ホラー……が、好き、なので……ゾンビを……愛でたいと……思います 作:寿限夢
※誤字脱字報告ありがとうございます!
女の懇願を無視して、男は駆けた。
全速力で駆けた。
いきなり全力で駆けたため、すぐ息があがった。
何度か転びかけ、洞窟の壁に身体を打った。
女の声はもう聞こえない。
それでも、男は走るのを止めなかった。
止めたら、すぐにでもあのゾンビたちに捕まり、生きたまま臓物を貪られる気がしたからだ。
(――ちくしょうっ!)
男は、走りながら涙をこぼしていた。
(なんで、なんでおれがこんな目に……!)
どれくらい走っただろうか。
洞窟の壁に小さな暗がりを見つけ、男はそこに身体を滑らした。
人ひとり入れるか入ないかという、狭い隙間であった。少なくとも、あのゾンビたちは入れない。
奥まった小さな空間に、男は腰を落とした。
「はぁ……はぁ……はぁ……っ」
荒れる息を整えながら、男はステータス画面を開いた。
画面の端、ログアウトの項目を指のない手で押し、決定する。
【ログアウト不可】
「~~なんでだよっ!!」
だが、返ってきたのは、無機質なブザー音と、ログアウト出来ないという表示だった。
それもまた、男のチートにより発生した、不具合のひとつであった。
「くそっ! くそっ!」
男は悔しがりながらも、今度は運営へ直接連絡を取ろうとした。
しかし、繋がらない。
ログアウトと同時に、連絡機能も不具合を起こしている。
「ぁああ~~っ!!」
さながら、一昔前のラノベのような状態であった。
ログアウトは出来ず、外部との連絡もとれない。
攻撃されれば、現実同様の痛みに襲われる。
唯一の救いは、それが現実の死に直結しないことくらいか。
「……あと、あるとすれば……」
男はインベントリを開き、中からある物を取り出す。
取り出したのは、一本の短剣。
武器で【短剣】を選んだプレイヤーが最初にもらえる、【初心者の短剣】である。
「流石に使うと
たが、その短剣もまた、男がデータを不正に改造したチート武器のひとつであった。
改造して得た能力が、【即死付与】。
しかも、確率を無視して必ず即死させるという、反則級の代物である。
あまりに強すぎるため、使ったら不正がばれると思い、お蔵入りさせていたのだ。
「ふぅ……ふぅ……!」
男が短剣を手に、荒い息を吐く。
この武器を使えば、ゾンビを倒せる。
だがそれは、一体二体が関の山だ。
男は短剣使いではないので、スキルを使用出来ない。
加えて、両手の指がほとんど欠損している。
短剣を保持できない。
武器を落とし、拾おうとしたところをゾンビにやられるのは、目に見えている。
故に、男が取れる行動は、ひとつだけだった。
「ふぅぅっ! ふぅぅぅっ!!」
男は、短剣を両の
首筋に、ひやりとした冷たい金属の感触が伝わる。
一度
それこそが現状、ゾンビに喰われる以外、唯一男に残された、最良の方法であった。
「ふぅぅっ! ふぅぅううっ!!」
男の口から、獣のような荒い息がこぼれた。
短剣の刃は、まだ男の首を傷つけていない。
怖い。
自分で自分を切ることが。
もし、またバグか何かで、
男の脳裏に不安がよぎる。
ゾンビに、指を食いちぎられた時の痛みを思い出す。
指であれほどの痛みならば、首は?
首筋に触れる、冷たい金属の刃。
これが、身体の中に潜り込む。
寒い。
想像するだけで背筋が凍った。
短剣を持つ手が震える。
視界が涙で滲む。
なんで、どうしておれが、こんな目に。
男の顔は、泥と涙で汚れていた。
その時――
「……ぁ……」
遠くから、声が聞こえた。
「……ぁ、~~……」
「……っ……ぇ」
声が、徐々に近づいてくる。
男は最初、それがゾンビの声だと思った。
だが違う。
小さくて聞き取りづらいが、それは女の声であった。
しかもどうやら、ふたりいるらしい。
そのことに気づいた時、男は歓喜した。
(――助かった!)
男の頭の中に、一瞬にして幸福な未来が予想された。
まず暗がりから出た自分が、やって来た
運営に連絡してもらい、ゲームから安全にログアウトするのだ。
仮にバグの経緯からチートが発覚しても、たいした問題にはならない。
自分も仲間たちも未成年なのだ。
せいぜいお叱りをうけて、二度と
「……あ~~」
「……け……た……」
さらに声が近づいくる。
もう声は、男がいる暗がりの前まで近づいていた。
男は立ち上がり、暗がりの外へと向かった。
「おーい!」
外へ向かいながら、男が声をあげた。
暗がりの外に、ちらりと人影が見えた。
女性の影だった。
すぐに陰に入ってしまったが、間違いない。
きっと声の主だろう。
その声の主に、男が呼び掛けた。
「おーい!」
男は喜びながら、暗がりの外に出た。
そして見た。
声の主を。
女の正体を。
暗がりから出た男は、その場に固まった。
『『『『『GuUUU……』』』』』
そこにいたのは、無数のゾンビの群れであった。
醜悪なゾンビの群れが、暗がりから出た男を、取り囲むようにして立っている。
「……ぇ、あ……?」
困惑する男の喉から、小さな声がこぼれた。
なぜ、どうしてゾンビがここに?
聞こえてきたのは、たしかに女の声だったはず――
困惑する男の目に、二体のゾンビの姿が映る。
「……ぁ、あ……」
見ればそれは、先ほど男が見捨てた、短剣使いの女であった。
女の手足はなく、根元から引きちぎられている。
手足のない、達磨のような状態にされた女が、ゾンビに頭を咥えられたまま、小さな声をあげている。
『「あーー」』
その横には、女の生首を咥えたゾンビが立っていた。
魔法使い――首の骨を折られた、男の妹の首であった。
白目を向いた妹の首の断面に、ゾンビが、口をつけて声を出す。
妹の喉を伝い、半開きになった妹の口から、奇妙な女の声が響いてきた。
「あ、あぁ……」
かつん、こつん、ぐち、ぐちゃ、
後ずさる男の背後から、湿った肉を食む音が聞こえてくる。
振り返って見れば、ゾンビが、首のない死体を食らっている。
おそらくは妹の死体であろう。
そしてそれが、男が見た人影の正体であった。
「あああ……」
男がその場に、ぺたりと座り込んだ。
もう、立ってすらいられなかった。
男の目の前に、短剣使いを咥えたゾンビが歩み寄った。
「
へたり込む男を見下ろし、ゾンビが小さく唸った。
「
そして、自身の考えが間違っていないことを確信して、小さく頷いた。
――そのゾンビは、最初にメダルを集めることを提案した一体であった。
そして、紫乃が初めて、【死霊術】で呼び出した一体であった。
故に、そのゾンビは、
――自身が
――弱まった
彼は……いや。
めき、めち、ぐち……
咥えられた女の頭から、小さく音が響いていく。
ゾンビが、咥えた女の頭に、徐々に力を込めているのだ。
めち、めき、めち……
「ぁ……あ……ぃ、やだ……だずげ、で……やめで……ぉねがぃ……」
女は泣きながら、震える声で助けを求めた。
だが、咥えるゾンビの動きは止まらない。
女の頭の皮をゾンビの歯が破き、肉が裂き骨を歪ませていく。
「あ、あ、あぁ……」
その光景を、男はただ黙ってみていた。
いや、それしか出来ずにいた。
やがて、
「だずっ」
ぐじゃっ、
という音をたて、ゾンビが女の頭を、熟れたトマトのように噛み潰した。
「あああ~~っ!!?」
見ていた男の口から、悲鳴がこぼれ出た。
ゾンビが女の頭を、くちゃくちゃと音をたてて咀嚼していく。
ぐち、ぐち、ぐちゃ……
「「「「GuOOOO!!」」」」
その周囲では、他のゾンビたちが、何かを持ち上げながら取り合い、食らっている。
人の腕や脚、腹や胴であった。
ちぎれて細かくなった、妹や女の肉片を、ゾンビが我先にと貪り、食っているのだ。
かつ、かつ、
こり、こり、
くちゃ、くちゃ、ぐちゃ……
「ひいいいいっ!!」
その光景を見て、男は涙を流していた。
いやだ。
あんな風に死にたくない。
男の手の上に、女の肉片が落ちた。
その肉片を、ゾンビが拾おうと近づいた。
その拍子に、
「ああああああああああああっ!!?」
男は、持っていた短剣で、自身の喉を貫いていた。
【システム
『……死んだ』
『死んだな』
『自分で喉を突いたな』
『なんで自分で喉を突くんだ?』
『さぁ……きっとバカなんだろう』
『いまバカって言った?』
『お前じゃねぇよ』
『……まぁ良い。メダルは手に入った……』
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「――うわああっ!?」
リアルに戻った大剣使い――現実世界の男は、ベッドから飛び起きた。
短剣で突いた首を押さえ、辺りを伺う。
見えるのは、見馴れた自分の部屋であった。
机や箪笥、本棚やテレビなどがあり、男が寝ていたベッドの反対側には、真新しいソファーがある。
そのソファーの上では、高校生の妹――ゲーム内では、魔法使いだった少女が、ゲームのハードを被って横になっている。
横になっている妹は、失禁して衣服の下をしっとりと濡らしていた。
そして、それは大剣使いの男も同じだった。
「~~クソがっ!!」
かぶっていたゲームのハードを投げ、男が叫んだ。
「ふっっざけんな!! あんなん反則だろ!? ズルしやがって!! ふざけんな、ふざけんなぁっっ!!」
男は叫びながら、投げ捨てたハードを蹴り、叩き、踏みつけて当たり散らす。
自分たちのことは棚に上げ、部屋にある本棚の本、クッションなどを投げつけ、感情を爆発させた。
「このオレをばかにしやがって! どうするか見てろ!!」
言いながら男は、ソファーの横の机の椅子に座り、備え付けのパソコンを開いた。
パソコンのキーボートを叩き、運営宛にメッセージを作る。
内容は、紫乃に対する抗議文だ。
「BANされて消えろ! クソガキ!」
作り上げたメールを送信し、男は椅子にもたれかかった。
と、その時、
「……」
ソファーにいた妹が、ゆっくりと起き上がった。
「おう! お前、ようやく起きたのか!?」
「……」
起き上がった妹に、男が声をかけた。
が、反応がない。
あからさまに無視されたことに、男の怒りが再燃した。
「おい! 聞こえてんのか!?|
男が声を荒げながら、妹にもう一度話しかけた。
すると、
「……レ……タ……」
「ぁあっ?」
「……
ハイレタハイレタハイレタハイレタハイレタハイレタハイレタハイレタハイレタハイレタハイレタハイレタハイレタハイレタハイレタハイレタハイレタハイレタハイレタハイレタハイレタハイレタハイレタハイレタハイレタハイレタハイレタハイレタハイレタハイレタハイレタハイレタハイレタハイレタハイレタハイレタハイレタハイレタハイレタハイレタハイレタハイレタハイレタハイレタハイレタハイレタハイレタハイレタハイレタハイレタハイレタハイレタハイレタハイレタハイレタハイレタハイレタハイレタハイレタハイレタハイレタハイレタハイレタハイレタハイレタハイレタハイレタハイレタハイレタハイレタハイレタハイレタハイレタハイレタハイレタァッ!!」
「ひぃっ!?」
妹は、目をカッと見開いたまま首を振り、狂ったように笑い声をあげた。
口の端からはよだれを垂らしながら、眼球をぐりぐりと動かす。
「アヒャヒャッ! アヒャヒャヒャヒャッ!!」
「ひいいっ!?」
妹の異変に、男が椅子から転げ落ちた。
尻餅をついたまま、壁際まで後退る。
その後ろから、
「オイ」
生臭い、生き物が腐った匂いがした。
……いかがだったでしょうか?
人間、悪いことはできません。
思いもよらないところで、相応の報いを受けるものです(笑)
そんなこんなでゾンビ大活躍の回でした!
アンケート集計する前から書いてたから、アンケート見てから『やべっ』と思いつつも、予定通り上げました(笑)
次回からはちゃんと紫乃ちゃんたちの話です!
アンケート通りに、紫乃ちゃんを強化することとします!
さて、セクシーなの、キュートなの、ホラー、どれにするかな……?
アンケートご協力ありがとうございます!
相変わらずの不定期かつ、ぐだぐだマイペース亀更新になっておりますが、今後ともご指導ご鞭撻の方、よろしくお願いします!
あと、出来れば良ければ評価感想の方、よろしくお願いします!!
あと、ブクマ外しは簡便してください!(メンタルクソ雑魚)
それでは、次回また!
サービス回……いる?
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いりゅううう!!(ホラー)
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いりゅううう!!(セクシー&ギャグ)
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要らぬ!!