ホラー……が、好き、なので……ゾンビを……愛でたいと……思います   作:寿限夢

10 / 40
 ……速ければ二日前の午前0時に出せるって言ってた嘘つきは誰だ~い?

 ……私だよ!!(土下座!)

 嘘つきでごめんなさい!(;´д⊂)
 とりあえず切りの良いところで出来ましたので、こちらをどうぞ!

 ※草蟹さんが画像一覧に紫乃ちゃんのファンアートを送ってくださいました!
  とても可愛らしいので、気になる方は是非!
  
 ※誤字脱字報告、ありがとうございます!


ホラー少女と生産職

 町に戻るなり紫乃は、すぐさま町の宿屋に向かい、部屋を一室借りた。

 このゲーム内では睡眠をとる事も可能だが、無論、そのためではない。

 

「~~♪」

 

 部屋に入ってすぐ紫乃は早速、手に入れたばかりの装備を着て、鏡の前に立ってみた。

 鏡の前でクルッとターン。

 小さくポーズして、はにかんでみる。

 

「えへへ……かわ、いい……♪」

 

 新しい装備に、紫乃は大層ご満悦だ。

 

「……ちょっと……裾が、短い、けど……」

 

 そう言って紫乃は、【弔詩ノ礼装】の裾をちょっと下に引っ張る。

 たしかに、上に着た【冥者の法衣】が膝まであるフード付きのロング丈なのに対し、【弔詩ノ礼装】のスカート丈は膝上15センチ以上と、かなり短い。しゃがんだら見えそうだ。

 ちなみに、装備には下着も含まれおり、そちらもかなり際どいデザインとなっている。

 

 具体的に言うと、黒の紐だ。

 

「あ……忘れてた……確認……」

 

 新装備に夢中になっていた紫乃は、うっかり忘れていた装備の詳細を確認する。

 

 

 

 【破壊成長】

 

 この装備は壊れれば壊れるだけより強力になって元の形状に戻る。修復は瞬時に行われるため破損時の数値上の影響は無い。

 

 

「わぁ……ゾンビみたい……♥️」

 

 "壊れても平気"という部分に、ゾンビとの共通点を見出だし、紫乃のテンションがますます上がる。

 鏡の前で、もう一度クルッとターンする。

 

「……あと、は……」

 

 紫乃の視線が、自身の足元に注がれる。

 【冥者の法衣】【弔詩ノ礼装】がそれぞれ【頭】と【体】の装備なのに対し、靴だけは初期装備のままであった。

 上二つが豪華なのに対し、足元だけが浮いている。 

 

「……どうせなら……揃えた方、が……いい、よね……?」

 

 趣味のせいで忘れがちだが、紫乃だって年頃の女の子(JS)である。当然、オシャレにだって気を使うのだ。

 

「買いに……行こ……♪」

 

 着ていた装備を一旦着替え、紫乃は鼻歌交じりに町に出た。

 目指すは新しい足装備。それも新しい装備に合う、オシャレな物だ。

 

 なお、杖だけは【嘆きの妖杖】のままだったため、

 

「ひぇっ!?」

 

「ひっ!?」

 

「生首ッ!?」

 

 リアルな生首の意匠を見て、悲鳴を上げる者が後を絶たなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「んぅ……無い……」  

 

 宿を出ておよそ三十分。

 紫乃は町の通りをトテトテと歩きながら、頭を悩ませていた。

 というのも、町の防具屋や服屋などに、中々これといった物がなかったからである。

 

「……どうしよう、かな……?」

 

 【嘆きの妖杖】の頬を、紫乃は指でプニプニと押しながら考え込む。

 店にないのなら、情報掲示板などを探して、何かしらのクエストで報酬として狙うか。

 あるいはダンジョン。または、モンスターのレアドロップなどを狙って、ひたすら周回するか。

 いずれにせよ、ただ町で買うより大変なうえ、必ずしも気に入ったデザインが出るとは限らない。

 

「んぅ……ん……?」

 

 紫乃がそうやって悩みながら歩いていると、いつしか、町の知らない通りにまで来ていた。

 ここはどこだろうと、辺りを見回す。

 すると一軒だけ、看板が出ている店を見つけた。

 

「“イズ工房”……?」

 

 店の前に出ている看板を見れば、店の名前らしき表記と《いらっしゃいませ》の文字。

 店の壁には、剣と盾の画。どうやら、武器屋のようである。

 

「お邪魔……しま~す……」

 

 物は試しとばかりに、紫乃は、店の中へと入ってみた。

 

「は~い、いらっしゃ……ッ!?」

 

 店の中に入ると、水色の髪をした女性ひとり、カウンター越しに作業していた。

 女性が気付き、こちらを振り向く。が、紫乃の【嘆きの妖杖】を見て一瞬、その場で固まった。

 

「……あの……?」

「え? ……ああ、ごめんなさい! ちょっとびっくりしちゃって!」

 

 小首をかしげる紫乃に向かい、女性が両手を振って答える。

 と言っても一瞬、店に女の生首が入ってきたと思ったので、女性は内心、心臓がバクバクしていた。

 

「ごほん……それじゃあ、あらためまして、いらっしゃい。私はイズ。見ての通りの生産職で、主に鍛冶を専門としているわ」

「あ、えっと……シノ、って言います……」

「シノちゃんね。それで、初めましてだけど、今日は何をお探しかしら?」

「えっと……実は……」

 

 ゲーム内での初めての交流らしい交流に、紫乃は緊張しながらも、自身の目的を伝えた。

 

「ふむふむ、成る程ね。装備に合った靴ね……」

「はい……なかなか……いいのが、なくて……」

「ん~……そうね。ちょっとその装備、見せてもらえる?」

 

 イズの要求に応え、紫乃は初期装備から新装備に着替えてみせる。濃紫のローブがはためき、黒のドレスのスカートが揺れる。

 

「あら! 素敵な装備ね!」

「えへへ……♪」

「とっても可愛らしいわ! うん、そうね、これなら……」

 

 はにかむ紫乃の周りを、イズがうんうんと頷きながらぐるぐると回る。

 ぐるぐる回る。

 やがて、考えがまとまったらしいイズが、本題に入った。

 

「ねぇシノちゃん。もし良ければだけど、ウチでオーダーメイドしない?」

「オーダー、メイド……?」

「そう! ちょっと値は張るかもだけど……シノちゃんの装備に合う靴を、一からデザインするの」

 

 イズの提案に、紫乃は上を向いて考える。

 たしかにあるかどうか分からない物を探すより、いっそ作ってしまった方が手っ取り早い。

 

「じゃあ……お願い、します……」

「決まりね! それじゃあ早速であれなんだけど……シノちゃん。予算は今どれくらい持ってる? 」

 

 おそるおそる聞くイズの質問に、紫乃は自身の所持金を確認する。

 

「えっと……今……195万持ってます……」

「ひゃく……け、結構貯めてるのね……」

「あんまり……使う機会なかった、から……」

 

 予想より遙かに高い額に、イズが、少し上擦った声を上げる。

 

 ちなみに、紫乃がこんなにリッチなのは、無論ゾンビによる人海戦術による賜物。

 わずか三日弱とはいえ、毎回大量のゾンビでローラー作戦よろしく敵を殲滅し続ければ、否が応でも貯まるというものである。

 

 そして、貯まっているのはお金だけではない。

 

「……ちなみに、モンスターの素材とかもある?」

「あ、はい……結構……あります……えっと……これと……これと……」

 

 紫乃はインベントリにあるアイテムを、ひとつひとつ丁寧にカウンターの上に出す。

 ついでに、数を教えながら。

 並べられるアイテムとその数を聞いて、次第にイズの顔色が、段々と青ざめていった。

 

「……で……全部……です……」

「……」

「……? イズ、さん……?」

 

「……きょ、【兇人の骨】に【腐人の臓】……【悪夢の幽衣】に……そ、それに【弔霊の心】ですって……!?」

 

 イズの全身が震え、額から汗がにじみ出る。

 さも有りなん。

 それというのも紫乃が取り出したアイテムのほとんどが、滅多に出ることのない、レアドロップばかりだったからだ。

 

「【兇人の骨】なんか、スケルトン百体倒して出るか出ないかなのに……!」

「……?」

 

 カウンターに突っ伏さんばかりに落ち込むイズに対し、紫乃は小首をかしげるばかりだ。

 というのも紫乃からしてみれば、これらの素材全て、ゾンビと散歩していて、たまたま拾っただけのようなものだからである。

 

「……」

「えっと……イズ、さ……?」

「シノちゃんッ!!」

「は、はい……!?」

 

 紫乃が声をかけようとしたら、突っ伏していたイズがバッと跳ね起きた。

 

「これらの素材、いくつか融通してもらえる!?」

「あ、えっと……はい……大丈夫です……いっぱいあります、から……」

「これだけあれば今作れる中で最高の物が作れるわ! 待っててね、今デザイン書き起こすから!!」

 

 それだけ言ってイズは、すぐ様カウンターの奥の部屋へ向かい、走り去っていった。

 すさまじい速度である。

 例えるなら、風のようである。

 

「……生産職……の、人って……速いんだ……」

 

 思わずそんな勘違いを起こす、紫乃なのであった。

 

 




 ……大量のレア素材見たら、イズさんなら多分こうなると思うんじゃよ。
 キャラ崩壊してない?
 一応タグ付けといた方が良いかな……?


 次、速ければ二、三日ほどで投稿します。
 皆さまいつも感想、ありがとうございます!

サービス回……いる?

  • いりゅううう!!(ホラー)
  • いりゅううう!!(セクシー&ギャグ)
  • 要らぬ!!

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。