ホラー……が、好き、なので……ゾンビを……愛でたいと……思います 作:寿限夢
まだまだ行きますよぉ――!
「……わぁ……♡」
メアリーが飛ばされたの同様に、紫乃もまた別の場所へと転移していた。
紫乃が飛ばされたのは、壁に鍋やフライパン、その他調理器具などがぶら下がるキッチン--館の厨房であった。
「……羊たち、の、沈●……!」
思わず連想した某有名映画のタイトルを口走る紫乃。
ならば現れるモンスターは人食いハン●バルか。
そんな部屋の中を見回す紫乃の目に、かまどの上にある、蓋付きの大きな寸胴鍋がとまった。
「……わぁ……!」
人ひとり中に入りそうな鍋の存在に、紫乃の目がきらきらと輝く。
中に誰か入ってるだろうか?
そう思った紫乃が、かまどまでとてとてと近づき、鍋の中を覗こうとする。
が、
「……ん、ふっ……!」
ほんの少し、ちょっとばかり背が足りない。
つま先立ちしても、ぴょこぴょこジャンプしても中身が見えない。ので、仕方なく紫乃は、近くにあった小さな台を持ってきて、その上に立った。
台の上に立つと、鍋の蓋が胸元の辺りにきた。
「……ご開、帳……♪」
上機嫌に紫乃が、鍋の蓋を取り上に持ち上げる。
鍋の中身が露になる。
しかし、
「……あ、れ……?」
鍋の中身は、空っぽであった。
空の鍋――俗にいう、空鍋である。
「……中に……誰も……いません、よ……?」
実家のメイドが見て、爆笑していたアニメのセリフを言いながら、紫乃が鍋に頭突っ込んで覗き込む。
が、やはりなにもない。
なんだか少し肩透かしを食らった気分になりつつも、紫乃が、他を探そうと台から降りようとした。
――その時だ。
ずぐっ、
部屋の影から突然、白い何かが現れ、紫乃の脇腹を切りつけた。
「……ぇ……?」
切りつけられた紫乃が、バランスを崩し、台の上から転げ落ちる。
ガタガタンッ!
その後を追い、切りつけた何かが、仰向けに倒れた紫乃の上に乗り、馬乗りになった。
馬乗りになったのは、白いコック服を着た
手には、巨大な包丁。ところどころ赤く錆びた刃が、怪しく鈍色に光る。
「……ぁ……」
馬乗りになったコックが、包丁を振りかざした。
ずぐっ、ざくっ、ずしゅっ、
ぐずっ、ざしゅ、ざじゅっ!
振りかざした包丁を、コックが倒れた紫乃へ向かい、めちゃくちゃに振り降ろしていく。
胸や腕、頭など構わず切り、裂き、滅多刺しにする。
ざく、ぐじ、ずぐずぐぐっ!
コックが包丁を振り抜くたび、噴いた赤い
壁や天井にまで飛び散り、薄汚れた厨房の中を赤く染めあげていく。
ぐじ、ぐちちぢっ!
まさに、鬼畜の所業。
可憐な美少女が血を噴き真血を散らすその様は、まさに惨劇そのものであった。
ざくっ、ずしゅ--
……が、
――ガシッ、
その惨劇は、わりとあっさりと止められた。
包丁を握るコックの手を、紫乃が左手で掴んだのだ。
「……ふぅ……びっくり、した……」
まるで何事もなかったかのように、紫乃がコックの手を掴んだままゆっくりと起き上がる。
なお、起き上がった紫乃の目には、まだコックの包丁が突き刺さっている、が。
「……んっ……ふぅ……」
ぬち、ぬち、めち……ぢゅぽ、
紫乃が包丁を抜き出し、両目をパチパチ。それだけで血の泥濘だった左目が、元に戻って完全復活。
そう、コックの攻撃は、残念ながら物理属性だったため、【
「……わぁ……お人形さん、だぁ……♪」
ジタバタとするコックを見て、紫乃がニッコリと微笑む。なお、コックは暴れているが、見た目通り力が弱いらしく、紫乃の手を振りほどけないでいる。
「……ふふ……♪」
暴れ続けてるコックを、紫乃がギュッと胸元に抱きしめる。
メカクレ女子による抱擁に、同じ頃どこかのメカクレスキーな男が、ギリリと歯軋りした。
「……あなたは……倒せ……ないん、だね……?」
抱きしめたコックにHPの表示がないことに、紫乃がポツリと呟く。
「……なら……探索……ううん……脱出を条件……目的とした……“鬼ごっこ”……かな……?」
いくつものホラーゲームや映画、その他諸々を堪能してきた紫乃にとって、こういった
「……なら、扉の……向こう……は……」
そうして、ある程度考えがまとまったところで、紫乃は、コックを抱いたまま、かまどの反対側--厨房にある唯一の出入り口らしき、扉へと向かう。
ギィ……、
という音を鳴らして開いた扉の先には、ボロボロになった廃墟のような廊下が、真っ直ぐ奥へと続いていた。
「……ふふ……♪」
薄暗い廊下へと、紫乃がゆっくりと歩き始めた。
コッ……コッ……コッ……
不気味な廃墟の廊下に、紫乃の足音が木霊していく。
紫乃は微笑ながら、辺りを見渡している。
なお、その胸元では、抱かれたコックがいまだ、ジタバタと暴れていた。
コッ……
--そうして、紫乃がいくらか歩いたところで。
ド、トトトトッ!
廊下の壁から突然、無数の矢が飛び出し、歩いていた紫乃の胸に突き刺さった。刺された紫乃がたたらを踏む。
当然、胸に抱いてコックも巻き添えを食らい、顔や腕など全身にこれでもかと言わんばかりに矢が突き刺さった。
「……ふふ……ふふふ……♪ ……やっ、ぱり……♪」
だが紫乃は、まるで何事もなかったかのように胸に刺さった矢を引き抜いた。
「……
矢を抜いた紫乃が、コックに刺さった矢を引き抜きながら妖しく微笑む。
そして、紫乃のこの予想はズバリ的を射ていており、ランダムに転移された場所から、いかにして不死身のモンスターの猛攻を防ぎつつ、無数の
「……ふふ……♪」
悲しいかな“ホラー”というジャンルに合わせて罠やモンスターを設計してしまったため、そのほとんどがスプラッターな“物理系”。つまりは、紫乃にまったく効果がないものに偏っていた。
コッ……コッ……
矢を引き抜いた紫乃が、微笑みながら再び歩き出す。
すると今度は、
コッ……ザシュ!
壁から鎌の刃が飛び出てきて、紫乃の首から胴を袈裟斬りに切りつけた。
なお、コックも真っ二つに切られる。
が、紫乃は止まらない。
「……ふふ……ふふふ……♪」
なおも微笑みながら歩みを進める。
当然、さらなる館の罠が紫乃に襲いかかってくる。
壁や床、天井からギロチンの刃、無数の槍に回転するノコギリや毒の雨などが降り注ぎ、紫乃の行方を遮ってきた。
……が!
ザシュ!
無駄!
ズグンッ!
無駄ッ!
ブチブチブチッ!
無駄ァ!!
ブシュウゥッ!
「……ふふ、ふ……あは、は……!」
ありとあらゆる罠が紫乃に襲いかかってくるが、紫乃は揺るがない。むしろ、向かってくる罠を楽しんでいる。
ここまで攻撃を受けたのは、前回のイベントのプレイヤー戦以来か。
ギロチンで腕を裂かれ、槍に腹を貫かれノコギリで頭を切り刻まれ毒に濡れながらも、紫乃は笑いながら廊下を歩いていく。
『……』
……そして、そんな紫乃に抱かれているコックは、紫乃の腕の中でぐったりとしていた。
紫乃がわざと……というか、進んで罠にかかるため、メチャクチャ巻き添えを喰らうからだ。
システム上、
最初に暴れていた威勢はどこへやら、今では力なく四肢を投げ出し、ボタンで出来た虚ろな目で『……コロシテ……イッソコロシテ……』と、ここにいない誰かに訴えかけていた。
「……ふふ……か~ごめ、かごめ。か~ごのな~かのと~り~は~。い~つ、い~つ、でやる。よあけの、ばんに……♪」
紫乃の歌う声が、暗い館の中に木霊した。
~一方その頃、メアリーとゾンビたちは……、
【メアリーside】
ドゴォオオッ!!
「UREYYYY!!!」
【ゾンビside】
『ちぃい なんだこりゃァ!?』
『あちこち罠だらけだ!!』
『構うな進めぇえッ!!』バキバキッ
『「覚悟」とは!! 暗闇の荒野に!! 進むべき道を切り開く事だッ!』ベキベキッ
サービス回……いる?
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いりゅううう!!(ホラー)
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いりゅううう!!(セクシー&ギャグ)
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要らぬ!!