ホラー……が、好き、なので……ゾンビを……愛でたいと……思います 作:寿限夢
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それと、アンケートありがとうございます!
※誤字報告ありがとうございます!
イズと出会ったその翌日。
紫乃は噴水のベンチに座り、ひとり考えごとをしていた。
「どれが……いい……かな……?」
見ているのは、ゲームの情報掲示板だ。
昨日、装備が出来るには三日かかると言われ、暇をもて余した紫乃に対し、イズが、一週間後に開かれるイベントに参加してはと提案してきたのだ。
イベント内容はポイント制バトルロワイヤル。参加者全員が、他のプレイヤーを倒した数と死亡回数で争い合うという物。
新装備のお披露目と腕試しに丁度いいと言われ、せっかく参加するなら、上位入賞を目指そうと、紫乃は自身とゾンビをさらに強化すべく、使えそうなスキルを調べていたのだ。
「【魔法の心得】は……買ったし……」
なお、スキルショップで買えるスキルなどは、既に購入していた。
【魔法の心得Ⅰ】の効果は、魔法の攻撃力などを1パーセントアップしてくれるというもの。
使い続けてレベルが上がると、最大10パーセントまでアップしてくれるようになる。
「MPを、増やすのとか……は、いるし……」
当然、MPを増やしたり、消費を抑えるものなどにも目を付けている。
それらも主にクエストなどで取得できるスキルであった。
幸い、それほど難しい内容ではなかったので、捕らぬ狸の皮算用ではないが、取得する目処は既に立っている。
後は、
「ゾンビを……強く……できるの……ない、かな……?」
肝心のゾンビを強くできるスキルを探すだけである。
だが、これがなかなか難しい。
あるにはあるのだが、単純に取得条件が難しいのもあれば、レベルが足りないものもある。
「んぅ~……」
小さく声を上げながら、掲示板とにらめっこする。
さて、どうしたものかと考えていた時、紫乃の目に、あるスキルが映った。
「……あ……これ……」
目についたスキルの詳細を読み、考えこむ。
やがて何かに納得した紫乃は、見つけたスキルの詳細をメモし、南へ向かい歩き出した。
「ようこそ牧場へ!!」
町の南の端、紫乃は、町の牧場へと来ていた。
周囲は穏やかで牧歌的な風景が広がっている。
青い空、白い雲、爽やかな風が吹き抜ける草原。
「フンッ!」
……そして、黒光りする固く盛り上がった筋肉。
出迎えてくれた牧場主――地肌にオーバーオールを着た色黒の男性は、筋肉ムキムキだった。
「私はここの牧場主! 今日は私の牧場へ来てくれて、ありがとう!」
男性は言いながら横向きになり、胸を強調したポーズ――サイドチェストの姿勢になる。
「わざわざ来てくれたお客さんには、是非とも私の牧場の特性牛乳をプレゼントしたい!……のだが、生憎と今、少々たて込んでいてね……」
胸を強調したポーズから、頭の後ろで手を組み、腹筋や太腿を強調――アブドミナル・アンド・サイだ。
「実は、ウチの従業員が風邪で寝込んでしまってね。人手が足りないんだ。……誰か、手伝ってくれる人がいれば……」
「あ……それなら……私が……手伝い、ます……」
男性が上腕二頭筋を強調――フロント・ダブル・バイ・セップスの姿勢になったところで、紫乃が、待っていましたとばかりに口を開く。
その言葉に、男性は大胸筋をピクピク動かしながら、
「えぇ本当かい!? それじゃあ、お願いしちゃおっかなッ!」
男性がそう言うと同時に、紫乃の目の前に青いモニターが現れた。
表示には、Yes,Noの文字。
紫乃は迷わずYesを押し、クエストを受ける。
「それじゃあ、付いてきてくれ!」
男性が背中の筋肉を強調――バック・ダブル・バイ・セップスのポーズをしながら歩き出した。
「君にやって貰いたいのはコレだ!」
紫乃が案内されたのは、牧場の牛舎の前。
男性が白い歯を光らせながら叩くのは、中身がたっぷりと入った、一抱えほどもある牛乳缶、それの山だ。
「コレを向こうの倉庫にまで運んで欲しい! 全部で100個あるが、よろしく頼むよ!」
そう言って男性が指差すのは、牛舎からおよそ100メートルほど離れた場所に位置する小さな倉庫。
40リットルは優に入っているだろう牛乳缶を、ひとりで100個運べという内容に、紫乃はブラックな匂いを感じた。
「それじゃあ、私は別の仕事があるから!」
男性はそう言って背中の広さを強調--バック・ラット・スプレッドのポーズのまま、器用に牛舎の中へ入っていった。
あとには、紫乃と牛乳缶の山だけが残される。
「ん……っ!」
試しに紫乃が、牛乳缶のひとつに触れ、持ち上げようとしてみる。
が、当然動かない。
当たり前だ。
というのも実はこの牛乳缶、STR値が最低30はないと動かない仕様なのである。
紫乃のSTR値は0。当然動かせない。
もっとも、ゲームのシステム関係なくとも、リアルでも非力な紫乃には、土台無理な話なのだが。
「やっぱり……無理……」
紫乃がポツリと呟き、牛乳缶から手を離す。
さて、普通に考えれば、紫乃は既に詰んでいる。
クエストクリアに必要な最低条件であるSTR30を、まったくクリアしていないのだから。
しかし、
「【死霊術】……」
紫乃には
「運んで……」
呼び出したゾンビに、紫乃が牛乳缶と倉庫を指差して指示する。
ゾンビは牛乳缶をひょいと持ち上げると、倉庫に向かい歩き出した。
「その間に……」
ゾンビが倉庫に向かっている間にも、紫乃は追加でゾンビを召喚する。
次から次にゾンビに牛乳缶を運ばせ、またそれを繰り返していく。
瞬く間に牛乳缶は減り、遂には0となった。
「やぁ! どうやら終わったみたいだねッ!」
全部の牛乳缶が倉庫に運び込まれると、牛舎から
「おかげで助かったよ! お礼にコレを貰ってくれ!」
男性はそう言いながら、大胸筋の谷間から一本の巻物を取り出してきた。
微妙に生温かい。どこしまってんだ。
「スキル【マッシヴ】を覚えられる! そいつを使って、さらに上を目指してくれ! ナイスバルクッ!」
最後にモストマスキュラーの姿勢で肩や僧帽筋、腕の太さを強調する男性に見送られて、紫乃はゾンビたちと共に牧場を後にした。
『スキル【マッシヴ】を取得しました』
牧場から少し離れた丘の上。
紫乃は貰った巻物を早速開いていた。
巻物は光を放ち、それが治まるのと同時に崩れて消えていく。
【マッシヴ】
MPを消費して発動。
対象のSTR・AGI・ VITを+30する代わりに、HP上限を半減させる。
発動と同時に対象の肉体が変化。
「よし……」
スキルの内容を見て、紫乃が小さく頷く。
ちゃんと狙い通りのスキル内容だ。
早速試すべく、紫乃はゾンビの一体にスキルを使ってみた。
「【マッシヴ】……」
指定されたゾンビから、赤いオーラが迸る。
……ここで唐突だが、このスキルの説明をしよう。
実はこのスキル、情報掲示板などでは思いっ切りネタスキルとして浸透している。
HP上限が半減するが、ステータスが大幅に上昇するので、使いようによっては使えるような気もするが、そうではない。
本当のデメリットは、スキル発動による
「Guu……!」
全身から赤いオーラが迸るのと同時に、ゾンビの口から、低いうめき声が響いていく。
全身が小刻みに揺れ、わなわなと震え出した。
すると突然、ゾンビの全身の筋肉が、爆発するように膨張した。
「Gaaaaaaaa!」
ゾンビの口から、獣のような声が上がった。
膨張したが筋肉が、みちみちと音を立てて巨大化していく。
腕や肩が盛り上がり、女性のウェストほどに太くなり。
胸や背中は、まるで高反発性のゴムをパンパンに詰めたようになった。
それらを支える脚は、大木の幹もかくやという太さに肥大化し。
腹は鋼線を束ねたように引き締まり、首は頭より太くなった。
「Ga,a……」
やがて変化を終えたゾンビが、ゆっくりと立ち上がった。
全身の肉が赤く湯気を発している。
筋肉に合わせて骨格も巨大化したのか、180ほどであった身長が、今は優に二メートルを超えている。
そう、コレこそが、このスキルの最大の特徴であり、最大の問題点でもある。
使用すると体中の筋肉が巨大化し、身長も伸びてしまうのだ。
ステータスだけでなく、リーチやサイズまで急激に変化するため、攻撃や回避の感覚が狂ってしまい、返ってやりづらくなる。
近接戦闘を主とする者は特にだ。
ならば、遠距離戦闘を主とする者ならどうかと言うと、コレも否である。
遠距離系は遠距離系故、攻撃が当たらないよう立ち回るためあまりVITが必要ない。攻撃に必要なステータスも、INTやDEXだったりする。
唯一必要なAGIも、わざわざHPの上限を半分にし、ついでに的として大きくなってまで必要かと言われれば、答えは否である。
近接でも遠距離でも扱いづらく、その上見た目がアレ。
故に【マッシヴ】は比較的取りやすいスキルにも関わらず、完全にネタスキルとして定着していた。
……そう、
「わぁ……♡」
紫乃以外にとっては。
「すっごく……おっきい……♡」
巨大化したゾンビの体を、紫乃が、ゆっくりと指先で這うように擦っていく。
肥大化した太ももから足の付け根、腰へと移動し、やがて発達した、腹筋下部へと。
「ふふっ……太くて……固ぁい……♡」
太ももの付け根を指で擦りながら、紫乃がうっとりとした声をあげる。なお、身長差があるため、紫乃の顔は、ゾンビの股関節辺りにある。
紫乃は上目遣いに、ゾンビの顔を見た。
「しゃがんで……」
紫乃の指示に従い、ゾンビがしゃがみこむ。
「ん……ッ」
しゃがみこんだ頭を、紫乃がいつものように跨ぎ、肩車の状態になる。
いつもより高い位置に頭があるため、少し声が出た。
肩車をしたまま、ゾンビが立ち上がる。
「あはっ……いつもより……おっきい……♡」
いつもより高くなった視界に、紫乃が、喜びの声をあげる。
大きなゾンビに、紫乃は大満足だ。
「他の……みんなも……」
ついでとばかりに紫乃は、他のゾンビたちにも【マッシブ】をかけていく。
ゾンビたちが次々と声をあげ、巨大していく。
数十秒後。そこには、全身から赤いオーラを纏った、巨大ゾンビの群れが誕生していた。
「ふふっ……みんな……おっきい……♡」
紫乃は恍惚とした笑みを浮かべる。
「行こ……」
「「「GuAAA!!!」」」
紫乃の指示を出すとゾンビたちは、くぐもった雄叫びを上げながら、一斉に走り出す。
AGI30の速さはそれなりにある。少なくとも、それまでのAGI0の速度とは雲泥の差だ。
緑の丘の上を、全身が赤く肥大化した巨大なゾンビたちが走っていく。
「「「GuOO!!」」」
雄叫びを上げながら進むゾンビたちの前方に、ゴブリンの群れを見つけた。
それなりの数がいる。
ゾンビたちはその群れ目掛けて進んでいく。
そして、
「「「GuAAA!!!」」」
太くなったその腕を振り抜き、一撃でゴブリンの群れを殴り潰しながら、そのまま駆けていった。
「あはっ……みんな……すっごい……♡」
「「「GuO!」」」
紫乃のお褒めの言葉に、ゾンビたちが歓喜の声をあげる。
「あはっ……ふふふっ……♪」
ゾンビたちの声に、紫乃も微笑みを返した。
紫乃とゾンビたちは進む。
南の丘のモンスターを殲滅し続けながら、何度も何度も。
途中、ダメージを負いすぎたゾンビが消えていったが、
「【死霊術】……【マッシブ】……」
紫乃が【死霊術】で追加し、【マッシブ】で強化し続けた。
そう、これこそが、紫乃にだけ出来る【マッシブ】の活用法だ。
プレイヤーではなくNPCであるゾンビを強化するこの方法なら、感覚の変化など関係ない。
例え強化したゾンビが倒されたとしても、またすぐ補充し、戦線に復帰させることが出来る。
紫乃のMPが続く限り出来る運用法。
使えないネタスキルとされた
他ならぬ
「ふふっ……ふふふふっ……♪」
緑萌ゆる丘に、少女の笑い声が木霊した。
なお、マッシブゾンビの姿は、バ●オのネメシスとタイラントを足したような姿を想像しております。
新スキル作るの難しすぐる……
あと、なんでこんな文章安定しないの?
安定した文章を、音速で仕上げる能力が欲しい……
次回もまた、出来る限り早く投稿します!
サービス回……いる?
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いりゅううう!!(ホラー)
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いりゅううう!!(セクシー&ギャグ)
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要らぬ!!