明石「艦娘の夢を操る機械を作って欲しい?」   作:マロニー

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嵐の予兆

 

 

 

提督「なあ」

 

 

明石「はい?」

 

 

提督「嵐なんかどうだろう」

 

 

明石「随分と急に言い出しましたね。

…ていうかまた駆逐艦の娘ですか」

 

 

提督「駆逐艦は数が多いんだからしょうがないだろう。数が多い分これを試したい相手も多いのさ」

 

 

明石「まあ確かに多いですからねぇ。

他の艦種と比べても一回りくらい。

…それで、どうして嵐ちゃんを?」

 

 

提督「ん。そうだな…

嵐には『一見ボーイッシュ』って所に惹かれてな」

 

 

明石「…?どういう事ですか?」

 

 

提督「…嵐は、一人称は『俺』で、サバサバとした言動。元気もあって、まさにボーイッシュって言葉が似合うような艦娘だ」

 

提督「だが、間違いなく女の娘だ。その見た目も、そして心もな。彼女と少しでも過ごせばそれが解る。言葉の端々や行動からもな。

…だから『一見』ボーイッシュなんだ」

 

 

明石「は、はあ…成る程…

でも、それと今回の選択に何の関係が?」

 

 

提督「…今回、俺は悪夢を見せない」

 

 

明石「…?提督に嫌われる夢、ではなく、悪夢すら見せないんですか?」

 

 

提督「ああ。寧ろ俺が見せるのはその逆。

俺に好かれる夢さ」

 

 

明石「…??ますます意味が…」

 

 

提督「…詰まる所、この夢を操る機械が創り出してくれてるのは差異であり、ギャップなんだよ」

 

提督「現実で優しい俺が夢では恐ろしい人間となっていた差異。現実には無いような事とそれがあってしまった悪夢のギャップ。俺達は、彼女らがそれに相対する姿を見てきたのさ」

 

 

提督「今回も同じさ。

俺はこの機械で、現実と夢に差異を作る。

そして、嵐をその違いに直面させるんだ」

 

 

 

明石「……」ポカン

 

 

 

提督「まあ、取り敢えず見ているといい。

お前も満足するような結果になる筈さ」カチャカチャ

 

 

提督「では行くぞ!

今回のテーマは『思い込み』だ!」

 

 

カチリ

 

 

 

−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−


 

 

 

【一週間の後】

 

 

 

提督「…よし」

 

 

明石『あの日から、随分と待ちましたね。

今日、何かあるんですか?」

 

 

提督「ん。まあな。ある、な」

 

 

明石「…煮え切らない態度ですね?」

 

 

提督「今日はな、嵐が秘書艦の日なんだ」

 

 

明石「…あー、成る程」

 

 

提督「ああ、で、俺はこの日の為に一週間程待ったのさ。何だかんだ、秘書艦の時に絡むのが一番都合がいいからな」

 

 

明石「都合、ですか?」

 

 

提督「相手に、二人きりだという心理を作らせるし、色々と仕掛けるチャンスが多い。そして何よりも…」

 

 

提督「…憲兵さんにしょっぴかれそうになる確率が段違いに減る」

 

 

明石「…何回か、そういう事があったんですか?」

 

 

提督「…黙秘権を行使する」

 

 

明石(…この人、いっそしょっぴかれた方が良いんじゃ…)

 

 

提督(聞こえてるぞ貴様)

 

 

明石『ナチュラルに心を読むのは止めてくださいって。てかどうやってんですかそれ』

 

 

提督「さて、茶番は終わりだ。

今から執務室だ、お前とは喋れなくなるぞ」

 

 

 

コンコン キィ パタン

 

 

 

 

提督「嵐は…まだ来てねえか…ん?」

 

 

 

 

バターン!!

 

 

 

 

嵐「わ、悪りぃ司令!遅れちまった!」

 

 

提督「よう嵐、元気いっぱいだな。

大丈夫、俺も今来たところさ」

 

 

嵐「そ、そうか…?」

 

 

提督「それより、お前凄い勢いで扉に当たってたが、大丈夫か?」

 

 

嵐「へーきだって!全く、大袈裟だなぁ」

 

 

提督「いや、しかし音も凄かったし…

特に、その肩…」スッ

 

 

嵐「きゃっ!」ビクッ

 

 

 

提督(…『きゃっ』か)

 

 

 

嵐「あ、いや…!今のは…」///

 

 

提督「…おや、どうした?

やっぱり、肩痛めてしまったんじゃ」

 

 

嵐「い、いやいや大丈夫だって!

それよりほら、仕事しちまおうぜ!な?」

 

 

提督「…まあ、お前がそういうならそうしようか。ただ…」

 

 

提督「無理だけは、してくれるなよ?」

 

 

嵐「あ、ああ…」

 

 

嵐(……いつも通り、いつも通りだ、俺!

たかが変な夢見ちまっただけだろうが…!)

 

 

 

 

 

提督「…嵐。嵐?」

 

 

 

 

嵐「え?な、何だよ?」

 

 

提督「何だよ、じゃなくって…書類を進める手が止まってるぞ」

 

 

嵐「…悪ぃ、すぐやるよ」

 

 

提督「…汗ばんでるな。暑いのか?」

 

 

嵐「!!あ…ああ、ちょっとだけな。」

 

 

提督「部屋が閉め切ってるからな…

篭ってしまったかもしれん」

 

 

 

嵐(…閉め切ってる、か…)

 

 

嵐(…)

 

 

嵐「…なあ提督。

ちょっと…服、脱いでもいいかな?」

 

 

提督「……」

 

 

提督(さて、ここまで計画通り進んだな。…今回見せた夢の内容はズバリ、俺が嵐のはだけた服を見てつい興奮し…ゲフンゲフン、といった内容だ)

 

 

提督(その甲斐あってか嵐は相当俺を意識しているようだ。それこそ肩に触れただけで嬌声に近い悲鳴をあげるほどに…)

 

 

提督(…そして、その意識した状態で。

顔を赤らめ。…服を脱ぐ。…これで嵐の意図してる事が読めない程に鈍感じゃない)

 

 

提督(だからこそ…)

 

 

 

提督「おう、いいぞ。

暖房も少し弱めようか」

 

 

嵐「…あ、ああ、頼む」

 

 

 

 

提督(…だからこそ、俺はそれを無視する)

 

 

提督(それを無視し、嵐に、俺が嵐を女として全く見ていない…と思い込ませる。自惚れだった、思い込みだった…と思わせる!)

 

 

提督(…さぁ、どうする、どうなる嵐?)

 

 

 

嵐「……」シュン…

 

 

嵐「…こ、こっち見るなよな!」

 

 

提督「はは、言われずとも見ないよ。

安心しろ」

 

 

提督(…衣擦れの音がする。…正直ガン見してしまいたいが、ここは確固たる意志を以て見ない)

 

 

 

嵐「…よし、もういいぜ」

 

 

提督「おう…って、また随分と大胆な格好だな。今度は寒くなるんじゃないか?」

 

 

嵐(軽装)「ハハ、そしたら司令に温めてもらうか!」

 

 

嵐「…あ!い、今のは、その、変な意味じゃなくって!」///

 

 

 

提督「はいはい、大丈夫、わかってるさ」

 

 

 

嵐「…あー、そうか」

 

 

嵐「……」ガリガリ

 

 

 

提督(よし、いい調子だ。この調子でどんどんフラストレーションを溜めていこう)

 

 

 

−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−

 

 

 

 

嵐「…コホン」

 

 

提督「……」

 

 

 

嵐「…」ムッ

 

 

嵐「司令…司令ったら!」

 

 

提督「ん?何だ?」

 

 

嵐「いや、何だって…その…!」

 

 

嵐「…俺のこの格好見て、何か…

その、ないのかよ?」

 

 

提督「……?」

 

 

嵐「…ッ。悪い、何でも無い」

 

 

提督「そうか。ならいいんだが…

なんか済まないな」

 

 

嵐「…何で司令が謝んだよ」

 

 

提督「いや…寒いんなら暖房をまたつけようか?」

 

 

嵐「大丈夫。ていうか、寒くなったらまた服を着るから」

 

 

提督「…それもそうか」

 

 

提督「…どうも様子が変だな、嵐。

具合が悪いならそこで仮眠するか?」

 

 

嵐「いや、そんな」

 

 

提督「遠慮はしなくていいぞ。仕事なら後で倍やってもらうからな」

 

 

嵐「それ聞いたら絶対仮眠なんかしねぇよ」

 

 

 

提督(…よし、今だ)

 

 

 

提督「まあまあ、それは冗談としてだ。

一休みくらいしたらどうだ?

気持ちがリフレッシュするかもしれないぞ」

 

 

 

提督「…ああ、ひょっとして俺が何かすると思ってたりするか?確かに、薄着だもんな」

 

 

嵐「…ッ」

 

 

 

 

提督「だがまあ安心しろ。

俺はお前をそういう目で見ちゃいないから」

 

 

 

 

嵐「あ……」

 

 

 

嵐「……」

 

 

 

嵐「そう、か」

 

 

 

提督「おおよ、何とも思ってない」

 

 

 

嵐「…」

 

 

 

提督「だから安心して–––」

 

 

 

 

嵐(そっか。そりゃそうだよな。

司令が俺をそういう目で見てる訳ないよな)

 

 

嵐(こんな女所帯なんだ、俺以外にも色んな人がいるし…)

 

 

嵐(…何よりこんな、俺みたいな半端者をそんな目で見るはずが無い。分かってたじゃねぇか、全く)

 

 

 

嵐「なあ、司れ–––」ポロポロ

 

 

提督「!?」

 

 

嵐「!?」

 

 

嵐「え?あれ、何でだ?悪ぃ、ちょっと待ってくれ。おかしいな…」

 

 

嵐「何でかな。急に、ぐすっ、涙が止まらなくなっちまって。寝不足かな?はは。すぐ止めっからさ、その」

 

 

 

嵐(…わかってるんだ。わかってたんだ。アレはあくまで夢だって。俺に都合の良いだけの夢なんだって…)

 

 

嵐(でも、何で涙が出るんだ。

何で、どうして踏ん切りが付かないんだ。

俺は諦めないといけないのに。

…いつも、諦めようとしてるのに)

 

 

 

 

提督「…」ギュッ

 

 

 

嵐「…ッ!ぐす、は、離せって!…離してよ!」

 

 

提督「……」

 

 

 

嵐「…ッ。何とか、言えよ…」

 

 

 

提督「…ごめんな。酷い事言って」

 

 

 

嵐「…やめろ」

 

 

嵐(俺を受け入れないでくれ)

 

 

提督「…お前に、無用な心配をかけたくなくって言ったんだ。だから」

 

 

 

嵐(…優しくされたら、尚更––)

 

 

 

提督「…泣くな、嵐」

 

 

 

嵐「……うん」

 

 

 

嵐(…尚更、諦められないじゃないか…)

 

 

 

−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−

 

 

 

 

嵐「…俺は、他の娘や姉さんたちみたいに『女の子』してない。身嗜みも、一人称だってそうだし、身体つきも…」

 

 

嵐「…それでも、何か期待してたんだ。

司令が俺を好きじゃないかなって。…俺の事が好きだって言ってくれないかなって…」

 

 

嵐(だから…だからこそ、俺は心の中で『あれ』を求めてた。司令を、愛する事。…司令から雌として愛される事)

 

 

嵐「でも、そんな事はあり得ない。司令が俺を選ぶなんて事は無い。…だからこの気持ちにもいつかケリをつけないと。…そう思ってたんだ」

 

 

嵐「…ごめん、困るよな。急にこんな事言われても」

 

 

提督「…いや、ありがとう。それを言う事は凄く大変だったし、辛かっただろ」

 

 

 

嵐「…あと、恥ずかしい」

 

 

提督「我慢しろ、俺もだ」

 

 

 

提督「…まあその。正直言ってだ。

さっきの何とも思ってないてのは強がりでな。さっき薄着になった時からなるだけ意識しないようにしてたというか…」

 

 

嵐「…」

 

 

提督「だからまあ…自己評価を高めろとか、そんな事は言うつもりも無いが…そんなに卑下する必要も無いと思うぞ」

 

 

嵐「…そっか。そうだな」

 

 

嵐「……でさ。その…」

 

 

提督「ん?」

 

 

嵐「…さっきの。ほとんど告白みてぇなもんだと思うんだけど…えっと、返事、してもらってもいいかな…」

 

 

 

提督「……」

 

 

 

嵐「……」

 

 

 

 

提督「…すまない、ちょっと保留を」

 

 

 

嵐「…うっわ、サイテー!」

 

 

提督「すまん…」

 

 

 

嵐「全く、肝心なところで優柔不断なんだからな…まあいいよ!もう、決めたからな!」

 

 

 

提督「?いったい何」

 

 

 

 

チュッ

 

 

 

提督「を…」

 

 

 

嵐「…もう勝手に折り合いをつけねぇ!

諦めないし、妥協しない!誰にだって、姉さん達にだって譲ったりしない!」

 

 

嵐「司令と、ケッコンする!」

 

 

 

提督「」

 

 

 

嵐「…へへ。恨むんなら自分を恨めよ?

誰にでも見境なく優しくすっからいけねぇんだからな。この女誑し」

 

 

提督「おいおい、女誑しって…

なんてまた聞こえが悪い…」

 

 

嵐「事実だから仕方ねぇだろ?…それじゃな!

覚悟しとけよ、司令!」

 

 

嵐「俺は一途で、しつこいぞ!」

 

 

 

 

【嵐はその勢いのまま去っていった…】

 

 

 

 

提督「…じゃあなってお前…

お前は今日の秘書艦だろうに…」

 

 

 

 

−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−

 

 

 

 

明石「…それで?」

 

 

 

提督「そのまま呼び戻したよ。

仕事はまだ残ってたからな」

 

 

明石「鬼畜ですかアンタ」

 

 

提督「勢いで言った後に連れ戻したからな。

あの後はしおらしい事しおらしい事」

 

 

明石「…貴方、一人で仕事くらい終わらせられるでしょう。わざわざ呼び戻したのって…」

 

 

提督「はっは、何のことやら?」

 

 

明石(うっわうざい)

 

 

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