ホラー……が、好き、なので……ゾンビを……愛でたいと……思います   作:寿限夢

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 早めに更新すると言って10日以上遅れてしまったぁぁぁぁぁ!ごめんなさぁい!!・゜・(つД`)・゜・
 仕事が憎ぅいい!!
 毎日だらだらしながら、小説読み書きしたぁあい!!
 それはそれとして、オリジナルも書きたい!!

 そんなこんなで更新です!
 よろしければ、どうぞ!!

 ※誤字脱字報告ありがとうございます!


ホラー少女と階層攻略

「「GUAAッ! GUッ!」」

 

「「GUOOッ! GUッ!」」

 

 

 北の道をゾンビが担ぐ神輿が進んでいく。

 その後なんやかんやあって、とりあえず和解した四人は、新たなエリアである"第ニ階層"へ向け、入り口であるダンジョンへと向かっていた。

 

 

「GUッ!」

 

 

「……つ、着きました……」

 

 

 そうやってたどり着いたのは、石造りの遺跡の入り口である。

 情報通りならここが、第ニ階層へと繋がる出入口となっているはずだ。

 

 

「や……やっと着いた……」

 

 

 フラフラとした足取りでサリーが神輿から降りてくる。

 

 

「はぁ~……」

 

「オ前、本当にこういうのダメダナ……」

 

「相変わらず慣れないね~」

 

 

 その後に続いてメイプル、メアリーが降りてきた。

 最後に降りてきた紫乃は、インベントリに神輿を仕舞い、ここまで運んできたゾンビたちの頭を撫で、その労を労う。

 

 

「「「「「Guu……♪」」」」

 

「……ふふっ……♪」

 

 

「ホラ、少しハ紫乃を見習エよ? ゾンビに頬擦りまデしてるゾ?」

 

「いや、あれはかなり特殊な事例でしょ……」

 

「あはは……」

 

 

「……?」

 

 

 そんな風にワイワイしている内に、紫乃がゾンビを労い終わり戻ってくる。

 四人並んだら、いよいよダンジョンの攻略開始だ。

 

 

「まずは、私が先頭で行くね!」

 

「うん、任せた」

 

「okay」

 

「……お願い、します……」

 

 

 メイプルを先頭に、一列に歩いていく。

 順番はメイプル、サリー、メアリー、そして紫乃の順だ。

 紫乃の後ろにはゾンビ五体が身構えているので、仮に後ろからモンスターが来ても、すぐ迎撃出来る。

 

 

「……お、来たゾ?」

 

 

 後方のメアリーが、ふたりの頭越しに正面を見て呟く。

 ほどなくして、前から少し大きめの猪が現れた。

 

 

「【ウィンドカッター】!」

 

 

 サリーが先手をとって魔法を撃ち込む。しかしそれは、HPをわずか二割削っただけだった。

 体勢を立て直した猪が、勢いよく突進してくる。

 

 

「むぅ……結構威力減ってるなぁ」

 

「私がヤろうカ?」

 

「大丈夫、任せて!」

 

 

 突進してくる猪に、メイプルが盾を構えて待ち構える。

 やがて、猪が盾に激突して。

 

 

『ブギィッ!?』

 

 

 盾に呑み込まれて、あえなく光の粒子となって消えた。

 

 

Phew!(ヒュー!) スゲぇなその大盾!」

 

「……やっぱり……強い……!」

 

「えっへへ~~♪」

 

 

 その後も猪が何体か現れたが、すべて大盾の露となって消えた。

 道幅が狭いため、正面からぶつかることしか出来ないのだ。

 

 

「……ソウ言えば、猪って味噌付けて喰ウとウマいらしいナ……」

 

「……猪、鍋(しし、なべ)……?」

 

「イヤ、味噌漬ケて焼くヤツ」

 

「何それおいしそう!?」

 

「猪の味噌漬け?」

 

「Ah~なんか、ホーバー・ヅケ? とか言ってた気がスル……」

 

 

 そんな他愛のない話をしながら、四人は右へ左へと歩き、奥へ奥へと進んでいく。

 そして、いくつかの曲がり角を曲がったところで、今度は正面に熊が仁王立ちしていた。

 

 

「お、今度はクマだゾ」

 

「フフンッ!大丈夫、大丈夫(だいじょ~ぶ)!」

 

 

 メイプルがそれまで通り盾を構える。どうせまた、突っ込んで来るだろうと思ったからだ。

 だがしかしその予想は裏切られ、熊はその場から移動せずに腕を振り、爪の形をした白いエフェクトを飛ばして、遠距離から攻撃を仕掛けてきた。

 

 

「わわっ!?」

 

 

 メイプルが驚きながら盾でエフェクトを受け止める。

 幸い、威力はそれほどではなかったが、メイプルを驚かせるには十分だった。

 

「び、びっくりした!」

 

「まさか、遠距離攻撃があるなんてね……しかも、あの場から動かないし」

 

 

 盾で受け止め眼を丸くするメイプルに、サリーが呟く。見れば、熊は距離を取りながらも道を塞ぎ、通せんぼしている。

 

 

「……なら、ココは私がヤるヨ」

 

「メアリーちゃん!」

 

「いい加減、見テルだけなのも飽きてきたシナ……それに、面白いモン(【悪食】)見せてモラったし、今度ハ、私のも見せてやるヨ……」

 

 

 そう言ってメアリーがメイプルの前に行き、銃を抜き構える。

 抜いたのは、ドス黒い赤色をした拳銃【鬼王の銃剣】。

 引き金に指をかけ、銃口を熊へと向けた。

 

 

「【徹甲弾】」

 

 

 銃口から巨大な銃弾が発射される。

 放たれた銃弾は、真っ直ぐに熊へと向かっていった。

 それを迎撃せんと、熊が、爪のエフェクトを飛ばして攻撃する。

 空中で銃弾と爪のエフェクトがぶつかり合う。

 だが、銃弾はいとも容易く爪のエフェクトを粉砕し、

 

 ぱん、

 

 そのまま真っ直ぐに突き進み、熊の頭を粉微塵に吹き飛ばした。

 首の無い熊の体が地面にどぉっと倒れ、光の粒子となって消えていく。

 

 

「うわっ、すっごい!」

 

「……マ、ざっとこんなモンだ」

 

 

 驚くメイプルを余所に、メアリーが銃をホルスターにしまう。

 

 

「相っ変わらずいい腕してるね。今のがスキル?」

 

「ああ、【徹甲弾】ってスキルだ。防御力貫通ト、武器破壊効果がある」

 

「防御力貫通……うわっ、メイプルの天敵じゃん」

 

 

 メアリーの言葉に、サリーの顔色が若干変わる。

 武器破壊効果もあるということはつまり、盾でガードしても、それを粉砕してぶつかってくるということだ。

 

 

「メイプル気をつけた方がいいよ? 下手したら後ろから撃たれるから」

 

「ふぇえ、なんで!?」

 

「……大丈夫です、よ……メイプル、さん……メアリーは、味方なら……撃たない、ですから……多分……」

 

「多分!?」

 

「HaHaHa!」

 

 

 そんなわりと洒落になってない話をしながら、四人は再びダンジョンの奥へと向かっていく。

 途中、サリーが幻影を生み出すスキル【蜃気楼】をお披露目したり、ならば我々もと何故かやる気になってたマッシヴゾンビたちが、熊や猪なんかの手足や腸を千切ったり引きずり出したりなんかして、サリーを恐怖させたりなどしたが、四人は無事? ダンジョン最奥のボス部屋の門の前まで来た。 

 

 

「それじゃあ、先攻行っきまーす!」

 

 

 そして、メイプルとサリー・紫乃とメアリーの二手に別れてボス部屋へと向かう。先にボス部屋に向かうのはメイプル・サリーのペアだ。

 なぜわざわざ二手に別れるのかというと、サリーがゾンビといるとあまり集中できないから。

 ボス部屋の扉が閉まると、紫乃とメアリー、そして、ゾンビたちだけとなった。

 

 

「《……それじゃあ、ちょっと準備するか。紫乃も準備するだろ?》」

 

「《……うん……》」

 

「《そんじゃ、ちっと……走るぜ!》」

 

 

 それだけ話してメアリーは、ダンジョンの入り口へと駆け出して行った。途中、リポップしたモンスターを速攻で撃ち倒しながら、全速力で。

 【韋駄天】と【虐殺者】の効果により、メアリーのSTRとAIGはどんどん上昇していく。

 

 一方、紫乃の方も。

 

 

「……【死霊術】……」

 

 

 いつもの下準備を始めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ――その頃、とある運営の管理室で。

 

 

「……ん?」

 

 

 たまたま休憩に入ったスタッフのひとりがゲーム内の様子をモニターで眺め、首をかしげていた。

 

 

「んぅ~~?」

 

「お、どうかしたのか?」

 

「ああ、先輩……」

 

 

 モニターを眺める後輩の様子に、先輩であるスタッフが声をかけた。

 

 

「なんかバグでもあったか?」

 

「いや、それが、二層のボス部屋の扉が開いてて……」

 

「ボス部屋の扉?」

 

 

 後輩の言葉に、先輩スタッフが怪訝な顔でモニターを確認する。

 モニターには、ボス部屋から見た扉の映像。

 すると確かに、二層のボス部屋の扉が、開きっ放しになっている。

 

 

「……確かに開いてるな」

 

「でしょ? プレイヤーが開けなきゃ、開かない仕組みなのに」

 

「そうだな……ん? いや、待て。奥になにか……?」

 

 

 そうやってふたりで、あれ変だなぁ、おかしいなぁと首を捻っていると、画面の向こう側――扉の奥の暗がりに、なにかが蠢いているのが見える。

 

 

「「んぅ~?」」

 

 

 画面をズームして見る。

 扉が少しづつ画面全体に広がり、奥の暗がりが見えてきた。

 モニターを見るスタッフの体も、自然と前のめりになっていく。

 その時……、

 

 

 

 

 

ぎょろり、

 

 

 

 

 

 暗がりの向こうから、無数のゾンビたちの顔が浮かび上がり、こちらを睨んでいた。

 白濁した目と、スタッフのふたりが目が合う。

 赤黒いゾンビたちが一斉に、口を開いた。

 

 

『『『『『GuoAAA!!!』』』』』

 

 

「「う、うわぁあああっ!!?」」

 

 

 ふたりのスタッフは思わず悲鳴を上げ、モニターから飛び退いた。

 そうしている間にもゾンビたちが扉から溢れ出し、ボス部屋を埋め尽くさんばかりに雪崩れ込んでいく。

 スタッフの悲鳴を聞き、他のスタッフも周りに集まってきた。

 

 

「な、なんだなんだ!?」

 

「どうした!?」

 

「何があった!?」

 

「シ、シノだ! シノのゾンビが、ボス部屋に殴り込みしてきた!!」

 

 

  

『『『『『GuoOOO!!』』』』』

 

 

『『『『『GuoAAA!!』』』』』

 

 

『『『『『GuoOOO!!』』』』』

 

 

『『『『『GuoAAA!!!』』』』』

 

 

 

「う、嘘だろ!? 一体何体いるんだよ!?』」

 

「【死霊術】は弱体化したはずだろ!?」

 

「間違いない! 一定数超えると喚び出すのに必要なMPが、一定毎に倍々式になるはずだ!」

 

「じゃあなんで!?」

 

 

 スタッフたちの動揺を嘲笑うかのように、ボス部屋は徐々にゾンビたちで埋めつくされていく。

 その群れの中から、赤いコートを翻した少女がひとり、ゾンビの群れを掻い潜り、一番先頭に躍り出た。

 

 

Hiyahoaaa!(ヒャッハアアアッ!)

 

 

「「「メ、メアリー!?」」」

 

 

 突如として現れたメアリーの登場に、スタッフの間に動揺が走った。

 その筋(FPS)の業界でも有名な【血塗れメアリー(ブラッディ・メアリー)】の参戦と先日の惨たらしいレッドキャップ虐殺劇は、スタッフの記憶に新しい。

 ようやくゾンビの軍団の増援が止まり、ボス部屋の扉がしまっていく。

 その最後尾のゾンビの肩に、紫乃が座っている。

 

 

「シ、シノだ!」

 

「あいつ、あの“血塗メアリー”(ブラッディ・メアリー)友達(ダチ)かよ!?」

 

「友達選べよ!!」

 

「お、おい! シノの手に持ってるの見ろ!!」

 

 

 肩に乗る紫乃の手には、MPポーションが握られている。

 

 

「え、MPポーションでゴリ押ししたのか!?」

 

「そこまでしてゾンビこだわるか普通!?」

 

「ゾンビ好きってレベルじゃねーよ! 大概にしてくれ!!」

 

 

 スタッフが嘆く間にも、ボス部屋に配置された大樹がメキメキと変化し、巨大な鹿の姿を現していく。

 角に青々とした葉が茂り、赤く煌めく林檎が実った。

 足下には、巨大な緑の魔法陣。

 樹木で出来た体を、ブルリと震わせる。

 

 

 ――その眼前に、跳躍したメアリーが躍り出た。

 

 

『【徹甲弾】!』

 

 

 巨大な弾丸が、鹿の顔面へと放たれる。

 

 

「初手からいきなり【徹甲弾】かよ!?」

 

「どんだけ殺気増し増し!?」 

 

「いや、でも大丈夫だ!」

 

 

 スタッフのひとりがいうように、放たれた徹甲弾は、鹿の眼前で現れた緑の障壁によって阻まれた。

 

 

『《ちっ!》』

 

 

 舌打ちしたメアリーが着地し、地面を走りながら両手の銃剣から弾丸をばら撒いていく。

 それらの弾丸は、どれも的確に鹿の急所を狙っているが、緑の障壁に阻まれ、当たることなく地面へと落ちていった。

 

 

「よし、弾丸は無効化されてる! あの障壁を攻略しない限り、メアリーの攻撃は効かない!」

 

「頑張って考えたかいがあった!」

 

 

 地面を走るメアリーへと、鹿が足下の魔法陣を踏み鳴らして、地面から巨大な蔓を次々と出現させ攻撃する。

 メアリーはその蔓を紙一重で避けながら、銃を乱射していく。

 

 

「……いや、状況はなにも好転してない!」

 

 

 スタッフのひとりがそう叫ぶのと同時に、紫乃が動いた。

 

 

『……突撃……』

 

 

『『『『『GuoAAAAAA!!!』』』』』

 

 

 紫乃の合図と共に、大量のゾンビが鹿目がけて殺到する。

 

 

「「「ぎゃあああ忘れてたぁああ!!」」」

 

 

 殺到するゾンビの群れを、鹿が蔓を動かし攻撃するが、ゾンビはお構いなしに突き進んでいく。

 やがて、鹿の足下へと到達し、その体を登り始めた。

 

 

「ふぇ、な、なんで!?」

 

「しょ、障壁は!?」

 

 

 スタッフが困惑する間にも、ゾンビが次々と鹿の体に群がっていく。

 

 

「攻撃じゃないからだ! ただ体を登っているだけじゃ、障壁は発動しない!!」

 

「ダメじゃん!」

 

「いや、大丈夫だ! 攻撃した瞬間発動するから! 障壁なら、障壁先輩ならやってくれる……!」

 

「障壁先輩ってなに!? ――あっ!?」

 

 

 スタッフが声を上げた瞬間、全員の目がモニターの一点へと注がれる。

 そこには壁を走り、鹿の目線の高さまで駆け上がったメアリーがいた。

 

 

『《テメエの弱点はここだなぁ!?》』

 

 

 壁を蹴り横っ飛びに跳躍したメアリーが、空中で銃を構える。

 

 

『【パワー・ショット】!』

 

 

 放たれた弾丸が宙を駆け、鹿の頭の林檎の付け根に直撃した。

 林檎が地面へ落ちる。

 だが、それだけでは終わらない。

 直撃した弾丸はそのまま鹿の頭上を駆け抜け、角に付いていた林檎をすべて一直線に撃ち抜き、貫通した。

 

 

Hiyaha!(ヒャッハアッ!)

 

 

「う、嘘だろ!?」

 

「狙って撃ち抜いたのか!?」

 

「あんなんチートや!! チートのベーターでビーターや!!」

 

「誰だお前!?」

 

 

 しっかりしろと混乱するスタッフが引っ叩かれるのを余所に、紫乃たちの猛攻が続いていく。

 

 

『……【呪い】……』

 

 

 紫乃の放った亡霊が、鹿にまとわり憑き、その体からAGIを根こそぎ奪っていく。

 障壁がなくなり、動きの鈍くなった鹿の体をゾンビたちが駆け上がり、ところ構わず一斉に攻撃し始めた。

 

 めちめち……めきめきばきっ! 

 

 

『『『『『GuoAAAAAA!!!』』』』』

 

 

「ひっ!?」

 

「こ、コイツら……鹿の体毟ってやがる!」

 

 

 大樹で出来た鹿の体を、ゾンビたちは歯や爪を駆使しながら手当たり次第引きちぎっていく。

 力任せに、無理矢理に。

 鹿が悲鳴を上げ、体を震わせて蔓や風の刃を操りゾンビたちを振り払おうとするが、引き離したそばから別のゾンビが群がり、また体を毟り始める。

 鹿の体のおよそ九割が、ゾンビに埋まりつつあった。

 そして、敵はゾンビだけではない。

 

 

『…………【ダーク・ジャベリン】……』

 

『【五月雨撃ち】ィッ!』

 

 

 紫乃の放った闇の槍が鹿の頭蓋を貫き、メアリーの銃弾が両の目を撃ち抜いた。

 鹿が一際悲痛な叫びを上げる。

 足元の魔法陣が光り、鹿のHPバーを二割回復させるが、回復したそばから減少していく。

 鹿の目や口、全身から赤いエフェクトが溢れ、ボス部屋の緑を赤く塗りつぶしていた。

 

 

「やめたげてよぉっ!」

 

「もうやめて! 鹿のライフはもうとっくに0よ!」

 

「お前ら落ち着け!?」

 

 

 あまりの惨状にSAN値が減少し、精神に異常をきたすスタッフまで現れ始めた。

 口調が色々おかしい。

 しかし、そんな状況下においてもなお希望を捨てず、一矢報いることを願う者がいた。

 

 

「いや、まだだ……まだアレ(・・)がある……!」

 

 

 モニターを凝視するスタッフが言うアレとは、最後の行動パターン変化時に起こる火柱のことである。

 ボスの鹿を中心に発生する火柱は、全身にまとわりつくゾンビを一掃する攻撃力がある。

 

 

「せめて一発……!」

 

 

 メアリーや紫乃がいる以上、ゾンビを倒したところで焼け石に水であろう。

 敗北はすでに必至。

 しかし、だからと言って諦めきれない。

 モニターを見るスタッフの手に、力が入る。

 

 

 そして、その時は来た。

 群がられ、潰された鹿の目に、赤い光が点る。

 パターン変化の前兆だ。

 

 

「よし! いっ――」

 

 

『……散、開……!』

 

 

「……えっ?」

 

 

 紫乃の合図と共に、群がっていたゾンビたちが鹿から一斉に飛び降り離れていく。

 それと同時に火柱が起こり、地面が隆起し巨大な蔓が周囲を無差別に攻撃するが、範囲内に既にゾンビたちの姿はなく、鹿の決死の攻撃は、ものの見事に空振りに終わった。

 

 

「えっ? えっ?」

 

 

 困惑するスタッフを余所に、いつの間にか跳躍するメアリーに抱えられた紫乃が、鹿の眼前で杖を構えている。

 

 

『……【嘆きの妖精(バンシ―)】……』

 

 

 女の生首が、口を開いた。

 

 

『いやぁああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああッッ!!!』

 

 

 パァンッ!

 

 

 血の涙を流す女の絶叫を間近で受け、鹿の目や鼻、口や耳などから赤いエフェクトがはじけ、辺りに飛び散った。

 鹿の体が地面にどぉっ、と倒れる。

 地面に横向きになり、そのままピクリともしなくなった鹿の体は、やがて光の粒子となり、遂には跡形もなく消滅していった。

 

「……え、最後の避けたの、アレ、ナニ?」

 

「わ、わかんねえ……」

 

「……勘?」

 

 

 唖然とするスタッフを置き去りに、紫乃とメアリー&ゾンビたちは第二階層へと続く魔法陣の上に乗った。

 

 

『《……そういえば、最後のあの攻撃、なんでわかったんだ?》』

 

 

『《……え? ……ん~……なんと、なく……?》』

 

 

 

「「「「「なんとなく」」」」」

 

 

 

『《そっかあ、なんとなくか~……》』

 

 

 

 そんな言葉を残し、メアリーと紫乃はボス部屋を後にしていった。

 後には何も残らない。

 ただし、たまたま英語が分かるスタッフが翻訳した二人の会話を聞いて、モニターの前で呆然としていたスタッフ一同はしばらくして、慌てて動き出した。

 

 

「……な、なんとなくって! なんとなくってなにさ!?」

 

「ど、どないすっぺ!?」

 

「い、(いそ)んで次回(じけぇ)のイベント用モンスターさ見直すだ!」

 

「ンだンだ!!」

 

 

 何故かエセ田舎っぽい訛りで話しながら、スタッフたちは慌てて仕事に戻った。

 このままだと、次のイベントがヤバい。

 先ほどの一方的蹂躙劇を見て、スタッフの誰もがそう思った。

 だが、そんな中にひとり……。

 

 

 

 

 

 

 

 

「……アレが【シノ様】……やはり何度見ても、素晴らしい"メカクレ"……!」

 

「おい新人! お前も手伝え!!」

 

 

 

 怪しい微笑みを称える、背の高い伊達男がいた。

 

 

 

 

 

 

 

 ――ちなみに。

 

 

「んにゃああああっ!!?」

 

 

 合流した紫乃たちが連れた大量のゾンビに、サリーが恐怖して悲鳴を上げたのは、言うまでもない。




 はい、そんなこんなでやっとこさ第2階層です!
 ペースが遅い!(鱗滝風)


 次回は久々に、紫乃ちゃんオンリーとなります!

 頑張って更新しますので、よろしければ感想評価の方、よろしくお願いします!!

PS・活報や感想の返信、遅れていてすみません! 今夜必ず返します!
 皆さんの日々の応援、本当にありがとうございます!

サービス回……いる?

  • いりゅううう!!(ホラー)
  • いりゅううう!!(セクシー&ギャグ)
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