明石「艦娘の夢を操る機械を作って欲しい?」   作:マロニー

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千代田の呻く音

 

 

 

提督「…そろそろ、さ」

 

 

明石「?」

 

 

提督「そろそろ駆逐艦以外の娘に使ってみようと思う」

 

 

明石「あぁ、何かと思えばそんな事ですか…

まあ、そこらの選択はご自由になさってどうぞ」

 

明石「…というか既に何回か駆逐艦じゃない娘にやってるじゃないですか。何を一大決心みたいに言ってるんです」

 

 

提督「そこらはニュアンスだよニュアンス。

最近やってなかったのは事実だしな。

しかしそうだな…」ガチャガチャ

 

 

提督「…うん、千代田。行ってみようかな」

 

 

明石「千代田ちゃんですか。これまた唐突というか突拍子も無いというか…

…見せる悪夢の内容は?」

 

 

提督「千歳と俺がケッコンする夢なんてのはどうだ。慕ってる姉が俺に盗られる…なんてな。どうだ、かなり面白い事になりそうじゃないか?」

 

 

明石「…それ、提督にヘイトが向いちゃったりしませんか?いや夢と割り切ってくれるかもしれませんけど…」

 

 

提督「…」

 

 

提督「…ま、まあ、流石に大丈夫だろ。

危害を加えてくるような事をする娘ではない筈だし…」

 

 

 

提督「…中止はもう出来ないし…」

 

 

明石「…ああ、既にもう…」

 

 

−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−–

 

 

 

 

ああ、幸せだな。

 

私の愛する千歳姉が。

敬愛し、想いを馳せ、ただただ好きである姉が、あんなにも幸せそうな顔をしている。

我らが提督の隣で。頬を赤らめ、口角を上げて嬉しそうに、楽しそうに。

 

…それを見つめる事は私の願いだった筈だ。

悲願、切なる思いだった筈。

 

 

なのにどうして涙が溢れるんだろう。

どうして滂沱が止まらないのだろう。

 

嬉しいから?そう。きっとそうだ。

これは嬉し涙であって、何かを悔しんでのものなんかでは決して無い。

 

その目が千歳姉ではなく、その隣の男を追うのも、他意があってでは無いのだ。

 

 

ふと。目が合い、二人がこちらに来る。

 

微笑んで、私の名を呼んでくれる。

千代田、と。

 

姉と提督が、二人が微笑みかける。

 

 

千代田。

千代田。

 

 

私の視線が向くのは…

 

 

 

千代田。

 

 

ああ、その顔で微笑みかけないで。

 

 

 

千代田。

 

 

千代田!

 

 

 

「千代田!」

 

 

 

 

千代田「ッ!は、はい!?」

 

 

提督「…おい、大丈夫か?

まさか体調不良とかじゃあないだろうな」

 

 

千代田「…ごめんなさい、少しだけ呆けちゃってた。体調を崩してる訳じゃないから」

 

 

提督「…そうか。それじゃ、ぼーっとするのは仕事を終えてからにしてくれ」

 

 

千代田「…はい。ごめんなさい、提督」

 

 

提督「いやまあ気にしてないが…

どうしたんだ、少し変だぞ?」

 

 

千代田「ううん、本当に大丈夫。

…心配してくれてありがとう」

 

 

提督「なら良いんだが」

 

 

 

 

失態だ。まさか見た夢にうつつを抜かして仕事に手がつかなくなる、なんて。

 

 

ふと、提督を見る。

 

 

仕事は、出来る。流石にこの短い期間で成り上がっただけある。

 

顔立ちも…まあ、悪くない。

鼻はそこそこ高いし目もぱっちりしてる。

服のセンスは…軍服だから判らないけど…

 

間違いなく変人だ。…まあ、変人じゃなきゃこんなに多くの個性的な娘たちと仲良くなんて出来ないんだろうけど。

 

総合的に、千歳姉ぇがもし結ばれても、提督は千歳姉ぇを幸せにしてくれると思う。

 

 

じゃあ何であの夢を見て、私はあんなにも嫌な気分になったんだろう。

 

 

提督が気に入らないから?

 

いや、そんな事はない。確かに変な人ではあるけど心根も優しく誰かを思いやれるとても良い人だ。悪し様に思うはずは無い。

 

つくづく不思議だ、何故こんなに…

こんなにも、あの夢のことを思うともやもやするのか…

 

 

 

 

 

––– 判っテるクセに

 

 

 

 

 

千代田「–––ッ!!」ガタッ

 

 

提督「…!?どうした!?」

 

 

千代田「…!ううん、何でも…」

 

 

提督「何でも無い訳無いだろう。

…鏡を見ろ。真っ青だぞ」

 

 

千代田「…え?」

 

 

提督「…そろそろ良い時間だ。休憩にしよう。

待ってろ、茶淹れてくる」

 

 

千代田「……」

 

 

 

−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−

 

 

 

 

提督「…うん、だいぶ顔色は良くなって来たみたいだな」

 

 

千代田「…ごめんなさい、迷惑かけて」

 

 

提督「まあ、お前らの体調管理も俺の仕事だからな。…で?」

 

 

千代田「…『で?』って?」

 

 

提督「…何か抱え込んでるんじゃないのか。

トラウマでもフラッシュバックしたか?

それとも…人間関係とかか?」

 

 

千代田「…」

 

 

千代田「…変な声が聞こえるの。

チょっと前から、頭に響くような」

 

 

提督「…!それは…」

 

 

千代田「ただの幻聴なら良いんだけど、どうもその声が私の心の外に出ていない部分を代弁してるみたいな…そんな気がして…」

 

 

千代田「…提督。私、おかしいのかな?」

 

 

提督「……それは…」

 

 

千代田「……」

 

 

提督「……」

 

 

 

提督「…わからん」

 

 

千代田「えぇー…」

 

 

提督「イヤ、そりゃあ俺にだって分からん事はある…ていうか分からない事ばかりだよ、俺なんて。特にお前らの事はな」

 

 

千代田「…じゃあ何で聞いたのよ?

話すだけ、損だったじゃない」

 

 

提督「いやあ、損じゃないさ。

…ほら、顔色が良くなった」

 

 

千代田「…え?」

 

 

提督「…確かに俺はお前らの事分からないけどさ、これでも分かろうとしてるんだ。その為に話をしてるんだからな」

 

提督「それに、悩みってのは話すだけでも気が楽になったりするもんだ。こういう民間療法的なのは結構、馬鹿にできないぞ?」

 

 

千代田「…なんて言うか。とっても行き当たりバッタリで、軍人の発言とは思えないわ」

 

 

提督「そうだな。俺にできる事は案外少ないし、歴戦のお前らには頼りないかもしれないな。…でも、君の助けになる事は出来る」

 

 

千代田「…そういう台詞は、千歳姉ぇに言ってください。こっちも貴方についての愚痴を聞くのも大変なんですから」

 

 

提督「はいはい、そうする事にするよ。

まったく、手厳しいこって」

 

 

 

千代田「…でも、ありがとう」

 

 

提督「…応」

 

 

 

千代田「…私、提督の事応援するわ」

 

 

 

提督「!そうか」

 

 

 

千代田「うん。特に『私達を理解する』って所…千歳姉ぇの為にも、ちゃんとしてよ?」

 

 

提督「ああ、これからも頑張ってくさ。

…そうだな。お前にさえ『千歳にお似合い』と思わせられるくらい立派になってやるよ」

 

 

 

千代田(……)

 

 

 

 

 

…うん。多分、判ってる。

私が、あの見た夢の何を疎ましく思っているのか。誰を妬ましく思っているのか。

 

でも、だからこそ今はこれで良い。

 

今のこのぬるま湯の関係が私には丁度良い。

 

 

 

 

 

––– 今ハ、ネ。

 

 

 

 

 

千代田(……)

 

 

千代田(…黙ってて)

 

 

 

 

提督「…ジョ、ジョークだからな?だからその…そんな黙りこくられたら怖いんだが…千代田?」

 

 

 

千代田「…!」

 

 

千代田「…ごめんなさい。

うん、楽しみにしてるわ」ニコッ

 

 

 

 

−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−

 

 

 

 

提督「ただいまっと…

しかしあんまりだったなぁ、期待ハズレだ」

 

 

明石「……」

 

 

提督「幻聴の症状が大きかったみたいだしなぁ…夢なんて構ってる暇なんて無かったんだろうか?うーん」

 

 

明石(…あの、青白い肌とノイズが掛かりかけてる声。それに自分の抑圧している本音の発露…)

 

 

提督「…おーい、何とか言えよ。どうしたんだ?」

 

 

明石「!い、いえ。その…知っているものに似ていたというか…」

 

 

明石(…感情や嫉妬や羨望を押し込め、そして押し込めたそれらが限界を超えると艦娘は深海の如く暗い心の闇に囚われる…)

 

 

明石(そしてそれを、その闇に心が囚われた姿を我々は深海棲艦と呼ぶ…なんて、はるか過去に否定された俗説がある、けど…まさか…)

 

 

明石「…いや、まさかね」

 

 

提督「?」

 

 

 

 

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