ホラー……が、好き、なので……ゾンビを……愛でたいと……思います   作:寿限夢

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 何度も何度も書き直して、ようやく書けました!
 アンジャッシュネタ、マジムズい!
 ホラーとコメディがめっちゃ喧嘩しまくる!
 お前ら仲良くしろ!
 そんなこんなで作中最長!
 かなりアレな仕上がりかもですが、どうぞお納めください! それでは、どうぞ!

 ※誤字脱字報告ありがとうございます!


ホラー少女と怖がり少女

 小さな宿屋の、二階の一室。

 小さな机がひとつとベッドが二つある部屋で、白峯理沙ことサリーは膝を抱え、小さく蹲っていた。

 

 

 

「……」

 

 

 

 ――ドンドンドンッ!

 

 

 

「……ッ!?」

 

 

 

 ドンドンドンッ!

 

 

 

『――サリー! 私だよ? ここを開けて!!』

 

 

 

 ドアを叩く音と共に、親友の本条楓――メイプルの声が聞こえてくる。

 サリーはその声を、膝を抱えたまま聞いている。

 

 

 

 ドンドンドンッ!

 

 

 

『サリー!?』

 

 

 ドンドンドンッ! ドンドンドンッ!

 

 

「……~~ッ!」

 

 

 ドアを叩く音と共に聞こえる親友の声に、サリーはより一層強く膝を抱え、小さく縮こまる。

 

 

 

 

 

 なぜ、こんなことになってしまったのか。

 

 

 

 

 話は、数時間前に遡る。

 

 

 

 

 

 

 

 

                      

 

 

「メンテとアップデート?」

「うん、それで【悪食】に回数制限が付いちゃって……」

 

 授業合間の昼休み。

 教室で机を並べ、ふたりでお弁当を食べていた時の話だ。

 

「えっ~とどれどれ……おわ、もうこんなに……」

 

 楓の話を聞き、理沙が、スマホで公式サイトの最新情報を見て声をあげる。

 メンテナンス内容は、一部スキルの効果や取得条件の修正に始まり、モンスターのAI強化など。

 それと同じくして、新武器や新スキルの追加など、その他アップデート内容は、多岐に渡っていた。

 

「ついこの間イベントだったのに、よくやるなぁ……」

「うん。それで、【悪食】が使えるのが一日十回までになっちゃったの。代わりに、吸収出来るMP量は増えたんだけど……」

「楓の場合、盾に付与してるから勝手に発動して、すぐ使い切っちゃうと。でただの大盾になるって訳ね」

「ただの大盾ッ!」

 

 理沙の指摘に、楓が悲鳴を上げながらしょぼくれる。

 その顔はまるで、某有名なしおしおのピ●チュウのよう。

 

「まぁ、その辺は仕方ないんじゃない? 何でも吸収してMPに換えられる盾って、強力過ぎるし」

「う~……」

「で、AIの強化は……これも第二第三の楓を生み出さないためだね。みんながみんな【絶対防御】取ったら、ゲームバランス崩壊するし。で、一番の問題は……」

「防御力貫通……」

「まぁ、これも、一重に楓対策の苦肉の策だろうね~」

 

 新たに実装されたスキルには、防御力貫通攻撃スキルなども含まれていた。一種類の武器に三種か五種あり、どれもそれなりに強力で、これにより楓ことメイプルの防御力を無力化することが可能になっていた。

 

「うぅ~……」

「まぁ、目立ち過ぎればよくあることだって」

「うぅ、ごめんね。せっかく回避盾になって、無敵パーティ組むって話だったのに……」

 

 楓の肩を叩く理沙に、楓が謝る。というのも理沙が、楓のプレイスタイルを聞き、"自分は回避盾になる"と決めたのが今朝のHR前で、ふたりでノーダメージパーティーになると意気込んでいたのに、昼のゲームニュースを何とはなしに見てみたら、このメンテとアプデである。

 出鼻を挫かれるとは、よく言ったものだ。

 

「まぁそれは仕方ないよ。それに、ダメージ受けるようになったって言っても、絶対ノーダメージって訳じゃなくなっただけだし!」

「うぅ、でも……」

「それに、考えようによっては返って無敵感が増して、むしろ良かったかも!」

 

 ――その後も、理沙が落ち込む楓を励まし、なんとかモチベーションを持ち直すことが出来た。

 

 

 

 ……ここまでは良かった。

 

 問題はふたりが家に帰り、食事やお風呂を済ませた後、ゲームの初期設定を終わらせ、いよいよ"New World On-line"の世界に、降り立った時だ。

 

 

 

「おー! 町はこんな風になってるんだー!」

 

 ゲーム内の町並みを見て、理沙が嬉そうに声をあげる。その姿を楓は、少し前の自分を思い出し、懐かしく思いながら微笑んでいた。

 

「楓の……っと、危ない」

「どうしたの?」

 

 突然言い淀んだ理沙に、楓が不思議そうに小首をかしげる。

 

「……ゲームの中で本名を呼ぶのはマナー違反。だから、これからは私のことは"サリー"って呼んで! 本名を逆さまにして"サリー"!」

「うん、わかった! サリーだね!」

「あらためてよろしくね! "メイプル"!」

 

 そう言って互いにプレイヤー名を確かめ合い、あらためて挨拶を交わすふたり。

 美少女ふたりのやり取りを眺めていた一部は、内心で「てぇてぇ……」と手を合わせた。

 

「それじゃあ、この後ちょっと宿屋で……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……あ、メイプル、さん……♪」

 

 

 

 

 

 その時、彼女(・・)が現れた――。

 

 

 

「あ、シノちゃん!」

 

 今後を話し合うために、どこか、落ち着ける場所に移動しようとしていた時、メイプルの後ろから声をかけられた。

 メイプルが振り返る。

 それに釣られてサリーもそちらを見る、見てしまう。

 そして――

 

 

 

 

 

 

 

「……こんにち、は……♪」

 

 

 

 

 

 

 豪ッッ!!

 

 

 

 

 

 一目散に逃げ出し、その場から走り去っていった。

 

「……ふぇ?」

「……?」

 

 

「……」

 

 シュタタタタッ!

 

 あまりに突拍子もない親友の行動に、メイプルの目が点になる。

 そして、近づいてきた紫乃も何がなんだかわからず、小首をかしげていた。

 ふたりがそうしている間にも、サリーは風のような速さで駆け、ふたりから離れていく。

 

 シュタタタタタッ……

 

「……えっ!? ちょっ、サリー!?」

「……どうし、たんですか……?」

「あ、シノちゃん、えっとその、あのね!」

 

 突然の親友の逃走に訳がわからず混乱するメイプル。

 そんなメイプルと今走り去っていった友人らしき少女の後ろ姿を見て、紫乃はなんとなく事情を把握した。

 

「……追い……かけます、か……?」

「う、うん! あ、でもどうしよう、私、足遅いし!?」

 

 もうすでにサリーの背中は、豆粒のように小さい。

 

「……大丈、夫……」

 

 

 

 

 

 

 

(ヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいっ! 何あれどういうこと!?)

 

 一方その頃、全力で逃げ出したサリーは、走りながら混乱していた。

 

(あ、あんなの聞いてないよ!!)

 

 思い出されるのは、長い黒髪を杖に絡ませた女の生首を持った、紫のローブの少女。

 あらかじめ【NewWorldOn-line】については色々と調べていたが、その実、サリーは"シノ"に関しては何も知らなかった。

 というのも、ネットの情報ではシノに関する情報のほとんどが、

 

「これは本当にあった話です……」

「あれは私が、森の暗い道を歩いていた時の……」

 

 という、ほとんど【本当に●った怖い話】的な、恐怖体験を綴った怪談話風に語られていたため、幽霊やゾンビが苦手なサリーは、本能的にそれらの情報を避け、無意識にシャットアウトしていたからだ。

 

(そ、それにあの子……何だかすごくヤバい気がする! 何て言うか、こう、相性というかなんというか!?)

 

 

「サリー! 待ってぇ~!!」

 

 

 半ば本能めいた直感により、限りなく正解に近い解答を導き出していたサリーの耳に、ふと、後ろから聞き慣れた声が聞こえた。

 

 

「サリ~~!!」

 

「ッ!? メイプ――」

 

 

 後ろから聞こえる親友の声に、サリーが、走りながら振り返った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「サリ~~!!」

「GuooOO!!」

 

 

 見れば、後ろから赤黒い巨大なゾンビが、こちら(サリー)に向かい全力で走って来ていた。

 異常なほど発達した赤黒い筋肉に覆われた四肢を振り、耳まで裂けた口からむき出しの歯を光らせながら、ゾンビが、こちらに向かって来ている。

 

 

「……」

 

 

 

GuooOO(サリ~~)!!」

 

 

 

 親友の声は、そのゾンビから聞こえていた。

 

 

 

「……いやぁぁあああっ!!?」

 

 親友の声をした化け物の姿に、サリーは、この世の終わりを見たような悲鳴を上げた。

 町行く人たちの合間を縫いながら、さらに加速していく。

 

 

 

 

「わ……速い……」

「ええ、なんで逃げるの!?」

 

 一方、走るゾンビの背に乗ったシノとメイプルは、悲鳴を上げてさらに加速するサリーに驚愕していた。

 

「サリ~~!」

 

「いやぁあああッ!!」

 

「私だよ、メイプルだよ~~!?」

 

「いやぁぁあああッ!!」

 

 声をかければかけるほど、悲鳴を上げ加速していく親友に、メイプルの頭に?マークが生じる。

 なぜ? どうして?

 原因は明白だが、この時のメイプルは突然の親友の奇行で頭が混乱し、“サリーがホラーが苦手”という単純な理由にまで、思考が追いついていない。

 

『スキル【韋駄天】を取得しました』

 

「わぁぁあんッ!!」

 

 そうこうしているうちに、何やらスキルを獲得したが、今のサリーはそれどころではない。

 自身の速度がさらに加速していることにも気付かないまま、角を曲がった先にあった宿屋に転がり込み、一瞬でお代をカウンターのNPCに払い、二階の部屋へと駆け上がった。

 

「あ……宿屋に……入りました……」

「サリー!!」

 

 少し遅れてメイプルたちも宿屋に入る。

 カウンターでNPCにお金を払ったら、一階の部屋から順に調べていく。

 

「サリー!?」

 

 バンっ!

 

 バンっ!

 

 バンっ!

 

 メイプルの呼びかけに合わせ、ぎりぎり宿屋に入れたゾンビがドアを勢いよく開けていく。

 だが、一階はもぬけの空だった。

 

「いないよ!?」

「……二階、かもしれません……」

 

 未だ動揺するメイプルに、紫乃がぽそりと呟く。

 

「二階だね!」

「……あ、待って……!」

「GuU!」

「わひゃ!」

 

 慌てて二階に行こうとするメイプルの鎧の襟を、ゾンビが掴んで持ち上げる。

 

「わわ!?」

「……いきなり……駆け込んだら……びっくり、しちゃうかも……です……ゆっくり……行きましょう……」

 

 文字通り首根っこ掴まれた状態のメイプルに、紫乃が静かに提案する。

 それに対してメイプルも、

 

「あ、そっか!」

 

 と納得し、紫乃の提案に賛同した。

 

「……では……行きましょう……」

「うん!」

「Guuu……」

 

 ふたりと一匹はゆっくりと、階段を登り始めた。

 

 

 

 

 

 

 

 ギィ……ギィ……ギィ……、

 

「の、登ってきた……」

 

 その頃、サリーは二階の一室に閉じこもり、膝を抱え蹲っていた。

 部屋には小さな机とベッドがふたつ。明かり取りの窓から陽の光が、部屋を照らしている。

 

 ギィ……ギィ……ミシ……、

 

 生物的な本能により強化された聴覚が、本来聞こえるはずもない階段を登る足(小さな)音を正確に察知していく。

 階段を登る音が止み、二階の床を歩く音に変わった。

 

 ミシ……ミシ……

 

 サリーは息を殺し、その音に耳を塞いだ。

 しかし、足音は否応なしに、サリーの鼓膜に響いていく。

 二階の床を鳴らしながら、足音が、近づいてきている。  

 

ミシ……ミシ……

 

 足音が、不意に止まった。

 

 

 

 コン、コン……ガチャ

 

 

 ドアをノックして、開ける音が聞こえてくる。

 

コン、コン……ガチャ、

 

コン、コン……ガチャ、

 

 

(部屋をひとつひとつ、確認してる……!)

 

 

 コン、コン、ガチャ、

 

 コン、コン、ガチャ、

 

 

 徐々に近づいてくる音に、サリーは、全身の血がサァッと引いていくのを感じた。

 なぜ、逃げ場のない宿屋なんかに入ってしまったのか。

 少し前の自分を責めたい衝動に駆られるも、その間にドアを開く音は続き、徐々に近づいてきている。

 

 

――コン、コン。

 

 

 そして、遂にサリーがいる部屋のドアがノックされた。

 サリーは自身の手で口を塞ぎ、息を殺した。

 

 

ガチャガチャ……ガチャガチャ……

 

 ドアノブを回す音が響いていく。

 だが、部屋に入る時に鍵をかけているため、ドアは開かない。

 

ガチャガチャ……ガチャガチャガチャ……

 

「……っ」

 

……ガチャガチャ……ガチャガチャガチャガチャ!

 

「~~っ!?」

 

 

 

 

 

      

 その頃、ドアの向こうのメイプルたちは。

 

「――あれぇ、開かない?」

「……なら、ここかも……」

「そうかも! ねぇサリー! いる~!?」

 

ドンドンドンドンッ!!

ドンドンドンドンッ!!

 

 メイプルがドアを叩きながら、中にいるであろうサリーに呼びかける。

 その頃、サリーは……。

 

 

 

 

 

ドンドンドンドンッ!!

ドンドンドンドンッ!!

 

 

「~~っ!!」

 

 ドアを叩く音に、むちゃくちゃ怯えていた。

 

 

 

ドンドンドンドンッ!!

ドンドンドンドンッ!!

 

 

『……サリー!』

 

「っ! メイプル……!」

 

『サリー! ここを開けて!』

 

ドンドンドンドンッ!!

ドンドンドンドンッ!!

 

「メイプ……!」

 

 親友の呼び声にハッとしたサリーが、ドアの鍵を開けようと近づく。

 しかし、ドアの鍵に手をかけたところで、ふと、ある考えが頭をよぎる。

 

 

 

 

 

 

 

(――この声は、本当にメイプルなの?)

 

 

 

 

『サリー!』

 

ドンドンドンドンッ!!

ドンドンドンドンッ!!

 

「あ、あ……」

 

 思いついた悪い予想は、頭の中で徐々に膨らんでいく。

 もし、先ほどのように、親友の声をした、ゾンビだったら……

 

ドンドンドンドンッ!!

ドンドンドンドンッ!!

 

『サリー!』

 

「もぉっ……やぁ……」

 

 サリーはその場に蹲まり、遂にはそのまま座り込んでしまった。

 

 と、その時――

 

『……わ、ちょっとゾンビさん!?』

「……?」

 

 ドアを叩く音が止み、メイプルの声が止んだ。

 しかし、その数秒後――

 

 ……タッタッ……タタタタタタッドンッ!!

 

「ひッ!?」

 

 突然、ドアに体当たりするような衝撃が走った。

 蹲っていたサリーが跳ね上がる。

 その間も衝撃は続き、何度も体当たりするような音が響く。

 

ドンッ!!

ドンッ!!

ドンッ!!

 

「ひ……やぁ……っ」

 

ドンッ!!

ドンッ!!

 

 

 

 

 

「……ちょっちょっと! ゾンビさんダメだよ!?」

「……ゾンビ……ストップ……!」

 

 その頃、ドアの外にいたメイプルたちは、突然ドアに体当たりをし始めたゾンビを止めていた。

 紫乃が指示に従い、ゾンビは体当たりを止める。

 

「Guuu……」

「ふぅ~、いきなり体当たりし出したから、思わずびっくりしちゃった!」

「……多分、ゾンビ……なりに……手伝った……つもり……」

 

 突然体当たりをしたゾンビを、紫乃がさり気なくフォローする。

 今回のメンテとアップデートで、なぜか町中でも召喚可能になった紫乃のゾンビは、“フィールドモンスターのAI強化”の影響を受け、わずかに知能が強化されている。

 それに伴い自立して主人の役に立とうとしたのだが、今回はそれが裏目に出てしまっていた。

 

「でも、どうしよう……サリー出てこないよ?」

 

 サリーがいるであろう部屋のドアを見つめながら、メイプルが呟く。

 ちなみに、この時、中でサリーは腰を抜かしていた。

 

「……本当に中にいるのかな?」

「……なら、私が……裏から……見てみます……たしか……窓が、あったから……」

「本当? じゃあお願い!」

「……はい……あ、一応……ゾンビは……ここに、いて……」

「Guuu……」

 

 念のためゾンビをその場に置き、紫乃は階段を降り、宿屋を出る。

 そして、宿屋の裏へと回り、先ほどの部屋の下まで来た。

 

「……あった……」

 

 見上げる二階には、小さな明かり取りの窓が見える。

 

「……【死霊術】……」

 

 紫乃はもう一体ゾンビを呼び出し【マッシヴ】をかけ、その手に乗った――

 

 

 

(……音が……止んだ……?)

 

 一方その頃、腰を抜かしたサリーは、音の止んだドアを見つめていた。

 

(……いなくなった?)

 

 先ほどまでと打って変わり、部屋の中は静寂に包まれている。

 逃げるなら、今だ。

 

(……今のうちに……!)

 

 腰が抜けたまま這いつくばるように、サリーはドアに近づいていく。

 ドアノブに手をかけ、体を腕の力で持ち上げながら、ドアの鍵に手をかけた。

 

(あと少し……!)

 

 震える体を抑えながら、ドアの鍵を外していく。

 そして、ガチャリと音が鳴り、ドアの鍵が開いた。

 

(やった……!)

 

 ドアノブに手をかけ、ゆっくりと回す。

 さぁ、速く逃げよう。

 そう思った、その時――、

 

 

 

 

 

 

『……』

 

 

 

 

 

 

「――っ!?」

 

 サリーは、背後から自身を見つめる視線を感じた。

 同時に、部屋の中にある、不自然な影に気付く。

 

(え、何で? だってここ、二階――)

 

 唯一考えられる影の出どころに、サリーの全身から、一斉に冷や汗が流れ出る。

 見てはいけないと頭では解りつつも、体が言うことを聞かず、背後の窓へと視線を移した。

 すると、

 

 

 

 

『……あ、見つけた……』

 

 

 

 

 そこには、小さな少女がいた。

 窓の外に浮かぶ、小さな少女。

 長い黒髪を巻き付かせた、女の生首を持った少女が!

 

「あ、あ……」

 

『……こんにち、は……』

 

 少女の言葉に、サリーは力が抜け、その場に座りこんでしまう。

 

 ギィィっ……

 

 それと同時に、鍵の開いたドアノブがひとりでに回り、ドアが開いた。

 

「Guuu……」

 

 開いたドアの隙間から、グロテスクな赤黒いゾンビの顔が、部屋の中を覗き込んでくる。

 濁って白濁したの瞳が、座りこんだサリーの眼を見つめる。

 

『……』

「Guuu……」

「あ……あ……あ……」

 

 窓から見つめる少女と、グロテスクなゾンビの眼。

 ふたつの視線に晒されたサリーの思考は強ばり、

 

 

「……きゅうっ……」

 

 

 

 遂にはオーバヒートを起こし、その場で気絶した。

 

「サリー!?」

 

 

 

 

 

 ★★★★

 

 

 

「……ん」

 

 ゆらゆらと揺れるわずかな振動に、サリーは目を覚ました。

 ゆっくりと瞼を開く。すると白い布の、テントのような天井が視界に入る。そして、

 

「……あ、気が付いた!?」

 

 すぐ近くに、親友の顔が見えた。

 

「……かえ……メイプル?」

 

 思わず口から出そうになった親友の本名を、サリーは咄嗟に言い直した。

 

「大丈夫? どこも悪くない?」

「え……? あ、うん……大丈夫……」

 

 朧気な意識の中、サリーは返事をしながら、自身の状況をそっと確認した。どうやら、膝枕されているらしい。

 

「ここ、は……?」

 

 そのまま、自身がどこにいるのだろうか、辺りを見回す。白い布と、畳のような床が見える。広さは六畳ほど。揺れからして、何か乗り物だろうか?

 そして、

 

「……こんにち、は……」

「……にゃッッ!?」

 

 その角の部分に、あの少女――紫乃が座っていた。

 その姿を見た瞬間、サリーは猫のような声を上げて飛び上がった。

 

「にゃ、にゃにゃにゃッッ!?」

「サ、サリー! 落ち着いて!?」

 

 混乱して何故か猫化しているサリーを、メイプルが必死になだめる。

 その間に、紫乃がサリーの前に近づいてきた。

 

「……あ、あの……」

「ふぎゃッッ!?」

 

 

「……その……ごめんな、さい……」

 

 

「……にゃ?」

 

 ペコリと頭を下げる紫乃に、サリーが、猫化したまま固まった。

 

「わ、私もごめんね!? サリーが幽霊とかゾンビが苦手なの、完全に忘れてて!」

 

 それに続いて、メイプルも頭を下げて謝る。

 ふたりに頭を下げられ、混乱していたサリーも、徐々に落ち着きを取り戻していく。

 

(私……何やってんだろ。こんなちっちゃい子に頭下げさせて……)

 

 よく見れば目の前の少女は、自身と頭ひとつ分より背が小さい。

 あらためて冷静になってくると、サリーは、自身の取り乱しようが、何だか異様に恥ずかしくなってきた。

 

「……あ~、私もごめんね? 急に逃げ出したりしちゃってさ? 何て言うか、そのちょっと失礼だったし?」

「……でも、それ、は……私が……」

「あ~そもそも私が変に取り乱したのが原因なんだからさ! ね? この話は終了! だからふたりとも顔をあげて?」

 

 そう言ってサリーは話を終わらせ、頭を下げるふたりに顔をあげるよう促す。

 紫乃とメイプルが顔を上げ、サリーと目を合わせた。

 

「それじゃあ、あらためて自己紹介ね! 私の名前はサリー!」

「……シノ……です……よろしく……お願い……します……」

 

 そう言ってふたりは互いに手を出し、握手をする。

 見目麗しき友情かな。

 横でそれを見ていたメイプルは、うんうんと頷きながら、小さくぱちぱちと拍手をしていた。

 

「いや~ふたりが仲良くなって良かったよ!」

「……いや、それはそれとしてメイプルには、後で話があるから」

「がーん!」

「……ふふ……♪」

 

 サリーとメイプルの会話に、紫乃がクスクスと微笑む。

 

「そんな~!」

「問答無用! あ、ところでシノちゃん?」

「……あ、はい……なんでしょう……?」

 

 すがるメイプルを押し退け、サリーが、床を指差し。

 

 

 

「私たちが乗ってるこれ、一体なに?」

 

 シノにそう問いかけた。

 

「……っ」

「……はっ!?」

 

「馬車とかそういうのじゃないよね?」

 

 サリーの質問に、ふたりが、はっとした表情を浮かべる。それから気まずそうに、顔を背けた。

 

「……えっ? なにそのリアクション……?」

 

 ふたりの反応に、サリーの顔が強ばる。

 

「……あ、あの……ごめんな、さい……」

「え? なんで謝るの? ねぇ?」

「あ、あははっ……えっとね? サリー? 怒らないで聞いてね?」

「え? 怒るって、それどういう――」

 

 

 

「Guuuu……」

「ッ!?」

 

 問い詰めるサリーの耳に、くぐもった唸り声が聞こえる。

 聞き間違えるはずもない、あのゾンビの声だ。

 

「えっと、そのね? 起きた時サリーがまた、逃げ出さないように、その~~……」

 

 煮え切らないメイプルの物言いに、サリーはいてもたってもいられず、周囲を覆う白い布を開いた。

 すると、

 

 

「「GUAAッ! GUッ!」」

 

「「GUOOッ! GUッ!」」

 

 

 ……四体の巨大ゾンビが、サリーたちの乗る台を持ち上げて歩いていた。

 それは神輿だった。

 ご丁寧に四体とは別にもう一体巨大ゾンビがおり、手に持った【祭】と書かれたうちわを掲げ、神輿の先頭を歩いていた。

 

 

「……」

「……逃げられない状態にしとこうかな~って? あの、えっと、その……ごめんね?」

 

 おずおずと言うメイプルの言葉に、サリーは何も答えない。ただじっと、ゾンビを見つめたまま固まっている。

 

「「GUAAッ! GUッ!」」ワッショイ!

 

「「GUOOッ! GUッ!」」ワッショイ!

 

「「GUAAッ! GUッ!」」ワッショイ!

 

「「GUOOッ! GUッ!」」ワッショイ!

 

 

「……ぃ」

 

 

 

 それからほどなくして、

 

 

「いやあああああああッッ!!?」

 

 

 ――少女の悲鳴が、フィールド中を駆け抜けた。

 

 

 

 




 └(゚∀゚└) (┘゚∀゚)┘└(゚∀゚└) (┘゚∀゚)┘
 ワッショイ! ワッショイ! ワッショイ! ワッショイ!
 ……神輿はイズさんが一晩でやってくれました。イベントの肩車を見て、ティンときたそうです

 という訳で、とうとうふたりが出会いました(笑)
 これからもサリーちゃんには頑張ってもらいます(笑)
 ちなみに、ゾンビが街中で召喚出来る仕様は、とあるフランスCEOの案です。一体、何髭なんだ……((((;゜Д゜)))

 いつもアンケートにご協力くださり、ありがとうございます! つきましては次回か次々回、主人公の相方を出させていただきます! 


 あと、まったく関係ありませんが、この夜、寝間着のズボンとパンツを着替える娘の姿を、白峯さん家のお母さんが見たそうです。

 そして、そのパンツが何故か今ここに……世の中不思議がいっぱいです(ゝω・´★)


 次回は出来る限り速く投稿出来るよう、努力いたしますので、感想(どんなに遅れても必ず返信します!)評価の方、よろしくお願いします!( ☆∀☆)

サービス回……いる?

  • いりゅううう!!(ホラー)
  • いりゅううう!!(セクシー&ギャグ)
  • 要らぬ!!
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