明石「艦娘の夢を操る機械を作って欲しい?」 作:マロニー
提督「明石!明石ッ!」
提督(…クソッ、杞憂なら良いんだが。どうもこの見つからなさだとそうは思えん)
提督「他の奴に聞いてみるか?いや…」
提督「……アイツなら、どこに居るか」
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明石「…」
提督「…ここに居たか。探したぞ」
明石「よく此処が分かりましたね?正直、来ないかなーなんて思ってました」
提督「いや、実は散々空振りしたんだ。
今ここには第四候補くらいで来た」
明石「…それ言わなくってもよくないです?」
提督「確かに。聞かなかった事にしてくれ」
明石「もう少しかっこつけましょうって」
提督「今更かっこつけたところでだろ?
…まあいい、本題に入るぞ」
明石「…」
提督「…見てたんだよな」
明石「はい。見てしまいました」
提督「だよなぁ。んで、ここに来たのか。
懐かしいなぁ。まだ俺ら位しか居なかった時に使ってた倉庫だろ?こんなに道具があるとは知らなかったが」
明石「あはは、持ち込んでたんですよ。
いつか何かに使うかなって思って」
提督「時たまちょっとずつ資材無くなってたのおめぇかよ!」
明石「ふふふ…バレたからにはただじゃおきませんよー」
提督「…さて、長引かせてもアレだろう。
単刀直入に。ここで何をしようとしてた」
明石「そうですね。現実の全て、何もかもが夢になってしまえるような。そんなものを作ろうとしてました」
提督「…出来るのか、そんなものが」
明石「出来るまで、作るつもりでした」
提督「……だが」
明石「ええ。
結局やれないまま、突っ立ってました」
提督「だよな。どういう心境の変化だ?俺の事なんざどうでもいいと思ってくれたのか?」
明石「いいえ。諦める事は、ずっとできないと思います。ただそれでも、今こうしているのは…」
明石「嫌だったからです」
提督「?」
明石「この世界が夢になってしまうのが嫌。鎮守府のみんなが夢になってしまうのが嫌、貴方と私の関係が何もかも夢になってしまうのが嫌…全部、全部嫌なんです」
明石「…でも、きっとこのままいるのも嫌で。でもその今を変える事すら嫌で。なんだか馬鹿みたいですね」
明石「…私。なにがしたかったんでしょうね」
提督「…んなこと知らねぇよ。デリカシー皆無な人間だぞ、こちとら」
提督「だが、そんな恐ろしい物を作るのをやめた理由はわかる。お前は皆を大切に想っていただけだ。きっと、自分が思ってたよりな」
明石「…」
提督「…ハッキリ言おう。俺は榛名に惹かれてる。切っ掛けこそ邪だったが、形になった今だからこそそう思える」
明石「…ッ」
提督「だからきっと、俺はお前の気持ちを受ける事が出来ない。お前のだけじゃないな。今回の件で想いを伝えてくれた嵐にも、好意を寄せてくれる他の娘にも、応える事は難しいだろう」
提督「その上で。俺は厚かましく言う。俺にはお前が必要だし、共に居たい。皆と共に、鎮守府に居たい。だから、一緒に帰るぞ」
明石「…勝手な命令ですね」
提督「上官としての命令じゃなく一人の人間としてのお願いさ。もし嫌なら断れ。刺すなり拉致するなり好きにするといい」
明石「これまた極端な…死んでもいいって事ですか?それこそ、残された皆や榛名さんが哀しむでしょう」
提督「バカ言え、死んでたまるかよ。刺されようともドロ水啜ってでも生き延びてやるわ。命捨てる気なんてさらさら無い」
提督「…がなぁ。想いを諦めさせよう、なんて残酷な真似してるんだ。俺の命を賭けるくらいしないと、割に合わないだろう」
明石「…ふふ、本当。
悪人になりきれませんよね。提督は」
提督「…」
明石「私を取り敢えず戻したいなら、仮初にでも甘い言葉を言えばいいし、嘘だって言えばいい。なのに、わざわざ命を賭けるような事までして、自分に都合の悪い事言って。酷いんだか、馬鹿正直なんだか、馬鹿なんだか」
明石「…はーっ。すっかり屑なら、こんな想いにも諦めがついたのに!どうしてこうも半端に、いい人ぶるんですかね!」
提督「いい人ぶってなんかねぇよ」
明石「ならさしずめ偽悪者って所ですか。
…ええ、心配かけてすみません。帰りましょう、提督」
提督「ああ。…って油断した所をグサっとか無いよな?」
明石「どれだけ信用無いんですか私」
提督「はは、冗談だよ。…さあ、帰ろう」
明石「はい。…ただ、全部提督の思惑通りっていうのも気に喰わないので…」
明石「…諦めないし、諦めさせませんからね」
提督「…?諦め『させない』?」
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さて、結局のところ。
あの後何事もなく私たちは帰り。
そして、提督は一応とケジメの為だとして、ケッコンについてを発表しました。
最初こそ諦めの声が各所から出ました。
が、『何処かの誰か』が出した風潮によって、その諦めは、「それ以上の魅力で、ジュウコンを狙おう」という流れに変わりました。
誰の仕業でしょうかね。
ええ、本当。
さて、そうしていると、度重なるアプローチにヘトヘトになった提督がここに来る。
きっと、グッタリとしたあの顔を見せに。
提督「明石ィーっ、なんとかしてくれよぉ、頼むよぉ…諦めるどころか寧ろ皆過激になるわ、それに負けないようにって榛名も更に激しくなるわでいつか俺死ぬよこれぇ…!」
明石「よっ、幸せ者」
提督「否定はしねぇがよ…例え極上のステーキでも腹に死ぬほど詰め込まれたら地獄なんだよ…」
提督「『将来の夢』で最近アンケートとったらよ、一番多いの俺の嫁さんだってよ!?何でだよ、こういうのもなんだが俺と一緒に居るなんてロクな未来待ってねぇぞ!?」
明石「そうご謙遜なさらずに♪」
提督「…いやに上機嫌だな。
…なあ、もしかしてなんだが、今こうなってるのにお前関わってたり…」
明石「さー、どうでしょうね」
提督「……いや、そうだ。明石、明石!」
明石「はい?…え?なんですって?」
明石「将来の夢、願望をコントロール?」
明石「えー、つまり、なんですか」
明石「…『夢』を操る機械を作ってほしい、と?」
…とりあえず、
この慌ただしい日々は続きそうだ。
おわり
これにて完結です。
お読みいただきありがとうございました。