その王国で今まさに『婚約破棄』なるものが行われようとしていた!!!!
とある王国、アマゾンを彷彿させる密林豊かなその国にある宮殿にて、今まさに一つの婚約破棄が行われようとしていた。
「──ウサコ、此度の婚約を破棄してもらおうか?」
筋骨隆々、身に付けている衣服は胸と腰を覆う布のみ、覇気を纏わせる一見、偉丈夫に見えるその人物は眼下に見える己よりも体格が劣る──それでも平均の成人男性を上回る──その人物に向けて厳かにそう言い放った。
「
ウサコと呼ばれた人物は婚約破棄をほとんど命令に近い形で己に押し付けてこようとする人物の名を叫ぶ。
「断る!!!!」
ウサコは力強く拒絶。握り締めるその拳からは血が数滴、床に滴り落ちる。
「ならば肉体言語をもって語るのみ!」
そう口にするや否や、鬼帝は覇気を纏い片足で高く跳躍、その驚異的な跳躍力でもって頭頂部から石造りの天井をぶち破り、そのまま宮殿の屋上へと躍り出る。遅れてウサコもまた拳を頭上へ勢いよく高く掲げ、振り上げたその勢いで上昇、鬼帝と同じく天井を拳で破壊し、鬼帝が待つ屋上へとたどり着く。
屋上にて向かい合う二人、誰からともなく風に揺れる柳を思わせるゆったりとした動きで残像を残しつつ次々に構えを披露する。やがてそれが終わると同時に二人はほぼ同時に空高く舞い上がり、次に相手に向かって片足を前に突き出した鋭い飛び蹴りを放つ。
空中でXの字を描くように交差、その後、場所を入れ替わるような形で二人は背中を向けた格好で片膝をついて着地。やおら立ち上がると──
「……むぅ」
立ち上がった鬼帝の右肩から突然の出血。しかしウサコが負った傷は鬼帝以上だった。
「ぐはぁつ!!!?」
口から血を吐き、刃物で切り刻まれたかのような傷痕が身体中を走り、さらに骨が骨折する鈍い音が聞こえてきた。
堪らず倒れかかるウサコだが不屈の闘志で耐えてみせた。
「見事だ。しかし、ここまでだ」
一気に距離を縮めたかと思えば間髪を容れずにウサコの顎に下から拳を叩き込み、そのまま思いっきり振り上げる鬼帝。その一撃でウサコは空高く吹き飛び、やがて勢いを失って失速すると今度は頭を下にして落下、後ろを振り向かぬ鬼帝の背後でまともに受け身を取れぬままウサコは轟音とともに頭から屋上に激突、もうもうと土煙が舞う。
「……
““──ここに……””
覇王、鬼帝の呼ぶ声に何処からともなく二つの影が片膝を地につけた格好で現れて同時に答える。
「アマゾネスの掟より、そこで伸びている敗北者を追放する。森の外へ捨ててこい」
““──はっ……””
鬼帝の指示を受けて動く鬼々、羅々。重傷を負い身動きの取れないウサコに抵抗する術はなかった。
それから3年後、追放されたウサコが森に帰ってきた。みすぼらしいマントで体をくるむウサコ、見方によっては浮浪者の類いに見えよう。しかし、その者の視線だけは鷹を彷彿させるような強さを感じる。ウサコの周りにいる人物──巨大な斧を肩に担いだ口元を立派な髭で覆っている女ドワーフ、トゲ付きのメイスに五角形の盾を持つほぼトカゲの女リザードマン、丸盾に刃渡りの広い剣を手に持つほぼ狼の女ウェアウルフ──もまた彼女に匹敵するほどの強者感を漂わせる。
「──ほう、凄まじい覇気だ。強くなったのぅ、ウサコよ?」
玉座に座る鬼帝は己に会いに来たウサコを一瞥するとそう感想を漏らした。
「友との出会いが俺を強くさせ、導いてくれた。その点だけはキサマに感謝している」
マントを翻し体をさらけ出すウサコ。その身体中には無数の傷跡が刻まれていた。
「冥府魔導に落ちたキサマを叩きのめすために這い上がってきた」
「冥府魔導など元より覚悟の上。力で推すのが我が覇道と心得よ」
ウサコはどこか哀れみとも悲しみとも怒りとも言い難い表情で鬼帝を見つめ、対して鬼帝はさも面白そうに笑みを浮かべる。
「キサマの婚約者はキサマへの愛に殉じるために茨の棘で己を刺し眠りについた。あと一歩遅ければ死んでいたとこだった。キサマにはもったいない男の娘だ」
「ああ、全くだ。そしてキサマにくれてやるつもりは毛頭ない」
玉座から立ち上がる鬼帝、不思議な力で宙に浮かんだかと思えば急に急上昇、天井を突き破り屋上へと躍り出る。
「とぉぅっあっ!!」
遅れてウサコも地を蹴って飛び上がり鬼帝が待つ屋上へと移動。ウサコとともにやって来た友が跡を追うとするが鬼帝の兵隊たちが行く手を遮る。
“──部外者が立ち入るのは無粋というもの、大人しく待つがよい”
“──だが、ここで待つのも手持ちぶさたになるのも事実。ここは一つ手合わせ願おう?”
玉座の影から現れた鬼々と羅々。そう提案する二人にウサコの友たちは無言で頷き合い、得物を構え、間もなくして武器と武器がぶつかり合う金属音が響く。
玉座の間にて激闘が行われている頃、屋上でも死闘が行われていた。拳と拳がかち合い、それに伴い轟音と衝撃波が生み出されて、そのたびに屋上の床が捲り上がり吹き飛ぶ。
「去らばだ
「敬いたければ尊敬されるような人間になれ!
幾度となく交わされる拳と会話ののち、両者は距離を置いて力を蓄える。腰をやや落とし、床につけた両足は力強く踏みしめられることで床に亀裂が入る、両腕は腰だめに構え、炎のような揺らめきが体から発せられて蜃気楼のように空間を歪ませる。
「「──っっっ!!!!」」
声にならない雄叫びとともに右拳を前に突き出して突撃、双方の拳が双方の頬に食い込み、徐々にめり込み、それで決着がつかないと分かると一度拳を後ろに引き、そこから両腕による拳の乱打の応酬が始まった。握った拳、手のひらの底の部分、人差し指と中指の間接部分、あらゆる形の打撃の応酬、そのあまりの速さに、端から見れば千の手を持つ千手観音の殴り合いに見えてしまう。
終わりの見えない拳の打ち合いにもやがて終わりが来た。
「強くなったなあ、ウサコよ」
「姉者ならば他にも方法があっただろうに……」
「……それはキサマの買いかぶりよ。キサマが思うたよりも我は弱かった。それだけの話だ」
激闘を制したのはウサコだった。腹にウサコの拳をめり込ませたままそう語る鬼帝。だがその表情は憑き物が落ちたかのように心なしか実に晴れやかだった。
その後、鬼帝は敗北。森から追放され、ウサコの婚約者はウサコが連れてきたリザードマン、彼女が作った秘薬で目覚め、王国は三女がおさめることになり、ウサコはその護衛を勤めることになった。
当初、鬼帝を追い出したウサコを女王に、という話があったが、当の本人が……
「アマゾネスの神が、何よりも私がそれを赦さぬ」
……と頑なに決して首を縦に振ろうとせず、やむを得ず三女が継ぐことになった。
(──今でも思う、はたしてこれでよかったのか……)
何処か遠くを見つめるウサコ。その視線の先は鬼帝が出ていった方角と同じであった。
(──あるいはこの国を出るために……)
遥か後方には巨大な森の入口が、前方には見渡す限り荒れた荒野が広がる。その荒野の中を一人の人物が歩いていた。鬼帝である。その人物の歩が突然、止まる。
「ぬぅ、鬼々と羅々か?」
鬼帝の行く手には二つの影が片膝をつけて待ち構えていた。
“──我々は女王ではなく覇王、鬼帝に忠誠を誓った身……”
“──是非とも我らを貴女のお供に……”
そう言って頭を下げる二人に鬼帝は……
「敗軍の将でよければ、いくらでもついてくるがよい」
許可を得た二人は鬼帝に“感謝いたします”感謝の言葉を述べると鬼帝の後を影のようについていった。
その後、どこか遠い異国の地で覇王を名乗る者が国を起こし、戦乱の世を駆け巡ったという逸話が後々のアマゾネスの国の人々の耳に入ることとなり、人々は揃って「まさか」と思いつつも、あの人物ならやりかねない、と口にすることとなる。
ざわ…( ´・ω・)怒りの にゃもし。ざわ…
※「覇王、鬼帝」どこぞの二次創作にそんなのがいたので…
※「鬼々、羅々」同上…
※「ウサコ」口が × のあのウサギ。
※ウサコの愉快な仲間たち、名無しのオリキャラ。
勇者
「魔神が『婚約破棄』なるもの書くとどうなる?
魔神
「こうなる。
なーにが
ステータスだ! 魔法だ!
チートだ! 転生特典だ!
しゃらくせぇ!
そんなもん聞き飽きたんじゃあ! ボケがあ!
……ただし、面白ければ赦す。
勇者
「…………………………………………。