──と思ったその時、蓮太郎の携帯が鳴る。表示名は、『掃除屋』

 

「……どうした?」

『おっ、繋がった。ダメ元だったんスけど、よく携帯生きてやしたね』

 

 心の中で『確かに』と思いつつも、蓮太郎はスルーした。

 

『まぁ、そんなことはいいんス。言い忘れてたんスけど、少年。あ(・)ー(・)し(・)は(・)民(・)警(・)じ(・)ゃ(・)あ(・)な(・)い(・)んで、よろしくッス』

「……?」

『ケースのことッスよ! あーしにとってはあくまでつ(・)い(・)で(・)ッスからね。報酬とかいらないんで、代わりに持ってってくだせぇ』

「えっ、いや。流石にそれは……」

『いいんスよぉ。というか本音は聖天子様以外の聖居の人間と会いたくないだけなんですけど割と切実なので本当にお願いします』

「お、おう」

 

 三下ムーブではない素の声で捲し立てられ、蓮太郎はつい承諾してしまった。

 

『感謝するッス! それじゃあ今後ともご贔屓に! さらばッス!!』

「あっ、おい──切れちまった」

 

 渋々血肉塗れのケースを手に取り、蓮太郎は嘆息した。

 

「ま、まぁ良いではないか! これで木更も学校続けられるし、妾達の食卓も潤うのだしな!」

「……おう」

 

 そして彼らも、帰還を開始した。

 その道中、蓮太郎は何度かの休憩を挟んだのだが……

 

「しっかし地味に重いなコレ。中身だけ持ってくワケにはいかねぇのか……?」

 

 好奇心に負けた彼が、ケースを開けると──

 

 

 そこには、何の変哲もない三輪車が入っていた。

 




 
 原作第一巻分終了。

 スコーピオン、生存でございます。
 夏世ちゃんと将監さんも生存でございます。

 さて、これらがどう転がるのやら……
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