明石「艦娘の夢を操る機械を作って欲しい?」 作:マロニー
提督「ああ…次は由良だ…」
明石「…」
提督「…軽巡繋がりと思ってな。
だからそんな冷たい視線を向けるな明石」
明石「あー…別にそういう事ではなくただどう反応しようか迷ってただけなんですが。
にしてもまた何というか…」
提督「何だ、何か文句あるのか?」
明石「…何というか、的確に背負い込んでしまいそうな娘を選んだなぁと思って」
提督「まあ諸々に支障が出ない程度に全力でやるさ。今回見せる夢はどうすっかなー」
明石「ほんっと楽しそうに悪巧みしますね」
提督「そりゃあ!悪巧みが得意じゃなきゃあ軍人やってないってんだよ」
明石「軍全体に風評被害バラまくのやめてください!」
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提督(さてさて、例によって例の如く由良の元へと向かおうか。まあつっても向かう事無くともどうせ会うことになるだろうが…)
提督(お、いたいた。さて由良の様子は…)
由良「〜〜♪」
提督(…鼻歌交じり?無理して…ってわけでは無さそうだ。顔色も良いし、張り詰めてる人特有の気配が無い。じゃあ本当に上機嫌だってのか?)
提督(…?)
由良「あら提督さん、どうしたんですか?
時間も大丈夫ですし…もしかして急用が?」
提督「いや、別にそういったわけじゃなくてだな。少しでも早く由良に会いたかっただけさ」
由良「ふふ、お上手ですね」
提督(嘘はついてないがな。
…さて、聞いてみるか)
提督「なあその…
やけに上機嫌、だったな?」
由良「あ…き、聞かれてましたか。
ちょっと恥ずかしいです…」
提督「はは…悪い悪い。
しかしどうしてあんなに上機嫌だったんだ?占いの結果でも良かったのか」
由良「いや、そんな大した理由じゃ…!
…ただ少しだけ」
由良「いつもより少しだけ。
夢見が良かったんです!」
提督(……?どう、いう…?)
提督「夢見が、良かった?」
由良「?はい。何か駄目でしたか?」
提督「あー、そういう訳では…」
提督(…操作ミスか?
…いや、その線よりはおそらく)
提督「…なあ。
話は変わるが少し寄り道してかないか?」
由良「え?由良は良いですけど…
仕事は放っておいてもいいの?」
提督「なあに、本気でやればすぐに終わるさ。…それに多分、そう長くはかからない」
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提督「さて、ついたな」
由良「…?工廠ですね。開発を?」
提督「いや、少し見せたいものがあってな。
まあ話はとりあえず入ってからだ」
ガラガラ
明石「あれ、提督…に由良ちゃん。
どうしたんですか?開発します?」
提督「ああいや、開発は今日はしない。
実は由良に見せたいものがあってな」
明石「あー…
…え?見せちゃうんですか?」
提督「シーっ」
明石(…アイコンタクト。黙って見ててくれ、って事かしら)
提督「…さあ、おまたせしたな。
これだこれ。由良、こっちだ」
由良「あ、はい。…うわあ、すごくおっきい…これは一体…」
提督「……」
由良「…提督さん?」
提督「…ああ。これはな、この鎮守府内の生物の夢見を良くする事が出来る装置なんだ」
由良「!そんな事が出来るの?」
提督「ああ。現在我々の置かれている状態は物資が多くあり嗜好品なども多くあるそんな状態だ。とはいえ俺らが務める場所が戦場である事に違いは無い。よって精神が疲弊する事が多々あってしまう」
提督「だから、その為のこれだ。寝ている間だけでも少しだけ気分を軽く、楽にさせてやろうっていう目的のな。…いくらでも悪用出来る上、バレてしまったらまた気を病む子がいそうな為、秘匿だ。口外はしてくれるなよ?」
明石(よ、よくもまあいけしゃあしゃあと自分に都合の良い嘘を…)
由良「は、はい。…なるほど、じゃあ昨日夢見が良かったのは」
提督「…嘘だ」
由良「え?」
明石「へ?」
提督「本当はこの装置は夢を自由自在に操る事が出来るものでな。それはつまり良い風にもだが、悪い夢を見せる事も出来るって事だ」
提督「そして由良。昨夜俺は君にこの装置を使った。行動の内容は、悪夢を見せる事」
由良「…」
提督「…怒るだろうか。怒るだろうな。
だがまずは俺の推論が合っているかだけを聞かせてくれ」
提督「この装置の『悪夢を見せる』…それはつまり、お前が見ている夢を俺が考えた『悪夢』に上書きするって事だ」
提督「…俺が上書きしたそれを良い夢見だと言った由良。お前は常に、これ以上の悪夢を見ている。そういう事なのか?」
明石「…!提督、それは…!」
提督「すまん明石、後で説明する。
…違うんならそう言ってくれ。由良」
由良「…」
明石「…」
提督「……」
由良「…すみません、二人にしてもらって良いですか?」
明石「あ、それじゃ私がここから」
提督「いや、俺らが別の場所に行けばいい。
由良、行こうか」
由良「…はい」
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提督「よし、座ってくれ」
由良「…ここは?」
提督「カウンセリングルーム的なそれだ。
まあ楽にしていてくれ」
提督「…さて、と。何から話そうか。
…そうだな、まずは俺の蛮行に怒ってるならそれへの文句から聞こうかな」
由良「…確かに少し怒ってます。その様子だと由良にだけやったんじゃないですよね?」
提督「まあ、そうだな」
由良「酷いです、可哀想です」
提督「返す言葉も無い」
由良「…でも、今はそれについては良いかな」
提督「…」
由良「由良、は」
提督「待った」
由良「!!」ビクッ
提督「…心のつっかえについて。
言うのが嫌か、怖いか?」
由良「!ううん、そんな事…!」
提督「もしそうなら言わなくても良い。
また、君が望むならあの装置を君に使用し続ける事もできる」
由良「使い、続ける?」
提督「ああ。それも今回見せた悪い夢じゃあなくて、君の求めるような良い幻想をだ。悪い申し出じゃないと思うが、どうする?」
由良「……」
由良「…怖いし、話したくない。
けど、これ以上目を背けられないから」
由良「逃げちゃあ駄目…ですよね。
…ねっ?」
提督「…ああ、そうだな。
きっとそうなんだろう」
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提督「よう、さっきは悪かったな」
明石「提督。その、どうでした?」
提督「どうって聞かれただけじゃあなんの事かわかんないな、ハハハ!」
提督「…すまん。今ちょっとテンションがおかしくてな」
明石(自覚症状アリとは珍しい…なんて言ったらヘソ曲げちゃうかな)
提督「…その夢の内容についてはあまり話さなかったよ。というか話せなかった」
明石「トラウマを刺激してしまって、という事ですか?」
提督「いや、夢なんて基本覚えてられないものだからな。目覚めたらその瞬間に忘れる夢だってあるくらいだ、夢は忘却とワンセットなんだよ」
提督「…ただの夢ですらヒトの脳はそれを忘れる事で自身を守っている。毎夜魘されていたレベルの悪夢なら、精神の自己防衛の為に忘れちまうのが当然だろう」
明石「…でもじゃあ、打つ手なしですか?」
提督「…悔しいよ。ここまで何も出来ないとは思わなかった。自惚れてる訳じゃないが、何か出来てやれると思ってたんだ」
提督「…機械の使用も拒否された。
『これは自分が背負わなきゃいけないものだから』ってな。その意思を無碍には出来ん」
明石「私はそうは思えません」
提督「…え?無碍にしてもいいだろって事?
とんだマッドサイエンティストだなお前」
明石「ち、違いますよ!提督の言っていた、何も出来なかったって部分です!」
提督「ああ、そっちか」
明石「…直感というか、気のせいかもしれないのでそんな確かな事は言えませんが。工廠で提督が由良ちゃんへ質問した時。少し、目が潤んでいたように見えたんです」
明石「それは、何が原因だろうと、愛する人が自分の異常に気づいてくれた嬉しさのものじゃないかな、なんて…」
提督「…らしくないじゃないか。
でもきっと、そうなのかもしれないな」
明石「ええ、きっと」
提督(…)
提督「…ま、所詮俺がやってる事は褒められた事じゃ無いんだ。ここまで来たんからこれ以降も徹底的にやってやる!」
明石「うわ、開き直りましたね!
慰めて損しました!」
提督「ハハハ…」
『提督さん。これからも艦隊と…由良を。
宜しくお願いしますね、ねっ?』
提督(…そうだな。あの笑顔がそういう意味でのそれだったなら、彼女は大丈夫かもな)